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2025-01-01 16:30

この小説がすごかった!【2024年ベストブック・小説編①】

毎年恒例、バタやんの年間ベストブックの発表です!

2024年に個人的にとても救われた、心揺り動かされた小説ベスト5をご紹介します。今回は第5位〜第3位の発表です。


★第5位 高瀬隼子さん『新しい恋愛』 https://amzn.to/4iTPd7d 

★第4位 クビョンモさん著、小山内園子さん訳『破砕(はさい)』 https://amzn.to/40cLZ7o 

★第3位 金原ひとみさん『ナチュラルボーンチキン』 https://amzn.to/4iUTOWJ 

※フィクションがあまり読めなくなっていた件については、こちらの回でお話ししています。「真剣だからこそ。私たちは人を傷つけたり、傷ついたりする」 https://open.spotify.com/episode/5AQimkxxRWF0eb7JPKFL4Z?si=5q0KjGylS96n8Fc-SovPfA 


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一次審査、リスナー投票受け付け中です(〜2025年1月10日まで)。ぜひ応援してください!!

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サマリー

2024年の小説ベストブックを発表するエピソードでは、高瀬潤子の「新しい恋愛」や久平茂の「ハサイ」などの注目作品が紹介されます。特に短編小説やキャラクター描写についての感想が語られ、リスナーに読書の楽しさを再確認させる内容です。また、金原ひとみの小説『ナチュラルボーンチキン』を通じて、世代間のギャップや自己理解についての深い洞察が描写されています。さらに、読書が人生に与える影響についても個人的な体験を交えて語られています。

新年の始まりとベストブック発表
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
明けましておめでとうございます。
今年は水曜日始まりなんですね。ということで、新年最初の放送となります。
先週に続き、マイベストブックを発表いたします。
いよいよ小説編です。早速参りましょう。
第5位は、高瀬潤子さんの新しい恋愛です。
ランキング発表にあたって、一つちょっと告白をさせてください。
実は今年、あ、2024年はあまり小説を読めない時期がありまして、
いつものようにいっぱい読んだなあ、今年もって感じじゃなかったんですね。
それで初回をビジネス書編にしたというのもあります。
ビジネス書とかノンフィクションとか、
すぐに役立つ系の本を読めるのに、フィクション、物語がいまいち頭に入っていかないというか、
没頭できないような、そんな時期がありまして、皆さんにもあるでしょうか。
年明けから結構いろんなことがあって、年末年始にたくさん買い込んだ本も手つかずのままでした。
この高瀬潤子さんの新しい恋愛は、講談社から弊社から出ているため、
社内でお勧めしてもらったんですね。高瀬さんの新刊がうちから出ますから、ぜひ読んでくださいって。
しかも恋愛小説なんですよ、めっちゃ面白いですからと。
川端さん好きだと思いますって言ってもらって、そこまで言ってもらったら読まないわけはないですけれども、ちょっと不安だったんです。
プレッシャーに正直感じていました。っていうのは、ちゃんと集中できて、ちゃんと没頭できて、そしてちゃんと感想を言えるだろうかって。
純文学とか恋愛物っていうのは、自分自身の純度が高い時じゃないと吸収できないような感じが勝手にあって、
恐る恐るスケートリンクに足を下ろすみたいな、久しぶりにアイススケートに来たみたいに足を下ろしたら、
スーッとね、グングン、スーグングンっていけて、あ、いける、私いけます、楽しいじゃんってなって。
これは短編集なんですけど、1話目からグングン入り込んでいけて、調子に乗ってどんどん読んではダメだ。
筋肉痛になるから一編ずつにしようって思って、1話ずつ読みました。
まず一つ目の花束の夜という小説の冒頭を読みますね。
水本は毎度そうしているように、誰も忘れ物をしていないか確認する係を担って、最後に店を出るつもりでいた。
貸切で使っていた座敷で皿を重ねてテーブルの端に寄せ、中身が中途半端に残ったビールジョッキの影や掘りごたつの座布団の下に、
タバコやスマホが落ちていないかを見て回っていると、
何やってんの水本、エレベーター来るぞと怒鳴られるようにして呼ばれ、慌てて靴を履くとあります。
わかる、この漢字。
そうか水本さんは若いんですね。
タイトルは花束の夜だから、誰かの送別会かお祝いなのか。
でもこの水本さんは祝われているわけではなさそうってことは、祝われている側の人が恋愛の相手なのかなっていうふうに、
もうこの5行6行ぐらいで徹底にグッと入り込めていて、先輩から呼びつけられている感じからすると、
水本さんは職場の花って感じでちやほやされているタイプじゃなさそうだ。
ちょっとつまんなそうに仕事をしているタイプなのかなとか、
もういろんな妄想が想像が設定に対して細かく膨らんでいきますね。
もうそこからは高瀬さん独特の毒気が脳のスポンジにグングン入っていく感じで、
読書の感覚を取り戻したというか、読書ipsを抜け出したという、そういう意味で思い入れの深い一冊なんです。
もし似たような状態の方がいらしたら、ぜひ読んでみてください。
新年最初の貸し出しカードは高瀬純子さんの新しい恋愛でした。
ハサイの魅力
さて続いて第4位です。第4位は久平茂さん、著幼いその子さん役のハサイです。
65歳の女殺し屋著学が活躍する韓国のワールド小説ハカの外伝なんですね。
ハカは破れる果実と書いてハカで、ハサイは破れる砕けると書いてハサイですね。
ハカは読んでくださった方もいらっしゃるでしょうか。このマヨドックリスナーの方の中には、私むちゃくちゃハマっていろんなところで紹介して、
そして映画化を絶望していたわけなんですけれども、著学役はいヘヨンさん、通訳はキムソンチョルさんのキャスティングで撮影が進んでいるとか、どうだろう日本で公開されるかなぁ待ち遠しいですね。
そんなあの今日4位に選ばせていただいたハサイはハカのエピソード0みたいな感じです。
若い時の著学が師匠の下で殺し屋の最終訓練に挑む様を描いた小編かな短編に近いような100ページちょっとなんですけど、
すごく短い小説ですね。登場人物は2人しか出てこなくて、訓練っていうワンシチュエーションだけなんですね。
もう少しでも気を抜くと殺される、師匠に殺されるかねない緊張感がずっと続いていて、読み終わった後、ふーってなった。
息を止めていたなっていうか息を吸うの忘れて読んでいたってなりました。
この師匠の男性については詳しく書かれてはいないんですけど、とても魅力的なんですよね。
2人は恋愛関係ではないんだけど何というかとても感動的と言いますか、緊張感と暴力性の中に感動的なエロティックさがあるんですよね。
ヤクザ映画とかにも通じるのかな。この師匠がめちゃくちゃ厳しいんですけど、諸学に対して乱暴されるんですけど、暴力的なんですけど、言葉遣いは丁寧なんですよね。
何でかっていうと無駄にキレるのは良くないっていう、無駄に感情的になるべきじゃないという精神のもと。
無駄に殺さない傷つけないみたいな彼のポリシー美学なんでしょうか。かっこいいんですよ。これも映像化するなら誰かな。
チョ・インソンさんとかかな。チョ・インソンさんはムービングの人ですね。
それはともかくビョンモさんの無駄のない描写がすごくてですね、スピード感を持って訓練の様子を体感できるのですが、それを日本語で出していただいて本当にありがとうございますという気持ちです。
ハカを読んでなくてもこれはこれで一つの作品としてとても完成度が高いですし、あっという間に読めると思いますので、韓国ノワール好きの方、ノワール韓国ドラマ好きの方はぜひ読んでみてください。
ナチュラルボーンチキンの紹介
さて第3位に参りましょう。第3位はですね、学生時代の同級生に卒業以来久しぶりに会ったら自分の思ってたイメージと全然違っていて変わっていて、
今の彼女はすごくいいなって思って、なんであの頃仲良くしてなかったんだろうみたいな気持ちになった気持ちで読んだ、金原ひとみさんのナチュラルボーンチキンです。
同級生に久しぶりに会った時の気分といったのはあくまで比喩なんですけど、金原さんは私よりは3つ4つ年下かな。
渡谷梨沙さんと金原ひとみさんが芥川賞、最年少ダブル受賞といって大変な話題になりましたよね。
それが2004年のことで、だからあれから20年なんですよね。私が講談社で働き出したのと大体同じぐらいなので勝手にこう同世代的な同じ時期に社会デビューしたみたいな気持ちがあって、
私はその時はどちらかというと渡谷さんの方に向かった、例えば同じクラスだったとしたら金原さんは違うグループだろうなぁみたいな感覚だったんですけど、全然どちらとも知り合いではありませんが、
この度ナチュラルボーンチキンで久しぶりに金原ひとみさんの作品を読んで、わー好きってなったんですよね。
ナチュラルボーンチキンはどんなお話かと言いますと、主人公は浜野綾乃さん、45歳、独身女性で出版社の総務に勤めていて、
ルーティンを愛する、パックご飯と野菜炒め、野菜と肉を何かしら焼肉とタレみたいなもので味付けして炒めたものばかり毎日食べていて、
配信の動画、オンデマンドの配信動画を見るのと仕事っていうその繰り返し、めっちゃわかるってなって、
ここまで何もない毎日を食っていると、ちょっとした体調不良、深刻ではない不調が軽いエンターテイメントになるって書いてあって笑いました。
そんな浜野さんの毎日にですね、文芸編集部で若い女の子、年齢とか4年目とかの女の子がスケボー通勤をしているような平木さんというパリピ的女子が入り込んでくるんですね。
最初は総務の人間として注意をしなくちゃいけない立場で対峙をするわけなんですが、平木さんのぐったくのなさに、
浜野さんの凝り固まっていた価値観みたいなのが少しずつ溶かされていくというお話です。
金原ひとみの見解
このむちゃくちゃ陽気な人がやってきて、腹も立ったりもするけれども、世の中の腹立つことをぶち壊してくれて気持ちいいみたいな感じがとても気持ちいい本でして、
年を重ねた金原さんの温かみを感じました。ただの破天荒キャラではなくて。
浜野さんもですね、ただの型物ではなくて、もともとチキンだったわけでもなく、いつの間にかそうなっちゃった。
自分はここまでここからははみ出さないみたいな境界線を平木さんと、それからそのおかげで出会うミュージシャンによって壊されていくんですね。
綿屋梨沙さんのパッキパッキ北京も最近読んで、とても面白くって、はじけぶりがどんどんブラックな方向に行っているのも好ましい。
金原さんとはまたちょっと違う方向に進んでいますけれども。
若い時にわーって、多分不本意な形もありつつ持ち上げられたお二人には、それぞれにいろんな経験があったのだろうなと想像しますし、
40歳を過ぎてまた若い時とは違う形で、とても今はじけている、とんがっているというのがすごくいいなぁと励まされます。
これから先も楽しみです。
さてさて、一気に喋ってしまいましたが、2位と1位は後編に送りたいと思います。
どちらも今までこの真夜読では紹介していない作品なので、ちょっとたっぷり語りたいなと思うので、次回にお送りしまして、
今日は一旦ここまでとして、金原ひとみさんのナチュラルボーンチキンから神フレーズをご紹介します。
開き直りは彼女の意に反することを言うと、それ古くないですか、それって昭和的観点ですか、平成すら体感で言うと30年前に終わったんですよと、
世代括りをしてくる、全部世代とか年代とかで括っちゃうの雑すぎないと思うけれど、
私たち昭和世代が信じてきたものとか大切にしてきたものを雑に打ち壊してくれることにちょっとした快感もある、
とあります。浜野さんがなぜ堅くなで頑固になってしまったのか、ディフェンシブになってしまったのか、
大きな要因っていうのがあって、それはだいぶ後半の方で書かれているんですね。
浜野さんはずっと独身だったわけじゃなくて、結婚してきたことがあって、ちょっとそこは言わないでおこうと思いますけれども、
多分金原さんはここが書きたくて、この小説を書いたのかなって思いました。
さっき言ったちょっとした深刻じゃない体調不良が軽いエンターテインメントになるっていう笑い話が、
またこの後半にちょっと別の意味を持って聞いてくるという感じがしました。
この雑に壊してくれることに快感があるっていうところには続きがあって、
自分が老害になっていってたら注意してくれって浜野さんは平木さんに頼むんですけれども、
平木さんは浜野さんは自分が正しいって思い込んでないから大丈夫ですよって言ってくれるんですね。
私は思いがけずここでちょっと泣いてしまいましたね。
浜野さんのような大きなきっかけ、出来事がなくても40を過ぎればいつの間にかはいろんなものが蓄積していて、
浜野さんの言い方を借りれば史跡みたいに凝り固まっていくと、自分の力では打開できないくらい溜まっていて、
それで死んだりは死ぬわけじゃないけれども、少しずつ心が死んでいくと言いますか、
そういう感じになっていた時に、そんな風に誰かや何かに雑にぶち壊してほしいなっていう気持ちはみんなあるんじゃないかなと思いました。
それが人との出会いのこともあるし、読書のこともあるかもしれないですし、
他人のフィクションが頭に入っていかないなと思うような時期もありますよね。
もしこれを聞いてくださっている方が、今違うことに頭をとても占領されていることがあって、
なかなか新しい物語を読む気力が湧かないという時は、それはそれでそういう時期もあると思いますし、
これを聞いて読んだ気になってもらったらいいなと思いますし、またいつか読もうと思ってもらったら嬉しいです。
聞かなければ出会わなかった物語に出会うきっかけに、今年もなれたら嬉しいなと思っています。
今年もちょっと無理をしないで義務にならないペースで配信できたらと思っていますので、皆さんも好きなペースで聞いてください。
本年もどうぞよろしくお願いします。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は、皆さんからのお便りをもとにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのアカウントバタヨムからお受けしております。
お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
16:30

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