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2025-03-26 14:44

EP202. 回復とは戻ることじゃなく、変わることで新しい安定を得ること【シーズン3突入!】

「真夜中の読書会〜season3」スタート! これを読むために休んだのかもしれないと思った本、岩川ありささんの『養生する言葉』をご紹介します。お休み中に訪れた能登島のお話も少し。

<勝手に貸出カード>

岩川ありささん『養生する言葉

上岡陽江さん・ 大嶋栄子さん『その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち


サマリー

このエピソードでは、岩川有沙さんの著書『養生する言葉』を通じて、回復と養生の意味が探求されています。特に、個人的な治療だけでなく、社会的なインフラとのつながりが重要であることが強調され、変化が新しい安定につながるというメッセージが伝えられています。回復は単に元の状態に戻ることではなく、変化を受け入れることで新しい安定を得るプロセスであることが論じられています。また、岩川さんの経験や、立ち直りの過程における美しさについても触れられています。

番組のリニューアル
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、第202話を迎えました。
今日からオープニングのミュージックと番組のアイコンを少しリニューアルしてみました。いかがでしょうか。
そう、2022年に見守編集部からチェンジ部に移動になって、一回番組を終了しまして、
その後、リターンズとして復活したのがシーズン2とするならば、今回が3度目のリニューアルなので、シーズン3のスタートですね。改めてよろしくお願いします。
さて、今日もお便りのご紹介から始めます。ペンネームミッチさんからいただきました。
こんばんは、こんばんは。この番組きっかけで本を読むようになったミッチと申します。
私はノト半島地震で被災し、今は石川県を離れて生活をしています。
今までの生活がなくなり、ぽっかりと穴が開いたようなやりたいことが見つけられず、今はアルバイトをしています。
来年にはやりたいことを見つけて転職したいと思っています。
そんな私の背中を押してくれるような本があれば教えていただきたいです。
マタヤンさんはずっと本に携わってお仕事をしていますが、人生の先輩として憧れの女性の一人です。これからも応援していますといただきました。
養生する言葉の紹介
ありがとうございます。
こちらのお便り、昨年いただいていたので、もしかするともう新しいお仕事をスタートされているかもしれないですね。
今日このお便りを読ませていただいたのは、先日私はちょうどノトを訪れてたんですよ。
ふるさと納税で復興支援を選ぶと、そのノトの町のお宿に割引で泊まれるっていうプランを選んでまして、週末に有給をくっつけてノト島に旅行に行ってました。
今日勝手に貸し出しカードとしてご紹介するのは、そのノト島に持っていた本です。
岩川有沙さんの養生する言葉という本にしました。
こちらはですね、公団社の弊社の群蔵で連載されていて、2月に単行本として出たばかりなんですけど、
私は発売より少し前にプルーフと言って、発売前の構成図をですね、書店さんとかブックレビューの担当者の方とかに読んでもらうために作る見本誌があるんですけど、見本の冊子みたいなのがあるんですけど、
それで先に読ませてもらっていたんですね。すごい気に入って、すごいその時の気持ちに刺さっちゃって、これはプルーフ見本釣りの状態じゃなくて、ちゃんと単行本で手元に置いておきたいなと思って、
新刊で単行本が出てから買い直したんですね。
こちら、想定もパープルがかったブルーと黄色い色合いの色合わせの組み合わせも素敵で、ソフトな手触りもとても好みな想定なんです。
どんな本かと言いますと、自分自身を優しくいたわるヒントが詰まったエッセイというふうに帯にはあります。
長者の岩川有沙さんは文学研究家でクイア批評やトラウマ研究をされている方で、岩川さんご自身がこの群蔵の連載を通じていろんな本や漫画から養生する言葉を見つけて引用して紹介してくれている本です。
取り上げられている本は幅が広くてですね、先日ノーベル文学賞を受賞されたマヨ読でもご紹介したハンガンさん、再職主義者や少年が来るから、
キッコさんのお仕事小説や宮地直子さんの傷を愛せるかなどですね、このマヨ読の中でも紹介した本が結構たくさん出てきてまして、好みがすごくあってて、うちの本だのを見たんですかって勝手に思っちゃった。
あと漫画もですね、ブルーロックや君と宇宙を歩くためになども紹介されて、君と宇宙を歩くためにもすごく好きな漫画なんで、漫画あまり紹介できなかったんですけど、これはどこかでご紹介したいなぁと思ったりしました。
なんて感じで、読みながら読みたい本と好きだった物語の一節を思い出してしまって、いもずる的に思いが脱線していってしまう本でしたけれども、なぜこの本を今日ミッチーさんにご紹介しようと思ったかという話に戻しましょう。
まずタイトルの養生する言葉っていうのがいいですよね。養生するって使いますか。養生って私は知っているけど自分ではあまり使わない言葉の一つかもしれないですね。
祖母が、おばあちゃんが養生しやとか養生やでって言ってたかな。そういう意味で少し上の世代の人が使う懐かしい言葉っていう感じがします。
お大事になさってくださいっていう意味で養生してくださいねとか、養生どうぞ養生なさってくださいとかって使うのかな。
自分ではあんまり使ったことがないですけど、年上の人に言いづらいかな。
おばあちゃんが私とか下の人に向かって言う言葉なんですかね。
でもお大事によりなんとなく質度が高い、しめり気がある感じがしますよね。養生なさってっていうのって。
著者の岩川さんはトランスジェンダーで性被害の体験がありまして、そこからの回復という意味で養生する言葉を見つけていくお話でもあるんですね。
なのでちょっと先にお伝えすると、そういったテーマや描写がもしご自身の体験、経験とか心の触れてほしくない柔らかいところにひも付いて辛くなってしまう可能性がある方は、
少し気をつけて読まれてくださいとお伝えしておきます。
この本の始めには私はいつも死にたかった。だから生きるために必要な言葉を探してきたとあります。
でも決して暗く重たいエッセイという印象ではなかったですね。むしろ生きるエネルギーの力強さを感じました。
救われた言葉って言いますよね。この言葉に救われましたとかって言うけど、救われた言葉より養生する言葉の方が能動的な感じがするからですかね。
救われるってちょっと他力本願っぽいけど、養生するって自力で回復していくエネルギーが能動性がありますよね。
いや回復ってそういう自力でも他者の力を借りても含めてすごく時間がかかることですよね。
この本の中で私が一番印象に残ったのは養生はいつも社会的なものという言葉です。
この本の中で私が一番印象に残ったのは養生はいつも社会的なものという言葉です。
それは養生という言葉はその生が将来に渡って続くっていうことを前提としているからであると、
養生って言うとどちらかというと個人的な治療とかケアとか自己管理みたいなイメージを持ってしまうけど、
そうじゃないんだとある生が続いていくという意味ではないんです。
その通りだなと思ったところを少し読んでもいいでしょうか。
持ってしまうけどそうじゃないんだとある生が続いていくためには社会的なインフラや 制度ネットワークが不可欠であるというふうに書かれていてその通りだなぁと思い
ましたその通りだなと思ったところを少し読んでもいいでしょうか 日の光を浴びるご飯を食べる歯磨きをするその日の天候に合った服を着る
体を動かす誰かと話す好きなものと接するお茶を楽しむ 季節の移り変わりを知る安心してゆっくりと眠る
回復と変化の重要性
これら養生の基礎的な部分は外に出られる平和があること 食料や物資が不足していないこと他者と言葉を交わす自由があること
よかや余裕を持てること医療や福祉が整っていることなどが前提になる すると養生とは必ずこの世界とつながっている
いることがわかる私が養生するにはこの世界を養生していかなければならない とあります
そうなんですよね だからミッチーさんが今までと同じ生活ができなくなって住まいを移って心がぽっかりして
しまうやりたいことが見つからない状態になるのもそりゃそうですよと思ったんです もう一つ発動した箇所をご紹介します
上岡春江さんと大島英子さんの教著のその後の不自由 嵐の後を生きる人たちという本が紹介されています
そこにね回復とは回復し続けることという言葉と変化することが一番安定している という言葉が出てきてましてとても印象に残ったっていうふうに
岩川さんが紹介されているんですね 回復とか養生っていうのはビフォーアフターみたいにパって変わるものじゃなくて
被害と回復後みたいにくっきり変わるものじゃなくて回復し続けていくもんであるって いうことなんだなぁって思ったんですよね
変わっていくことで安定した状態になる もっと言うと変わらないでいようとするほど不安定になるってことなのかなぁと思ったりしました
私はミッチーさんのご体験がスマイルを映らないといけないほどの人生の理不尽な体験が どれほど大変なことだったか
想像しきれないので偉そうなことは言えないですが 不自由のその後回復のその後について言及された本は少ないんじゃないかなと思ったので今日はこの本をご紹介しました
最後に紙フレーズを読んで終わりたいと思います 今日はもう髪を切ったんだしお菓子を買ってお家でゆっくりすればいいですよと話してくれる
とあります これはですね岩川さんが美容室に行った時の美容師さんの言葉なんですね
美容室に行くってちょっと気が張ることじゃないですか お洒落していかないといけないんじゃないかとかこれからまぁ切るんだけど髪はちゃんと整えていかないと悪いかなとか思いますよね
この岩川さんが通ってらっしゃる美容師さんはハードルを下げるのが天才的にうまいというふうに書かれていて
ボサボサでいいですよって言ってくれるから気に入っているとありました いいですね私もそうなんですよね
しかし考えてみると髪を切ってもらうっていうこと自体は私の中では養生の一つ 髪がショートカットで短いので結構しょっちゅう切り整えないといけないんですけど
自分メンテナンスの中でも上位の養生効果が高いケアな気がしますね 髪を切るっていうのは
でも美容師さんとの会話はやっぱりちょっとしたプレッシャーがありますね 何を着ていこうかなっていうのを含めてちょっと今日は若造りだったかなとか
メイクがいまいちうまくいってないなと美容室の大きな鏡で目の当たりにすると この後どこか行かれるんですかとか
シャンプーしてくれるアシスタントの方とかに聞かれるのが一番プレッシャーですね この後ちょっと買い物にとか嘘ついちゃったりするといいですね
春ですもんねお目当てとかあるんですかとか好きなブランドとかあるんですかとか聞かれるともううううってなっちゃう
いやせっかく綺麗にしていただいたのにただ一人まっすぐお家に帰ってすみませんっていう気持ちになっちゃいますけどね
だから今日はもう髪を切ったんだしお家でゆっくりすればいいって言われたらもう泣いちゃうかもしれない ありがたくて
いや髪を切るっていうのは結構なイベントですからねそれだけでももうよく頑張ったって感じですよね
みちさんもしばらくゆっくりしてたっていいと思いますし新しいお仕事されてたとしても ゆっくりされたらいいと思いました
それでこの本を持って行った野戸島の話を少しだけしたいんですけど すごく素敵なところでした
海が穏やかですねって宿の方に言ったら 地震で海底が隆起してしまって持ち上がってしまったみたいで
このあたりは多分以前より海が浅くなったんですと そのせいで透明度が増してエメラルドグリーンと言いますか
綺麗だなって感じる日が増えましたってその人はおっしゃったんですよ そんな変化もあるんですねって
あの地震から町はまだ立ち直ってないから 瓦がまだ直せてなくてブルーシートがかかっているとこもたくさんありましたし
だからまあこんな言い方をしたらあれですけどもって前置きをその方はされて 悪いことだけじゃなかったんですよっておっしゃってました
そう思おうと思っているって感じで
岩川有佐の養生
今日ご紹介したのは岩川有佐さんの養生する言葉でした
みちさんまたリクエストを送っていただけたら嬉しいです
さてそろそろお時間になってしまいました
真夜中の読書会おしゃべりな図書室ではリスナーの方からのお便りをもとに おすすめの本やマンガ紙フレーズをご紹介しています
リクエストはインスタグラムアカウントバタヨムからお寄せください お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした
また水曜日の夜にお会いしましょう おやすみなさい
おやすみ
14:44

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