新たな挑戦の始まり
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
第210夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。ペンネーム本の森ゆめ子さんからいただきました。
バタやんさん、はじめまして。こんにちは。
私は30を機に地元を出て東京の会社へ転職し、初めての一人暮らしを始めました。
4月から新しい会社で新しい生活が始まったのですが、やりたかったのはこういうことだったんだっけ?とすでに後悔し始めています。
30までに、と何か借り立てるように焦って決めてしまったからかもしれません。
もちろん、東京の生活のワクワク感や地元のコミュニティから離れた開放感はあるのですが、いまいち自分が今の環境に馴染んでいない気がしてビクビクして過ごしています。
昔から自分の決断に自信が持てず後悔してばかりいる気がします。
これからの生活に前向きになれるような自信が持てるような本があれば教えてください。といただきました。
いつも配信楽しみにしています。歩くスピードも喋るスピードも速い東京でバタやんさんの配信は癒やしです。と書いてくださっていました。
ありがとうございます。そうですか、4月から大転機ですね。大きな決断をされましたね。
さて、そんな本の森ゆめ子さんに、今日の勝手に貸し出しカードは三浦靖子さんのようやくカナダに来ましてにしました。
こちらはご存知、三浦靖子さんがカナダのバンクーバーに留学をして、
子学学校に通い、50にして初の海外生活をするという最初の1年を綴ったエッセイになっています。
三浦さんが留学されたその1年目というのがですね、2021年の7月からということで、
ちょうどコロナの厳しい厳しい制約の真っ只中なんですね。
まずマンクーバーに着いたらホテル隔離があって、ホテルにしばらく隔離されてなきゃいけなくって、
そこのご飯もおいしくないとか書いてあるんですけど、様々なチェックを受けて解放されるわけですよ。
でもホームステー先に移ってもまずは隔離をされていて、解除の手続きをしようにも英語ができない、聞き取れない、
パソコンにも疎いと書いていらして、そんな中で四苦八苦するんですけど、
ホームステー先の家族の力などを借りて、何とか隔離から解放されるまでの様子が最初の方に綴られてまして、
笑えるんですけれども、自分のことのようにドキドキしました。
大変だったでしょうね、その時期に留学されるってね。
英語ができない、聞き取れないって何度も書かれているんですが、それなりに準備をされて問いだったでしょうし、
語学学校も向こうの語学学校も中級クラスから入っているので、多分三浦さんそんなにできなくないんだと思うんですね。
勉強で聞き取れたり会話ができるのと、いざ生の会話になると何言ってるか分からなかったり、
オンラインとか電話で手続き的なことを話をしなきゃいけないってなると、やっぱり焦ってより聞き取れないっていうのはよく分かりますね。
私、去年、ボストン出張で行った時に、なぜか入国審査で引っかかってしまって小部屋みたいなところに連れて行かれたんですよ。
えーなんで?ってなって、何言ってるか全然分からなくて、
そして、もちろんややましいことはないんですけど、テンパるから何を聞かれているのか余計分からないんですよね。
出張で行っている、一緒に行っているメンバーを待たせてしまっているから余計に焦っちゃって、
調べてくるからここで待ってろって言われて、何を調べるのかどうしていいか分からなかったんですけど、
結局その人は戻ってきて何もなかったって言われて解放されたんですけど。
その時に聴覚とリラックスって連動してるなって思ったんですよね。
ドキドキしてると本当に聞き取れない。
それで三津浦さんの話に戻りますと、
クラスメイトたちに他の国からの留学生たちと一緒の語学学校に行っているんですけど、
比べるととびきり年が上ですしダントツ。
日本人に会うと有名人だしっていうのが逆に足枷となって、
最初は鎧みたいなものを着ていた感じの三津浦さんも、
遠慮なく距離を詰めてくるクラスメイトとか、
10代のクラスメイトに無視されたりとか、
いろんな経験を通じて悔しい思いをされたり涙したりする中で、
だんだんアグレッシブになっていくんですね。
ハイキング、海に出かけたり、誕生日パーティーに参加してみたり、
いろんなクラブ活動にも参加していて、
でもそれがすごい楽しいかっていうとそんなことはなくて、
そこがリアルで面白いなって思ったんですけど、
会話が続かないし、これなんだろう、この空気なんだろうって戸惑うこともいっぱいで、
他の留学生たちもなんていうか、気持ちが乗り切れてない人もいたりして、
自己成長のプロセス
三津浦さんはそういう複雑な感情を言葉にするのが上手いなとこの本を読んで思いました。
でも読んでいくと三津浦さんはだんだんオープンになっていくのを追体験できるっていうところもまたいいんですよ。
この本の始まりはバンクーバーに旅立つ日のことから始まるんですね。
成田空港に芸人の後輩とかが見送りに来てくれるんで、
なんかそんなに仲良かったわけじゃない、そんなに思い出がたくさんあるわけじゃないから話が続かないとか、
なんで来たみたいになったっていう風に書いてあるんですけど、
それも面白いんですが、つまりそれは字逆ですよね。
すごいシニカルなところが三津浦さんの面白さだと思うんですけど、
この留学日記を通じてだんだんそうじゃない感じになっていくのが面白いなと思いました。
こんな風に書いてあります。ちょっと一箇所読みますね。
ここでは人の良いところを見つけられ、そこを認められる人間が高く評価されています。
字逆データはきちんとした前振りがあり、どう見てもギャグですよとわかれば笑いますが、
ポツリとつぶやくような小さな字逆ネタは惹かれます。
私が友人らからの反応で思ったのは、安子はこんな小さなことを気にするのか、
じゃあ人に対してもそういう小さなことを許せない人間なんだなと思われているのかなって感じです。
幸運にも私の周りには大らかな人が多く、何度も驚かされますという風にあります。
そうか、字逆というのは自分を貶める、貶めて笑いを取る効果があると私も思っていたけれど、
自分にそんなに厳しいということは、人に対してもシニカルな評価をする人なんだろうなと警戒されちゃうというのは新しい視点でしたね。
確かにね、そうかもしれないですね。人の評価が厳しそうだなって見えちゃうのかもしれないですね。
私なんかって先に言うっていうのは一種の自己防衛だと思うんですよね。
本当はプライドがとても高いから先に自分で下げる、誰かに突っ込まれたくないから、そんなことないよって言われる方が楽だからっていうのがあるのかなと。
三浦さんがそういう人だという風には思いませんけれども、この本を読む限りですが、
だんだん自分ができない、自分が一番できないみたいな環境にいることに対して開放的になっているっていうんですかね。
自己防衛しなくてもできないから、基準できないから、ちょっとできるとすごい達成感があるみたいな感じなんですよ。
加点方式になっていっているんですね。
それがすごいいいなって思いました。人って何歳になってもそういう風に加点方式になれるんだっていう感じで。
新しい挑戦の不安
さて今日はそんなようやくカナダに行きましてから紙フレーズをご紹介したいと思います。
生き馬の目を抜く芸能界に絶対そぐわない性格の後輩達よ。ごめんね。
先輩は簡単に言えば一旦逃げます。
でも逃げると新しい挑戦の線引きは曖昧よ。
逃げた先に新しい道があるかもしれないし、そしたら真似してくれていいし、新しい道を見つけられずに戻ってきた頃には浦島太郎で仕事なんて全くなくなっているかもしれないし、
そしたら真似しちゃだめだし、とりあえず先輩は実験台になってきますね。
とあります。
これはさっき紹介した冒頭の箇所で、芸人の後輩達よ。
何も話すことがないとか書いてるけど、結局嬉しいわけでしょ。
見送りに来てくれた心優しい後輩の未来も心配していて、自分は先に逃げるんだということを言っているんですけれども、
そうか、逃げるということと新しい挑戦は、線引きは曖昧であると、紙一重というか、同義なのかもしれないと思いました。
逃げ出さないと新しい道にはたどり着けないですしね。
ゆめ子さんが逃げたかったのかどうかは分かりませんが、行った先が来た、東京が成功だったかどうかは別として、
とりあえず飛び出たということだけでかなりのグッジョブじゃないですか。
達成感ですよね。
30歳だったらまたダメだったらもう1回でももう2回でも方向転換する時間も機会もあると思いますし、
年のことを言うたりだけど、三浦さんの本を読んだら何歳からでも遅くないなって思うと同時に、
始めるなら、逃げ出すなら1歳でも早い方がいいと思いました。
三浦さんが留学を決めたきっかけとして、カナダに行きたかったというのは前々からあったみたいなんですけれども、
今のお仕事が人を楽しませたい、喜ばせたいと思ってやっていた芸人なのに、
SNSでひどい誹謗中傷のコメントを見る機会も多くて、
何のためにこの仕事をしているんだろうって分からなくなっちゃったっていうことをね、
この本のインタビューでもこの本の中でも書かれていて、そうかなるほどと思って、
多分おそらくですよ、50で急に辛くなったんじゃなくて、もう少し前からそういうことは目にして、
何のためにこれやってるんだろうみたいな感じはあったんでしょうけれども、
いろんなタイミングが重なって、今なら仕事も全部ストップして我がまま行って飛び出せるっていうタイミングだったんでしょうね。
金銭的な問題とかもあるかもしれないですけど、そしてコロナと重なっちゃったけど、
中止しないでえいって言っちゃってよかったんだろうなって思いました。
これでコロナ禍、日本に残って撮影みたら仕事も激減して、SNSをずっと見てるみたいな状態になっていたら、
それこそ悪役だったでしょうし、投稿するタイミングをしているうちにまたどんどん年を重ねていってしまったかもしれないなと思ったりして。
私6月15日生まれなんですよ。だから今週誕生日を迎えまして、また一つ年を重ねるんですけれども、
ありがとうございます。今心の中でおめでとうを言ってくださった方にありがとうございます。
何歳だからどうっていう焦りはないんですけど、あんまり正直言って、
自分の誕生日が来るといつも今年も半分終わっちゃったなっていうのを思うんですよね。
あんまり何もやってないので今年も半分終わってしまったっていつも思うんですけど、
この本を読んで年を重ねるとか、その年を迎えるごとにいろんなものを身につけていこう。
今年も何かを成し遂げなくちゃっていうんじゃなくて、いろんなものを手放して手渡して身軽になっていこうというのがいいなって思ったんですよね。
そしたらいつでも逃げ出せるじゃないですか。
本野森梅子さんの東京生活が楽しいものになっていきますようにと祈っていますね。
リクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
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お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみー。