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2025-08-13 15:11

EP218.川上未映子さんが思い出させる「女たちの記憶」にゾクゾクする

「闇を感じるゾクゾクする小説」とのリクエストにおこたえして、川上未映子さんの『ウィステリアと三人の女たち』をご紹介します。故郷の中学の同窓会へ参加する女の話「彼女と彼女の記憶について」から不穏な空気むんむん……!?   真夏の一夜にゾクっとしましょう。


<今夜の勝手に貸出カード>

・川上未映子さん『ウィステリアと三人の女たち』(新潮文庫)

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サマリー

川上美恵子さんの短編集『ウィステリアと三人の女たち』が紹介され、その中の最初の短編「彼女と彼女の記憶」が特に印象的です。主人公は同窓会に出席することで過去の記憶と向き合い、ゾクゾクする感覚が広がります。また、川上未映子の作品「ビステリアと3人の女たち」では、不妊治療を考える女性が主人公で、彼女の物語は老女の過去に繋がる感動的な構成が描かれています。物語全体は4つの短編から成り、各作品は緩やかに繋がりながらも独自の視点を提供しています。

ゾクゾクする小説のリクエスト
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
第218夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。ペンネームボンディボンディさんからいただきました。
バタやんさん、こんにちは。 こんにちは。
こちらの番組をきっかけに、今まで読んだことのなかった作家さんや小説を手に取るきっかけとなり、読者の幅がぐんと広がりました。
夏原英二さんの「かわいそうって言ってあげよっか?」や、岡部哲さんの「こわい友達」など、身近な人の悪意や闇を描いた作品の面白さにはまり、そんな自分の一面にもびっくりしています。
さて今日は、そんな闇を感じるようなゾクゾクする小説で、おすすめの本があればと思ってリクエストを送ってみました。
先日、こちらの収録のためにクーラーを切っていると聞いて驚きました。
暑い日が続きますが、バタやんさんもどうぞ体に気をつけてください。長く続けてくださることを願っています。
といただきました。ありがとうございます。
そうそう、今日はわりと涼しいので、一応、室モードを入れながら撮っていますが、後でノイズ除去もやってみようと思っているんです。どうでしょうか。
これで問題なければ、次回からはちょっと、うっすらクーラーをかけながら収録できたらなと思っています。
さてリクエストありがとうございます。ゾクゾクする小説、いいですね。いいお題でいただいてすぐに選んじゃいました。
川上美恵子の短編集
ゾクゾクするという言葉が好きなんですよ。その好きになったきっかけの話からしてもいいでしょうか。
私、以前にフラウの編集部にいまして、紙の雑誌とウェブ担当と合わせると4年弱ぐらい携わってたのかな。
フラウっていうのはワンテーママガジンなんですけれども、ワンテーママガジンってわかりますか?
一号ごとにテーマが違っていて、丸ごと一冊なんとか特集みたいになっている雑誌のことですね。
ブルータスとかもそうかな。そのいろんなテーマを毎月変わる変わるやるんですけど、中でも私はフラウの映画号がすごく好きで、
携わった中でも印象に残っています。
私、実はカルチャー班ではなくて美容班だったので、編集者の時ずっと。
メインは美容号、ビューティー号のコスメ特集なんかを担当してたんですけどね。
ご存知の通り、映画もドラマも小説も漫画も音楽も好きなので、
カルチャーの号の時はプランをたくさん出して、一特班って言うんですけど、第一特集の班に入ることを一特班に入れてもらっていました。
映画号、旅号、占い号、美容号とかってジャンルは年間で決まっていて、当時はですね。
旅号の中でも今年は台湾特集にしようとか、韓国特集にしようとか、タイ特集にしようとかっていう風にテーマは毎年違うわけです。
そのある年の映画号のテーマ切り口がゾクゾクする映画だったんですよ。
そのタイトルテーマを聞いた時は、ゾクゾクするって随分と狭い切り口だなって思ってたんですけど、
色々取材をしたり考えたりして企画を考えたりしているうちに、意外とゾクゾクするっていうのは広く捉えられる言葉なんだなぁと思いまして、
それがそのゾクゾクするという言葉にはまったきっかけなんですけれども、
パッと思いつくのはホラーとかサイコスリラーみたいな怖いゾクゾク、背中がゾクゾクするの、ゾクゾクですかね。
いい男、いい女が出てくる映画もゾクゾクするし、
お決まりのパターンがある、カタルシスがあるタイプのシリーズものなんかもゾクゾクすると言えるなぁというふうに思いまして、
確か私その後でアメコミ映画を担当したんですよ。
アメコミ映画って、マーベルとかDCとかのコミックを原作とした、
例えばスーパーマン、バットマン、アベンジャーズとかね、ああいうシリーズも、
お決まりがあってカタルシスがあるタイプですよね。
ヒーローものって、すごいピンチがやってくるんだけど大逆転のシーンがあるとか、
敵と思った側にも、実は悲しい過去があったり背景があったりするなんていうのが、
ゾクゾクするパターンの一つかもしれません。
007、W07とかミッションインポッシブも、そういう意味のゾクゾクする映画と言えるでしょうね。
あとは韓国ドラマで言うと、未成年裁判、お好きですか?
未成年裁判のケムヘッサンとか、ゾクゾクする大人の女って感じがしますね。
私は強い正義感でやっているのか、シーンが通っているのか、
それとも何か過去に深い闇があって裏がある主人公なのか、
そういう強いけど本音の見えない主人公みたいなものもゾクゾクする一つかもしれません。
ということで前置きがすごい長くなってしまったんですけど、
ゾクゾクするっていうのは、私の中で非常に魅力的な作品を表す言葉でして、
あと魅力的なキャラクター、登場人物の総称って感じがするんですね。
とっても褒め言葉です。
なので今日いいお題をいただいてありがとうございます。
さて今日のそんなボンディボンディさんに選んだ勝手に貸し出しカードは、
川上美恵子さんのウィステリアと三人の女たちという本にしました。
こちらは4つの独立した短編小説が収録されています。短編集になっています。
2018年に単行本で刊行されて、今年かな、つい最近文庫になったばかりです。
私は最近文庫で読んだんですけど、読み始めてあれこれ読んだかもなって思って、よくあるんですけど。
単行本は今もう家になくて手放してしまっていたので、買って悔いはないです。
そして単行本バージョンの表紙もね、洋書みたいですごい素敵だったんですけど、
文庫は文庫で全然違う表紙になっていて、だからちょっと気づかなかったんですけど、
そちらもですね、文庫の表紙も内容とマッチしていて、読み終わると、ああ、グッとくる表紙です。
同窓会での再会
さてこちらどんな続々かと言いますと、4つのうちの最初の一編がまず超続々なんですよ。
彼女と彼女の記憶についてというタイトルです。
主人公の私が中学の時の同窓会に行くっていう話なんですね。
まあもう怖い怖い怖い感じしてきます。川上美恵子さんが、久しぶりに会う同級生を描く。
女友達と久しぶりに会うのを描くって言ったら、もう不穏な気配しかないですもんね。
主人公の私は今東京で女優をしていて、田舎の地元に久しぶりに帰るんですね。
田舎の同級生たちなんかちっとも覚えてなくて、バカにする気満々で行くんです。
いやーこれはね絶対中学の時なんかやってましたよね。
誰かに絶対嫌な思いをさせてたでしょうって感じがしますよね。
さて何をやらかしていたんでしょうか。
その一方、主人公の私は女優だし東京で働いてるしって感じで、
めっちゃブランドものを着ていくわけですよ。
賞賛されることを期待していくんだけど、そうはトンヤが下ろさない。
そうは美恵子が下ろさないわけよ。
女優と言ってもめちゃくちゃ売れている、主役級でテレビドラマに出ているみたいなクラスではないので、
それで食べていけんのみたいなことをね、ずけずけ聞いてくる女子もいたりなんかして、
なんかちょっとこう思っていた扱いと違うなーって感じになっていくんですけど、
ある同級生の話題になって、あの子覚えてるってなってからの怖い話はちょっと言わずに撮っておきましょう。
2作品目、シャンデリアも怖いです。
これもすごい好きな作品ですね。
これは続々というか、ひゅーんって最後終わります。
ビステリアと主人公の内面
どういう話かというと、思いがけず大金を手にした女性が連日百貨店で買い物をしているっていう話なんですよね。
一体何に向かって美恵を張って、何に向かってそんな高いお金のブランド品を買っているのかという虚無感で言うと、
1つ目の作品と繋がっているようでもあり、全然違う主人公なんですけど、全然違う話とも言えるんですが、
先ほど独立した4つの短編がっていう風にこの本を紹介したんですけど、
最初の話、彼女と彼女の記憶についてと、表題作でもあるビステリアと3人の女たちも繋がっているようでもあり、
4つとも緩やかに繋がっているようでもあり、イメージがなんとなくグラデーションのように繋がっている感じですかね。
その4つで1つの完成したアルバムみたいな、集めた糸を感じる1作品になっています。
4つどれも好きなんですけど、どれもちょっと違う種類の続々なんですけど、一番好きなのはこの表題作のビステリアと3人の女たちですかね。
これが一番ちょっとボリュームもありますし、そして川上美恵子さんの中にもバージニアウルフへの下りが出てくるんですけど、
オマージュみたいな感じがあり、挑戦的な作品でもありそうです。
このビステリアと3人の女たちという用書みたいなタイトルと、翻訳本みたいなタイトルと、表紙も翻訳ものみたいな感じなんです。
そこから連想されるちょっと昔のヨーロッパの話なのかなっていうのから想像する話と全然違う、
ビステリアと3人の女たちは主人公の女性が不妊治療をしようかなって考えているんだけど、
夫が非協力的で、そしてモラハラっぽくてっていう超現実的でリアルな話から始まるんですね。
さてこの話からビステリアにどうやって繋がっていくんだろうっていう感じなんですけど、
お隣の大きいお家が取り壊されていて、そこに住んでいたおばあさんがいたはずなんだけど、
その取り壊しの家に、主人公は不妊治療しようかどうしようか悩んでいる女性が忍び込んで見ちゃうんですよ。
そこに暮らしていたおばあさん、老女の過去にグッと入り込んで追体験するみたいな構成になっています。
そこからは老女の過去の話の階層に入っていくわけなんですけど、最初は私はって一人称で喋っていた主人公がその建物に入って、
いつの間にか老女の若い頃の視点に入れ替わっているっていう視点がですね、変わる描写の仕方がすごいなぁと思いまして、
小説ってこんなこともできるんだみたいな感動です。階層シーンと今の私の入れ替わりが映画のようでもあり、これもゾクゾクする体験な一編でした。
物語の構成と感動
全体的にちょっとこう映画のような、セピア色のような、そんな感じのする4作品です。
今日はそのウィステリアと3人の女たちから紙フレーズを読んで終わりたいと思います。
この顔だ。何か尖ったもので、肺と肺の間を思いっきり突き刺されるみたいに、はっきりとした痛みが走る。この表情を見るといつも胸のあたりが苦しくなる。
これはですね、主人公が夫に胃を消して不妊治療のためのクリニックを一緒に受診してみないかっていうのを提案するシーンなんですね。
事前に話す内容を細かく整理して、頭の中で何度も何度も練習して、やっと言ったのに夫は爪を切りながら露骨に嫌な顔をして見上げるんですね。
神さんって天才だなぁってこのシーンを読んで思いました。
読んでいる私も肺と肺の間がキュンってなりますもんね。こんな感じでちょっとこう、ザラザラっとしたところを触られるような、そんな描写がたくさんある一冊になっています。
ボンディーボンディーさんもぜひ楽しんでいただけるといいです。
今日はちょっと久しぶりにフラウの話もできたので嬉しかったです。
あんまり雑誌編集者だった時のことを喋ってなかったんですけど、もし興味があれば時々話そうかなって思いました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、リスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのアカウントバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。
15:11

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