多言語の魅力
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
第217夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームTWさんから頂きました。
バタやんさん、こんばんは。
Hola, Batayan. Encantado. Buenas noches.
はじめまして。こんばんは。スペイン語でありがとうございます。
僕は53歳の男子です。毎回楽しく拝聴しております。
突然ですが、僕が1年ほど前から夢中になって視聴しているYouTube番組
Gaz Languagesをバタやんさん、ご覧になったことはありますか?
主催のカズマさんは、14カ国語を使いこなすポリグロット、多言語話者で
簡単な会話まで含めれば、50カ国語以上話せるそうです。すごいですね。
番組では、多くの国の人と心を通わせていて
見ているだけで幸せな気分になれます。
自分の国の言葉を知ってくれていることの喜びは、ものすごいパワーになるんですね。
共通語の英語でつながることは便利だけれど、それだけでは何の感動も生まれない。
その人の母国語でつながることで、大きな感動が生まれることが動画を見ているとよくわかります。
カズラングエッジさんですね。
わかります。私も熱心なチャンネル登録者ではありませんが、
私もyoutubeでよく英語学習の動画を見るので、おすすめにたびたび上がってくるんです。
自分は英語もままならない状況ですが、
番組に触発されて2ヶ月ほど前からスペイン語の勉強を少しずつ始めてみました。
すると、今まで字幕を追いかけていた動画の中から徐々に言葉が聞き取れるようになってきたではありませんか。
これは大きな喜び、驚き、感動です。
楽しみながら勉強して、いつかはスペイン語圏の国へ旅行してみたいし、
並行して韓国語も学んでみようかな、などと悪い顔をしながら企んでいる次第です。
先日のバタヤンさんのタイ人アーティストとのエピソードも興味深いお話でしたね。
ありがとうございます。
タイのフェスに行った、ファミリーディフに行ったというお話は結構いろんな方から反響をいただきまして、
私もタイドラマハマっていますという方とか、
タイ語を勉強してますという方とか、メッセージいただいたので嬉しかったです。
さてさて、リクエストは言葉の壁を乗り越えた先にある感動の物語がありましたらご紹介いただけると嬉しいです。
バタヤンさんこれからも楽しいおしゃべり続けてくださいね。
チャオといただきました。
聴覚とその影響
ありがとうございます。
そうですか、そうですか、スペイン語ですね、いいですね。
どんどん使っていくしかないですね、照れずに。
ちょっと私が読んだのが正しかったかどうかわからないですけど、
ありがとうございます。動画とかドラマ映像の中から聞き取れる言葉が出てきたっていうのは本当めっちゃ嬉しいですよね。
素晴らしいです。
さてそんなTWさんにですね、今日の貸し出しカードは2冊選びました。
リクエストにあった物語ではないんですけれども、2つともノンフィクションです。
まず1冊目はニーナクラウスさん著、
昔のマキオさん解説、伊藤陽子さん役の
音とのあなたの身体、思考、感情を動かす聴覚という本にしました。
この本は聴覚の神経科学を研究していらっしゃるニーナクラウス先生、ニーナクラウスさんという方が
音というものが人にどういう影響を与えるのか、
健康とか考え方とか感情にですね、どう関係影響しているのかというのを解説した本になっています。
なぜこの本を読んだかと言いますと、
ポッドキャストをこのようにやるようになって、人の声っていうものにすごく興味を持つようになったんですよ。
その同じ内容でも、声の高さとか声色、スピードなんか、
そういう要素によって伝わる印象ってだいぶ違いますよね。
最近はAIが自動で読み上げてくれるみたいな機能が当たり前になってきたから、
そういう生身の人間じゃない、生身の人間の人の声じゃない、
生成された声、音声っていうのを耳にする機会が私もすごく増えたと感じているんですけど、
確かに使えもせず間違えもしないけど、
なんか耳が滑ると言いますか、一向に頭に入ってこないみたいな感じがする時もあったりしてね、
なかなか不思議ですよね。
私はもともと喋りがそんなに上手なわけではないので、
こうして喋った音源を自分で聞くっていうのが本当に本当に苦痛だったんですけど、
さすがに5年も6年もやってますと慣れてはきてまして、
もちろん喋り方とかトーンとかで自分で嫌だなって思うところは直したり意識するようになったりして、
それによってすごく人の声とか話し方っていうものにとても興味を持つようになったわけです。
インスタ映えみたいな言葉が流行る前からやっぱり視覚的な影響ってものすごくありますよね。
大きいじゃないですか。視覚って強いですからね。
見栄えがいいっていうのは人でも果物とか野菜でも何でも価値が高いものとして大きいなと思ってたんですけど、
一方じゃあ聴覚ってどうなんでしょうか。
バイリンガルの能力
聴覚って何か軽視されてないでしょうか。過小評価されているんじゃないですかっていう呼びかけから始まるのが本書なんですね。
それでちょっと興味深い本だなと思って買ってみました。
その耳っていうのは目のように閉じるっていうことが自分ではできなくて、
耳栓とかしない限り消すっていうことができないじゃないですか。
寝ている間も耳は開いていて、感知はしていて、
でも一方意図的に無視するっていうかシャットダウンすることもできたりして、
例えば大事な人とカフェで話している間のBGMとか、
周りのざわざわした声とか話し声とかっていうのは聞こえない、
耳に意識して入ってこないようにするっていうことができるじゃないですか。
逆に冷蔵庫が急に止まったり、アイドリングしてた窓の外の車がエンジンを切ったりした時に、
初めてそれまでブーンって音がしてたんだっていうことに気づくとかってこともありますよね。
今私こう冷房、クーラーを切って収録しているので、部屋がめっちゃ暑いんですけども、
冷房をつけて収録するとやっぱ空調の音が入っちゃうんですよね。
結構最近買った、割と比較的新しいクーラーなんで、
静かモードっていうのにすれば、
普段テレビを見たりとか本を読んだりしている時は全然空調の音って気にならないんですけど、
録音すると音が結構拾われるから、やっぱり音はしてるんですよね。
だけど自分の耳には入っている感じはしないっていうのに、
録音すると気づくわけです。
今ちょうどなんかご飯が炊けましたっていうのを言われちゃったんですけど、聞こえましたか?
家電もね、いろいろ喋るから最近はいろんな音が家でしますよね。
ちょっと話がそれましたけど、聴覚っていうのは感じる感じないの差があって、
面白いなーって読めば読むほど思いました。
なぜこの本を今日TWさんにご紹介したかったかって言いますと、
この本の中にバイリンガルに関する章がありまして、
バイリンガルの人の脳っていうのはどうなっていて、
バイリンガルであることのメリットとデメリットあるのかといったことが、
研究結果、実験結果なんかと一緒に書かれています。
聞き取れないと喋れない、発音できないと聞き取れないとかって、
語学を学習してるとよく言われるじゃないですか。
それは本当にそうで、経験してきてない音はやっぱり認識することが難しいみたいなんですね。
でもそれは訓練で後から聞き取れる、認識できるようになるっていうのは救いだなと思いました。
バイリンガルの人が片一方の言語を使っているときに、
もう一つの言語を完全に消し去れるかっていうとそうではなくて、
スペイン語で喋っていても、スペイン語を聞いていても、
日本語で似た音があると反応しちゃうみたいなことがあるかもしれないんですけど、
完全に消し去るっていうのはなかなか難しいが、
意識しないようにするっていうのはできるようなんですよ。
そのバイリンガルの人のメリットはっていうところに興味深いことが書いてあったんですけど、
注意力の高さ、衝動を抑える能力が増すんですって。
どういうことかというと、どうやって計測したのかっていうのが面白かったんですが、
色と形が違うのが書いてあるカードがたくさんあって、
それをまず形で分類するんですね。
例えば緑のひし形、赤い三角、青い丸、青いひし形とかっていうのを、
一個一個カードに書いてあったとしたら、
まずは色は関係なく形で揃える。
ひし形はひし形、丸は丸、ハートはハートっていう風に集めるわけですね。
次はまたぐちゃぐちゃにして色で分ける。
色は青、緑は緑、その時形は関係ないっていうのをやらせると、
バイリンガルの人はモノリンガルの人、一つの言語だけを使う人に比べて、
それが早いんですって。
それはつまり使わなくていい方法を封印できる能力がつくってことなんですね。
今は形だけに集中すればいいって言われた時に、
色のこともつい気になっちゃうから時間がかかっちゃうわけですよね。
分類するのに一瞬一瞬。
でもそのバイリンガルの人は形だけって言われた。
形だけで分類をパパパパパってカードを切ることができると。
それはつまり一方の言語を使っている時に、
こっちの言語の特性、文法とか、
例えば女性名詞と男性名詞があるとか、
そういう言語の特性を封印できるっていう意味なんだなと思って。
なかなかそれは意識的か無意識かわからないですけど、
その片一方を封印できる能力って新しい発見だなって思いました。
バイリンガルの特性
音のパターンを見つけるっていうのもバイリンガルの人の方が優れているそうで、
だからこそ、さらに第二言語を学んだ人は、
さらに別の言語を学ぶのもだんだん容易になっていくっていうのはそのせいでもあるんですね。
音のパターンを見つけやすくなるんでしょうね。
私もあの昔、予備校に、夜ゼミに通ってた時に、
その英語の先生が、確か六カ国語とか話せる人で、
その人も二個目英語を学んだ後、三つ目、中国語だったかな?ちょっと忘れちゃったけど、
違う言語、三つ目を学ぶと、その後四つ目、五つ目とかも格段にこう、
ルールのパターンがわかりやすくなって、全然楽になるっていうことを言ってて、
全然その受験で一杯一杯だと私は何言ってるんだろうこの人って思ったんですけど、
今はなんとなくそういうことがわかるような気がします。
という意味で、その多言語を学ぶっていうメリットについて、
今日はもう一冊、勝手に貸し出しカードをお出ししたいと思います。
もう一つは、講談社の現代新書から出ている大山裕介さんの、
外国語読習法っていう本です。
これはこのタイトルの通り、外国語を読学で一人で学ぶメソッドが詰まった本なんですけれども、
大山さんもTWSさんがご紹介してくださったカズラングエッジさんと一緒で、
ポリグロットっていうんですか、100の言語をなんと操るそうですよ。
100ってね、すごいですね。すごすぎてよくわかんないですけれども、
比較言語学の研究者でいらっしゃるんです。
だからこれとこれは似ています。何々語と何々語はこういうところで似ていますとか、
ルーツがそれぞれあるので、ルーツが似ているものはもちろん類似する点が似ているので、
そこから広げていくといいですよっていう話とか、こういう分類の仕方がありますっていう、
例えば字性の違いがあるのかとか、さっき言ったような女性名詞男性名詞みたいな違いがあるのかとか、
複数形単数形、あるいは三人称、人称にどういうルールがあるみたいな、
いろんな分類の仕方が無限に載ってまして、そういう言葉もあるんだっていう意味の興味が、
知的感、好奇心みたいなのが非常に刺激される本でした。
でも学術的な話に終始するのかと思いきや、
例えば語学学習のアプリの活用法とか、最初に学びを始めるときに買うならどんなテキストブックを買うのがいいかとか、
そういう超実用的な話も入っていまして、
一冊新書を読み終わった頃には何カ国語も学べるんじゃないかっていう気持ちになってきました。
気持ちだけね。いやでも気持ちは大事ですからね。
大山さんが初級編はすぐに終えろって書いてらして、なるほど確かにと思ったんですよ。
基礎を固めなきゃと思って、私も真面目だから、真面目に基礎をちゃんとやってからじゃないと、
中級編に進んじゃいけないってすぐ思っちゃうんですけど、
基礎でぐるぐるしているうちにあんまり楽しくなくなって挫折したり飽きちゃったりする。
英語もずっとそんな感じで初級編をぐるぐるしているような感じなんですけど、
ある程度やったらどんどんレベルを上げて、実践編に移った方がいいよとわかりまして、
それはそうだなと思いました。
私もちょっとタイ語を頑張ってみようと思いますので、
TWさんもスペイン語、そして韓国語も是非ね、
やってみてオラオラしてもらえたらいいなと思いました。頑張りましょう。
音楽と脳の影響
さて今日は最初にご紹介した音と脳から紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
音楽がもたらす良い影響は、たとえ音楽を続けていなくても残っているとありました。
この本ですね、半分以上は音楽の話と言えるかな、
この著者の方が音楽一家でもあるようでして、
音楽というものが脳にどういう影響を与え、感情とかその人の性格も含めてですかね、
いろんな影響を与えるということにたくさんページを割いているんですけれども、
この音楽がもたらす影響は、たとえ音楽を続けていなくても残っているっていうのを実験で示してまして、
実験では何十年も前に楽器を3年ぐらいやっただけの高齢の方が、
若い脳の印を示したと。
聴き取りが難しい要素にも反応できる、聴覚処理ができるって言うんですね。
全くやったことがない人よりも、記憶と認知の柔軟性があったということが書かれていて、
なるほどな、面白いなと思いました。
別に続けている必要はなくて、もちろん続けていればいいんでしょうけど、
昔やったことがあるっていうだけでも本当に意味があって、
うまいか下手かとかもあんまり関係ないのかな、
やってるかやってないかっていうことが、
そんなに長く後々まで影響があるんだなっていうのは面白いなと思いました。
だから他の言語を学んだ、一生懸命聞こうとしたっていう経験があれば、
その影響は後々まで、そしてまた途絶え流暢にその後喋れなくても、
忘れちゃったとしても残っている、残っていくんだろうなと思ったんです。
この本では音を処理する、脳のことをサウンドマインドという名前で紹介しているんですけれども、
このサウンドマインドっていう音自体がいい響きだなと思いまして、
私もサウンドマインドを育てていきたいなと思いました。
リクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、
リスナーの方からのお便りをもとに、
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのアカウントバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。