読書イップスの状態
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、第219夜を迎えました。
配信がちょっと不定期な感じになってしまってすみません。
このところ、なんだか私、読書イップスのような状態に陥っていました。
今日は、そんな自分から自分にリクエストをして、本を選びたいなと思います。
私は基本的に毎日読むんですね。
お風呂の中に本を1冊持ち込んで読んで、面白ければ、
今日が乗っていけば、お風呂上がってからもう少し続きを読んで、
そして寝るっていうのが、日々の習慣になっています。
手に取る本はその日の気分で、今ならこれが読めそう、これなら読めそうかなっていうのを選んでいるんですけれども、
今日だったらエッセイの方がとか、ちょっとまだ頭がビジネスモードだから、
仕事関係の本を読もうかなとか、今日はちょっと海外ミステリーみたいなのに集中できそうかなみたいな、
その自分の気分次第で選んではいるんですけれども、
最近はちょっと何というか目が滑ると言いますか、
目では追っているんだけれども、頭の深いところに何か入っていてないなという感覚が続いていました。
わかりますか?ある人いますかね。
文字を追ってはいる、読んではいて、意味は理解はしているんですけれども、
心の中には入ってきてなくて、うっすら別のことを考えたりしているみたいな、
特にフィクション、小説が、その登場人物の名前とか背景がなかなか頭に入ってこなかったり、
その登場人物の感情みたいなところが心に入ってこないと、
あれ、この人どういう人だっけ?ってまた数ページ戻るみたいなのを繰り返して、結局閉じてしまうっていうね、
ビジネス書とかノンフィクションの方がまだちょっと頭の浅いところで読んでも入ってくるので、読みやすいかなと思ったりしてたんですけど、
そういうのと集中力が続かなくてですね、熱い性もあるのかもしれないですけれども、
よく言う一気読みしました、メールの忘れて一気に読んじゃいましたとかっていうのって、
全然正直できなくなっていまして、昔はね、そんなこともあったんですけど、
集中力は20分も持つか持たないかみたいな、
気がつくとスマホを開いたり、
あれ何をチェックしようとしてスマホを開いたんだっけみたいな、
でもちょっと10分、20分なんか見たりして、また本に戻るみたいな、そういう状態になってました。
そんな自分に私にこれなら読めそう、今これを読むといいんじゃないかっていう本をリクエストしたいと思います。
ということで、今日の勝手に貸し出しカードに選ぶのは自分に当ててっていうのもありますし、
今回したら前読リスナーの方の中にも同じ状況の方がいらっしゃるかもしれないと思いまして、
本を読むのは好きだけど、好きだったけど、最近なんか全然集中できないとか、
以前のように読書を楽しめなくなってしまったなという方にもという意味で選びました。
ファンボルムの作品
今夜の勝手に貸し出しカードはファンボルムさん著、牧野美香さん役の毎日読みますという本にしました。
ファンボルムさんの名前でピンときた方はかなりの読書フリーク、本屋フリークでしょうか。
本屋大賞、翻訳小説部門の一位受賞作、ようこそふなむどう書店への著者の方ですね、ファンボルムさんは。
ファンボルムさん自身はもともと会社員であまりの激務に疲れてしまって、
会社員生活を離れ好きだった本読書について綴った文章、こちらがエッセイとして一冊にまとめて出版されたのがこの本毎日読みますという本で、
ふなむどう書店はまたさらにその後に書かれた著者にとっては初の長編小説だったんですね。
これを読むとふなむどう書店の店主40さん、会社を辞めて小さな本屋を始めるっていう40はファンボルムさんの体験とリンクしているのかなって思ったりしました。
大学生の頃から20代前半の初めの頃はファンさんは就職のことで頭がいっぱいで、
やれることは全部やって結果念願の希望していた大きな会社に就職することができたんだけど、
毎日の会社生活に驚いたり意気動ったりしているうちに適合していきまして、
深夜残業も多くて休みなく働くということに消耗していく様子がこのエッセイの中にも書かれているんですね。
淡々と書かれてますが生々しいなぁと思いました。
本当に会社がすべてみたいな、家より会社が落ち着くみたいな生活になっていった時に、地下鉄の窓に映る長いトンネルを見ながら、
1週間だけ入院する程度の怪我をしたいなぁって思うところなんかは、はっとするほど生々しいなぁと思いました。
私自身は今そんなに劇務じゃないので、深夜残業も休日出勤もほとんどありませんし、会社に適合した結果、日々驚いたり意気動ったりっていうことも、
若い頃に比べたらあまりなくなってしまったかな、心に定めが立ちすぎないように自営する癖がついてしまったのかもしれません。
だからこそ若きファンさんのこの危うくてみずみずしい感性が胸に刺さりますね。
羨ましいとさえちょっと思ったりしました。
私はもう1週間程度休める怪我をしたいなぁと願ったりとか、
学校とか会社が燃えればいいのにみたいに思ったりする感覚もあまりなくなってしまったなぁ、忘れちゃったなぁっていうね。
さて毎日読みますっていう本はタイトルの通りファンボルムさんと読書、本との関わりを綴ったエッセイ集になっています。
例えば古典を読むとか分厚い本を読む、詩を読むとかっていうジャンル別だったり、地下鉄の中で読むとか旅先で読むとか、
シーン別の読書指南書っていう読み方もできますし、会社員を離れていった何者でもなくなった、社会的には何者でもなくなった、
ファンボルムさんが読書を通じて、読書について語る、綴ることを通じて回復していく、自分の輪郭を取り戻していくような、
集中力を取り戻す
そして作家へと軸を固めていく成長端としても読むことができると思いました。
この中にファンさん自身も最近集中力がないんだと気づくとスマホを見てしまうって書いてらっしゃる箇所があって、
こんなに読書が支えみたいな人でもそういうことあるんだなぁと思って共感して励まされました。
その箇所をちょっと読みますね。
本を読む時だけはすんなり集中できていた。勉強を含むほとんどのことはグッと集中するのは最初だけですぐに気が散ってしまっていたが、読書だけは違ったというふうにあるんですけれども。
さて、そんなファンさんでもところがいつの頃からか本を読む時も集中しにくくなった。
早く本の中にどっぷりつかりたいのに思うようにいかない。本にもなかなか手が伸びないし、読んでいてもすぐに他のことをしてしまう。
読書は私が自由自在に集中できるほぼ唯一のことだったのに、以前のように自由ではいられなくなったのだとあります。
分かる分かるという感じで、その他のことっていうのがね、つまりほとんどはスマートフォンをいじることだとありまして、メッセージが届いたわけでもアラームが鳴ったわけでもないのにこう習慣のように触っちゃって、そこから5分10分スマホの世界に気を取られてまた戻ってくるみたいなのが繰り返しで、
今や読書が勝負みたいになっちゃって、どうすれば集中して読めるのかっていうことに戦略的に向き合うみたいになっているということでした。まさにそんな感じです。本当それなーって感じで、
ファンさんとは私はもちろん面しかないんですけど、このエッセイを読んでいると友達のように感じてきて、そうなのよーとか、今私もそれ読んでるとか、その本ちょっと私は途中で離脱しちゃったなとか、LINEを送りたくなるような感じです。
毎日読みますっていう本のタイトルにもすごい共感したんですけど、実は元々は違う仮タイトルがついていて、本と親しくなる方法という仮タイトルだったそうです。そうか、親しくなるっていう感覚が私はなかったんですけど、確かに親しくなるもならないもこちらの距離の詰め方次第と言いますか、
そうですね近づきすぎる依存しすぎると、なんか違うって思った時に普通以上にショックを受けてしまう。受けすぎるのかもしれないですね。だから距離ができた時はできたまましばらくそっとしておくっていうのもいいのかもしれないって思いました。
今日はこの毎日読みますの中から紙フレーズをご紹介して終わります。
インドの旅だけに固執していた私は他の多くのものを逃していたのかもしれない。だがそれらは現世では私が歩む必要のない道だった。わざわざ歩む必要のない道まですべて行かねばならないというものでもない。また、来世のために残しておくべき道もある。
これはですねファンボルムさんの言葉ではなくてファンさんが読んだリューシファーさんの地球性の旅人インドの風に吹かれてという本の中からの引用です。
私はこれを読んでないんですけどインド旅について書かれた本なのかな。インドに旅したいってすごい思ってたわけではないけどそういう勇気もないけどこの本が好きで何度も読んだとありました。
先ほどご紹介した地下鉄の中で怪我を願っていた頃自分は歩む必要のない道を歩んでしまっているんじゃないかというのを毎日悩んでいたというふうにファンさんは書かれています。
大企業、どこの企業か書かれてないですけど辞めたって友達とかお知り合いに言うと勇気ある決断をしたねってきっと多分言われたでしょうし、辞めて正解だったよと人は後から言うと思うんですよね。
でもすごい大きな決断をしたというよりかは歩む必要のない道を歩んでいるなっていう違和感から自然と離脱するしかなかったみたいな感じなのかなというふうにこの本を読んで思いました。
私はこの最後の来世に取っておくっていうのもあるっていう発想がすごいなと思ったんですよね。ちょっとこう涙が出るくらい感動したというか、今歩む必要のもしかしたら歩む必要のない道の中途中で苦しんでいるっていうケースもあれば歩まなかった道を悔やんでそれが頭を占領しているってこともあると思うんですけど、
孤室っていう言い方をこの中ではされてますけど、歩まなかった道、例えば結婚して子供がいてっていう生活とか、もっと本当はやりたいことがあったのにとか、あっちの会社に行けばよかったなとか、地元を出て別の場所で暮らしたかったとかですね、ずっと頭のどっかにある歩まなかった道みたいなこともあると思うんです。
歩まなかった道まで全部歩む必要はないっていうことと、来世に取っておくっていう道もあるって言われると、現世でいろんな固執しているものを手放せるかもしれないというふうに思いました。
選択と後悔
ファンボルムさんの毎日読みます。ぜひよかったら手に取ってみてください。このファンボルムさんの毎日読みますについては、Kブックラジオさんの公開収録に読んでいただいて、出演させていただいた時にもご紹介をしました。
この時はまだちょっと読み始めたばっかりなんですみたいな話をしたかな。放送された回を概要欄に貼っておきますね。他にもこのKブックラジオさんの回では韓国文学について結構たっぷりお話できたので、よかったらお時間あるときにチェックしてみてください。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
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お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。