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みもれ真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本やマンガ、紙フレーズをご紹介します。
さて、第23夜となりました。もう来週は9月です。
まだ、夏らしいこと全然してないのに、みたいな。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
さて、今夜のお便りをご紹介します。
東京都にお住まいの、昔恋してたうさぎちゃんさんからいただきました。
バタやんさん、こんばんは。
こんばんは。
いつも息子の添い寝の時にイヤホンで拝聴しております。
バタやんさんの声が心地よく、息子より先に寝てしまうこともしばしばです。
寝かしつけ効果、ありがとうございます。
私は以前から、主人公が昔の恋、できれば学生時代を思い出すような恋愛小説が好きで、いろいろ探しているのですが、
数年前にお気に入りを一冊見つけて以来、なかなか見つからないので、おすすめのものがあれば教えてください。といただきました。
私も大好物です。学生時代の恋を思い出すような恋愛小説。
数年前に見つけたお気に入りっていうのは知りたいですけどね。
さて、今日はもう一通ご紹介したいと思います。
千葉県にお住まいの紫夫人さんからいただきました。
私は季節の中で夏が一番好きです。
夏を感じる本、夏になったら思い出す本、夏になったら読みたくなる本のおすすめを教えてください。といただきました。ありがとうございます。
こちらのリクエストは結構前にいただいてたんですけど、
ぜひお答えしたいなと思っていたのに、すっかり遅くなってしまってすみません。というわけで、
今日は夏の終わりにおすすめの恋愛小説をご紹介します。
今日の勝手に貸し出しカードは、乃島美穂さんの僕が夏を抱くにしました。
こちらは幼なじみへの恋心をテーマにした6つの短編小説です。
幼なじみの恋と夏。いいですよね。皆さんも大好物でしょう。
6作品の中から一番私のお気に入りは3つ目の朝渚。
姉妹の物語なんですけど、冒頭からしてすごい良いんですよ。ちょっと読みますね。
お姉ちゃんのキスを見た。夏で。 私3年生。お姉ちゃん6年生。相手は石川健吾くん。
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お姉ちゃんと同じ6年生で。 集字や図画なんか。個人競技で表彰台に登ることの多い優等生だった。
この主人公の園子という女の子は今23歳になっていて、この石川健吾くんとお見合いをすることになるっていう話なんですよ。
3つ年上のお姉ちゃんは今IT社長と結婚していて六本木でセルフ生活を送ってるんですけど、
湘南の実家にしょっちゅう帰ってきてるみたいな様子なんですね。
この夏の日彼とキスをしていたひまわりみたいに魅力的だったお姉ちゃんは今すっかり俗っぽくなってしまっているっていうのを
富島美穂さんはこんな風に表現しています。 その素晴らしいお姉ちゃんがなぜこんなアホになったのか
私の知る限りでは高校が怪しい。 お母さんはやっぱりお姉ちゃんのことが可愛かったのだろう。
庶民のサンプルみたいな我が家から鎌倉のお嬢様高校にお姉ちゃんを進学させた。
そのお嬢様集団の中でお姉ちゃんはおごりを知ってしまう。 面白いですよね。
庶民のサンプルみたいな我が家とかね。 富島さんのそういうところ面白いなぁと思っちゃいます。
富島美穂さんには定編女子高生っていう 有名なというか名エッセイ本があるんですけどそれを読んでも思うんですが
毒のあるユーモラスさとか みんながぼんやり感じてたけど口にするのをはばかられていたことを
つぱっと言語化しちゃう感じとか もし高校の時同じクラスだったりしたら楽しかったらうまいなぁと思ったりします。
なんか私女子生の作家さんとかで特に同世代の方のエッセイや小説を読むと必ず同じクラスだったら友達に慣れてたかなっていうことを
想像しちゃうんですけど 富島美穂さんはどうかなぁ
3つ年下なんですけど学年的にはどうだろう同じクラスだったらグループは違うけど互い気になる存在みたいな感じですかね
駅前の高校の帰り道に駅前の本屋とかで偶然見かけても あっと思うんだけど声はかけないみたいな距離感でしょうか
何でしょうねこの妄想楽しいね皆さんも想像したりしますかね 絶対同じグループにならないタイプだなぁこの人とかね思ったりしますよね
一作目の変身少女っていう作品も大好きなんですけど これも冒頭がまたすごくいいのでちょっと読んでみたいと思います
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マリオが不良になるんだったら私だってなるしかない と決めたのは昼休みにトイレに行く途中で
英組の前に仲間とたむろっているマリオを見た時だった 見知らぬ男1人派手な女2人に囲まれたマリオは
楽覧のボタンを2つ外しさらにその下のシャツのボタンを一つ外し 首筋の線を白く光らせて立っていた
これねその変身少女っていうのの冒頭の部分なんですけど 幼馴染の男の子が中学に入ってちょっと不良っぽくなっていたっていうキュンポイントですね
体がまだちっちゃくて可愛い感じだった異性の幼馴染が急にグッと男っぽくなって 他の女の子も男として扱っている感じを見てザワザワするっていう気持ちねありますよね
それでこの主人公の女の子はそんな彼を見て自分も不良になろうってこう言っていて スカート自分で切って短くしようとして失敗したりとか
髪を茶髪にして周りをギャッとさせたりとか いろいろ失敗するんですけどすごい可愛いお話です
この短編集はどれも誰かが死んだりとか嫁宣告されてたりとか交通事故に遭うとかなんかそういう 号泣ポイントみたいなのは特になく事件も起こらないし悪い人も出てこないっていう感じなんですけど
なので安心して夜寝る前にクーラーでシーンと冷えた寝室でゴロゴロ読むのにぴったりな本だなぁと思っています こういう小説にすって頭が入っていけるかなっていうのを自分の私の心のクリアーさというか
透明度のビットマッシュみたいにしているところがあって 濁ってると読めなかったりもするんですけど久しぶりにこの本を読み返して
今年今濁ってないなっていうか透明度が高めだなと思って安心しました さて今日はこの本の表題作僕が夏を抱くから紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います
夏休みの記憶は後姿になってゆっくりと遠ざかり始める でも東京は今日も暑くなりそうだ
この一節はこの単行本だった時の帯にもなっていて 帯に選ばれているところを選ぶのちょっとダサいかなっていうか恥ずかしいなと思ったん
ですけどやっぱりここがすごく好きなんですよね この前のところに
影がとても長くてみーちゃんとカブトムシを取りに出かけた朝もこんな風に影が 長かったかもしれないなと思ったっていう一節があって
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夏の終わりの夕方の影が長い感じとかから 夏休みの記録記憶は後姿になってっていう例えにつながるところが素晴らしいじゃないですか
夏休みの記憶にも 長い影がついているようなイメージが
頭の中に浮かんできますね この短編集他の作品は全部女の子が主人公なんですけどこの夏
この僕が夏を抱くだけ男の子が主人公になっていて 一番センチメンタルな感じがする小説になっているのもまた良きです
思春期の男の子ってあとはまたそう幼馴染 この小説で出てくる女の子は幼馴染じゃなくていとこなんですけど年上の女の子
に思いを寄せる男の子ってロマンチックだなぁと思ったりしました 紫夫人さんそして昔恋していたうさぎちゃんさんお便りありがとうございました
今日も最後までお聞きいただきありがとうございます さてそろそろお時間になってしまいました
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで皆さんからのお便りを基にしながら いろんなテーマでお話ししたり本をご紹介したり
緩やかにやっていきたいと思います また来週水曜日の夜にお会いしましょう今日は最後までお付き合いいただきありがとうございました
おやすみなさい おやすみ