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2020-07-01 09:31

【第15夜】美味しそうな料理が出てきてお腹が空いてしまう小説

「美味しそうなお料理がたくさん出て来て、ついつい話の筋を忘れてしまうような小説を教えて下さい!」というリクエストにお答えして、今夜は、彩瀬まるさんの新刊『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』をご紹介します。ある記憶と結びついて、食べられなくなってしまったもの、あるいは無性に食べたくなるもの、あなたにもありますか?

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第15夜となりました。月が変わって7月夜ですよ。もうびっくりしちゃいますね。
私は6月生まれなんですけど、6月もほぼ在宅勤務だったもので、人にあまり会わずに終わってしまってちょっと寂しいですね。
そんな盛大な生誕祭をやってもらう予定だったわけじゃないんですけど、お誕生月割引みたいなのあったりするじゃないですか、そういう特権も使うことなく終わってしまった6月でした。
さて、今日のお便りをご紹介します。西川県にお住まいの米子さんからいただきました。
おいしそうなお料理がたくさん出てきて、ついつい話の筋を忘れてしまうような小説を教えてくださいというリクエストいただきました。
ありがとうございます。今日の勝手に貸し出しカードは、綾瀬丸さんの新刊、まだ暖かい鍋を抱いてお休みにしました。
タイトルに鍋って入っちゃってますし、ストレートに料理がメインの小説なんですけど、すごく気持ちが温かくなる優しい小説なので、今の気分にぴったりかなと思ってご紹介したいと思います。
米子さんのコメントをいただく少し前に読んで、新刊のうちにどこかでご紹介したいなってすごく思っていたので、
異心伝心というか、米子さんエスパーなのかと思いました。
まだ暖かい鍋を抱いてお休みという本は、6つの独立した短編小説からなる短編集なんですね。
食べ物と記憶が物語のテーマになっていて、無性に食べたいものだったり、あるいは食べられないもの、好きとか嫌いとかアレルギーっていうことではなくて、
ある思い出と結びついてしまうから、無性に食べたくなるとか、あるいは食べられなくなってしまったりとか、
そういう思い出と結びついた食べ物って、もしかしたら皆さんにもあるんじゃないかなと思いました。
はい、例えば2つ目の悲しい食べ物という小説には、枝豆チーズパンが出てくるんですけど、
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付き合い立ての彼女がなぜ枝豆チーズパンが好きなのか、しかもお月末になると食べたくなる様子なんですけど、なぜなのか、
そこには彼女の少し暗い思い出が繋がっていて、彼としてはそれを上書きしたいというような話なんですね。
他にも出てくるのは豪華な料理とか、美味しそうで筋を忘れちゃうというリクエストでしたけど、
誰にとってもごちそうと思えるようなものじゃないものが出てくるんですね。
確かに枝豆チーズパンって美味しいよなと思ったりして、いつ食べたか記憶にないけど、
明日パン屋さんに行って売ってたら買いたいなという気持ちになりますよね。
なんかその絶妙な食のセレクトっていうんですかね、メニューのセレクトが気になります。
この本の中で私が一番食べたい気持ちになったのは、冷凍のミックスピザなんですけど、
3つ目の小説、ミックスミックスピザっていうのは、主人公の女性が部下の後輩のとこの子とうっかり不倫というか、関係を持ってしまうお話なんですね。
そのうっかりなんだか流れで入ってしまったホテルで、冷凍のミックスピザというか、注文してピザを食べるというシーンがあるんですよ。
その下りがすごいなと思ったので、今日はここを紙フレーズとしてご紹介したいと思います。
部屋の扉がノックされた。はいと返事をして、ガンを着た鶴巻くんが対応に出る。
彼はすぐに平たい紙箱と紙袋を一つ持って戻ってきた。
ドリンクやポテトをテーブルに広げ、ピザが入った紙箱の蓋を開く。
ミックスピザには数粒のコーンと紙のように薄い玉ねぎと油っぽいサラミが4枚乗っていた。
何もミックスされてない。むしろ具材が少なすぎて、それぞれがどこに暮れている感じ。
そう、こういうとこのピザってこんなもんじゃないですか。
このピザの塩っけとジャンクさと何もミックスされてない。
具材が少なすぎてそれぞれが途方に暮れている感じっていうね、この女の人がちょっとぶっきらぼうに言うみたいな感じがまたいいですよね。
はいとくかんというか、あとベッドに油をかいた若い男の子は一切れを二口ぐらいで食べちゃうんですけど。
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主人公のさゆりさんというこの女の人はもう一回このピザを頼んで食べるシーンがこの後出てくるんですけど、
そこもまたすごくいいのでぜひ読んでみていただきたいと思います。
この綾瀬穴原さんって新刊が出るたびにチェックする作家さんの一人なんですけど、
最初に読んだのはあの人は蜘蛛を潰せないという小説だったんですね。
母親と二人暮らしをしていて、コンビニの店長をしている28歳かな、女の人が主人公なんですけど。
いわゆる母親の呪縛からの独立がテーマになっている小説なんですよ。
フラウに、私がフラウの編集部にいた時に母と娘の独習簿っていうのがありまして、そこで紹介するために読んだんですね。
いわゆる独親というほど悪い人ではないんですけど、
いっともないことをしないでとか、母さん以上にあなたのことを思っている人はいないわよとか、そういうことを言って主人公の子は縛られていくというか、
ありそうな二人の母娘関係なんですよね。他にもちょっと生きづらそうな繊細な、うまくやれない人たちがいっぱい出てきて、
表題の雲を潰せない人っていうのは、くすぐっている中年社員みたいな人なんですけど、
このタイトルにしたことはすごいなと思って、その綾瀬さんの才能にすっかりハマってしまって、それからずっと注目しています。
綾瀬丸さん、ツイッターもやっていらして、そこでついこの自粛期間中に読んだ本を紹介していらしたんですよ。
最近私が読んだ本はかなりこの綾瀬さんのツイッターに影響を受けてまして、この間ご紹介した
千早茜さんの透明な夜の香りも、あとまだご紹介してないですけど、ティリーウォルデンのスピンっていうスケートをテーマにした漫画とかも
綾瀬さんのおすすめで読んで、すごく面白かったです。
皆さんもよかったらツイッターもぜひチェックしてみてください。
ちょっとこんな時間になって私も小腹が空いてきてしまったので、今日はこの辺でおしまいにしたいと思います。
米子さん、リクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
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真夜中の読書会、おしゃべりな図書室はこんな感じで、皆さんからのお便りを元にしながら、いろんなテーマでお話ししたり、本をご紹介したり、
緩やかにやっていきたいと思います。また来週水曜日の夜にお会いしましょう。今日は最後までお付き合いいただきありがとうございました。
おやすみなさい。おやすみ。
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