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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、
皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
今夜は、私がこの夏、一押しのノンフィクション本、
その名を暴け、ミニトゥンに火をつけたジャーナリストたちの戦いをご紹介します。
こちらの本、原書はアメリカから【シー・セッド】というタイトルで出ていて、
その日本語翻訳版が出るとして、絶対読まないとと思ってたんですよ。
で、アマゾンに上がったらすぐ予約してたのに、
この帯を書いていらっしゃる方がSNSでシェアしているのを見て、
買わなきゃと思って、またポチッとしちゃって、
結局発売日当日に3冊家に届いたっていうね、
この予約したことを忘れて、焦ってアマゾンで予約してダブルっていう私のあるあるなんですけど、
なんかパフュームとか欅坂のライブのDVDとかも、初回限定版の特権とかついてるじゃないですか、
あれを手に入れなきゃと思って焦って予約して、
予約したことを忘れて、また別のところで予約したりして、
いろんなところから発売日に届くっていうね、よくやってしまうんですけれども、
話がそれましたが、そのぐらい楽しみに待ちわびていた、その名をアバケがどんな本か、今日ご紹介したいと思います。
MeToo運動のきっかけになった映画プロデューサーのハーベ・ワインスタインのセクハラ事件は皆さんも記憶に新しいと思うんですけど、
その告発記事の取材を担当したニューヨークタイムズの2人の女性記者が執筆したノンフィクションなんですね。
私もワインスタインという特徴的なその名前と告発したのがウィネス・パルトロとか有名な女優さんたちだったので、その印象は残っていて、
どういういきさつで世界的なニュースになって、その後どんな展開があったのかっていうのは、あんまりちょっと詳しくチェックできてなかったんですけど、
そのワインスタインの長年にわたる女優とか女性従業員への性的な嫌がらせは、その前から噂もあったし、キャスティングカウチって言うらしいんですけど、
その役に抜擢してもらいたい女優がプロデューサーとか力のある人と寝るっていうか、そういうふうにさせるみたいなことは、公然の秘密っていうところがあったわけですよね。
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ワインスタインが複数人の女性たちの口封じとしてお金を払っていたってことを告発した記事がニューヨークタイムズの記事になったのが、
2017年の10月のことで、この本はその告発記事、掲載に至るまでの舞台裏と、その後いろんな社会で運動が起こった後の変化を取材を担当したニューヨークタイムズの2人の記者が綴ったものなんです。
この本がなぜこの夏のイチオシというか、今年一番ぐらいの興奮を持って読んで、今ここで今日はお便りと関係なく勝手に貸し出しカードとしてご紹介しています。
なぜかっていうと、端的に言うとものすごく面白かったっていうことなんですよ。面白かったっていう感想は書評としてどうよという気もしますが、
ワインスタインの悪業をやったことを告発しようとする人たちを封じ込めようとして、関係者だったりとか、敏腕の弁護士たちが彼の周りを固めていて、告発しようとする女性たちの弱いところをついて先手先手を打ってくるんですよね。
彼らと2人の記者、タイムズ編集との攻防があって、情報合戦みたいなのもあり、その辺がすごくスリリングと言うと謹慎かもしれないんですけど、スパイ映画みたいな興奮があります。
性被害、特に立場がある人からの性的暴力とか搾取とか、エンタメ業界、メディア業界の男女格差みたいなものに、私もメディアにいるからっていうのもありますけど、すごく個人的に興味があって、いろんな本とか記事も読んできたんですね。
伊藤しおりさんとか、最近だとフォトジャーナリストの広川隆一氏の話とか、正直つらい話ですし、行き通りしかないって感じですけれども、一人で行き通るだけで何もできないみたいなもどかしさもあって、
つらいくらいだけの話だと人になかなか勧めづらいですけれど、面白いとこをしてぜひ読んでみてくださいって人に勧められるなぁと思いました。
ちょっと別の本で、赤ずきんちゃんはなぜ狼と寝たのかっていう本がありまして、これは夏木麻里さんがお勧めしてって読んだんですけど、これは赤ずきんちゃんって有名な童話にはいろんなバージョンがいろんな国と年代であって、それは深読みするとこんな意味を持ってますよみたいな分析の本なんですが、
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皆さんはどういう話として赤ずきんちゃんの話を覚えていらっしゃるか聞いてみたいですけれど、たぶんグリム童話バージョンは一番日本ではメジャーですかね、赤ずきんちゃんが狼に食べられちゃうじゃないですか、子供の頃ながら、それ絶対おばあちゃんじゃないじゃんって、どう見たっておばあちゃんじゃないじゃんって思うのに、
そして赤ずきんちゃん早く逃げてというドキドキした思い出があるでしょう皆さんも、顔を見たいからもっとそばにおいでとか言われて、ベッドに自分から近づいちゃうっていう下りがあって、それに性的な意味が隠されているっていうこの本の分析なんですけど、童話によってその教訓を伝えるみたいな手段は昔からいろいろあったと思うんですが、
このワインスタインのケースも言ったら途中で女の人たちはこの状況がまずいってことには気づいているんだけど、もっとその顔を見せてくれ、もっと近づいてって言われて逃げれたかっていうと、急に厳しそうに返して逃げるのはきっと難しかったんだろうなっていう話なんですよ。
この本、その名を暴けは童話とはまた全然違いますけれども、きんしんお承知で言うとエンタメとして本当に完成度が高い。だから人に勧めやすいんですね。完成度が高いと思う理由についてちょっと後半でお話ししたいと思います。
その名を暴けがエンターテイメントとして完成度が高いポイントの3つなんですけど、一つ目にはまず有名なハリウッド女優とかハリウッド映画がバンバン出てくるところですね。代表的なところで言うとパルトロですけれども、映画の時にナムコ堂みたいなね。
世間から見て下世話の話、有名セレブのスキャンダルっていう点も後で話しますけど、意義があったっていうことなんですよね。これも被害者も加害者も無名というか、著名な人でなかったらこんなに世界的なニュースにはならなかったでしょうし、MeToo運動には発展しなかったんじゃないかなと思うわけです。
2つ目はこの本の構成が素晴らしい点です。ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイという2人の女性記者が教長なんですけど、自分たちのことをこの中ではあえて3人称で書いているんですね。私はとか私がっていうところをジョディはとかミーガンはってしているんですよ。
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教長って称ごとに、交互に書かれている本も多かったりして、読む側からすると私ってあれどっちの私だってなったりすることも多いんですけど、この本はそれを避けるために3人称であえて書くことで自分たちの記録なんですけど、ドキュメンタリー的な客観性が生まれていると思います。
私こんなに頑張った、この時私はこう思ってたのにこうはいかなくて悔しいとか、そういう自分語りが挟み込まれないことで、とても淡々としている上にすごくスピーディー、スピード感があるんですね。それを私はスリリングと感じたポイントかもしれません。
最後もう一つは2人が女性の記者で、1人は産休休休から復帰したばっかりっていううち飲み子を抱えてたりするんですけど、その辺の2人の私生活の描写とか女だからみたいな描写はほとんどなくて、最後に謝辞って言って周りの人に感謝を述べる後書きがあるじゃないですか。
そこでこんなにたくさんの人とか家族とかシッターさんとかそういう人たちの支えがあって取材してたんだなっていうことがわかる程度なんですよ。被害者をヒアリングしたりする時も女の人だからわかるよみたいなアプローチは全然なくて、そこもまたかっこいいなと思って読みました。
今日はこのその名を暴けから紙フレーズをご紹介したいと思います。
ハーベイ・ワインスタインはそんなに有名じゃない。
これは告発記事を書き終えた深夜に記者の2人が一緒に同じ方向で車で帰るっていう中の場面なんですけど、
その言葉を言ったのはパーティーというベテランの編集者で、2人がこの記事が出ることでどんな影響があるかとか読者がどんな反応をするかなっていうのを話し合った時に、
ハーベイ・スタインはそんなに有名じゃないっていう言葉を思い出すっていうシーンなんですけど、
その前に編集長と編集者のパーティーと2人の記者が話し合うシーンがあって、
パルトロにどうしても証言をしてもらいたい2人に編集長が女優のコメントにこだわるなと、
まずは世に出ることが大事だからパルトロの声は後で記事にできれば十分だって言うんですよ。
その編集長は黒人の女性の編集長なんですけど、彼女もすごいかっこいいんですけど。
2人はスター級の女優たちが声を上げてくれないと記事は不十分だとこの時思ってるんですよね。
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私もこのことが明るみになるまでワインスタインの名前は知らなかった。
恋に落ちたシェイクスピアとかイングリッシュ・ペーシェントは知ってるし、映画も見たしパルトロのことは知ってて、
監督の名前ぐらいはちょっと興味があったとしても、プロデューサーの名前まではなかなか気にしてなかったっていうところですね。
パルトロが証言をするのか、説得に2人がどんなやりとりをしたのかっていうのは、ぜひ本を読んでいただきたいところなんですけど、
こういうふうに有名な人が結果的に発言してくれたことによって世界的に広まったんだなっていうのがわかる一冊ではあります。
今日も最後までお付き合いいただいてありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで、皆さんからのお便りをもとにしながらいろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
MIMOREのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。