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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる大テーマに、
皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第54夜となりました。今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームマッシュルームラブさんからいただきました。
バタやんさん、こんばんは。
こんばんは。
以前にみもれのブログがインスタライブで、
年に一冊ぐらい痺れるぐらいガツンとくる小説に出会うと、
おっしゃっていたのが印象的でした。
最近そのような小説はありましたでしょうか。
あったとしたら教えてください。
といただきました。
ありがとうございます。
そう、あったんですよ。
そうなの。
今年一番っていう痺れるやつに出会ったんです、最近。
今年一番ってもう言っちゃって大丈夫かな。
まだ4月ですもんね。
また一番がこの後出てくるかもしれないけど、
いや、いいと思う。早く言えよって感じですね。
はい、それが今日の勝手に貸し出しカード、
ホンダリックさんの最新刊、灰の劇場です。
さて、小説という表現方法にまだまだ新しい試みやり方、
書き方があるんだなって思わされる小説でした。
いろんな意味で裏切られる読者を裏切る予想を超えてくる小説だったんですね。
まず帯にこれは事実に基づく物語とあります。
裏側、帯の裏側には新聞の3面記事を貼り付けたみたいになっていて、
飛び降り自殺をした40代女性2人の身元が分かったという記事なんですけど、
大田区のマンションに同居していて、
2人は都内の私立大学の同級生だったということが判明しましたという記事が書いてあるんですね。
そうかそうか、そういう真珠事件があって、
その実際にあった出来事を元にモチーフにして、
ホンダさんが今回は小説を書かれたんだなと思うじゃないですか。
おそらくこの小説は、この2人の女性がなぜ自殺したのか、
どうして同居していたのか、今のことだったり、
大学生の頃の2人を遡って描いたりするのかなと想像しますよね。
それが予想とは全然違う感じで話が進んでいくんですね。
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この小説がどういったお話なのか、後半で解説していきたいと思います。
ページを開くとまず1とあって、
真珠したどちらかと思われる女性の目線で家の中の様子が描かれるんですね。
方々独白形式という感じで、2人の話が進んでいくのかなと思うじゃないですか。
場面は急に変わって小説家の話になるんですよ。
どうもこの小説家の女性は、2人の40代女性の真珠、
飛び降りをモチーフに、モデルに小説を書こうとしている人のようなんですね。
さらに場面が変わると、その小説が舞台化されるということが決まっていて、
舞台の制作が進んでいく様子が描かれます。
つまり2人の女性の話と、それを小説にしようとしている小説家の話と、
その小説が舞台化されることが進んでいるという、
3つの違う時間軸の話が同時に進んでいく、同時に描写されていく感じなんですね。
最初すごい戸惑って、今誰が何の話をしているのってなって、
2人の真珠の戦争が描かれると思ったら、
それを小説にしようとしている尾田陸さんご自身のエッセイが間に挟まってくるみたいな作りになっていて、
小説が進んでいく間に尾田さんの自分語りが挟まるみたいに読めるんですね。
実際尾田さん自身の話かどうかは分からないんだけど、
直樹賞のパーティーのシーンなんかが出てきて、
尾田さんご自身の話なのかなって思わされるところも含めて、
ちょっと複雑な仕掛けになっているわけです。
場面が切り替わるタイミングで番号が振ってあって、
最初に1、次に0って出てきて、
1と0と1がどういうルールで番号が振ってあるのか最初はちょっと理解ができなくて、
0、0って続いたりするんですよ。
何度も行ったり来たりして、
ああそういうルールかって分かったんですけど、
ちょっとそこは言わないでおきますね。
でもこの小説何がネタバレで何を喋っちゃうと面白みを損なってしまう可能性があるかというのは、
判断が難しい、説明がとても難しい小説だなと思いました。
すごいトリッキー。
だけどこの小説の中の小説家の人が強く惹かれてこの事件に興味を持ったように、
大学の同級生だった女性2人がしばらくは離れて暮らしていて、
それぞれの生活を送っているんですけど、
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40歳近くなって30代後半で一緒に住み始めて、
そして一緒に死ぬってどういうことだろうって非常に興味深いじゃないですか。
だからそのトリッキーさが途中から気にならないぐらい、
先を先をと読まされてしまう小説なんですね。
この3つの軸が走るという独特な題材以外に、
この小説の痺れたポイントを続けてお話ししたいと思います。
どういう理由で2人が死を選んだのかということがまずすごく気になりますよね。
2人の女性が死ぬって書いてあって、
私がまず想像したのは、2人は恋人同士だったんじゃないかってことですね。
同性婚が昨今は話題になっていますけれども、
この2人の話は少し前のことのようなので、
世間的にこんなにオープンにできる話題関係じゃなかったとか、
親とか身近な人たちに何か反対されたとか、
そんなことをちょっと想像しますよね。
あるいはもう一つ私が想像したのは、
桐野夏夫さんのアウト的などっちかの旦那さんが
ひどいDVとかで凶暴して一緒に殺してしまったとか、
1と2のミックス型っていうのもあり得るかなって思いました。
彼女は大学生の頃からもう一人の彼女のことが好きだった。
でもひどい男と結婚してしまって救い出したかったっていう。
そんなドラマが今度ネットフリックスで
水原紀子ちゃん主演でスタートしますね。
彼女っていうドラマだったかな。それも楽しみですけど。
どう思います皆さんは。
1か2か、1と2のミックスか、どれでもないのか。
そんな情熱的な風呂場で旦那を殺すような
蒸気を逸した行動に展開しなさそうな
低い温度感で話は進んでいくんですよ。
タイトルに灰の劇場とありますが、
本当にグレートーンな小説というかね、
地しぶきとか出てこない感じなんですね。
その先の真相はこのラジオでは言わないでおきますけれども。
もう一つ注目したのは40代で40近くで
大学の頃の友達あるいは同級生と
二人で暮らすってどんな感じなんだろうということですね。
想像してみるにすごく良さそうだなって思いました。
トイレに行くにも買い物に行くにも一緒にいたっきゃみたいな
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ベッタリした中高生とか大学生の頃みたいな
女同士仲良しみたいな仲良しさはもういらないじゃないですか。
大人だから適度な距離感で。
日中は片一方は会社で仕事していて
片一方は割と在宅で仕事をしているみたいなんですけど、この二人は。
終わったら近所の美味しい居酒屋に二人で行ったり
どっちかが料理を作ったり。
すごい良さそうなんですよね。
なんか清潔感の度合いとか
家事をどう分担するのかとか
買い物を欲しいものだったり
そういうのが女同士同級生二人って
とっても居心地が良さそうだなって思いました。
今日はこの灰の劇場から紙フレーズをご紹介します。
そこには様々な現実問題が棚上げされているのだが
二人は気づかないフリをする
まだ私たちは若い
まだ次のステージがある
今はあくまでも繋ぎの時期だ
一時退避のような状況なのだと
それぞれが信じ込んでいる
初秋の夕暮れ
居酒屋の引き戸は少し開けてあり
そこから夜風が吹き込んできて心地よい
すごいですよね。
現実的なシビアな話をしたすぐ後に
心地いい風景描写がある感じも
かっこいいなと思いましたし
ここに書かれている
いろんな現実問題から目を背けて
今は繋ぎって思っているっていうことって
結構いろんな人にあるんじゃないかなと思いました。
この今の状況が悪いとは思ってないけど
ずっと続くわけじゃないってどっかで思っている。
でも意外とこれが10年ぐらい
あっという間に続いちゃったりするんですよね。
そんなじわじわとした怖さがある小説でした。
何度も行ったり来たりして読んで
小説家のシーンにドキッとする人もいるでしょうし
舞台下の裏側の話もかなり面白いので
そちらにドキドキする人もいると思います。
どう転がるかわかんない
多面体のサイコロみたいな
そんな小説でした。
いやーすごいなぁ、オンダリックさん。
マッシュルームラブさん、リクエストありがとうございました。
ぜひ読んでいただいた感想も伺いたい。
この小説を読んだ人たちみんなで集まって
あれはどういうことなんだっていう話をしたいような本でした。
今夜も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
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さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりなと出室はこんな感じで
みなさんからのお便りをもとにしながら
いろいろなテーマでお話ししたり
本を紹介したりしています。
ミモレのサイトからお便り募集しているので
ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。