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告別 宮沢賢治
お前のバスの三連法がどんな具合になっていたかを おそらくお前はわかっていまい。
その純朴さ、望みに満ちた楽しさは ほとんど俺を双葉のように震わせた。
もしもお前がそれらの音の特性や 立派な無数の順列を はっきり知って、自由にいつでも使えるならば、
お前は辛くてそして輝く天の仕事もするだろう。
大生著名の学人たちが幽霊源や剣器を取って すでに一家を成したがように、
お前はその頃、この国にある 干川の小木と竹で作った関東を取った。
けれども今頃、ちょうどお前の年頃で お前の素質と力を持っている者は、
町と村との一万人の中になら、おそらく五人はあるだろう。
それらの人のどの人もまたどの人も、 五年の間にそれを大抵なくすのだ。
生活のために削られたり、自分でそれをなくすのだ。
すべての才や力や罪というものは、 人にとどまるものでない。
人さえ人にとどまらぬ。
言わなかったが、俺は四月はもう学校にいないのだ。
おそらく、詳しく険しい道を歩くだろう。
その後で、お前の今の力が鈍り、
きれいな音の正しい調子とその明るさを失って、 再び回復できないならば、
俺はお前をもう見ない。
なぜなら俺は、少しぐらいの仕事ができて、
そいつに腰をかけているような、 そんな多数を一番嫌に思うのだ。
もしもお前が、よく聞いてくれ、 一人の優しい娘を思うようになるその時、
お前に無数の影と光の像が現れる。
お前はそれを音にするのだ。
みんなが町で暮らしたり、一日遊んでいるときに、
お前は一人であの石原の草を刈る。
その寂しさで、お前は音を作るのだ。
多くの侮辱や急忙の、それらを噛んで歌うのだ。
もしも楽器がなかったら、いいか、お前は俺の弟子なのだ。
力の限り、空いっぱいの光でできたパイプオルガンを弾くがいい。
兄弟、宮沢賢治、みんなが弁当を食べている間、
03:07
私はこの杉の幹に隠れて、しばらく一人休んでいよう。
二里も遠くから、この野原じゅう、黒くわだかまって見え、
千年にもなると言われる、林の中の一本だ。
薄光る堅石雲に、梢が黒く浮いていて、
見ていると、杉と私とが空を旅しているようだ。
みんなは杉の後ろの方、山門の下や石碑に腰掛けて、
割合しっそりしているのは、今、盛んに食べているのだ。
約束をして、みんな弁当を持ち出して、自分の家の近辺を、
普段は歩かないようなあちこちの他の隅まで、仲間と一緒に回って歩く。
ちょっと異様な気持ちだろう。
俺も飯でも握ってくるとよかった。
空手できても、学校前の荒物店でパンなぞ買えると考えたのは、
第一ひどい間違いだった。
冬は据えずに、五日や十日置けるので、とにかく売っていたのだろう。
パンはありませんか、と言うと、冬は確かに売ったのに。
主人がまるで忘れたようなひどくけげんな顔をして、
「はあ、パンすか?」と聞いていた。
一つの椅子に腰掛けて、朝から酒を飲んでいた。
眉のぶざつなじいさんが、じろっと俺を振り向いた。
それから、大変親切そうに、
パンならそこにあったけが、と、
右手の棚を何か探すというふうにして、
それから大変とぼけた顔で、
「はあ、はあ、食われない石板だ。」と、
そう言いながら俺を見た。
主人も少しもくつろがず、俺にも笑う余裕がなかった。
あのじいさんにあそこまで強い皮肉を言わせたものを、
その真っ暗な大きなものを、俺はどうにも動かせない。
結局俺ではダメなのかな。
みんなはもう飯も済んだのか、
改めてまたドラを打ったり手を叩いたり。
林いっぱい、大変にぎやかになった。
向こうはさっきみんなと一緒に入った鳥居。
しなれの柳や桜や水。
鳥居は明るい真夏の野原に開いている。
ああ、杉を出て車殿を登り、
絵馬や格子に囲まれた薄暗がりの板の上に、
体を投げて俺は泣きたい。
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けれども俺はそれをしてはならない。
無意。無意。断じて進め。