00:06
東岩手火山 宮沢賢治
月は水銀 親の墓主
火山暦は夜の沈殿
火口の大きなえぐりを見ては 誰もみんな驚くはずだ
風と静けさ
今漂着する薬師街林山 頂上の石像もある
月光は水銀 月光は水銀
こんなことは実に稀です
向こうの黒い山ってそれですか?
それはここの続きです
ここの続きの街林山です
あそこのてっぺんが絶頂です
向こうの?
向こうのは小室河口です
これから街林山を巡るのですけれども
今はまだ何も見えませんから
もう少し明るくなってからにしましょう
太陽が出なくても明るくなって
西岩手火山のほうの河口や何か
見えるようにさえなればいいんです
お日様はあそこらへんで拝みます
黒い絶頂の右肩とその時の真っ赤な太陽
私は見ている
あんまり真っ赤な幻想の太陽だ
今何時です?
3時40分?
ちょうど1時間
いや40分ありますから
寒い人は提灯でも持って
この岩の陰にいてください
暗い雲の海だ
向こうの黒いのは確かに林根です
線になって浮き上がっているのは
北上山地です
後ろ?
あれですか?
あれは雲です
柔らかそうですね
雲が駒畑にかぶさったのです
水蒸気を含んだ風が駒畑にぶつかって
上に上がりあんなに雲になったんです
長海山は見えないようです
けれども夜が明けたら見えるかもしれませんよ
柔らかな雲の波だ
あんな大きなうねりなら
月光会社の5000トンの気仙も
同様を感じはしないだろう
その室はタンパク石、グラスウール
あるいは水産化バンドの沈殿
実際こんなことは稀なのです
私はもう十何遍も来ていますが
こんなに静かで
そして暖かなことはなかったんです
麓の谷の底よりも
さっきの九号の小屋よりも
03:01
かえって暖かなくらいです
今夜のような静かな晩は
冷たい空気は下へ沈んで
霜さえ降らせ
暖かい空気は上に浮かんでくるんです
これが気温の逆転です
温室加工の盛り上がりは
月の明かりに照らされているのか
それとも俺たちの提灯の明かりか
提灯だというのはもったいない
日は色で暗い
それではもう四十分ばかり
寄り添って待っておいでなさい
そうそう北はこっちです
北都七星は今山の下の方に落ちていますが
北都七星はあれです
それはコグマ座という
あの七つの中なのです
それから向こうに
縦に三つ並んだ星が見えましょう
下には斜めにふさが下がったようになり
右と左とには赤と青と大きな星がありましょう
あれはオリオンです
オライオンです
あのふさの下のあたりに
星雲があるというのです
今見えません
その下のは大犬のアルファ
冬の晩一番光って目立つやつです
夏のサソリと裏表です
さあ皆さんご勝手には歩きなさい
向こうの白いのですか
雲じゃありません
けれども行ってごらんなさい
まだ一時間もありますから
私もスケッチをとります
はてな私の頂面の書いた文がたった三枚になっている
ことによると月光のいたずらだ
藤原がちょうちんを見せている
ああページが折れ込んだのだ
では私は一人行こう
外輪山の自然な美しい歩道の上を
月の半分は尺道
アースシャイン
お月様には黒いところもある
五頭またべ五つも拝んだずなす
私の独り言の反響に
小田島春江が言っている
山中しかのすけだろう
もうかまわない歩いていい
どっちにしてもそれはいいことだ
25日の月の明かりに照らされて
薬師河口の外輪山を歩くとき
私は地球の家族である
タンパク石の雲は遥かにたたえ
オリオン金牛もろもろの星座
06:00
隅切り隅渡って
瞬きさえも少なく
私の額の上に輝き
そうだオリオンの右肩から
本当に恒常の僧侶が
震えて私にやってくる
三つの蝶ちんは
夢の花崗源の白いところまで降りている
雪ですか雪じゃないでしょう
困ったように返事しているのは
雪でなく仙人草の草むらなのだ
そうでなければカオリンゲル
残りの一つの蝶ちんは
一生のところに止まっている
それはきっと河村圭介が
街灯の袖にぼんやり手を引っ込めている
お室の方の花崗へでもお入りなさい
噴火口へでも入ってご覧なさい
仁王の粒は拾えないでしょうが
こんなによく声が届くのは
メガホーンも仕掛けてあるのだ
しばらく躊躇しているようだ
先生長さ入ってもいいがべすか
ええお入りなさい大丈夫です
蝶ちんが三つ沈んでしまう
その凸凹の真っ黒の線
少しの悲しさ
けれどもこれは一体何ということだ
大きな帽子をかぶり
ちぎれたシュスのマントを着て
薬師花崗の外輪山の
静かな月明かりを行くというのは
この石標は花崗の道と書いてあるに沿いない
花崗の中から蝶ちんが出てきた
宮沢の声も聞こえる
雲の海の果てはだんだん平らになる
それは一つの雲平線を作るのだ
雲平線を作るのだというのは
月の光の左から右へ素早く殺光した
一つの夜の幻覚だ
今花崗源の中に一点白く光るもの
私を呼んでいる 呼んでいるのか
私は貴賢オペラの役者です
鉛筆の鞘は光り
速やかに指の黒い影は動き
唇を丸くして立っている私は
確かに貴賢オペラの役者です
また月光と火山海の影
向こうの黒き大きな壁は
溶岩か集岩石 力強い方だ
とにかく夜が明けてお鉢回りの時は
あそこからこっちへ出てくるのだ
生ぬるい風だ
これが気温の逆転だ
09:03
疲れているな 私はやっぱり眠いのだ
火山谷には黒い影
その向こうの花崗球には
幾畳かの軌道の跡
鳥の声 鳥の声
海抜6800尺の月明かりをかける鳥の声
鳥はいよいよしっかりと鳴き
私はゆっくりと踏み
月は今二つに見える
やっぱり疲れからの乱死なのだ
かすかに光る火山海の一つの面
オリオンは限界
月の周りは寝した目の音ぶどう
あくびと月光の同点
羽歩くなじゃい
うなひとりだらいがべ
わらしゃどのつれででめにあえば
うなひとりではすまないんだじゃい
花崗球の上には
天の川の小さな爆発
みんなのでかんしょうの声も聞こえる
月のその銀の角の端が
つぶれて少し丸くなる
天の海とオーパルの雲
温かい空気は
ふっとよりになって飛ばされてくる
きっと屈折率も低く
濃い焼燈用液に
また水を加えたようなのだろう
東は淀み
蝶鎮は元の花崗の上に立つ
また口笛を吹いている
私も戻る
私の影を見たのか
蝶鎮も戻る
その影は鉄色の背景の
ひとりの修羅に見えるはずだ
そう考えたのは
間違いらしい
とにかくあくびと影防止
空のあの辺の星は
かすかな三点
すなわち空の模様が違っている
そして今度は月が縮まる