2024-08-13 09:59

heldio #24. buffalo 構文

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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、buffalo 構文、というものです。
これだけ聞いて、何のことかと分かる人はほとんどいないと思うんですけれども、これは一部では非常に有名な英語の言葉遊びと言っていいんですが、これから発音する文はですね、一文なんですけれども、ちゃんと英語の文法規則にのっとった、成立する、しっかりした文なんです。
buffalo を使った文なんですけれどもね。では言ってみます。
buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo です。
buffalo を8回言いました。
で、これをもう少し盛るとですね、実はもっとすごいバージョンがありまして、言ってみます。
buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo
ということで、buffalo が11回現れるという文、これも英語の文法規則には一応のっとっている文ということになります。
つまり、buffalo という一つの単語ですね、buffalo というアメリカの水牛ですね、バイソンであるとかアメリカ水牛と呼ばれるあのバッファローなんですけれども、これをですね、8つあるいは11個並べてもですね、そのまま英語のきちんとした文になっているという驚きの構文です。
構文というほどでもないんですけれども、buffalo 構文と呼んでおきたいと思うんですね。
さあ、これはですね、まず意味を解説しなければいけませんね。
まず、buffalo アメリカの水牛ですね、バイソンのことなんですが、これ面白いことにですね、これ複数形は2つありまして、
規則通りにESなんですけどね、スペリング上はESとつけてbuffaloesという複数形もあるんですが、実は単複動形のbuffalo そのままで複数形というのもあるんです。これを実は利用しているんですね。
今回のbuffalo 構文ではですね。
もう一つは、b を大文字で書いて、buffalo 市ということです。ニューヨーク州の北西にあるbuffalo という町がありますね。
この町、これももちろん、この水牛のbuffalo 一般名詞をもとにしてできた地名、固有名詞ということでは関係するんですが、これはbuffalo 市の、buffalo 市出身のぐらいの名詞ではあるんですが、形容詞的に使っているということなんですね。
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そしてもう一つはですね、実は動詞のbuffalo というのがありまして、これは俗語ではあるんですけれども、脅すとか威圧するとか混乱させる。
例の水牛の巨声を張って脅しかけるっていう、あのイメージから来てるんだと思うんですけれども、語源についてはですね、はっきりしたことはわからないんですけれども、脅す、威圧する、混乱させるというような意味で動詞として使われているということなんですね。
とするとですね、11個バージョンで言ってみましょうかね。
そうしますと、まず最初のbuffalo buffalo っていうのは、これ複数形で、buffalo 市出身のbuffalo、アメリカ水牛の複数形ということで、buffalo buffalo ですね。
で、その後に関係題名詞の that が省略されていると思ってください。
そしてその後に、buffalo buffalo buffalo と言いますが、buffalo 市出身のアメリカ水牛が脅すということですね。
なので全体として、この5回今まで出ました、buffalo buffalo、that、buffalo buffalo、buffalo ということで、buffalo 市出身の水牛が、buffalo 市出身の水牛を脅すということですね。
これは関係題名詞になって、buffalo 市出身の水牛が脅している、buffalo 市出身の水牛が、ここまでが四語です、全体の文。
で、その後、buffalo、これ動詞が来ます、脅す。
ということで、あとの5つはですね、最初の四語と同じものが目的語に入って、buffalo buffalo、buffalo buffalo buffalo ということです。
ほとんど意味的にはナンセンスです。
buffalo 市出身の水牛が脅している、buffalo 市出身の水牛が、buffalo 市出身の水牛を脅している、buffalo 市出身の水牛を脅しているという、ほとんどナンセンス極まりない文なんですけれども、文法に照らすと一応文として成り立つということですね。
さあ、このように、buffalo が最大11個続いてもですね、文が成り立ってしまうという、一種の言葉遊びっていうか、狂気じみた英文ということになるわけですが、ここに英語詞が絡んでくるんですね。
どういうことかというと、英語では一つの、buffalo という単語、名詞がありますよね。これがいろんな品種で使われるということです。
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まず、buffalo というのはアメリカ水牛ということですから、名詞なわけですが、そこに脅すという意味が発展しているわけですね。同じ形でです。
由来は、よくわからないと先ほど述べたんですが、これは俗語で19世紀になって出たものなんですね。
名詞としてのアメリカ水牛という意味のbuffalo は、これは16世紀に出ているので少し差はあるんですが、19世紀に脅すという意味が俗語で現れた。
全く名詞と同じ形で動詞が現れたということです。
一方、buffalo 氏という固有名詞は、一般名詞である水牛のbuffalo から由来したんだろうと思われますが、これがスペリングで書くと最初が大文字化して固有名詞になるわけです。
そしてそれが事実上、形容詞的に使われてbuffalo 氏出身のという意味になっているわけですよね。
このように英語では、ある単語、典型的に名詞がそのままの形で動詞になったり形容詞になったり、他の品種を兼ねるということがごくごく当たり前なんですね。
例えば、何でもいいですが、love という単語。これは愛するという動詞でもあり、そして愛という名詞でもある。
これは英語を知っていると当たり前のように思われるんですが、実は非常に稀なことなんですね。
英語の属するインドヨーロッパ語族では、名詞であればこういう語尾がつくであるとか、動詞であればこういう語尾がつくという屈折語尾って言うんですが、これが非常に発達してるんですね。
英語も、古英語、そしてギリギリ中英語までは、名詞だったらこういう語尾がつくものだよと。つまり単なるbuffalo だけでなく、その後に何らかの語尾がつく。
これは書くによってですね。主格とか対格によってとか。例えば、そういう形で、名詞でも文の中では裸のままでは現れないことも結構多いんですね。
さらには動詞なんかもそうで、動詞も、例えば三人称単数現在、今でもSをついたり括弧形EDつけたりしますが、もっと細かい条件によって、
必ず何らかの語尾を伴って現れてたんですね。それが、古英語から中英語にかけてですね、だんだんこの語尾が取れてくる。なくなってくるんですね。
これ名詞も動詞も、そして形容詞もそうなんですが、何らかの語尾ついたんですが、なくなってきます。
中英語まではギリギリその痕跡があったんですが、近代語記にかけて、これが完全に消失します。
そうすることで、本来ラブなんかも動詞と名詞で形が、語尾がちょろっと違ってですね、ちゃんと区別できたんですが、できなくなったということです。
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ここで初めて同じ形なのに、名詞でも動詞でもあり得るという状況が生まれたということなんですね。
それ以降は、それをですね、ある意味利用する形で、悪用する形でですね、どんな名詞でも簡単に関連する動詞の意味になる。逆に動詞だったらそのまま使って名詞の意味になるというような、そのままの形で品詞を転換するという、ある意味技をですね、英語は覚えてしまったということなんです。
これによって、バッファロー公文のような、おちゃらけた英文というのが可能になったということなんですね。これは極めて英語主的な話題だと思います。ではまた。
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