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コーノ
今日は、上林暁の傑作小説集、「孤独先生」という本の、まあ、一部、間奏って書いてですね。
短編集なんで、全部を取り上げてというよりは、気になったやつだけを一部喋ろうかなと思ってます。
で、僕は全くこの人の小説読んだことなくて、で、名前だけ知ってて。
で、もともとは古本屋の人が書いた本、随筆の本で、「石日の客」っていう本があって、それに出てくる作家みたいな感じで知ってたのと、
あと、この選書してる人、これ選書なんですけど、山本義行さんという人が選んだ短編が入ってる、この人が作った本っていう感じなんですけど、
poe
この人が、もともと、この寛邁氏・赤月っていう人がすごい好きで、で、この選書というか選集というかを何冊も作って貼って、
コーノ
で、それで知ったっていうのもあります。
だから読んだのは、これが初めてですね。いわゆる昭和の文豪とかの世代の小説家ですね。戦中戦後世代。
poe
石日の客っていうのと、今回の仏先生はどちらも松浜社から出てくるんですね。
コーノ
そうですね。
poe
私は全然知らない作家だったので、全く何の前情報も読みました。
コーノ
そうですね。僕もこれ読んだ後にいろいろなんか調べたりはしましたね。
高知かどっかの出身の人。東京で住んでたというか、小説家をやってたみたいな。
poe
高校で、確か九州に行ったんじゃないですかね。そのあたりの話も小説に結構出てくる。
熊本の第五高等学校に行ってるということです。
コーノ
東大英文科って書いてありますね。
プロフィールを見ると、改造者の編集者をやってたっていう原稿を取りに行きながら小説を書いてた。
編集者から完全に小説家に転校途中からしたっていう、そういう人でした。
小説はもともと書いてたけど、あまりやっていけると思ってなくて、編集者をやってたみたいな感じですね。
poe
基本的には短編小説家ですかね。
コーノ
そうですね。僕、この本を買うときに、矢本義行さんに聞いたんですけど、長編ないんですかって聞いたら、
poe
体力がないというか、病気したかって長編を書けなかったらしいです、この人。
コーノ
だから短編しかないって言って。短編しか出てないですね。長編が出てないですね。
poe
この作家の傑作小説集はいくつか出てる中で、この孤独先生を選んだっていうのは何か理由があるんですか。
コーノ
これは、これしか売ってなかったです、そのとき。欠品してても。
これ、僕が買ったやつ、この孤独先生は初版なんですけど、今まで出てる星を舞いた町とか、同じなつはしゃから出てるやつが何冊かあるんですけど、
この寒梅釈迦月の千秋。それとかは多分、ほとんどもうなんずりなんずりになってて。
で、売ってるときがあれば、欠品してるときもあるみたいな感じで、僕が行ったときはもうこれしかなかったんで、これを買いました。
代表作が、病災者って言われる、いわゆる奥さんを看病するジャンルだったりして、なんかそれがめちゃくらい話みたいで、
聖ヨハネ病院にてとか、その辺は多分病災者だと思うんですけど。
poe
明月記。
コーノ
その辺とかでしょうね。だから代表作はすごい暗いけど、なんか大丈夫ですかみたいな感じで聞かれて、
じゃあなんかこっちのほうが読みやすいかなっていうことで、これを買ったっていうのもありましたね。
だからこの孤独先生に入ってる話は、暗い話あんまなかったですよね。
poe
そうですね。病院が舞台っていうのも。
コーノ
病災者は多分一個も入ってないですね。その奥さんの話。
コーノ
はい。
poe
その中から、とりあえずタイトルだけお互いにまず。
コーノ
そうですね。順番にどんな作品があるかっていうと、
雨草見上げっていうやつと、寂しき足跡、海山、溶接、トンネルの娘、東映、制服、景色、みかんじんこうゆず、孤独先生、手風菌は古びたっていうこの11作ですね。
うん。
その中から僕が好きやったやつは、溶接とみかんじんこうゆずと孤独先生か。
poe
私は東映とみかんじんこうゆずと手風菌は古びた。
コーノ
あんまりかぶらないですね。
poe
そうですね。孤独先生は次ぐらいいいかなと思いました。
コーノ
まあ短編なんで、やっぱりすごい物語が展開するっていうのは少ないし、なんかその、やっぱ印象で選んだって感じになりますね。
面白いっていうのもあるけど、自分が好きな印象っていう感じですね。
poe
溶接は河野さん選ぶかなってちょっと予想してました。
コーノ
これは僕が好きな漢字の話ですね、大体いつも。
poe
これ順番で言うと一番早いし、ちょっとこの話からじゃあしましょうか。
コーノ
そうですね、一応僕が選んだんで僕が大体話しますけど、この主人公っていうのが大体本人なんですよね、作者本人。
完売者あかつき、まあ完売者あかつきペンネームで、作中の主人公の名前みたいなのがあるんですよね、毎回。
で、それが竹内陽一っていう名前がよく出てきます。
この制服とかも竹内陽一っていう名前で出てきて、この溶接の中でも竹内君って呼ばれてたんですよ、確か。
作中では別名を使うみたいなことをやってますね、完売氏。
詩小説作家なんでほぼ本人の体験をボタンした話みたいなばっかりですね。
この溶接もそうやろうなっていう感じなんですけど、語り手の作者と田田君、この二人の関係性の話っていう友達ですね、学生時代の友達ですね。
poe
そうですね。
コーノ
で、溶接っていうタイトルの通り早く死んでる、この田田君の話で、この田田翔介かな、物語のキャラクターっぽい人、よくいる人というか、魅力的な人ですね。
poe
そうですね。
コーノ
木座で明るく、鋭敏で語る才気って僕はメモしてますけど、なんかその芸術派だっぽいけど、芸術はできないっていう、なんかちょっと自負がある人。
で、友達がなんか多くて明るくて、で結構感情激行しやすいみたいな人やったりとか。で、なんかその田田君がこの下駄を裏返されて怒るとこが始まるんですよね。
poe
そうですね。
コーノ
なんか、そんなことをするのはなんか失礼やって、根踏みしてる意味合いがあるっていうのは多分知らんと向こうはやって。
poe
学生なのにそういうことまで知ってるっていうので、ちょっとこう主人公よりかは世の中よく知ってるような。
コーノ
そうですね。
poe
そういう感じで。
コーノ
遊びとかを何でも知ってる人みたいな感じもあって。
poe
もともと文学、文化を専攻してたけど、法学部に、文化に進んだのか。主人公は文化に行ってる。
コーノ
だからこれは東大の話なんでしょうね。
で、僕はこの語り手と田田君の対照性というか、この主人公の語り手はすごいこう大人しくて、ぎっこみじやむみたいな感じで、部屋で小説を書くみたいな。
あとは本読んだりとかするっていうのが主で、そんなにこう外に遊んだりとか、友達いっぱいとかそういう感じじゃないみたいな。
だからこう、田田君となんで一緒にいるのかわからんけど、向こうはなんか気に入ってくれてるみたいな。
poe
なんか小説ってこういう組み合わせたまに見ません?
そうですか。
なんかこうすごいキャラクターのある人物と一見そうでもない主人公が妙に気が合うみたいなのは何個かあるかなと思いましたよ。
それこそ村上晴樹のノルウェーの森も、主人公の僕と田田君に相当するのが長澤さん関わり者の先輩っていうのはあったし、
グレートギャッツビーもちょっとそういうね、主人公はギャッツビーの様子を見ている立場で、ギャッツビーがこういろいろ放送したりするのを描いてたりするし。
コーノ
そうですね、主人公は別に金持ちでもなかったですもんね、特に。
poe
なんか観察者みたいな立場。大江健三郎でもなんか日常生活の冒険っていう小説があって、キャラクターがこう対極な人物みたいので描かれてたりするから、まあまあよくある関係性かなと思いながら見てました。
コーノ
なんでこの馬が会うのかみたいな話もちゃんと書いてあるんですよね。
語り手の人は、主人公は話を聞く人みたいな感じで批判とかもしないし、すごいのっかりもしないし、なんか何でも話聞いてくれるみたいな感じ。
あとはそういう小説を書くっていう佇まいであったりとか、そういうのがちょっと憧れられてるみたいな、なんかお互いないものを持ってるから、馬が会うみたいな、そういう感じでしたね。
poe
一種の敬意を持っていてくれたっていう風に書いてますね。
コーノ
そうですね、お互い。なんか結構僕もなんかこういう友人関係みたいなの、ちょっと身に覚えがあるなと思って。
poe
自分自身ってことですか。
コーノ
ありますね。
poe
どっち側なんですか。
コーノ
僕はどっち側の時もあるんちゃうかなって思うんですよ。
でもどっちかって言ったらやっぱり大人しい側の方が多いですね。
だから社交的な人が妙に懐かれるみたいな時とか。
poe
なるほど。
自分はそういう派手な人間じゃないのに、なぜかそういう人と馬が会うみたいなこと。
じゃあ逆に河野さんがタダ君側の時もあった。
コーノ
あるんちゃうかなっていうか、そう思う人はいるんちゃうかなって。
だから自分より全然大人しいというか、なんかいろいろやらないとかそういう人は全然いると思うんで。
だからそういう風に思われてることももしかしたらあるんちゃうかなと思って。
poe
そういう人に対して河野さんもただの大人しい人っていうよりかは、
大人しいけれどもちょっとこう何かしらの自分に惹かれるものがあるみたいなのを感じてたってことですか。
コーノ
そうやと思います。
なんか喋りやすいところがやっぱあるんでしょうね、まずは。
なんかいろんな話をしやすいとか。
poe
なんかね、ありますよね。
なんかこう趣味とか趣向違ってもなんか馬が会うっていうのは。
コーノ
ほんまにタイプが違うみたいなのがよくあるんで。
poe
だから意外と同じような雰囲気で集まってるわけでもないよなと。
コーノ
人によっては全然あると思うんですけどね。
似た人と一緒に遊ぶのがいいみたいな。
poe
それもあるけど。
コーノ
こういうのも意外とちゃんと身の回りでもあるなっていう。
自分ごととしても多分あるなと思いますね。
この話は短いんで、話のこのメインになるところは、
ただくんが急に結婚してあがるっていうところですね。
poe
そうですね。
これね、ここが。
コーノ
一応この話のメインのところっていう感じですね。
なんかそれも別に好きな人ができたとかそういうわけじゃなくて、
関東大震災の後に女の人とかと食事をする機会があって、
で、そのときにちょっと温かさに触れて泣いてしまったみたいな人が何人かいたんですよね。
poe
友達同士で。
コーノ
で、この遊んでる日々を反省して急に結婚したくなったって言って。
poe
もちろんただくんも泣いた一人だったんですね。
コーノ
真面目に生きるぞみたいな。
そういうのがほんまいいんじゃないかみたいな感じで急に結婚したいと思って、
相手はこれから考えるみたいなことを言ってたらすぐに相手の候補を見つけて。
で、いとこですね。
poe
そうですね。
コーノ
で、いとこにも急にだから会いに行くって言うんですよね。
いとこを京都にで。
poe
そのままいとこを選ぶあたりのね、なんでそんないとこになったのかみたいな話をしてるときに、
ただくんが、ただくんの説明はちょっと私も面白くて線張ってますけど、
元から好きだったのかって言われてもいや、関心を持ったことも好きだったことも一度もなかったよって。
コーノ
でもこの時代の結婚ってやっぱり結婚ですからね。
やっぱり恋愛と全然別っていう感じですもんね。
poe
結婚ってことを考えたら真っ先にそのいとこの子が頭にひらめいたって。
行動力あるなと思いながら読んでましたね。
コーノ
そうですね。だいたいほんまそういう人って感じですもんね。
思い立ったらすぐ動くみたいな。
そんなに美人でもないみたいなこと言ってるんですよね。
poe
そうですね。
コーノ
けどなんか表情美っていう言葉が出てきて、表情がいいからいいと思うみたいな。
poe
普段から口癖のように言ってみつかりますね。
コーノ
でもなんかそれ結構僕はわかるなって思うんですけど、
なんかその顔が整ってるとかっていうよりも、
笑顔がいいとかっていうのはよく言うじゃないですか。
綺麗やからっていうよりもそういう瞬間になんかときめくみたいな話はよくあるじゃないですか。
男性でも女性でも。
だからそういうことかなっていうのは思ったんですけどね。
そうですね。
poe
でも京都に汽車に乗って行ってプロポーズとかして。
コーノ
で、これが比叡山に行くんですよね。
なんか比叡山やなと思って。
で、帰ってきて手紙があって振られたっていう。
若さの見本みたいな、すごい浮き沈みというか波があるんですよね、この辺が。
poe
そうですね。帰ってきたときは自信満々だったでしたよね。
コーノ
この言い草とか結構ひどいんですけどね。
この時代やからちょっと今と感覚は多分違うと思うんですけど、
相手を選んだ理由がお互い不幸やからみたいな。
poe
そうですね。
コーノ
そんなんやって。
その話自体は聞いてて全然悪くないと思うんですけど、
poe
これ言われた側はどう思うかなみたいな。
たぶん悪気はないし、たぶんすごい愛情を持ってるはずなんだけど、
言ってることはそこそこひどいですよね。
コーノ
そうですね。それがほんまにあけつけなく言ってるっていう感じとか。
若い人で、この時代はそういうのはわかんないですけど、
女心とかそういうのを一切考えずに言ってる感じとかもすごいなと思って、
みずみずしい文章だなと思って読みましたね。
poe
2人とも不幸の人間同士だからこそきっと美しい家庭ができるんだっていうふうに言ってますね。
この人ですね、でもそのネタバレ今回は話しますけど、
妹子からの手紙が結構グサッと刺さるというか、
妹子の手紙に妹子の人が考える夫婦とはみたいなことが書かれてて、
そこは結構私は面白いなと思って付箋を貼ってたんですけど、
162ページで結局妹子が申しで断るっていうオチなんですけど、
夫婦になる以上はお互いに未知数のものを持っていて、
その未知数のものから何かを想像していくのが楽しみ。
兄様と自分の間には何一つ未知数のものがないって言って、
だから私たちはちょっとどうかなみたいなことで断られちゃうんですよね。
なんかここにこの夫婦論みたいなの書かれてて、
そういう面はあるよなと思いながら読みましたね。
コーノ
プロポーズの反面この断りの手紙はめっちゃ大人なんですよね、内容大人が。
だからやっぱりこうなんていうか、現実を見ているというか。
poe
この手紙の最後の方に自分は学校の先生になって、
中学校教師のような地道な人と結婚して平凡な人生を送っていきたいっていうのが書いてあると。
コーノ
自分らの時にはないからこういうのが。
poe
確かに。他の短編でも手紙何度か出てきましたけど。
だってこの断りプロポーズの断りも便箋10枚って書いてましたからね。
コーノ
時代やなと思って。でなんかその後にね、結核になるんですよね。
結核になって立山から立山で療養するっていう感じになってましたね、タダ君は。
poe
そうですね。
まあ私としてはもうこの手紙で振られて畜生ってなるところがもうハイライトで。
コーノ
そうですね。
poe
あとは割とスッと終わったなっていう独豪感でした。
コーノ
その邦楽部の高等文化試験になんか受けるって言って。
でまあその合格した後に死んでしまうんですね。去年27歳になりましたね。
まあだからこういう人いたんやなっていう感じの詩小説っていう感じで。
でもその時代はやっぱ若くて死ぬ人も多かったし、結核で亡くなる人もね、めっちゃいましたもん。
この昭和の時代って。
若さの勢いだけでそのまま死んでいく人みたいな人もいっぱいいたんやな。
poe
タダ君みたいな元気な人がやっぱりこう今だと助かるような病気でも、
昔はすぐにこう亡くなっていくっていうのはやっぱりこうね、時代を感じるし、
なんかこう若さの輝きみたいなのを感じましたね。
コーノ
僕はやっぱりそういうこの人物が魅力的っていうのでまず第一に選んだのと、
そのなんか波乱万丈な感じというか、なんかまあ言っちゃ恥ずかしいような内容でもあるけど、
でもなんかそれを真面目にやってるとことかもちょっと面白いし。
poe
まあそうですね。若さのなんていうか特に下に構えたこともなくね。
コーノ
そうですね。なんかほんま当たって砕けてる感じとかね。
でも内容は結構切ないとこもあって、なんかいいなと思いました。
poe
じゃあ次は順番で言ったら私が選んだ東映を。
東映っていうのは冬の営業のAで東映ですね。冬ごもりみたいな。
最初に書いてね、冬ごもりとか雄大もふさわしくなくて東映にするって書いてあるんですけど。
時代としては本当、これは戦中ものですかね。
コーノ
そうですね。
poe
裁判に出撃してるとかそういうことも書かれてるし、防災図鑑の話とか。
コーノ
空襲警報みたいなのも。
poe
出てますね。
出てますね。
そういう時の冬の話っていうので、これはこの作品の中では一番経過してる時間が短い話だったかなと思います。
その日の夜だけの話でしたよね。
場所としてはもう本当に一家団乱の場面っていうので、主人公が僕っていうので父親。
僕の妹の仙子っていう女性がいて、奥さんは事情があっていないみたいな書き方をしてますけど、
詩小説っていうことを考えると僕っていうのが完売し暁きて、奥さんはちょっと病院にいるのかなっていうことが。
コーノ
入院中か。
poe
推察されます。
で、まだ子供が2人いて、その子供の面倒を妹が見てくれてると。
娘が2人、京子と詩小っていう子がいて、みんなで冬の夜食事が終えた後に、みんながちょっと団乱の時間で思い思いの仕事をしてるっていう、そういうシーンですね。
コーノ
これは僕の印象ではもう飯物なんですけど。
poe
飯物っていうと。
コーノ
そうですね、食事がメインかなっていう感じで、あとイメージとしてはこの世界の片隅のご飯のところに近い印象でしたね、僕は。
poe
この世界のご飯のシーンがちょっと。
知らないですか。
いや、見たけどあんまり覚えてないですね。
確かに食事のシーンもいいなって思ったのがあったんですけど、振りかけですよね、食事のところっていうのは。
私がいいなと思ったのは3つあって、これって戦争の時のちょっと大変な時期だったけど、そういう時代の日常っていうところが描かれていて、時系列で話すと救急袋っていうのを子供たちは学校に持っていくんですよね。
で、それを自分たちで手作りして持っていくっていう、そういう世界なんですけど、おばちゃんが作ってくれた救急袋を子供がすごい喜んで、寝る前も自分の布団の近くに置いたり、作ってもらったらすぐに肩にかけて喜んでるっていうシーンがあるんですよ。
コーノ
208とかそんなに。
poe
208か209のあたり、子供が作ってもらった救急袋をすごい喜んで肌見放さなかった。食事の時にも肩にかけたままだった。夕食の後には極まって、いろいろ中の物を出したり広げたりしてるっていう、そういうのがあったんですよ。
なんかね、私が今から挙げるところって一つ一つはすごい鮮やかな話なんですけど、なんかそれがこうポンポンといくつかあるっていうことで、戦争の中の日常みたいなものを強く感じたっていうものなんですけど、まずそういう救急袋の話が一つ。
すいません、もう一つが前後しちゃったんですけど、266ページあたりから出てくるそえぎの話。空襲で、もし骨折した時っていうのは粉砕骨折っていうのになるから、骨が砕けて粉々になって危ないからそえぎをするんだよねみたいな話を戦後がしてるんですよね。
で、主人公がそえぎっていうのは痛さを止めるものなのか、折れた骨を支えるためのものなのかどっちなんだみたいな、そういう話をするじゃないですか。
コーノ
こういうの、ほんまにこの世界の片隅の冒頭の何分か忘れましたけど、ご飯を作るシーンとかがあったりとかして、僕漫画の方は読んでないんですけど、映画版の公開当時に戦時中でもこういう工夫があったりとか楽しみがあったみたいなのを言われてたのを覚えてます。それを思い出しました。
poe
なんかあれですか、まな板をバイオリみたいにして。
コーノ
料理作ってる時はそうですけど、量を増やすために、なんかいろんな工夫をしたら全然おいしくなかったとか、こういう時代やけど、それなりの生活があって楽しみがあったみたいな、そういう描写がしっかり描かれたみたいなのは、なんか珍しかったって言われたかな。
映画とかってやっぱり戦争怖い悲惨みたいな、そういうのが多い反面生活感のある話ってことですね。
poe
もちろん生活がずっと続いてたわけですからね。そこでみんなは工夫して何とか楽しもうとしてたんでしょうし。
コーノ
結構そういう話があるんやなっていうの知らんだけど。
poe
この東映はほんと短い話だけど、すごいそういうことを感じれる作品でしたね。
そうですね。
コーノ
じゃあ次は。
poe
二冠陣こういうかぶったやつですね。
コーノ
これが一番長いのかな、そこでもないのかな。結構長いって言ってたよね。
poe
中でも長い方ですね。この話はわりと明るいトーンでしたよね。
コーノ
そうですね。冒頭ですごい言い訳のように、実は全然この二人は肝心でもないし、
なんかすごい不幸な状況にいて苦しい性格で送ってみたいな、めっちゃ書いてあるんですけどね。
でも内容は全然そんなんじゃないんですよね。
本人たちも全然そんな風を感じさせない人みたいな感じで始まってましたね。
著者、甘林が小林川くん。この滝沢さんっていう人がドイツ語の塾をやってる先生で、
そこで今は習いに行ってたっていう二人の関係が、滝沢ゼミっていうのが終わってからもずっと続いてたっていうことで、
二人の交誘読みたいな。
そうですね。
そういう話ですね。
poe
小林川くんの3、4歳年上が滝沢さん。
小林川くんは詩小説を書いてるっていうので、著者の分身と思われるような形になってると。
小林川くん、奥さんじゃなくて妹が家の手伝いしてくれてるって書いてませんでしたっけ。
東映と似た家族構成だった気がします。
コーノ
そうですね。時期が一緒なんでしょうね。奥さんが入院中の時期。なくなった後かどうかわからないですけどね。
でもこれの方がちょっと早いのかな。東映の方がちょっと後なんですかね。
その226事件みたいなのが最初に出てくるんだよね。
poe
そうか。
コーノ
なんかその将棋の話があるじゃないですか、最初の方に。
将棋を指す前に世間話をするみたいな時に、だいたいそういう今の戦争の状況みたいなのを言ってたなと思って。
poe
174ページ。
コーノ
そうですね。ドイツがロンドンを爆撃してるみたいな。だから日本は戦争中か始まる前後ぐらいが多いのかな。
poe
確かそのゼミナルの学生さんたちも戦争の影響で国に帰ったりしてましたよね。
コーノ
日中戦争かなんか満中事変かなんかその辺で。
poe
そうですね。264ページの最後の2行あたりで。
そうですね。
しなじ変が起こるって書いてましたから。
でもこの話は本当に全体的なトーンとしてはこの2人の保有力で。
コーノ
ほんま全然戦争を感じないですよ。この時期やけど。
poe
すごいのんびりというか、2人のノリが合ってるんだろうなと感じますね。
コーノ
すごい貧乏みたいなの書いてるけど、それもあんま感じないですよね。あんま関係ないみたいな感じですよね。
poe
結構飲み歩いてるし、釣り行ったり。
コーノ
おでん屋とか行ったり。
poe
おでん屋に行ったりね。楽しんでますよね。
コーノ
そうですね。だからその2人の保有力、保有機がこの2巻地にこういう図っていう。
poe
まあ醤油よくさしてるし、終わった後、銭湯に行ったりとか。
はい。
釣りに、滝沢さんが好きな釣りに小林くん、塚賀くんがついてて、別に釣りに熱心になるわけでもなくダラダラしたりみたいな。
割とこう、前回会った時に男性の孤独みたいな話をしたじゃないですか。
はいはいはい。
それもちょっと頭にまだあって、こういう関係って結構理想的だよなって思いました。
コーノ
そうですね。なかなかだいぶ親しいですからね。なかなか珍しいかなと思うんですけど。
どっちも真剣になってんのかなってんのかわからんぐらいの感じとかもすごいいいなと思って。
同じ趣味というか遊びをやるのもあるし、食べに行くっていうのも楽しい。で、どっか行くっていうのも楽しい。
poe
なんかアパートの前に来て、外から滝沢さん、滝沢さんって呼んで、そしたら2階の窓が開いて滝沢さんが出てきてみたいなね。
コーノ
なんか通りがかりに空いてたりとかもね。空を見てたとかね。
poe
すごいこの友情の軽やかさというか、風通しよく。
コーノ
なんか将棋を指しに来るからこの時間はだいたい家にいるようにしてるとか。
poe
いい関係ですよね。
コーノ
切迫感がないというか、将棋指しながらなんか声を上げたりしてんのを子供がちょっと面白がって書き留めたりとかね。
poe
そうですね。
コーノ
すごいのんびりしてるんですよね、この家庭全部が。
それを読めば読むほどやっぱり冒頭の2人の境遇がなかなかしんどいっていうのはほんま全部言い訳のように見えるもんね。
この二漢人こういう図が一応それぞれのパートごとに分かれてて、
二漢人将棋を指すの図とかタイトルがついてるんですよね。
二漢人釣り、これなんていうの、張魚の図。魚釣りですよね。
二漢人酒を飲むの図とかね。
それぞれのパートごとに何をやった時の話みたいなのが書かれてるんですよね。
poe
入浴の図か、ついに。
入浴の図。すごいほんまに二漢人やりくりの図と。
なんかね、やっぱりさっきちょっとちらっと行きましたけど、釣りをする図のパートで竹澤くんが釣ってる横でもなんか小早くのんびりしてるんですよね。
別に釣るわけでもなく、ついてって。
コーノ
寝ますよね。
poe
これめっちゃ、なんかね、私、昔神戸の方に住んでて釣りもしてたんですよ。
で、私はそんなに釣り熱心じゃなくて、熱心な友達についてて、なんか喋ったり、なんかこうコンビニで買ったおにぎり食べてたりっていう生活があって、なんかすごいその時思い出したんですよね。
なんか、あーすごい楽しかったよな、ああいう時みたいな。それをこのパートですごい思い出しましたね。
その、小早くん、かわくんは釣りをやらへんけど、一緒に行ったのが楽しかったから、2回目も行くようになった。
なんかありますね、こういうの。
コーノ
そういう感じで始まってましたね。
poe
よかったな。
コーノ
なんか僕はこの川渡るとことかすごい面白かったんですよね。
川の流れが、流れが強すぎて渡れへん、渡れへんかもしれんと思ったら、おばあちゃんがさっと渡って行って、あの通りに渡ればいいんかって言って。
poe
そうですね。
コーノ
あのおばあちゃんが渡れて渡れへんはずないみたいな。
poe
この辺のおばあちゃんね。流れの感もちゃんとわかってる。
コーノ
すごいだから、なんか流されたらどうしようみたいな感じですごいなんか切羽詰まってるんですけど、おばあちゃんがバッと渡っていくから。
poe
その後2人で河原でパン食べてんのかな。
うん。
なんかいいですよね。
コーノ
あとなんかほんまに、これもうちょっと手前に出てくるんですけど、小林くんはもう釣りせえへんのに新聞の釣り欄を見るようになる。
poe
そうそう。そういうね、なんかちょっと見る景色変わってる感じ面白いですね。自分は釣りしないのに。
コーノ
で、なんか橋を知ってるんですよね。釣り欄読んでるから。あそこですか?みたいな。
poe
だんだん詳しくなってきてる。なんかどのパートもよかったんですよね。
コーノ
僕は読んでてやっぱり、おでんや寿司屋のくだり、ぽんさん好きやろな。
poe
私ね、めっちゃ好きですよ。306ページあたりかな。2人でお寿司食べに行ったりおでん食べに行ったりするんですけど、滝沢さんの方がまあ年長の成果、余裕があるんですよね。
うんうん。
おでんもいい感じに食べるけど、小林くんはもうなんか腹の口くなるほど食いやさるみたいな。
コーノ
選び方とかもね。
poe
寿司もそうですね。滝沢さんはもう好きなものを少しずつ、穴子ばっかり食べてるみたいな。
小林くんはそれとは反対に、もういろんな寿司のバラエティを楽しむのが好きで。
コーノ
ちょっと若いんですよ、やっぱり。
poe
なんかね、余裕ない感じがね、すごい面白いんですよね。そうそう。これね、よかったですね。
なんかね、あの。
コーノ
自分がいかにも雑食家に見えて、だんだんひけ目を噛んずるのが。
poe
なんかね、全然描写が似てるってわけじゃないんですけど、絵本で2人は友達っていう、カエルの2人組の話ってこんなん知ってます?
コーノ
あー、なんか昔のやつですね。
poe
昔のやつ、カエルくんとガマくんかな。なんか2人いて、ガマくんの方がちょっと失敗するみたいな。
で、それを優しく見守るカエルくんで、2人は仲いいみたいな。そういう絵本があるんですけど、この2人を私は想起しましたね。
たしか教科書に手紙だったかな。そういう話が入ってた。
コーノ
絵は見たことありますね。
poe
うん。おでんの下り、寿司の下りはね、よかったですね。
コーノ
すごいね、日常感があるんですけど、なかなかこういう関係性っていうのは珍しい。
poe
これ実際できてる人少ないですよ。
コーノ
なんかまあ飲み友達とかっていうのが多分こういうのだろうなと思うんですけどね。
poe
うーん。近所に住んでて飲み友達で。
コーノ
まあ同じ店への通ってるとかで仲良くなった人とかがいれば、だいたいどれも飲んでて面白いっていう。
poe
そうですね。これはかなりおすすめじゃないかな。この作家の代表的なトーンではないとは思うけど、これは。
コーノ
そうです。この本の中では僕は一番好きです。やっぱり代表ですよね、この本の中では。
poe
お風呂のシーンだと、これ313ページのあたりですね。
センと二人で行ってて滝沢さんがこう上手に石鹸を使って体を洗うんですね。
くず石鹸を使って。
小林君がそれを見てて、今度からああしてやろうと小林君が胸をときめかしたっていうね、というのもよかったですね。
全部よかったな、これは。お金には困ってるけど、割と時間には余裕があるっていうライフスタイルなんですかね。
コーノ
そうでないと、なんかね、1日2時間将棋やったりとか、200番将棋みたいなと。
そうそう、400番。
poe
400番。
原稿用紙。
コーノ
埋まるまでみたいな。
poe
埋まるまでやるって。
コーノ
なんか暇なのかなって思いますけど、でもそれぞれお金に稼がなきゃ必死やみたいな。
だって家賃3ヶ月待ってもらってばっかりみたいな。
poe
そうですよね、最後らのあたりでそういうこと書いてますよね。
これはどこまで、ほんとただの想像になりますけど、顔林博月の中でも何というか、自分の生活でこういういい友達がいて、その時の思い出を閉じ込めたんですかね。
これちょっと詩小説っぽくないですよね、これなんと。
コーノ
でも、実在の人みたいですよ、この人。
なんかその、実際の交友みたいなのを書いてますよ。
解説にも書いてましたし、あと書きか、選手あと書きのところにも。
poe
でもなんかこう、脚色が他のより強い感じがするというか。
あ、そうですか。
なんかここですごいトーンがやっぱり明るいし、なんかこう、ちょっとこういうふうな明るい感じで書きたいなとか書こうかなっていうふうに方針立てて書いたのかなという気もしますけど。
コーノ
僕は実際やっぱこの交友が心の支えだったよなと思うんですけど。
一応この選手あと書きのところに、
poe
その人の登場物で一冊の本が飴ればそれも楽しい一冊になると思うって書いてますね。
確かに。面白そうですね。
コーノ
結構だから、ほんまに苦しい時期の心の支えだったんちゃうかな。
それぐらいのなんか明るいトーンで書かれてるんでね。
銭湯でもおでん屋の客と会うみたいな書いてますね。
poe
街が狭いのかな。
コーノ
とは、あのですなーがいいなとか。
2人でこう、なんとかですなーみたいな言い合うみたいな。
まあ二漢人、酒を飲むのずですなーとかっていうのも、こういう漫画とか多いですよね、たぶん今は。
poe
あーなるほどね。
コーノ
SA漫画とか、それぞれのなんか趣味とかをテーマにしてるストーリー。
それこそご飯とかサウナとかをテーマにした作品とか、なんかそういう感じのテーマ、今の方が多いかもしれないですね。
poe
確かにそうですね。
コーノ
こんないろんなことを一緒にやるみたいなのはあんまり知らないですけどね。
今のそういう漫画とかを読んでる人もめっちゃ読みやすいとかですね、入りやすいというか。
全部上手いわけじゃないけど、その将棋はちょっとなんか作家の大会で優勝とかをしてるから。
poe
そうですね。
コーノ
アマチュアですね。
poe
将棋版もらってました。
ですなーでいいセリフあったなと思ってて、今思い出しました。
316ページ、最初の2行目、3行目ですけど、
1杯飲めると思って出かける時の気持ちが一番いいですなーって、
金なんか大して欲しいと思わないけど、飲みたいとき1杯飲めるだけの金は欲しいですなーっていう。
それでいいですね。
コーノ
飲むときじゃないんですね、これ。飲んだときとかでもないんですよね。
出かけるとき。
poe
出かけるときの気持ちが一番今、確かにね。
コーンさんの孤独先生。
コーノ
孤独先生もキャラクターですよね。
先生の人柄というか。
poe
はいはい。
コーノ
鏡先生っていう名物先生で、中学校の時の先生です。
poe
うんうん。
コーノ
なんかあだ名つけてられたりとか。
poe
カッカでしたよね。
コーノ
そんな、いまいちどんな先生かわからんような感じ。
poe
そうですよね。
コーノ
距離があるから多分、生徒と先生っていうんで。
うかがいながらフォーカーフェイスというか。
poe
そう、生徒にほもねらないというか、いわゆる人気の先生っていうタイプではないけど、
でもまあそういうところが逆にちょっと好かれてるみたいな、そういう先生ですよね。
コーノ
あとはなんかほんまそういう、ちょっとわからんとこがいいのかなとか思うんですけど。
poe
なんかね、こういう先生っていたよなーみたいなの私はあったんで、
まあこういう先生のことを書いてるんだろうなっていうあたりをつけながら読んでたんですけど、
多分その、まあこの寒梅市あかつきもそういう先生がいたんでしょうね。
こういう孤独先生的な人が。
ただなんかこの、まあそういう先生と生徒の関係のせいであまりこう鏡先生の情報って少ないじゃないですか。
でも多分その生徒としてその先生に接してるとその先生の面白さみたいなのってわかると思うんですけど、
なんか読者として読んでると、なんかこう自分はその先生のこと知らないから、
その先生の面白さっていうのがちょっとこうわかりづらくて、自分の経験で補ってるなって思いながら読み。
コーノ
そうですね、あんまり深くは入れないですからね、どういう人かっていうのが。
なんでしょうね、どんな先生かわからんなと思いながら読んでいく中でいろいろ情報が出てきて、
なんかそれが結構面白い、一個一個が面白いなとか思ってましたね。
一人で囲碁を打つとか。
poe
囲碁が好きなんですよね。
コーノ
船酔いめちゃするとか。
poe
これね、ちょっとここだけ謎っぽく書かれてましたよね。
コーノ
してないのかしてないのかしてるのかわからんけど、すぐ平気になるんですよね、置いたら。
そう。
乗ってる間だけなんかすごいしんどそうな。
poe
これ何でしたっけ、旅行?修学旅行ですかね。
なんかみんなで船に乗って遠出、1日船の中みたいな。
コーノ
そう。
poe
そういうシーンですよね。
これ本当にただの先生の船酔いがひどくて、もう静かにしてるのか、
先生の中の別の謎があるのかわからずに終わっちゃったかな。
コーノ
なんかそういうすごいやっぱりね、遠巻きから見てる感じがあって、わからんなっていう感じが面白いんですよね、僕は。
先生、ほんまどういう人なんやろみたいな。
poe
河野さんもこういう先生に覚えがあるんですか。
コーノ
いやー、僕はそこまで監視を持ったことがないんですよ、その学校の先生とかに。
単純に呼んでて、この人物面白いなと思って、すごいだからほんまに観察してる感じでずっと追っかけるんですよね。
結局なんか最後も大人になってから声かけられなかったんだよ。
poe
ちょっとこれがね、最後、もう年老いた、もうおじいさんになった時にたまたま見かけたって話ですよね。
コーノ
なんかそういうとことかもね、声かけへんやとかね、全然踏み込まないんですよね、この先生に対して。
ほんまに思い出で書いてるって感じですね。
poe
特別先生と何か強いコミュニケーションがあったわけでもないし、
多分自分は先生にとっては数ある生徒の中の一人だったけど、自分はなんとなくその先生のことが記憶に残ってるっていう。
そうですね。
コーノ
そういう話ですね。
先生自身も全然意識ないと思うんですよね、この人。
なんか人からそう慕われてるとか、この観察的な視点がすごい面白いですよね。
なんかこの347から8のとことかで、一人で囲碁を打ってる時の、なんか想像をしてるんですけど、
鏡先生、語彙の打ち込み方も尋常ではなかったことが察しられると。
深夜に下宿の一室で五番を片手に灯籠のように盤面を睨みながら、
黒や白の石を置いて撮ってみたりしている鏡先生の姿は、
高等向けを通り越して聞き迫るものがあったのではないだろうかって。
すごいですね。勝手に想像してる。
試験の採点をする以外には仕事もない、人付き合いもない、話し合いでもいない、毎晩30年の間一人きりであるって。
そんな鏡先生がどんな気持ちで盤を対していたか想像するに難くない。
盤に対するより他、孤独によって食い破られようとする心を縫い止める術がなかったのに違いないって。
勝手に言ってるんですね。
poe
コーンさん、結構こういうちょっと特徴のある人を遠目から見てる話好きなんじゃないですか。
コーノ
そんなんあるんですかね。
poe
遠くではないけど、なんかその溶接も友達ではあるけど変わった人を見る視点から描いたような話だったし。
コーノ
そうですね。この孤独先生の方がやっぱ距離はありますけど、
でも僕はどっちかっていうと形っていうよりは人物にやっぱり興味があって面白いなと思いましたね。
溶接もそうですけど。
鏡先生に関してはちょっとほんまよくわからんとこが面白いですね。
何を考えてたんかとか全然わからないんで。
poe
そうですね。
コーノ
数学の先生だからすごいなんかあっさりしてる感じ。
poe
学校も変わらずずっと同じ学校で勤め上げたんでしたっけ。
コーノ
でもそれぐらいですね。短いしこの話が。
poe
でもこの小説集のタイトルに出てくるぐらいだし。
何なんですかね。
やっぱ選んだ人が好きだったんじゃないですか。
まあ面白いですからね。僕はやっぱこのキャラクターが好きなの。
タイトルもね、かなり目を引けますよね。孤独先生っていうのは。
でもね、これも本当生徒の視点で勝手に本当想像してるだけだから別に孤独じゃないかもしれないし。
そうですね。わからないっていうところですよね、どっちかっていうのは。
コーノ
主人公がパッとウェイトレスでモデルの、絵のモデルになって、
それでアコーディオン弾くっていうのはすごいやっぱりファンタジーな感じですね。
poe
そうですよね。
話しとして。
読んでて幸福になります。
なんかね、描写として特に気に入ったのが、364ページの2行目なんですけど、
堀田くんがキク子をお家にお招きするっていうところで、
キク子がじゃあ行きましょうかっていうふうに誘いに乗ってくれたときですね。
堀田くんは足元の幸福な小石を靴のかかとで蹴ったっていう、
幸福な小石っていう描写がなんかすごい素敵だなと思いましたね。
自分の足元の小石まで幸福なものだと感じてしまう。
なんか若い時の恋愛のときめきみたいなのも感じたし。
あとは373ページで、これはトロイメライを弾いてるのを聞いてるキク子のシーンですね。
涙になる前の頬上なうるおいと思って、キク子の目が水底の石のように輝いているのを十分に意識した。
っていうのもなんかいいなと思いました。
コーノ
そういう表現もあんまり使わないですもんね、他の話は。
詩小説でこれ書いたらおかしいかも。
poe
そうですね。形式に合わせていろいろ変えてるんでしょうけど、その辺はやっぱり。
そういう表現だなと思いましたね。
河野さんどうでしたこの話は。
コーノ
僕はむしろ最後がいいなと思ったんだよ、この話の。
poe
最後ね、私は悪いったら別に終わってなくて、ちょっとここが私もなかなか。
コーノ
終わり方が。
poe
話しがいがあるかなと思って。
コーノ
めっちゃリアルやったんで最後は。
poe
なんかね、390ページ以降ですよね。
コーノ
はい。
poe
ポリタ君が展覧会に入選した作品を見たときに、入選はしたけど大注目を浴びているというわけではないんですよね。
文章画家であることを強く感じてしまったっていうので、
なんかその後にすごい自分にとって大切だったキク子がなんかミスボラシー娘だっていう風に、
魔法が解けたかのような雰囲気でキク子を見てしまうんですよね。
なんかね、これは一気に物語、幻想的な話から現実に引き戻されたかなっていうのでドキッとしましたね。
コーノ
そうです。頑張ってた絵とか全部繋がってたんですよね。
このキク子とこのアコーディオンと絵を描くっていうことが。
その絵を描き終わって入選した結果、それがそんなに大した評価じゃなかったっていうので、
全部が終わったと同時にやっぱりアコーディオンにもキク子にも興味をなくしてしまったっていう感じの僕は印象を受けて、
これすごいわかるなと思って。
なんかこう人に興味を持った時とかに、その興味を持った要素が全部満たされてしまって、興味をなくすっていうことがよくあるんでね。
poe
そうですか。
コーノ
よくありますね。で、また別のことに興味を持つようになるとかね。
poe
物とかだったらまだわかるけど、人でも。
コーノ
なんかその中のひとつやったんやなっていう感じですね。
人のほうは多分ありますね。僕がっていうか、一般的にそうかなと思いますけど。
男女とか恋人とかに限らず、今興味ある人をどんどん渡り歩いてる人とか全然いるんで。
でも、この人も前あの人とずっと一緒にいたけど、もうなんか満足したんやなみたいな。
今こっちにハマってるが多分その内容に近い人との交流が頻繁にあるんやなとか。
poe
結局はまだ織田くんのことは。
コーノ
そうですね。気づいてないって感じですよね、これ。
poe
そうですよね。悲しい。
コーノ
だってこの手風菌の感情ももう不意って言ってるんですよ。
poe
そうなんですよ。てかその、これってタイトルも手風菌は古びたなんですよね。古びた手風菌じゃないんですよね。
手風菌がもう古びちゃったっていうことだから、そういうことなんですけど。
コーノ
絵が完成したのと一緒に終わってしまったっていう印象でしたね。
poe
私はね、そんなにこういうことってあるようなとは思えなかったから。
コーノ
あ、そうですか。
poe
うん。なんか結構ショックで、なんかすごいいい雰囲気の作品だったのに、
なんでこんな最後、現実的なものを透け足したんだろうと思って。
でもこれがあると結構この作品記憶に残るし、でもそういう形で記憶に残るのってどうなんだろうみたいな。
なんかモヤモヤが残りました。
コーノ
まあいい話で終わってしまわない感じですね。
poe
ただの、ただのっていうか、シンプルなファンタジーというか、素敵な恋愛では終わらせなかった。
コーノ
そうですね。
poe
選んでる人の跡書きの402ページで、終わり方に私としては少し不満があったって書いてますね。
でもなんか最初そうだったけど、最後の部分が作品に深さを与えていると感じることができたっていうふうに書いてるんで、