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それでは、今回は物語についてお話ししたいと思います。
古文の中でも、物語は人気のジャンルではあると思います。
例えば、誰もが一度は親しんだことのある竹取物語、そして源氏物語、この辺りが特に有名なものかと思います。
特に古文というと、源氏物語などが有名だったりするので、物語というジャンル自体が、古文の印象としては強く残っているという方も多いと思います。
物語と一口に言っても、いろんなものがあるのです。
もちろん、現代においては物語というと、フィクションという、虚構のもの、作られたお話というものを物語と言いますが、古文の中では、もう少しその中でも、いろいろな背景を持ったものが出てまいります。
まず、どのようなものがあるかというと、厳密にはいろいろなものがあるのですが、
特に大雑把な分類で言うと、作り物語、歌物語、そして歴史物語、軍旗物語、なんていう種類が特にあるのですね。
じゃあ、これらがどういうものかというものを見ていきたいと思います。
まず一つ目が作り物語です。
作り物語というのは、現代の物語とほとんど同じイメージです。
フィクションとしての物語、完全に作られた物語です。
代表作が竹取物語、そして源氏物語です。
これらの明らかに作られた物語というものが作り物語と言われるのですが、
この明らかに作られたというのも、よく分からないところもあるのです。
竹取物語なんて、誰がどういうふうに作ったかなんて全然分かっていないわけですね。
そういった意味でも厳密な定義であるわけではないとは思うのですが、
いずれにせよ、現代の物語とほぼ同じようなものを作り物語というわけですね。
さて、次にご紹介するのは歌物語です。
歌物語というのは、和歌が中心にくるのです。
歌物語というくらいですから。
この和歌というものが、どのようにして読まれたのか、
その背景について語られている物語というのが、この歌物語というものなんですね。
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代表的なものが、伊勢物語という物語です。
この伊勢物語というのは、主人公がある男というふうに言われているのですが、
どうやらそのモデルとなった人に、有原尾成平という実在した人物がいるらしい。
というように、この歌物語というものには、背景となるようなお話、出来事とか、
あとは場合によっては伝説とか、昔話とか、そういったものがあったりするのですが、
結果的にそれらによって和歌が読まれて、その和歌を中心としているというか、
和歌の背景となる物語となっているものを、特に歌物語ということがあります。
とはいえですね、例えば竹取物語や源氏物語でも、
この歌、和歌というものが非常に大事なものになっていくというのは、疑いようのないことですので、
必ずしもこの歌物語というものが特殊なのかというと、ちょっとそれも語弊があるかもしれませんが、
だいたいこの歌物語というのは、やっぱり歌が中心に来ていて、
その背景となる物語を書いているというのがメインであるものを歌物語と言います。
なのでこの歌物語というのは、小さなお話がいっぱいあって、
それぞれで歌を、和歌を紹介していって、その和歌がどのような背景で読まれたのかということを、
一つ一つの物語で描いていくという、いわば短編集のようなものだと思っていいと思います。
非常に歌というのはですね、よく恋愛で出てくることが多いので、
そういったことで特にラブストーリーとしての色合いも、特に伊勢物語なんかは大きくなってまいります。
さて次は歴史物語というものです。
この歴史物語というのはですね、
中国でまず歴史というものを記録したものがあるんですね。
いろんな歴史を記録した、歴史書と呼ばれるものがあるんですけれども、
それの影響を受けてですね、それに倣って日本でも歴史を記述しようという動きがあったんですね。
それまでも例えば古事記のような、ある種の歴史を描いたものはあるんですけれども、
古事記は非常にこの伝説的な時代について描いているところが多いんですね。
ですけれども、もう少し実際の自分たちが生きている時代よりちょっと前くらいの歴史を描いた、
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何ら同時代のものを描いた、そういう記録的なニュアンスも含む、
本当に歴史書を作ってみようと思って作られたのがこの歴史物語というものなんです。
物語、フィクションというよりは歴史書というふうに認識していただいた方がいいと思います。
実際にも歴史を研究している方はやっぱりこの歴史書としての歴史物語を参考にしたりとか、
それによってどんなことが当時行われていたのか、誰がどんなことをしたのかということを語っていることがありますので、
そういうことを研究されている方も多いんじゃないかなと思います。
もちろんそれとは別に日本書紀と呼ばれるようなちゃんとした歴史書はあるんですよ。
ただこのあたりは基本的には漢文で書かれているものなんですね。
本当に記録って感じなんですが、やっぱり単に記録として描いていくだけじゃなくって、
ストーリーを持って生き生きと描いた方がいいものがあるんですね。
そのあたりはまたおいおいお話ししたいと思いますが、いわゆる記伝体という書き方。
中国の四季という有名な漢文がありますけれども、その四季と同じような構成で、
ストーリー展開を持ったものとして歴史を描いていくというスタンスを取ったのが歴史物語というものなんですね。
厳密に言うと、必ずしもそれだけではないんですけれども、
まず物語なんだけれども、ただフィクションというニュアンスよりは歴史書としてのニュアンスがあるものを歴史物語と言っております。
有名な作品に鏡という名のついたもの、四郷、四つの鏡と書きますけれども、
四郷として有名な大鏡、今鏡、水鏡、増鏡というものが特に有名な歴史物語です。
歴史書、歴史物語になってまいります。
最後が軍旗物語というものです。
軍旗物語、言ってみれば兵器物語のことだと思っていただければいいかと思います。
いろんな作品はあるんですけれども、おそらく最も有名なのが兵器物語でしょう。
大河ドラマになったり、アニメ化されたり、数々のいろんなリメイクもされていますね。
この兵器物語のようなもののことを軍旗物語と言っています。
特徴としては、おそらく当時いろんな人たちによって語られたものというものが物語として出来上がっていった。
それぞれのいろんな逸話とか、出来事、断片的なものがいつの間にか段々と集まっていって、
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一つの物語として修正した、完成したもののことを軍旗物語というイメージですかね。
歴史物語とはまた違った観点から、違った成立によって出来上がってきた歴史の記述というものが
軍旗物語だと思っていいと思います。
また特徴には、例えばこれらは本来語られたものというニュアンスが非常にある。
既読されたものとかじゃなくて、語られたものというニュアンスがあるので、
非常に音楽的というか、音声的で美しい、声に出すと非常に美しいという美的感覚を持っているということですね。
あとは内容が非常にダイナミックだということなんです。
語られるということは臨場感たっぷりに語られますので、
そういう意味では非常に生き生きとした描写が多いというものがこの軍旗物語になってまいります。
このようにですね、非常にこの物語というのは様々なものがあるんですね。
一口に物語といっても、本当にフィクション的に感じられるようなものもあれば、
どちらかというと、歴史に近い、歴史書に近いようなものもあるんだということでございます。