Huckel法の基礎
やまラボポッドキャストへようこそ。
今回は、皆さんが今ちょうど取り組んでいるかもしれない量子化学(の講義資料ですね。
音声とスライドから、Huckel 法を使った強薬π電子系の解析、これを深掘りします。
特に、ブタ自演に注目していきます。
Huckel 法。かなりシンプルな近似計算なんですけど、これがまた分子の性質をうまく説明してくれるんですよ。
分子の色とか、あるいは形、つまり結合の長さとかですね。
そういう科学的な性質をどう予測できるか、その考え方のエッセンスを見ていきましょう。
3年生の皆さんなら知っている話も多いと思いますが、知識をつなげる良い機会になるはずです。
資料にはフリスっていうウェブアプリも紹介されてましたね。計算を手伝ってくれる。
ああ、ありましたね。フリス。
これもちょっと使いながら、重要なポイントを抽出していきましょうか。
まず、基本の確認ですけど、Huckel 法でπ分子軌道のエネルギーとか、あと波動関数を求めるんでしたよね。
はい、そうです。
で、フリスを使うと、分子の構造をカチカチと描くだけで、分子軌道ダイアグラムとか、エネルギーとか、展開係数とかがすぐ出てくると。
ええ、非常に便利です。
ただ、フリスの結果を見る上で、一つちょっと気にしておくと上位のが、表示される桁数ですかね。
ああ、桁数ですか。
デフォルトだと、小数点以下2桁だったりして、比較するときに、ちょっと精度が足りない場合があるんです。
設定で4桁とかに増やしておくと、より細かい議論ができますね。
なるほど、なるほど。では、その計算結果の中身を見ていきましょう。
講義の宿題でも確かありましたよね。
ええ。
エチレン、つまり炭素数Nイコール2からブタジレン、Nイコール4、さらに長いポリエンへと強弱系が伸びていくと、
ホモとルモのエネルギー差、デルタEホモ-ルモ、これがどんどん小さくなる。
そうですね。具体的な数値でいうと、Nイコール2で-2β、Nイコール4だと-1.236β、Nイコール6で-0.890βと、絶対値で見ると減少していきます。
はい。
で、このエネルギー差、デルタEがそのまま分子が吸収する光のエネルギー、いわゆるパイパイ繊維エネルギーに対応するわけです。
ああ、光のエネルギー。
ええ。デルタEが小さくなるってことは、吸収する光のエネルギーも小さくなる。つまり波長は長くなるんですね。いわゆる超波長シフト、レッドシフトです。関係式でいうと、デルタEパイパイEVがだいたい1240λ、アブスNMで表せます。
なるほど。それで、パイ電子が分子全体に広がって動きやすくなる、あの非極材化が進むと、このギャップが小さくなる傾向にあると。
まさにその通りです。
後期ではβに-4EVっていう値を入れて計算してましたね。
ええ、仮の値としてですね。
これでエチレンの吸収波長を計算すると、155NM、実験値の165NMと、おお、かなり近いですね。
そうなんです。ただ、このβイコール-4EVというのは、あくまでこの抗議で扱う分子にとって都合のいい値、経験的なパラメーターなんですね。
あ、普遍的な定数というわけではない。
ええ、そういうわけではないです。なので、定量的な精度には、まあ限界はあります。でも、大事なのは、その傾向をちゃんと捉えられることなんです。
傾向ですか。
はい。実際に、強薬系が長ければ長るほど、吸収波長が長くなるっていうのは、実験的によく知られた事実で、
作状のポリエンでも、ベンゼン管が連さらったような分子でも、分子が大きくなるほど、スペクトロは長波長側にずれていきます。
分子の構造と反応性
ふぬー。
これがまさに、パイ電子の非極材化が進む効果で、最初は紫外球臭で無色だったものが、黄色、オレンジ、赤と色づいて見えるようにもなっている理由にもなっています。
色だけじゃなくて、分子の形、結合の強さにも関係する情報が、ヒュッケル法の計算結果から得られるんですよね。
ええ、そうです。展開係数、CUIという値がありましたね。
はい、ありました。
あれは、各原子軌道が分子軌道にどれだけ寄与しているかの重みみたいなものですが、これを使うと2つの重要な量が計算できます。
1つは、パイ電子密度、QH。式で書くと、QHイコール、シグマ、MI、CUII2。
各原子の上にパイ電子がどれくらいいるかという指標ですね。
その通りです。ブタジエンみたいに中性な分子だと、規定状態では、だいたいどの炭素原子上もQHをほぼ1.0になって、比較的均等に分布しています。
で、もう1つが、パイ結合実、PUI。これは、隣り合う原子間のパイ結合の強さを示します。
式は、PUIイコール、シグマ、NI、CUICVですね。
なるほど。ブタジエンだとどうなりますか?
ブタジエンの規定状態だと、計算上、1番目と2番目、それから3番目と4番目の間の結合実数、P12とP34がだいたい0.894。
で、真ん中の2番目と3番目の間、P23が0.447くらいになります。
0.894と0.447、結構違いますね。結合実数が大きい方が結合は強いんですよね?
ええ、強く、そうすると短くなります。
ということは、ブタジエンは端っこ、P12とP34が二重結合っぽくて、真ん中のP23が単結合っぽい?
そういう解釈になりますね。
これ、実際の構造、実験で測られた結合距離と比べてみると、P12間が1.335アングストロム、P23間が1.461アングストロム。
あ、確かに、端が短くて真ん中が長い。傾向が合ってますね。
ええ、定性的には非常によく一致します。
シンプルな計算ですけど、面白いでしょう?
面白いです。
で、さらに面白いのは、分子の状態が変わると、この結合実数も変わるということです。
状態が変わる?例えば?
例えば、光を吸収して、液状態、パイパイ液状態になったとします。
そうすると、電子配置が変わるので、結合実数を再計算すると、今度は、P12イコールP34が0.447、P23が0.724になるんです。
えっと、逆転するんですか?
そうなんです。規定状態とは逆に、端の結合が弱く、長くなって、中央の結合が強く、短くなると予測できるわけです。
へー。じゃあ、イオンになった場合はどうですか?電子を1つ取った価値音とか。
いい質問ですね。ブタジエン価値音の場合、まずパイ電子密度が変わります。計算すると、末端の原子、1番と4番の電子密度、Q1Q4が0.638くらい、中央のQ2Q3が0.862くらいになります。
あ、均等じゃなくなるんですね。端の方が電子が少ない。つまり、静電化を帯びやすい?
そういうことです。これがどこで反応が起きやすいかといった議論につながります。そして結合実数ももちろん変わります。P12イコールP34が0.671、P23が0.585となって、これも規定状態と比べると、端の結合は弱く、中央の結合は強くなる傾向が予測されますね。
なるほど。すごいですね、ヒュッケルホー。かなり単純化したモデルなのに、分子の色、つまり気候吸収の傾向から結合の強さ、構造、さらには反応性に関わる電子密度や状態が変わった時の構造変化まで、いろんなことを示唆してくれるんですね。
ええ、そういうことです。だから、計算から出てきた数字そのものだけじゃなくて、その数字が分子のどういう性質や振る舞いを表しているのか、その意味を読み解くことが、科学を深く理解する上でとても重要なんですね。
いやー、奥が深いですね。シンプルなモデルにこそ本質が隠れていると。
ええ、そう思います。
さて、今回はヒュッケルホーを通して、π電子が特定の場所にいないで広がっていること、つまり被極在下が分子の色や形にどう影響するかを見てきました。
では最後に皆さんに一つ思考の種を、このπ電子の被極在下という性質、これが化学反応の起こりやすさ、つまり反応速度とか、どんな経路で進むか、反応機構とかに具体的にどう関わってくると思いますか?
ぜひ少し考えてみてください。