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シャオヘイ 392 Episodes

広島市在住のシャオヘイが、飲食店と顧客の間にある様々な課題や問題に対する僕の考えや、特定の料理についてお話します。
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快食ボイス780・ご飯の上に乗せる「理由」がなければ「丼」じゃない

快食ボイス780・ご飯の上に乗せる「理由」がなければ「丼」じゃない

Apr 28, 2026 12:38

丼という料理は、実は難しい 丼について真剣に語ったことは、これまであまりなかった。理由は単純で、あまりにも難しい料理だからだ。 「ご飯の上におかずを乗っけるだけじゃないか」と思う人は多いだろう。SNSでもやたらめったらご飯の上にステーキやハンバーグを乗せた動画が溢れているが、あれは丼ではない。少なくとも、僕が考える丼とは別物だ。 では、丼とは何か。 「別々に食べた方が美味しいなら、丼にする意味がない」 これが、丼を考えるときの出発点だ。 --- 丼にする「理由」が必要 丼種(上に乗せるおかず)とご飯を別々に食べた方がおいしいとしたら、その丼は料理として存在する価値がない。丼である以上、丼にしたからこそおいしい、という必然性が必要だ。 例えば天ぷら。天ぷら定食であれば、自分のペースで食べられる。でも天丼にした途端に、スピードが求められる。衣がつゆを吸い、時間とともに変化していく。天ぷらうどんや天ぷらそばになればなおさらだ。ふやけていく食感を楽しむステージに自分を切り替えないと、食べきれない。 それだけ丼というのは、食べる時間軸まで含めた設計が必要な料理なのだ。 ちなみに、丼という料理の形式が成立したのは大正時代ごろとされている。「昔からあるに決まっている」と思われがちだが、実はそうではない。この背景には日本の食文化史が深く関わっているが、それはまた別の機会に話したい。 --- カツ丼を因数分解する カツ丼で考えてみよう。 つゆをたっぷり含ませたカツ丼の場合、「カツとじ」として別皿に盛ってご飯と一緒に食べた方が、実はおいしい。なぜなら、ご飯がぶよぶよにふやけるのを防ぎつつ、自分のタイミングで一緒に食べられるからだ。 だとすれば、なぜ上に乗せるのか。 こういう問いをひたすら立て続けることが、料理を理解する上で欠かせない。面倒くさいことではあるが、この「因数分解」をやらない限り、その料理の本質はわからない。ほとんどの人が「どうでもいい」と流すところを「いや、これはおかしくないか?」と立ち止まって考え続ける。これがゼロベース思考というやつで、MBAなどでもよく使われる考え方だ。興味のある人はぜひ調べてみてほしい。 --- 丼の中の丼——親子丼という難題 丼の中でも、親子丼は特別に難しい料理だと思っている。 まず「卵丼」との違いから整理したい。卵丼は、卵かけご飯の上位版とも言える。卵かけご飯は加熱しないという前提だが、ぶっちゃけ出汁と醤油で味付けして加熱した卵をご飯に乗せた方が美味しい。卵丼は、卵かけご飯を完全に凌駕している料理だ。 ところが、ここに鶏肉が加わると途端に難しくなる。 鶏肉はご飯との馴染みが悪い。しかしその鶏肉が入ることで、丼にアクセントが生まれる。では、鶏肉は事前に炙るべきか。煮て味付けしておくべきか。あるいはひき肉にした方が卵との一体感が出るのではないか。そして卵の加熱加減の絶妙さ——これが完璧に揃って、初めて本物の親子丼になる。 残念ながら、「これだ」と思える親子丼にはまだ出会えていない。近場では「なか卯」の親子丼は価格を考えると相当クオリティが高いと思う。以前モスフードサービスが手がけていた頃はさらにおいしかったが、運営体制が変わってからはやや職人気質が薄れた印象がある。それでも、食べたことがない方にはぜひ一度試してほしい。 --- 天丼の「思想」——天茂の衝撃 20歳前後の頃、東京の東大赤門近くにあった「天茂」という店で食べた天丼が、今でも忘れられない。 出てきた天丼の衣はつゆを含んでふにゃふにゃだった。最初は「なんだこれ」と思った。しかし一口食べて、その設計の深さに気づいた。沸かした丼つゆに天ぷらを一瞬くぐらせ、ご飯の上に乗せてすぐに蓋をして30秒ほど蒸らす。衣の表面だけにつゆが染み、中まではいっていない。そのままご飯と一体化していく。 天ぷら定食と天丼は、根本的に思想が違う料理だ。その違いを徹底的に考え抜いた上で、この技法にたどり着いたのだと思う。丼という料理の可能性を、あの一杯で思い知らされた。 --- 牛丼は、正直まだよくわからない 一方で、牛丼については今もよくわからないというのが正直なところだ。 多くの牛丼チェーンのご飯はバサバサで、それ単体ではおいしいとは言いにくい。だからこそツユだくにして、茶漬けのようにかき込むスタイルが合っているのかもしれない。牛皿としてご飯と別に食べる方が好みという人も多いだろうが、そのバサバサのご飯との相性を考えると、これもまた一長一短だ。 ご飯の上に乗せることで美味しくなっているのか——牛丼はその問いに、まだうまく答えられていない気がする。 --- 丼四天王と、これからの問い 親子丼・カツ丼・天丼・牛丼。この4つが丼四天王だと思っている。 「いや、これこそ丼の真髄だ」というものがあれば、ぜひ教えてほしい。原稿なしで話しているので、大きな丼を見落としている可能性もある。 結局のところ、丼という料理は「ご飯の上に乗せることで、はじめておいしくなる」という条件を満たさなければ成立しない。ご飯はそのままでもおいしい。つゆをかけてぶよっとなったご飯が、それでも美味しいと言えるか。その難題に正面から向き合い続けることが、丼という料理の奥深さだと思っている。 皆さんは、丼についてどうお考えだろうか。 --- stand.fmでは、この放送にいいね・コメント・レター送信ができます。 https://stand.fm/channels/664b04d7316143a77174b611

快食ボイス779・お好み焼に懺悔する——「そば肉玉」を広めてしまった話

快食ボイス779・お好み焼に懺悔する——「そば肉玉」を広めてしまった話

Apr 27, 2026 13:57

はじめに 今日はお好み焼について懺悔したいことがある。 長年、お好み焼を見てきて、食べてきて、発信もしてきたからこそ、きちんと記録しておくべきことだと思う。 それは、広島のお好み焼における呼び名と焼き方の文化を、若い頃の僕自身が十分に理解できていなかった、という話である。 --- 広島のお好み焼は「具材違い」ではない 広島県内には各地にさまざまなお好み焼文化がある。 たとえば、 - 挽き肉を使う府中市 - 砂ずりを入れる尾道市 - 鳥もつを使う三原市 こう聞くと、単なるトッピング違いのように思われがちである。 しかし本質はそこではない。 焼き方そのものが地域ごとに違うのである。 ここが、まだ十分に理解されていないと感じる。 --- 呼び名と焼き方はリンクしている さらに重要なのは、広島のお好み焼文化では、名前と調理法が結びついているという点である。 たとえば焼肉屋で「焼肉ください」と言っても困るだろう。 カルビなのか、ロースなのか、何を指しているのか分からない。 それと同じで、お好み焼店で「お好み焼ください」だけでは、地域によって意味が違うのである。 つまり「お好み焼」は料理名であると同時に、業態名でもある。 この二重構造が、外から見る人には分かりにくい。 --- 地域ごとにまったく違う世界 広島市——肉玉そば 現在、多くの人が「広島風」としてイメージするものは、 - 生地を敷く - 野菜を重ねる - 麺は別で焼く - 最後に合体させる - 卵で閉じる このスタイルで、伝統的な呼び名は肉玉そばである。 ここで重要なのは、広島市では本来「肉玉そば」が自然な語順だということだ。 --- 三原市——お好み焼の意味が違う 三原では、キャベツと麺を最初から一緒に炒め、ソースで味を付ける。 中身はかなり焼きそば的である。 そのうえで生地と卵で包むため、見た目はオム焼きそばにも近い。 そして三原では、 - 麺なし=お好み焼 - 麺あり=モダン焼 なのである。 お好み焼を頼むと麺が入らないのだ。 --- 呉市——お好みそば、お好みうどん 呉では、 - 麺入り=お好みそば / お好みうどん - 麺なし=お好み焼 という呼び方になる。 焼き方も独特で、具材をしっかり炒めてから生地に重ねる。 さらに老舗ほど鉄板提供ではなく、皿で出す文化が残っている。 --- 尾道市——名前は大阪、焼き方は一銭洋食 尾道も面白い。 - 豚玉 - イカ玉 - アサリ玉 と、大阪風の名前が並ぶ。 しかし焼き方は混ぜ焼きではなく、重ね焼きである。 つまり名前は大阪的、実態は一銭洋食という少し不思議な文化なのである。 しかも「肉玉」と頼んでも麺入りが基本。 麺なしにしたければ肉玉の麺抜きと言わねばならない。 --- 府中市——挽き肉文化の成立 府中では現在、挽き肉入りが有名である。 これは「古川食堂」の初代店主が「バラ肉より挽き肉のほうが安い」と切り替えたものが広まった。 お好み焼は庶民食であり、安さは大きな価値だった。 そこから地域文化として定着していったわけである。 呼び方も、 - そば肉玉 - うどん肉玉 と、麺種を先頭に置く形式になっていった。 --- そして僕の懺悔 ここからが本題である。 僕は1996年から「広島快食案内(のちの快食.com)」という広島の飲食情報サイトを運営していた。 その中で、お好み焼の表記をずっとそば肉玉としていたのである。 なぜそう書いていたのか。 僕は府中生まれ、府中育ちだ。 だからそれが当たり前だと思い込んでいた。 しかし広島市の伝統的表記は、先ほど述べた通り肉玉そばである。 つまり僕は、府中のローカル表記を、広島全体の標準であるかのように広めてしまっていたのだ。 これは大いに反省している。 --- 若い頃の無理解が文化を薄めた 当時の僕には、「呼び名と焼き方が地域文化として結びついている」という認識がなかった。 単なる言い回しの違いだと思っていたのである。 しかし違った。 名前には歴史があり、調理法があり、土地の記憶がある。 そこを雑に扱うと、文化の輪郭がぼやけてしまう。 --- これから大切にしたいこと 広島のお好み焼は、一枚岩ではない。 広島市、呉市、三原市、尾道市、府中市—— それぞれに別の文法があり、別の歴史がある。 だからこそ、 - その土地の呼び名を使うこと - その土地の焼き方を知ること - 違いを面白がること これが大切なのだと思う。 --- おわりに もし広島市のお店で「そば肉玉」と書いてあったら、僕の悪い影響が出ているかもしれない。 だとしたら、本当に申し訳ない。 広島市は肉玉そばが正しい。 そば肉玉は府中市だ。 僕のこの大きなミスが修正されることを願って止まない。 --- stand.fmでは、この放送にいいね・コメント・レター送信ができます。 https://stand.fm/channels/664b04d7316143a77174b611

快食ボイス777・バグではなく仕様だった——アメリカの社会システムを読み解く

快食ボイス777・バグではなく仕様だった——アメリカの社会システムを読み解く

Apr 24, 2026 13:00

はじめに 前回は「トランプはアメリカの正常な産物なのかもしれない」という話をした。 今回はその続きとして、なぜそう言えるのかを、オバマ大統領という存在を軸に掘り下げていきたい。 --- 理想の大統領・オバマ——チャーチ的リベラリズムの体現者 2008年、バラク・オバマが黒人として初めてアメリカ大統領に就任した。 これは本当に歴史的な出来事だった。 オバマはハーバード大学ロースクールを主席で卒業した弁護士であり、言葉と対話を通じて問題を解決しようとする、リベラリズムの理想像のような人物だった。 「チェンジ(Change)」を掲げ「未来は変えられる」と訴えた。 前回の話でいう「チャーチ的な価値観」、つまり制度・法律・多様性の包摂を信じ、共同体への信頼を前提とした政治を体現していた。 ノーベル平和賞まで受賞したのも、その延長線上にある。 かっこいい。 本当にかっこいい大統領だったと思う。 --- 1970年代から続く、ラストベルトの空洞化 これから構造の話をする。 オバマ個人への批判ではないので留意してほしい。 アメリカ国内では1970年代から、製造業の空洞化が続いていた。 「ラストベルト(錆びた地帯)」と呼ばれる地域、デトロイトの自動車工場などがその象徴だ。 親が働いていた工場で自分も働く、そういう暮らしを送ってきた人たちの仕事が、じわじわと消えていった。 これはオバマのせいではない。 何十年も前から続いてきたことだ。 だがオバマが「変わることができる」と言い、グローバル化の波に乗れた人たちは確かに豊かになっていった。 一方で、製造業で生きてきた白人労働者層はそうではなかった。 結局、変わらなかった。 エリートに俺たちの何がわかるんだ——そういう鬱屈したものが、静かに積み重なっていたのだと思う。 --- フロンティア規範から見ると、オバマの言葉は「否定」に聞こえた オバマが訴えた「話し合いで解決する」「多様性を受け入れる」というリベラリズムは、前回紹介したフロンティア規範「やられたらやり返す」「力で決着をつける」という価値観を持つ人たちには、自分たちの誇りを否定されているように聞こえたのではないか、と僕は考えている。 アメリカにはもともと、エリートより「叩き上げ」を良しとする文化がある。 小屋で生まれ、独学で弁護士になり大統領になったエイブラハム・リンカーン。 西部劇出身の俳優から大統領になったロナルド・レーガン。 ブッシュ大統領にも、オバマのような「いかにも賢い」雰囲気はない。 でもああいうのもまた、アメリカなのだ。 --- オバマに投票した人が、トランプに投票した そして実際に、これは調査でも明らかになっている。 オバマに投票し、その後トランプに投票した有権者が、かなりの数いた。 彼らの行動を分析すると、こう読める「変化を求めてオバマに入れた。でも変わらなかった。一部の金持ちだけが得をして、移民が仕事を奪っていく。だったら今度は既存政治をぶっ壊す人間に入れる」。 だからある意味、「オバマがいたからトランプが生まれた」という側面がある。 時代の皮肉というやつだ。 --- 「TACOる」という言葉が示す、感覚のズレ 最近、TACOという言葉が話題になっている。 "Trump Always Chickens Out"の略で、「トランプはいつも最後には逃げる」というスラングだ。 日本人の感覚だと、「どうせTACOるんだから最初からやめとけばいいのに」と呆れる時に使う言葉だ。 でもアメリカのフロンティア規範を持つ人たちがトランプを「TACOった」と批判するときは、意味が全然違う。 強硬姿勢そのものは正しい。 ただ最後まで貫かないのはダメだという怒り方なのだ。 関税をかけること自体は批判していない。 「やり抜け」と言っているのだ。 この感覚のズレは、すごく大きいと思う。 --- バグではなく、仕様である ソフトウェアの世界に「それはバグではなく仕様です」という言葉がある。意図して設計されたものだ、という意味だ。 トランプという大統領は、まさにそれだと僕は考えている。 アメリカという巨大な社会システムの「仕様」として、条件が揃ったときに出てくるようになっている。 1970年代からの製造業の空洞化、白人労働者層の生活の停滞、オバマへの期待と失望、グローバル化の恩恵を受けた層との分断、そういったものが全部組み合わさって、このタイミングで「トランプ」という出力が出てきた。 もちろん、日本人の感覚からすれば意味がわからないし、言葉は荒っぽいし、外交もむちゃくちゃだと思う。 僕もそう思う。 ただ、僕が調べて考えた結果、現在のところそういう必然性が見えてくる。 --- それでも、アメリカには修正する力がある ただ、アメリカはトライアンドエラーの国でもある。 奴隷制を世界最後まで維持しながら、南北戦争という多大な犠牲を経て、それでも変わってきた。 日本はトラブルが起きないように事前に調整する文化が強い。 僕も元役人だから、その感覚はよくわかる。 でもアメリカは「とりあえずやってみて、違ったらやり直す」という国だ。 トランプは憲法の規定上、3期目はない。 今回の経験が教訓となって、またアメリカというシステムが変わっていくのだろうと思っている。 早くそうなってほしいというのが正直な気持ちだ。 --- stand.fmでは、この放送にいいね・コメント・レター送信ができます。 https://stand.fm/channels/664b04d7316143a77174b611

快食ボイス776・トランプはアメリカの正常な産物かもしれない

快食ボイス776・トランプはアメリカの正常な産物かもしれない

Apr 22, 2026 13:33

暴力観から読み解くアメリカの論理 トランプ大統領の言動を見ていると、多くの人が「あれはおかしい」「認知症なんじゃないか」「バグが発生している」と言う。 先日一緒に飲んだ人もそう言っていた。 気持ちはすごくわかる。 僕もそう思いたい。 バグであってほしい。 だが、歴史やアメリカという国の成り立ちを学んでいくと、どうもそうじゃないという気がしてくる。 これは残念な結論なんだけど、トランプはアメリカが生み出した、ある意味正統な産物なんじゃないか。 今日はそのあたりを話してみたい。 --- アメリカ映画の冒頭暴力シーンが、なぜ「かっこいい」のか 最近、Amazonプライムで『ワーキングマン』というジェイソン・ステイサム主演の映画を見ていた。 冒頭からものすごい違和感があった。 主人公は元特殊部隊の男で、今は建設現場で働いている。 その現場で、従業員が借金の取り立てで暴力を振るわれている場面に出くわす。 主人公はためらいなく割って入り、暴力で相手を制圧する。 日本人の感覚だと、「また始まった。これで暴力の連鎖が始まるぞ」と思う。 物語を成立させるための正当防衛として受け取る。 でもアメリカ人の多くはこれを見て「かっこいい」「この主人公は信用できる」と感じるらしい。 なぜそうなるのか。 --- 「スタンド・ユア・グラウンド」という法律 アメリカには「スタンド・ユア・グラウンド法」というものがある。 日本語で言えば「自分の立場を守れ」という法律だ。 自分の身に危険を感じたとき、逃げるのではなく力で反撃していい、暴力で地位や身の安全を回復して構わない、という考え方を法律として認めている。 2005年にフロリダ州が最初に制定して、今では35州以上が取り入れている。 アメリカは50州あるから、その大半がこの考え方を法律レベルで認めているということだ。 これと似た考え方に「キャッスル・ドクトリン(城の法理)」がある。 自宅や敷地内は個人の「城」であり、そこへの侵入に対しては実力で自衛していい、という原則だ。 スタンド・ユア・グラウンドはそれをさらに広げて、公共の場でも適用できるようにしたものだと理解していい。 1992年には、ハロウィンで「トリック・オア・トリート」をしようとした日本人留学生の男の子が、訪問先の家で撃ち殺されるという事件があった。 これもキャッスル・ドクトリンが背景にある。 --- 日本の「喧嘩両成敗」との根本的な違い 日本では江戸時代に「喧嘩両成敗」という考え方が制度化された。 先に手を出されても、やり返したら同じように罰せられる。 とにかく暴力には耐えろ、個人が自分の判断で暴力を使うことは認めない、というルールだ。 この考え方は明治以降も続いていて、今の日本人の感覚の底にある。 「警察が来るのを待て」という世界だ。 アメリカはまったく逆だ。 そしてその根っこは開拓時代にある。 広大な荒野を切り開いていた時代、そこには警察も裁判所もなかった。 保安官が来るまで待てる状況じゃない。 そもそもその保安官が正義かどうかも分からない。 西部劇を見ていればそれはよくわかる。 自分の身は自分で守るしかない。 やられたらやり返す。 その感覚が、今もものすごく生きている。 スタンド・ユア・グラウンド法が2005年という、ほんの20年前に制定・拡大されているのはその証拠だ。 --- 暴力より、無力の方が怖い アメリカ人にとっては、暴力そのものよりも「無力であること」の方が怖いらしい。 やられても何もできない、仲間を守れないという状況の方が、耐えられない恐怖なのだという。 これは僕にはなかなか体感として分からない。 僕は暴力が嫌いな日本人だから。 でもそう聞くと、映画の主人公がためらいなく割って入る場面の意味が少し変わって見えてくる。 映画の別の場面では、主人公がボスのところへ乗り込み、その手下たちをボコボコにする。 するとボスは、自分の部下を叩きのめした相手と握手するのだ。 日本人の感覚では「部下の手前、なんでそこで握手するんだ」となる。 でもこれが、フロンティア精神の論理だ。 正々堂々と戦って、勝った。 正面からやってきた相手は、信用できる仲間だ。 部下たちもたぶん、同じ感覚でそれを納得している。 大谷翔平さんがMLBであれだけ認められているのも、同じ文脈で説明できる。 正面から戦って結果を出し、礼儀正しい。 それで「敬意に値する仲間」として受け入れられる。 MLBはそもそも多国籍な世界で、今年ドジャースに加入したクローザーのディアス選手はベネズエラ出身だ。 ベネズエラはつい最近までアメリカと緊張関係にあった国だが、そんなことは関係ない。 --- セクトとチャーチ 以前にも少し話したことがあるけど、アメリカを理解するのに「セクト」と「チャーチ」という考え方が役に立つ。 チャーチとは、生まれた場所・家族・地域・国籍といった共同体への帰属を基盤にする考え方だ。「日本人であることに誇りを持つ」というのに近い。 日本はこちらが圧倒的に多い。 セクトは逆で、自分が自発的に選んだ仲間との結びつきを基盤にする。 生まれがどこか、どの国の出身かはあまり関係ない。 同じ価値観、同じ覚悟を持つ者が、自分の意思で集まる。 野球のチームがそれに近い。 仲間への忠誠心は強いが、仲間でない者には薄い。 アメリカという国は、このセクトの考え方が非常に強い。 それはしょうがない話で、もともとあの国に集まったのは、ヨーロッパの重苦しいカトリックの教義から離れてプロテスタントとして新天地を目指した人たちだ。 階級も家柄も関係ない、自分たちで選んで集まった人間が、荒野を開拓していった。 その積み重ねの先に南北戦争がある。 60万人とも言われる死者を出した凄まじい内乱だ。 そういうことを繰り返しながら作られてきた国は、やはり違う。 --- そしてその構造が、トランプを生み出す母体になっている。 この続きはまた次回。 --- stand.fmでは、この放送にいいね・コメント・レター送信ができます。 https://stand.fm/channels/664b04d7316143a77174b611

快食ボイス774・「本来の味」を説明できますか——グルメ発信者に問いたいこと

快食ボイス774・「本来の味」を説明できますか——グルメ発信者に問いたいこと

Apr 19, 2026 14:36

はじめに グルメ雑誌を読んでいても、飲食店のレビューを読んでいても、SNSのグルメ投稿を眺めていても、いつも気になることがある。 料理の具体的な話ではなく、お気持ちの表明が多すぎる。 「素材の味を引き出した」「本来の味がする」「丁寧に仕込んだ」「旬の食材を使用」——そういう言葉がずらりと並ぶ。 そうだね、あなたがどう考えたのか、そのお気持ちは尊重する。 だが、料理がどうなのかを説明してくれ。 そう思ってしまうのは、僕だけだろうか。 --- 「素材の味を引き出した」——何を言いたいのか、さっぱりわからない まず「素材の味を引き出した」という表現について考えてみたい。 文脈によっては「塩を使いすぎない」「添加物で上書きしない」「引き算の料理です」という意味で使われているケースもあるだろう。 これはまだわかる。 だが「旨味が感じられる」とか「甘みが引き立つ」という意味で使われることもある。 となると途端に話が怪しくなってくる。 たとえばカブを例に考えてみよう。 カブの「本来の味」って、何だろうか。 カブは中央アジアから地中海沿岸が原産とされ、日本には古くから伝わり、各地で多様な在来品種が生まれた野菜だ。 辛みの強いものもあれば、甘みの強いもの、サクサクと軽いもの、繊維が強くずっしりとしたものもある。 同じカブでも、品種も産地も時期も違えば、味はまったく別物だ。 カブ一つをとっても「本来の味」とは何かを僕は答えられない。 魚介類はなおさらだ。 漁場、時期、漁獲後の手当、輸送、保存——あらゆる条件が重なって、ようやく「最上の状態」が生まれる。 それを「本来の味」と呼ぶなら、それは一食3〜5万円クラスの料理でなければ実現しない話だ。 前提条件が丸ごと抜け落ちたまま「本来の味を引き出した」と言われても、何も伝わらない。 --- 「手間をかけた」「職人が一つ一つ」——何をしたのか、言ってほしい 似たような言葉はほかにもたくさんある。 「手間をかけた」——何をどう手間をかけたのか書いてなければ、そもそも判断できない。 手間をかけた結果おいしくなったのか、それとも手間のかけ方を間違えたのかも、読んでいてはわからない。 「職人が一つ一つ手作りで」——これも要注意だ。 職人の手仕事がベストになる場面は確かにある。 だが機械や自動化のほうが精度が高い工程も多い。 「手作り」それ自体が品質の保証にはならない。 「旬の食材」——これが一番難しいかもしれない。 気候変動の影響で、旬は毎年変わる。 何をもって旬とするのか、その定義なしに「旬」と書いても、もはや何の情報にもならない。 --- 「無添加」「余計なものを加えていない」——余計って何だ? さらに輪をかけてわかりにくいのが「無添加」という言葉だ。 何を添加していないのか。醤油は? 塩は? 砂糖は? 何を加えたら「余計」なのか。 基準が示されていなければ、「無添加」という言葉は何の判断材料にもならない。 なんとなく「体によさそう」というイメージを喚起するだけの、ぼんやりしたスローガンにすぎない。 --- 「こだわり」——本来はネガティブな言葉だった 「こだわり」という言葉も気になる。 もともと「こだわる」とは「些細なことに引っかかる」「とらわれる」という意味のネガティブな言葉だ。 「些細なことにこだわるな」という使い方が正しい用法だった。 それがいつの間にか「妥協しない職人気質」「細部への執着」というポジティブな意味で使われるようになった。 1980〜90年代のグルメブームあたりが転換点だったように思う。 だが考えてみてほしい。 より美味しくなる方法があるなら、自分のやり方にとらわれずに改善する方が、料理としては誠実ではないか。 「こだわり」をポジティブに使うなら、それがなぜ美味しさに直結するのかの説明がいる。 --- では、どう伝えればいいのか 答えはシンプルだ。具体的に話せばいい。 「手間をかけた」ではなく→「0℃〜マイナス1℃で48時間低温貯蔵して熟成させた」 「旬の魚」ではなく→「4月中旬から5月中旬にかけて、浜田沖で水揚げされるマアジは、脂質の多いプランクトンを大量に摂取する時期にあたり、体脂肪率10%以上になったものを地元ではどんちっちアジとしてブランド化している」 場所、数字、時期、理由——これらが揃えば、読んだ人はちゃんとイメージできる。 もう一つ大切なのは、自分の感覚を言語化するトレーニングをすることだ。 「深みがある」「おいしい」という反射的な言葉を、一歩立ち止まって「どうおいしいのか」に変換する練習。 これを続けることが、発信者としての誠実さだと思う。 --- おわりに ぼんやりしたお気持ち表明は、書く側にとっては楽だ。 何も考えなくていい。 それらしい言葉を並べておけば「伝えた気」になれる。 だが読む側には何も伝わらない。 そして正確な批評がなければ、料理人も改善のしようがない。 広島の食文化を発信する一人として、正確に伝える努力を続けていきたい。 言葉は不完全だ。 それでも、なるべく具体的に、なるべく誠実に——そこを放棄したくはない。 --- stand.fmでは、この放送にいいね・コメント・レター送信ができます。 https://stand.fm/channels/664b04d7316143a77174b611

jkondoの朝の散歩

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ポッドキャストプラットフォーム「LISTEN」や、GPSトラッキングサービス「IBUKI」、物件メディア「物件ファン」、京都の宿とコワーキング施設「UNKNOWN KYOTO」を運営する近藤淳也(jkondo)が、朝の散歩をしたりしながら、日々の出来事や考えたことを語ります。

楽しいラジオ「ドングリFM」

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都内IT系の2人が話すポッドキャスト番組です。最近話題のニュース、日常に役立つ面白ネタなどを話します。国内・海外のIT事情に興味ある人にオススメの内容になっています。 ・お便りは https://goo.gl/p38JVb まで ・詳しいリンクはこちら https://linktr.ee/dongurifm ・リスナーコミュニティ「裏ドングリ」は以下からどうぞ  https://community.camp-fire.jp/projects/view/206637  https://donguri.fm/membership/join BGMと最後の締めの曲はフリーBGM・音楽素材「 http://musmus.main.jp 」より。

桃山商事

桃山商事

コミュニケーション、男性性、恋愛、人間関係、ジェンダー、ケア、孤独、性欲、会社、友情、老い……メンバーがその時々で気になったテーマを1つ設定して、モヤモヤを言語化していくNEOな座談Podcastです。2011〜2016年「二軍ラジオ」(ApplePodcast)、2017〜2024年「恋愛よももやまばなし」(ニコ生→Podcast)を配信していました。清田隆之(文筆業)、森田(会社員)、ワッコ(会社員)、さとう(会社員)の4人でお届けします。

近藤淳也のアンノウンラジオ

近藤淳也のアンノウンラジオ

株式会社はてな創業者であり現在もITの第一線で働く近藤淳也が、京都の宿UNKNOWN KYOTOにやって来る「好きなことを仕事にしている人」を深堀りすることで、世の中の多様な仕事やキャリア、生き方・働き方を「リアルな実例」として紐解いていきます。 . 【ホスト:近藤淳也】 株式会社OND代表取締役社長、株式会社はてな取締役、UNKNOWN KYOTO支配人、NPO法人滋賀一周トレイル代表理事、トレイルランナー。 2001年に「はてなブログ」「はてなブックマーク」などを運営する株式会社はてなを創業、2011年にマザーズにて上場。その後2017年に株式会社ONDを設立し、現在もITの第一線で働く。 株式会社OND: https://ond-inc.com/ . 【UNKNOWN KYOTO】 築100年を超える元遊郭建築を改装し、仕事もできて暮らせる宿に。コワーキングやオフィスを併設することで、宿泊として来られる方と京都を拠点に働く方が交わる場所になっています。 1泊の観光目的の利用だけではなく、中長期滞在される方にも好評いただいています。 web: https://unknown.kyoto/ . こちらから本文を読んだりコメントが書けます! https://listen.style/p/unknownradio

IBUKI STATION

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ここはアウトドア向けGPSトラッキング「IBUKI」にまつわる人々が集まる場所。 トレイルラン、登山、冒険、ランニング、自転車、ロゲイニング、、 スタイルは数あれど、共通しているのは自然を楽しみ、そして人とのつながりも楽しむ姿勢。 自然を目一杯楽しみ、苦しみながら、人と接する喜びにも気付く。 アウトドアを満喫するみなさんが、ほっとできるIBUKI STATIONです。 IBUKI https://ibuki.run/ 近藤淳也 IBUKIを提供する株式会社OND代表。ポッドキャストプラットフォーム「LISTEN」も展開 桑原佑輔 OND所属。IBUKI事業担当営業・テクニカルディレクター

私より先に丁寧に暮らすな

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東京の歌人・上坂あゆ美と、京都の僧侶・鵜飼ヨシキによる雑談配信。人生の呪いからファミレスの好きなメニューの話まで幅広くお届け。 【初めての方におすすめ回】 #30 お菓子が人間だったら誰と付き合いたいか真剣に考える https://open.spotify.com/episode/751EzuNXjpgP2i53P7OtX7?si=XxN2eddURsas_JWE6KFu-A #163 恋愛ってマーージでクソだと思っている人の話 https://open.spotify.com/episode/1WgeglhRT5GQfqzkBO2bNF?si=1l0b2OBlTJq ▼ご意見ご感想は #よりすな ▼お悩みや質問はコチラまで https://forms.gle/1bqryhYcDWt334jZ7 ▼番組公式SNS https://x.com/yori_suna ▼番組へのお問い合わせはコチラまで yorisuna24@gmail.com ▼ポッドキャストの書き起こしサービス「LISTEN」はこちら https://listen.style/p/yorisuna?Egq5AoBB