1. FM八ヶ岳 湧き水のほとり
  2. 2026/02/03 湧き水のほとり #1..
2026-02-27 14:30

2026/02/03 湧き水のほとり #101 「おかめのはなし」

サマリー

この放送では、小泉八雲作「おかめのはなし」が朗読されます。物語は、夫を深く愛するあまり、死の間際に「二度と再婚しない」という約束を夫にさせるおかめの話です。おかめの死後、夫は衰弱しますが、その原因は、おかめが成仏できずに毎晩夫のもとに現れることでした。寺の住職の助言により、おかめの墓を開き供養を行ったところ、夫は回復し、おかめも二度と現れなくなりました。夫が約束を守ったかどうかは不明のまま物語は終わります。

番組紹介と物語の導入
湧き水のほとり
エフエム八ヶ岳をお聞きのみなさん。
各種インターネットからお聞きのみなさん。
ごきげんいかがですか。
開運商店です。
ここからの15分間は、聞く読書の番組、
湧き水のほとりの時間です。
児童文学や、昔懐かしい物語、
さまざまな文豪の短編などを、
少しずつ読ませていただきます。
おいしいお水を召し上がりながら、
ひと息ついてくださいね。
先週は、放送100回目の節目に、
岡本起童の百物語をご紹介しました。
本日も少し不思議な物語ですが、
怖がらせるための話ではありません。
深い愛情ゆえに起きた出来事が、
静かに語られます。
どうぞ。
おかめと八重門の愛と別れ
その夫、八重門を非常に好いていた。
女は二十二、八重門は二十五であった。
あまり夫を愛するので、
世間の人は嫉妬の深い女だろうと思った。
しかし男は、
嫉妬されるような原因を作ったこともなかった。
それで二人の間には、
嫌な言葉ひとつかわされたこともなかった。
不幸にして、
女は病死んであった。
結婚後二年にもならないうちに、
当時土佐に流行していた病気にかかって、
どんな良医もさじを投げるようになった。
この病気にかかる人は、
食べることも飲むこともできない。
ただ疲れてうとうとして、
変な夢に悩まされているだけであった。
女は普段の看護を受けながら、
毎日次第に弱っていって、
とうとう自分でも助からぬことがわかってきた。
そこで彼女は夫を呼んで言った。
私のこの嫌な病気中、
あなたがどんなに親切にしてくださったか、
口では言えません。
こんなによくしてくださる方は、
どこにだってありません。
私、あなたに別れるのが本当につらい。
考えてください、私まだ二十五にもなりません。
その上、私の夫ほどよい人はこの世にはありません。
それでも私は死んでいかねばならない。
いいえ、だめだめ。
日休めをおっしゃってもだめですよ。
どんなお医者様だってどうにもならないのですもの。
もう二三ヶ月生きていたいと思いましたが、
けさ鏡を見たら、
今日のうちに死んでいかねばならぬことがわかりました。
そう、ちょうど今日です。
それであなたにお願いがありますの。
私が安心して死んでいけるように思ってくださるようなら、
その願いを私に叶えさせてください。
ちょっと言ってごらん。なんだか。
八重門は答えた。
私の力でできることなら、どんなことでもよろこんでしてあげる。
それがあなたのじっともよろこばないことなんです。
彼女は答えた。
まだ若いのですもの。
こんなことをお願いすることは、なかなかたいへんむつかしいことですわ。
でも、その願いごとは、私の胸にもえてる火のようです。
死ぬ前に言わせてください。どうぞ。
ねえ、あなた。
私が死んだら相番、みんなであなたに奥様をもたせるでしょう。
ねえ、あの、約束してくださいませんこと。
もう二度と結婚はしないと、おいやですか。
なんだ。そんなことか。八重門は叫んだ。
願いごとというのは、それだけのことなのか。
それはなんでもない。よし、約束した。
おまえのかわりは、けっしてもらわない。
うれしい。
おかめの死と夫の衰弱
おかめは、とこから半分起きて叫んだ。
それから、うしろへたおれた。
同時に、彼女の息は絶えた。
おかめが死んでから、八重門の健康は衰えてくるようであった。
はじめは、その様子のかわりようを、人々は人情のかなしみのゆえと解釈していた。
それで村人たちは、どんなにあの奥様が気に入っていたのだろうな、とばかり噂していた。
しかし月がかさなるにつれて、だんだん青じろくなり、弱くなりして、
ついには人間ではなく、幽霊ではないかと思われるほど、やせやつれてきた。
それで人々は、そんなに若い人が、こう急に衰えるのは、
かなしみだけでは説明ができないと疑いだした。
医者たちの説では、八重門の病気は普通のものではない。
様子は何ともげしがたいが、何か心の異常の悩みから起こっているらしい、
ということであった。
両親はいろいろ尋ねてみたが、だめであった。
彼の言うところでは、両親の知っている以外に何ら悲嘆の原因はないとのことであった。
両親は再婚をすすめた。
しかし、死人に対する約束はどうしても破ることはできないと言い張った。
それからあと、八重門はやはり日増しに衰えた。
家族の人々はその生命を危ぶんだ。
母の告白と住職の助言
ところがある日のことかねて何か心に隠していることを信じていた母が、
熱心にその衰弱の理由を言ってくれるように激しく泣いて頼んだ。
母の懇願には語れなくなった。
こんなことはあなたにもまたどなたにも全く言いにくいことです。
すっかり申し上げてみたところで本当にはできますまい。
実はお亀はあの世で成仏ができないのです。
それからいくら仏事を行おうとやりましてもだめのようです。
私も一緒にそのメイドの旅に出てやらないとどうしても成仏ができないようです。
お亀は毎晩帰ってきて私の脇に寝ます。
葬式の日から毎晩来ない晩はありません。
それで時々本当に死んだのではあるまいと思うことがあります。
様子や行いは生きていたときと全く同じですから。
ただ私に話をするとき小さい声で物を言うだけです。
それからいつでも自分の来ることを誰にも言わないようにと申します。
私にも死んでもらいたいのでしょう。
私も自分だけなら生きていたくはありません。
しかし全く大瀬の通り私の体は良心のもので良心にまず第一に行行しなければなりません。
それで本当のことを皆申し上げるのです。
はい毎晩ちょうど眠りかけると参ります。
それから明け方まで言います。
鐘が聞えると出て行きます。
八重門の母がこれを聞いてびっくりした。
直ちに旦那寺へ急いで次相に息子の告白の一切を話して助力を請った。
高齢で経験の積んだ次相はその話を聞いて驚く色もなく彼女に言った。
こういうことは時々あるものです。
初めてではありません。
それでご子息も助けてあげられると思います。
しかし今たいそう危ういところです。
ぐそうの見るところではお顔に思想が現れています。
おかめさんがもう一度帰ってくればもうそれきりです。
それで即刻やるべきことをやらねばなりません。
ご子息に黙っていてください。
大急ぎで双方の親戚を集めて寺へ来るように言ってください。
ご子息のためにおかめさんの墓をはけねばなりません。
おかめの墓を開き供養
そこで親戚はお寺に集まった。
墓を開くことを一度承諾したので双は一度を墓地へ案内した。
そこでその指図に従っておかめの墓石は脇へやられ墓は開かれ棺はあげられた。
棺のふたが取られたとき居合せた人は肝を寒くした。
それはおかめは病気の前と同じくきれいに顔に微笑をうかべて一堂の前に座って
彼女にはなんら死のあとはなかったから。
しかし双は棺の中から死人を取り出すことを人々に命じたとき驚きは恐怖となった。
それは長いあいだ星座のかたちをとっていたにもかかわらずその死体はさわると生きているようにあたたかくしなやかであったから。
それを草上へ運んで双は筆をとって額と胸と手足に何か清き光徳のある盆地を書いた。
それからその屍をもとの場所へ葬る前におかめのためにせがきを行った。
彼女はふたたび夫のところへ来なかった。
八重門は次第に健康と力をかいふくした。
物語の結末と番組案内
しかし彼はいつまでもその約束を守ったかどうか。
それは日本の作者は書いていない。
原中一
日本では死体はふつうほとんど正方形の棺の中に星座のかたちに置かれる。
小泉八雲作おかめの話
田辺隆二役
The Story of Okame
でした。
お聞きいただきありがとうございました。
番組では皆様からのリクエストや感想をお待ちしております。
FM八ヶ岳のホームページの問い合わせフォームまたはスマートフォンアプリレディモのメッセージ欄からお寄せいただけます。
お送りしましたのは開運商店でした。
この後もFM八ヶ岳でお楽しみください。
本日もいい塩梅に過ごせますように。
またお会いしましょう。
14:30

コメント

スクロール