番組紹介とタイムテーブル変更のお知らせ
湧き水のほとり。
FM八ヶ岳をお聞きのみなさん、各種インターネットからお聞きのみなさん、ごきげんいかがですか。開運小天です。
ここからの15分間は、聞く読書の番組、湧き水のほとりの時間です。
児童文学や、昔懐かしい物語、さまざまな文豪の短編などを、少しずつ読ませていただきます。
おいしいお水を召し上がりながら、ひと息ついてくださいね。
今週から、FM八ヶ岳のタイムテーブルが更新され、湧き水のほとりは月曜の11時半と17時半、そして土曜の12時半へとお引越ししてきました。
この時間にお聞きのみなさま、改めまして開運小天です。
湧き水のほとりは、2024年3月から始まった番組ですので、今回で110回目を数えます。
リスナーのみなさまの中には、若い頃忙しくてなかなか文学作品に触れる機会がなかったので、改めて知る作品の素晴らしさを感じています、とおっしゃってくださる方や、
寝る前に聞くとよく眠れます、とおっしゃってくださる方もいらっしゃいます。
みなさまのゆったりした休憩時間になればと思っています。これからもよろしくお願いいたします。
本日は小川美名の作品、青い玉と銀色の笛を読んでいきます。
小川美名は1882年、明治15年、新潟県で生まれました。
日本近代児童文学の父とも呼ばれ、1200編以上の童話を手掛けました。
それでは早速読み始めましょう。
小川美名作 青い玉と銀色の笛
北の淋しい海のほとりに奈美子の家はありました。
ある年、貧しい漁師であったお父さんがふとした病気で死ぬと、
続いてお母さんもその後を追うようにして亡くなってしまいました。
かねて貧乏な暮らしでしたから、娘の奈美子に残されたものは、
ただ青い玉と銀色の笛だけでありました。
青い玉はずっと昔、先祖の誰かがこの海辺の砂の中から掘り出して、
それが代々家に伝わったのだということでありました。
何か願い事がある時、この青い玉に向って真心を込めてお願いすると、
その心が神様に通じてかなえられるというので、
お母さんはこの青い玉をとても大事にしていました。
玉はつやつやしていて、深い海の色のように青黒く、
小川未明「青い玉と銀色の笛」朗読開始
どこまで深いのか底が知れぬようにじっと見つめていると引き入られるような気がしました。
そして真心を込めてお祈りをすると、
青い玉の表に海の上を飛び去る雲のように、
いろいろなことが絵になって浮かんできて、行く末のことを教えてくれるのでした。
またある時は、青い玉が真っ赤に炎のようになって見えたり、
たまにひびが入ったりして不安な気持を抱かせることもありました。
これにはご先祖の魂が入っているんです。
といってお母さんがこの青い玉を大事にしたのも不思議ではありません。
お父さんの持っていた銀色の笛は、その音色を聞くと、
さびしい荒海にすさぶ嵐のように、なんとなくひとりぼっちの感じを起こさせたり、
またある時は反対に心を引き立てて、望みと喜びを持たせることもありました。
そしてこの笛の音が届くところ、魚たちがその音をしたって寄って来るので、
思わぬ大量がありました。
まったく不思議な笛じゃないか。
なんにしてもありがたいことだ。
寮に出た人々は、なみこのお父さんの銀色の笛を手にとって、不思議そうに眺めるのでした。
この笛もやはりおじいさんのころからつたわっていましたので、
これにも先祖の魂がこもっているとお父さんは信じていました。
なみこはお父さんが心をこめて、この笛を吹いた日のことを覚えています。
その日海の上には黒い雲がはびこり、いかにも北の国らしいものすごい景色でした。
雲のあいだからいなびかりがもれ、かみなりがなっていました。
こんな日にははたはたがとれそうだとお父さんは言いました。
そして久しぶりに大量にしてみんなをよろこばせたいと銀色の笛をもって行きました。
お父さんが船の上で笛を吹くと、たくさんの魚が波の上でおどりました。
イカサやサバも群れをつくってよってきて、おもわぬ大量になりました。
季節はずれにこんなにいろいろな魚がとれたのもみんな笛のおかげだといって人々は浜にかえってから酒盛りをはじめました。
そして人々はお酒に酔いながらお父さんにその笛を吹いてもらってその音色に耳を傾けていると、
またあすの働きに新しい望みがわき、たとえ海が荒れていても命をかけて働き、お互いに仲良く助けあっていきたいという気持になるのでした。
勇ましく人々の心をうきたてたあの時の笛の音色を、なみこはいつまでもおぼえていました。
もう一度楽しかったあの自分になってみたいとなみこは思いました。
青い玉と銀色の笛の不思議な力
ある日青い玉と銀色の笛を持ち出すと、砂浜の上でお父さんやお母さんのことをしのびながらじっとながめていました。
この青い玉はお母さんが大事にしていらしたんだわ。
この銀色の笛はお父さんがみんなとお魚をとるときに吹いたんだわ。
なみこが海のほうを見ながらつぶやいていると、
「やあ、なみちゃんか。そんなところで何をしているな。」
とそこを通りかかったおじいさんの漁師が声をかけました。
「海の夕日がこんなに赤くうつるのは、おじいさん、お母さんが空からあたしを見ていらっしゃるのかしら。」
なみこは青い玉にうつる美しい夕日をながめていいました。
「お母さんもお父さんも、そりゃあおまえさんをじっとみまもっていてくださるな。
はやく大きくりっぱな大人になるのを待っていられるぞ。」
とおじいさんは答えました。
「おじいさん、いまでもこの笛を吹けばお魚がよってくるかしら。」
なみこはこんどは銀いろの笛をとりだしてききました。
おじいさんはなつかしそうににぶくひかる笛をながめていいました。
「そういえばこのごろしけで魚がすくないんだな。
魚がすくないとついつまらんことでなかまわれがしたりけんかがおこったりする。
おまえのお父さんはりっぱな漁師だったからどんなときでもけんかなどしなかったがな。」
おじいさんはなみこのお父さんをおもいだしてほめました。
「おじいさん、この笛をかしてあげましょう。
よく吹いてたくさんお魚をとってください。」
なみこはだいじな笛をさしだしました。
「ありがとう。お父さんのかたみの笛をかれていいのかい。」
「魚がたくさんとれてこの浜のひとたちがなかよくなれたら、
お父さんもきっとよろこんでくださるわ。」
となみこはこころからこたえたのでした。
はつしゅつは、
1957年、
昭和三十二年。
たのしい三年生。
より、
小川美名作
青い玉と銀色の笛。
でした。
さて、FM八ヶ岳をお聞きのリスナーのみなさまにお知らせがあります。
奈美子の願いと笛の貸し出し
アーカイブス配信の発信元が新しくなりました。
2026年3月からは、
ポッドキャスト、リッスンで公開されています。
スマホやパソコンで、
FM八ヶ岳のホームページにあるリンクから飛んでいただくか、
Googleなどの検索窓に
わき水のほとりと入力して見つけてみてください。
いつでも何回でもお聞きいただけます。
以前読んだ作品もぜひ聞いてみてくださいね。
お聞きいただきありがとうございました。
番組では、みなさまからのリクエストや
感想をお待ちしております。
FM八ヶ岳のホームページの問い合わせフォーム、
またはスマートフォンアプリ
レディモのメッセージ欄からお寄せいただけます。
お送りしましたのは、開運商店でした。
この後も、FM八ヶ岳でお楽しみください。
本日もいい塩梅に過ごせますように。
またお会いしましょう。