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2026-02-27 14:30

2026/02/10 湧き水のほとり #102 「立春の卵」1

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湧き水のほとり エフエム八ヶ岳をお聞きのみなさん。
各種インターネットからお聞きのみなさん。
ごきげんいかがですか。
開運商店です。
ここからの15分間は、聞く読書の番組、
湧き水のほとりの時間です。
児童文学や、昔懐かしい物語、
さまざまな文言の短編などを、
少しずつ読ませていただきます。
おいしいお水を召し上がりながら、
一息ついてくださいね。
本日から、日本で初めて人工の雪を作った人として有名な、
中谷浮一郎が発表した、
立春の卵という作品の難しいところを読み飛ばし、
3回に分けてお届けしようと思います。
それでは早速どうぞ。
中谷浮一郎作
立春の卵
立春の時に卵が立つという話は、
近代にない愉快な話であった。
昭和22年2月6日の各新聞は、
写真入りで大々的にこの新発見を報道している。
もちろんこれはある意味では、
全紙面を抑えてもいいくらいの大事件なのである。
昔からコロンブスの卵という孤童座があるくらいで、
世界的な問題であったのが、
この日に解決されたわけである。
というよりも、
立春の時刻に卵が立つというのがもし本当ならば、
地球の回転か何かに、
今まで知られなかった特異の現象が隠されているのか、
あるいは、
何か卵の持つ生命に秘められた神秘的な力によるということになるであろう。
それで人類文化史上の一懸案がこれで解決されたというよりも、
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現代科学に挑戦する一新規現象が、
突如として原子力時代の人類の目の前に現出してきたことになる。
ところで、
事実、そういう現象が実在することが立証されたのである。
朝日新聞は、中央気象台の予報室で、
深鶏な科学者たちが大勢集って、
この実験をしている写真を載せている。
7つの卵が滑らかな木の机の上に、
ちゃんと立っている写真である。
毎日新聞では、日比谷のあるビルで、
タイピスト城がタイプライター台の上に、
10個の卵を立てている写真を載せている。
札幌の新聞にも、裏返しにしたお盆の上に、
5つの卵が立っている写真が出ていた。
これではこの現象自身は、どうしても否定することはできない。
もっともこの現象は、こういう写真を見せられなくても、
簡単に嘘だろうとは片付けられない問題である。
というのは、上海ではこの話が、
昭和22年の立春の2、3日前から大問題になり、
今年の立春の木を逸せず、この実験をしてみようと、
われもわれもと卵を買い集めたために、
1個50元の卵が、100、600元に跳ね上がったそうである。
それくらい世の中を騒がした問題であるから、
まんざら根も葉もない話でないことは確かである。
朝日新聞の記事によると、この立春に卵が立つ話は、
中国の現ニューヨーク僧侶寺、張平群氏が、
品の古書天見と秘密の万華鏡という本から発見したものだそうである。
そして国民党宣伝部の義氏が、
1945年すなわち一昨年の立春に、
重慶でアップとクハイン、ランドル記者の面前で、
ニダースの卵をわけなく立ててみせたのである。
ちょうどイオジマ危うしと国内騒然たる時のこととて、
日本では卵が立つか立たないかどころの騒ぎでなかったことはもちろんである。
さすがにアメリカでも、ベルリン攻撃を目前にして、
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この話は総センセーションを起こすまでには至らなかったらしい。
ところが今年の立春には、
ちょうどその義氏が、宣伝部の上海駐在員として在住。
ランドル記者も上海にいるので、再びこの実験をやることになった。
ラジオ会社の実況放送、各新聞社の記者、
カメラマンの居並ぶ前で、三日の深夜に実験が行われた。
実験は大成功。
ランドル記者が昨夜アップ主局の床に立てた卵は、
四日の朝になっても倒れずに立っているし、
またタイプライターの上にも立った。
四日の永治氏は、第一面四段抜きでこの記事を載せ、
ランドル、歴史的な実験に成功を、と大見出しを掲げている。
立春に卵が立つ科学的根拠はわからないが、
ランドル記者は、これは魔術でもなく、
また卵を強く振って殻図を切り、
黄身を沈下させて立てる方法でもない。
ましてやコロンブス流でもない、と言っている。
みなさん、今年はもうだめだが、
来年の立春にお試しになってはいかが?
こうはっきりと報道されていると、
いかに不思議でも信用せざるを得ない。
おまけにこの話はあらかじめ米国でも評判になり、
ニューヨークでも実験がなされた。
ジャン夫人というのが、信頼のおける証人を前にして、
三日の午前、この実験に成功したのである。
最初の二つの卵は倒れたが、
三つ目は滑らかなマホガニーの卓の上に見事に立った。
時刻はちょうど立春の始まる、
三日午前十時四十五分であった。
そうである。
上海とニューヨークと、
それに東京と、
世界中至るところで成功している。
立春の時刻はもちろん場所によって異なるので、
グリニッチ標準時では、
二月三日午後三時四十五分である。
それがニューヨークでは三日午前十時四十五分、
東京では五日午前零時五十一分に当たるそうである。
ところがジャン夫人の実験が、
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そのニューヨーク時刻に成功し、
中央気象台では四日の真夜中から始めて、
用意の卵で午前零時いよいよ実験開始。
三十分に七つ、そして九つ、
すねていた最後の一つも、
お時間の零時五十一分になるとぴったり、
静止したそうである。
こうなると新聞の記事と写真等を信用する以上、
立春の時刻に卵が立つということは、
どうしても疑う余地がない。
数千年の間、
中国の古書に秘められていた偉大なる真理が、
今日、突如脚光を浴びて、
科学の世界に踊り出てきたことになる。
しかし、どう考えてみても、
立春の時に卵が立つという現象の、
科学的説明はできそうもない。
立春というのは、
シナ伝来の二十四節記の一つである、
一太陽年を、
太陽の光景に従って二十四等分し、
その各等分点を、
立春、
雨水、
景日、
春分、
清明、
というふうに名付けたのである。
もっと簡単に言えば、
太陽の四光景が三百十五度になった時が立春であって、
年によって少しずつ異なるが、
だいたい二月四日頃にあたる。
地球が軌道上のあるその一点に来た時に、
卵が立つのだったら、
卵が三百十五度という数値を知っていることになる。
いかにも不思議であって、
そういうことは到底あり得ないのである。
ところが、
それが実際に世界的に立証されたのであるから、
話が厄介である。
品伝来風に言えば、
二十四世紀の第一であり、
一年の季節の最初の出発点であるから、
何か特別の点であって、
春さえ立つのだから、
卵ぐらい立ってもよかろう、
ということになるかもしれない。
しかし、
アメリカの卵はそんなことを知っているわけはなかろう。
とにかくこれは大変な事件である。
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もちろん日本の科学者たちが、
そんなことを承認するはずはない。
東大のT博士は、
理論的には何の根拠もない茶話だ。
よく平面上に卵が立つことを聞くが、
それは全くの偶然だ、
と一生に伏している。
実際に実験をした気象台の技師たちも、
重心さえうまく取れば、
いつでも立つわけですよ、
とあっさり片付けている。
しかしその記事の最後に、
立春立乱説を軽く打ち消したが、
さて真相は、
と記者が書いているところを見ると、
記者の人にも何か
祝福しかねる気持ちが残ったのであろう。
何といっても、
いつかの夜中の実験に立ち会って、
0時51分に
十個の卵がちゃんと立ったのを
目の当たり見ているのだから、
それだけの説明では
物足りなかったのも無理はない、
というところでお時間となりました。
中谷浮一郎の
立春の卵を途中まで読んでまいりました。
続きはまた来週です。
お楽しみに。
お聞きいただきありがとうございました。
番組では皆様からのリクエストや
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この後もFM八ヶ岳でお楽しみください。
本日もいい塩梅に過ごせますように。
またお会いしましょう。
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