上司の役割と支援型マネジメント
FeelWorks代表前川孝雄の著書 部下全員が活躍する上司力5つのステップ
今の時代に必要な上司とは。 命令、管理、評価はもう古い。
今の時代に必要なのは、傾聴、支援、フィードバックです。 この本は支援型マネジメントになるための5つのステップを伝授します。
今日は、はじめにを抜粋してご紹介します。
上司の仕事とは一体何でしょうか。 私は企業・団体の人材育成において、日々部下のマネジメントにあたる上司の役割が要だと考えいます。
上司は自分が動くことが仕事ではありません。
人を動かし組織を動かすこと。すなわち上司の働きかけでチームメンバー全員が一丸となり連携し
メンバー個々の力だけではなし得ない大きな成果を生み出すこと。 これが上司の仕事の真髄です。
上司には自分がマネジメントするチームの部下全員を育て活かす責任があるのです。 ただ組織で働く以上現場の上司は自分の部下となるメンバーを自由に選べるわけではありません。
私たちが開講する上司力研修でも「部下の行動や考えを理解できず うまくコミュニケーションが取れない」
「部下を信頼して任せきれない」 さらには「どうしても部下を好きになれず悩む」など痛切な声を聞くことが少なくありません。
上司も一人の人間ですからそうした感情にとらわれることも無理はないでしょう、 しかし上司という職責を担う限り
預かった部下に関わることから逃れることはできません。メンバー全員に関心を持ちしっかりと向き合い育て活かすための努力と工夫が不可欠だ
と心得ることが第一歩です。では部下全員を育て活かすとは果たしてどのようなことでしょうか。
これまでの日本企業では社員を大切にすることは雇用を守ることだと考えられてきました。
しかしこれだけ変化が激しい現代においてそれは本当に正しいのでしょうか。
今や多くの企業にとって社員全員を終身雇用で一生守り続けることは困難です。会社の方向性と個人のキャリア思考がずれてくることもあるでしょう。
上司もいつまでも今の部下の上司ではいられません。人生100年時代でありかつVUCAと言われる時代。
部下たちも社内での組織再編や他部署への移動や転勤を経験し、また雇用の流動化が進む中、転職の可能性もあるでしょう。
したがって部下を真に大切にするとは現在の職場に囲い込むことではありません。いつでもどこでも社内外で活躍し続けられる
自信と能力を持ったプロに育て上げることなのです。例え数年間であっても部下が「この上司の下で働いた経験は自分のキャリア形成にとって貴重だった」
「自律に向けて成長させてもらえた」と思えるように支援することです。近年人的資本経営がクローズアップされています。
契機となったのは経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書 ~人材版伊藤レポート~」です。
金融庁が定める上場企業の有価証券報告書にも、人的資本経営の取り組みと情報開示を記載することが求められるようになってきています。
背景には日本企業が欧米に比べ人材をはじめとする無形資産への投資を怠り、企業価値喪失に出遅れており、従業員エンゲージメントも低迷する現状への危機感があります。
今や世界中が重視するSDGsやESGへの対応としても、企業の人材育成活用に積極的な対応が不可欠になっているのです。
私は日本企業が人的資本重視にシフトし その可視化が動き出したことは歓迎すべきと考えています。
私が営むFeelWorksでは、職場のダイバーシティの促進、個のキャリア自律の支援、働きがいの創出などに長年取り組んできました。
支援する企業や団体では手応えを得てきたものの 日本全体の潮流となるにはほど遠く、忸怩たる思いがありました。
それがやっと正面から語られる時代になったことに感無量です。ただし開示項目は記載ありきの形式的な数値の列挙に終始する恐れもあります。
部下全員が活躍するための5つのステップ
また経営や人事が真摯に取り組んでも、現場管理職も一枚岩になれるかどうか。歴史ある大企業ほど困難が伴うことは容易に想像できます。
今問われているのは経営のみならず現場での具体的な取り組みです。まさにこの人的資本経営を現場で推進する効果的な手法が、本書で示す部下全員が活躍する上司力です。
部下全員をプロに育て活かすための方法が次に挙げた5つのステップです このステップを部下一人ひとりに合わせて一歩ずつ着実に進めていくことで
部下全員の成長と活躍を支援することができます。
ステップ1 相互理解を深める一人ひとりが互いに異なる価値観や持ち味を持っていることを知り 理解し合い心理的安全性を確保する
ステップ2 動機形成を図る
組織の目指す目的部下一人ひとりに任せる役割の目的という働く目的を共有し、仕事へのモチベーションを高める
ステップ3 協働意識を醸成する
チームの中での部下一人ひとりの持ち味が生きる役割を明確にし 互いに協力し合える環境を作る
ステップ4 切磋琢磨を促す
部下一人ひとりが自律的に働き前向きに切磋琢磨し、日常的に改善改革が進むよう促す
ステップ5 評価納得を得る
節目ごとに部下一人ひとりに仕事と成果を振り返らせ、上司からのフィードバックに納得を得てもらい、次の成長に向かわせる
5つのステップを進める上で大前提となる心構えは、任せた仕事の当事者は部下自身と認識することです。
部下の仕事の結果とチームの業績に最終責任を持つのは上司です。しかし任せた個々の仕事のアウトプットにまず責任を持つのは、部下自身。
そうでなければ部下は仕事に対し責任や緊張感を持つことも成長することもままなりません。FeelWorksの登録商標にもなっている上司力ですが、私はこう定義しています。
「部下一人ひとりの持ち味を踏まえて仕事を任せ育て生かし、共通の目的に向かう組織力を高め
個人では達成できない結果を導き出す力」 上司は部下一人ひとりが担当の仕事をどう工夫しどうチャレンジしたいのかを傾聴し、
質問や対話で前向きな思いを引き出しましょう。そして部下自らが納得して考えた業務目標や行動計画を承認し
仕事が円滑に進むよう支援します。その結果も部下自身が正しく振り返り改善できるよう、フィードバックを行うのです。
ぜひ本書を参考にしながら部下の育成に取り組み、多くのプロを輩出する名上司になってください。