新刊の紹介と働きがいの意義
いよいよ明日、2025年7月29日、FeelWorks代表前川孝雄の新刊
「 「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる」が発売されます。 500社以上のマネージャーを支援してきた上司力の第一人者が、働きがいマネジメントの極意を、徹底的に解説します。
今日は、「はじめに」をご紹介します。
ーはじめにー 部下も上司自身も幸せにするのは働きがい改革
働く人を幸せにするのは働きがいです。 どれだけ残業が少なく休みが十分に取れてリモートワークができて給与が高くても、
自分の持ち味を生かせる仕事が任されず、責任のある立場にもなく、努力や工夫を認められることなく、お客様から「ありがとう」と言われる機会もなく
うまくいかない時や苦しい時に支えてくれる上司や同僚がおらず、壁を乗り越えた達成感を共に喜び合う仲間もいなければ決して幸せではありません。
今求められているのは働きやすさではなく働きがいなのです。近年、官民挙げての働き方改革で職場の働きやすさは格段に進んできました。
長時間労働は着実に減り有給休暇の取得率も上がりました。介護育児休業制度は拡充され、フレックスタイム制やリモートワークも定着してきました。
賃上げの動きも盛んです。にもかかわらず、日本人のワークエンゲージメントは国際比較でも極めて低く多くの人々が働く幸せを
感じられていないのが現状です。 一体なぜでしょうか。
私は働く人を幸せにする「働きがい改革」が進んでいないからだと考えています。「働き方改革」の副作用でむしろ現場の働きがいが阻害されていると見ています。
その理由と打開策については本書の中で順を追って論じていきます。大切なのは働きやすさより働きがいの実現なのです。
上司の役割と改革の必要性
そのためには、日々部下をマネジメントしている上司が働きがいの意味と意義を理解し、リーダーシップを発揮して職場の働きがい改革を推し進めることです。
取り組みを通じて現場で働く部下一人一人と共に上司自身も幸せになること。それが本書のテーマです。
上司の多くは部下から信頼され部下がついてきてくれることを望んでいます。私は長年にわたってあまたの上司を支援してきて、また私自身も上司として働く中で確信することがあります。
それはついていきたいと思われる上司は部下の働きやすさではなく働きがいを第一にしているということ。
部下のワークエンゲージメントの低さや職場の大変な状況を他責にするのではなく、自責で捉えて本気で働きがい改革に取り組み
チームを覚醒させているのです。私は40歳で生涯の仕事を人材育成にすると決意し
2008年に株式会社FeelWorksを創業。人材育成の要は部下を育て生かす上司であると考え
独自プログラム「上司力®研修シリーズ」を開発しました。マネジメントの苦労を乗り越えた管理職を講師に育てて
500社以上で開講してきました。日々課長部長など受講者である上司の皆さんの悩みに寄り添い続ける中で、日本の管理職の
疲弊感が限界点に達しつつあると強く感じています。その起点はバブル崩壊後の1990年代序盤、
優秀なプレイヤーにマネージャー業務を兼務させる プレイングマネージャーの登場です。
以降、女性やシニアなど多様な社員の活躍支援、パワハラ防止、働き方改革の推進、
コンプライアンス、生産性向上など次々に押し寄せてくるすべての現場の課題解決を求められ、重圧と過労が高まる一方。
極めつけはアフターコロナで人材不足感が強まり 若手の離職防止とキャリア形成
1on1ミーティングの実施が強く求められるようになったことです。月に一度程度の頻度でバーンアウトの感情が発生する管理職は約8割という調査もあるほどです。
結果、管理職は「罰ゲーム」「無理ゲー」と揶揄され、
日本は世界の中で昇進意欲が最も低い国になってしまいました。そんないっぱいいっぱいの上司にさらにマネジメントの NG集とスキルやノウハウばかり詰め込んでもオーバーフローしかねません。
1on1ミーティングなどはその典型ですが、いかに上司側が
傾聴やコーチング、アンガーマネジメントなどのスキルを習得し、若手のキャリア支援に向き合おうとしても、そもそも上司自身が部下育成に熱意を持ち
管理職の仕事に働きがいを感じていなければ、元も子もありません。日々の業務に忙殺され、余裕もなく疲れた上司を見れば若手の昇進欲はさらに下がるばかり。
将来への不安からスキルアップに余念なく
現場からの働きがい改革
転職も視野に入れる Z世代の若手と、世代間ギャップを超えて本音で通じ合うことなど できようはずもありません。
若手に辞められたら困るし、ハラスメントリスクも冒したくないと腫れ物に触るような対応になる上司も続出。
しかし若手も組織の一員でありお客様ではありません。当事者意識を育み次世代リーダーに育てる必要があります。
チームが成り立つためにはリーダーシップとともにメンバーシップも連動して 鍛えることが不可欠です。
パワハラはダメですが、育成のための積極的な関わりは必要です。しかしそうした余裕を持ちにくいのが上司の実情ではないでしょうか。
ただし暗い話ばかりではありません。疲弊する管理職の状況や管理職になりたくないという話ばかりが取り沙汰されがちですが、
実は当の管理職自身は、なって良かったと考えている傾向もあるのです。管理職を対象にした管理職の悩みと実態調査によると、管理職になって良かった、と
感じている人は6割で、職位が上がるほど高まり、本部長クラスになると8割が管理職になったことを肯定的に捉えています。
上司の仕事ぶりを見ている部下が管理職は大変そうと感じる一方で、上司自身は経験を積むほど、心の内側で管理職の仕事に働きがいを感じているのです。
本来管理職にはプレイヤーでは得られない働きがいがあります。私が考える管理職の働きがいは次の3つです。
1. チームを動かす裁量権を持ち部下と共に自分一人ではできない大きな仕事を成し遂げられること
2. 自分の関わりによって部下が成長、活躍するなど、一皮むける瞬間に立ち会う感動が得られること
3. 部下を育て活かす経験を経て、上司自身がリーダーとして成長できること
上司のあり方を内省する「上司力®研修基本編」では、多くの現場管理職が、業務多忙で部下と向き合う時間が取れないと悲鳴を上げます。
しかしこれはそもそもおかしいのです。
なぜなら、上司の仕事はプレイヤーとして自分が動くことではなく、部下に動いてもらうことのはず。
私たちFeelWorksの講師たちが上司力®研修を通して、そうした上司の本質を伝えると、はっと我に返る受講者も少なくありません。
部下育成に伴走する、アクションラーニング型「上司力®鍛錬ゼミ」などのプログラムを進めて いくと上司自身が働きがいに目覚める瞬間に多く立ち会います。
まず部下のことをよく知らなかったことに気づきます。 代表的な声をご紹介します。
これまでも形式的には1on1ミーティングをしていた。しかし部下との気まずい沈黙に耐えきれず、つい自分ばかりが話してしまっていた。
けれども沈黙もコミュニケーションであり、部下が何をどう話そうか考える時間を邪魔しないことが大切と学んだことで、部下の
仕事への思いやキャリア希望をじっくり聴こうと腹を据えた。すると、部下も次第に心を開いてくれて率直な話を聴くことができた。
このプロセスを経てそんな思いで仕事をしていたのか。意外な悩みや困難を抱えていたとは。キャリア希望や将来の夢を初めて知った。など
深い対話により部下一人一人への理解が進んでいきます。そして部下に仕事を任せて育てることに挑み
部下を動かす働きがいを実感し始めます。すると次のような感想が出てきて、上司自身が生き生きとしてくるのです。
部下とのコミュニケーションが円滑になりチーム運営にストレスがなくなった。業務推進に込めた自分の思いを部下が理解してくれた。
受け身だった部下が主体的に動いてくれるようになってきた。部下の活躍や成長に関心が向き、その変化を喜べるようになった。
組織ビジョンを部下と共有し合う中でモチベーションが高まった。管理職としての自分自身の成長が実感できるようになった。
一方でこんな悩みを吐露する上司もいます。働きがい改革の意義はわかった。
持ち味を見出して仕事を任せることで部下が働きがいを感じることも理解した。しかし経営層が現場に任せてくれずマイクロマネジメントに汲々としている。
とても自分一人で改革には踏み出せない。しかし経営層に話をすると、こんな逆の意見が返ってくることが少なくありません。
第一線のミドルマネージャー層が何かと細かいことで判断を仰いでくる。だから、良かれと思いアドバイスすることが常態化している。
しかし本当はミドルマネージャーたちがいちいち上にうかがいを立てず、しっかり自分で意思決定し、部下を束ね成果を上げてほしい。
むしろ現場の声を汲み取り必要な改革提案を上げるくらいの気概を持ってほしい。現場を任せられるミドルマネージャーの台頭を願っている経営層も少なくないのです。
現場管理職がプレイングマネージャーとして業務過多になっているのは本来は人事や経営の問題です。しかし会社が変わるのを待っていても目先の状況は変わりません。
まずは自分ができる範囲で動き始めることです。現場第一線の上司から「働きがい改革」を始めましょう。そして上司の本領と働きがいを取り戻しましょう。