働き方の変化
FeelWorks代表前川孝雄の著書 仕事を続けられる人と仕事を失う人の習慣
社会保障制度の逼迫や労働人口の減少を背景に、80代まで働き続けることが現実味を帯びてきました。
その一方で、企業の平均寿命は30年と言われ、会社に身を任せて仕事を続けられる人は少数派となっていきます。
長く活躍し、働きがいを持って仕事を続けられる人になるためには、どのように働き方を変えると良いのでしょうか。
この本では、他者から管理支配されるのではなく、自分の規律や規範に則って働く自律型人材を目指すことを推奨します。
今日は、はじめにを抜粋してご紹介します。 かつて、ビジネスパーソンのキャリアは横並び右肩上がりで思い描くことができました。
しかしその幻想はもはや崩れ去りました。 40代50代でも管理職になれない人が当たり前にいる状況です。
厳しい出世競争を勝ち抜かなければ、右肩上がりに増えるはずだった給料も、想像していたものより遥かに低いラインで横ばいとなるか、むしろ減ってしまうかです。
これからは人材の淘汰の時代です。 会社から必要とされるのは、どこへ行っても通用する人材ですから、
なんとかして会社にしがみつくという考え方では、会社に居続けることは難しくなるでしょう。 もちろん会社に依存せずに独立して安定を手に入れることは、さらに容易ではありません。
私はかつてビジネスパーソンの資格取得やスキルアップを支援する雑誌編集長を務めていましたが、将来不安が強まると、何か資格を取得しよう、手に職をつけようという機運が強くなったものでした。
今も会社には頼れない、自分の力で食べていく力を身につけなければという思いを抱く人たちは、まずそのように考えるケースが多いのではないでしょうか。
しかし今後はいかに難関であっても、資格や技術を習得するだけで、将来にわたって安定した収入が約束されることはありません。
資格に関して言えば、例えば司法試験に合格して弁護士になったとしましょう。 肩書だけ見れば花形職業と思われますが、競争が激しくなる中で単に法律に詳しいだけでは、決して高収入が約束されるわけではない、というのが現実です。
苦労して司法試験に合格し開業しても、年収100万円台という生活保護受給者並みの収入しか得られない人たちが実は少なくありません。
またITの進化は苦労して身につけた職業技術もすぐに陳腐化させてしまいます。
野村総合研究所がオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らと行った研究によれば、
日本の労働人口の49%が10年から20年後には、人工知能やロボットなどで代替可能になるとのことです。
2015年に発表されたこの研究結果は、ニュースなどでも大きく取り上げられ、話題になりました。
事務、オペレーター、工場労働をはじめとする定型的な業務は、いずれ人間でなくてもつとまる仕事になってしまいます。
定型的な業務とは、単に単純労働という意味ではなく、そこには会計監査係員や通関士といった職種も含まれます。
高度な知識・技術や複雑なプロセスが要求される仕事でも決して安泰ではないのです。
このような時代に、仕事を失う人に陥らず、仕事を続けられる人になるためには、どうすればいいのでしょうか。
悲観的な現実をお話ししてきましたが、実は私は将来を楽観視しています。
仕事を続けられる人に変わっていくためには、特別な才能を持つ特別な人になる必要はなく、全ての人たちに可能だと考えているからです。
そのためには、これまでの日本の働く社会があなたに刷り込んできた常識を疑い、新しい時代に求められる新しい常識を知ることから始めます。
そして、その常識の下で求められる働き方を学び、行動や習慣を変えていくことで、誰もが希望ある将来を手に入れられます。
では、仕事を続けられる人になるためには、どのような行動や習慣が必要とされるのでしょうか。
ポイントは三つのプロセスに分けられます。 一つ目は、自ら仕事や役割を作り出すことです。
自分の食い扶持につながる仕事の有無を他人に委ねるのではなく、自分が決定権を握るのです。
ただし、これは上司から言われた仕事を拒めということではありません。 むしろ、言われた仕事の目的や背景を洞察し、期待を上回るような仕事や役割を提案し、作り出すことを指しています。
ここには、考える力、提案する力、合意形成する力などが求められます。 二つ目は、周囲の人を巻き込むことです。
周囲の人とは、社内の先輩、上司、後輩、経営層、同僚、他部署、取引先、顧客など社外ネットワークなどを指します。
自ら仕事や役割を作ったとしても、それを実現しなくてはなりません。 たいていの場合は、仕事は一人では完結せず、多様な人たちとの協働によって成り立っています。
仕事を続けられる人になるには、自分を動かす仕事から、人を動かす仕事へシフトしていくべきなのです。
三つ目は、生産性を高めて、しっかりと成果を上げることです。 稼ぎを得るためには、そもそも自分が手がけた仕事が、しっかり収益に結びつかなければいけません。
仕事を続けられる人になるには、長時間働いて残業代で収入を増やすという考え方を捨てることです。 無意味な作業や手続きを見直し、意味のある仕事に力を注ぐべきです。
その上で、自分はどれだけの成果を出して、どれだけの収益を生み出したのだから、そこから拠出される正当な給料はいくらです、と計算できる思考を持たなくてはならないのです。
つまり、時間ではなく、成果にこだわって働くのです。 さらには、会社の収益のうち、自分の貢献度がどの程度で、税金や社会保障費用まで勘案して、手取りいくらになる、と自分の収入に落とし込めて、初めて仕事を続けられる人の仲間入りができるのです。
人生100年時代とも言われます。20代から80代まで、60年働くことが視界に入ってきました。 仕事を続けられる人になるためには、他者から管理支配されるのではなく、自分の立てた規律や規範にのっとって働ける自律型人材を目指すのです。
会社に所属しながらも、会社の枠を越え、多様な人たちと連携していける商売人魂を育むのです。 逆説的ですが、会社に求められる人は、社外でも通用する人材です。
どこから読み始めてもいいように、全体で50個のコラム形式にしていますので、最初から順序立ててでも、気になるところの拾い読みでも構いません。 あなたのスタイルで読み進めてください。