新入社員の生態の分析
FeelWorks代表前川孝雄の著書 頭痛のタネは新入社員 第一志望の会社に入ったのに、突如機能停止してしまう新入社員たち。
彼らはどういう生き物なのか。 この本では、その生態と行動原理を徹底分析します。
「送信しっぱなしコミュニケーション」 「大人免疫力の低下」 「プラネタリウム型視点」 ・・・・・・。
全国から聞こえる悲鳴と衝突の実例を挙げながら、それでも一緒に働いていくために上司が仕掛けるべき
12の技を伝授します。 今日は、はじめにを抜粋してご紹介します。
はじめにー 第一志望の会社に入れたのに、仕事がなく毎日暇で仕方ありません。
上司や先輩たちは忙しそうで、声をかけるのも気が引けます。 勤める会社はもちろん、業種も職種も違う若手社員たちを集めて座談会を開いた時のことです。
いかに就職活動が大変だったか、それを乗り越えて入社した喜びやどんなものかを話してもらうという場で、一人がそう口にした途端、他の参加者に反応が広がりました。
私も昨年の夏に同じようなことがあったんです。 先輩が簡単にこなしている仕事がどうして私にできないのかと悩んでしまって、
実は僕は鬱になったことがあります。 上司はやってみろというだけで何も教えてくれません。
でもシビアに成果を求められます。 病院に行って薬をもらってなんとか切り抜けました。
それぞれが抱え込んでいた悩みが一気に溢れ出したようでした。 すでに社会人としてのキャリアを積まれている方からすれば、
何をぬるいことを言っているんだと思われるかもしれません。 しかしこうした若者が珍しくないこともすでにご存知のことでしょう。
そして一度は愚痴ったことがあるはずです。 最近の新入社員はよくわからん。自分たちの時とは違う気がする。
こうした愚痴は今も昔も普遍です。 ただし現実に最近の新入社員にはそれまでの世代とは異なる特徴があるのも事実です。
若者のこういった異変を感じ始めた2004年頃から、私は20代の若手社員とその上司にあたる現場管理職との関係に注目してきました。
すると上司側もとにかく若手の指導に手を焼き、悩んだり怒ったりしている姿が浮かび上がってきたのです。
目の前の仕事ができる部下は多い。 ただ自分から情報を取りに行く意欲が乏しい気がします。
世代間の価値観のズレ
積極的に上との人脈作りをする姿勢も足りない。 すぐに使うのが、これはできませんというセリフ。
本当にできないの?別の方法は?と再三突っ込んで初めて、こういう条件ならできますと返事が来る。
トラブルが起こると、決まって言うんです。あの時は言いませんでしたが実は…ってね。 こっちは何を今さらって怒鳴りたくなります。
上司たちの頭痛の種になるのは、決められたことや与えられた仕事は真面目にやろうとするものの、受け身で積極性に欠ける若者の姿勢でした。
私は株式会社リクルートが運営するリクナビなどの就職関連メディアを統括する編集長として、若い人たちと間近に接してきました。
リクナビは企業に就職を希望する年間60万人の学生ほぼすべてが一度は利用する就職情報サイトです。
この仕事では意外にも就職活動を乗り切って入社した若者たちが、希望した職場で上司と対峙して悩んだり、仕事に馴染めず葛藤したりしている姿を目の当たりにすることになりました。
言うまでもなく、コミュニケーションは職場を活性化させる大きな鍵です。 会社組織のコミュニケーション課題は、経営と現場、
部署と部署、正社員と非正社員、男性社員と女性社員など様々な立場の間で生じます。
中でも深刻化しつつあるのが、世代間の問題です。 今の若手社員と、かつてバブル入社世代、新人類世代と言われた上司の間には、はっきりとした価値観のズレがあります。
上司世代が社会人として経験したバブル崩壊後の時代に若者たちは生まれ育ってきました。 その環境は、私たちの想像以上に彼らの物の見方に影響を及ぼしているのです。
この世代間の溝はなくなるどころか、これから広がる一方です。 というのも、2008年4月に入社した新入社員は、
大卒の求人倍率が16年ぶりに2倍を超えた就職温暖期世代です。 バブル期以来となる大量採用時代が始まったことで、これまでとは違った若者たちが大挙して職場にやってくるのは、これからが本番なのです。
彼らは何者なのか。 どのような価値観で動き、何を求めているのか。
どのように接すれば、お互いにとって幸福な関係が築けるのか。 私は学者ではありませんし、統計的な分析にもあまり興味はありません。
この本では、現場で接してきた若者たちの期待と本音、 そして全国の職場で起きている実例からお話ししていきたいと思います。
一人でも部下を持つ立場にある方や、若手育成力を強化したいと思っている方、 何より世代を超えて共に笑い、共に苦労できるような人間らしい職場を作りたいと思っている方のお役に少しでも立てれば幸いです。