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2025-08-05 12:00

朗読・グスコーブドリの伝記・てぐす工場・宮沢賢治

朝のスパイス配信メンバーで火曜日枠を使って朗読配信をはじめました。

<今日の作品>
「グスコーブドリの伝記」・宮沢賢治


<今日の配信者>

ー まき
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サマリー

宮沢賢治の物語「グスコーブドリの伝記」では、ブドリがテグス工場で働き始め、網をかける仕事を任されます。彼は困難を乗り越え、環境の変化を目の当たりにしながら成長していきます。

ブドリの始まり
グスコーブドリがふっと目を開いた時、いきなり頭の上で嫌に平べったい声がしました。
やっと目が覚めたな。まだお前はキキンのつもりかい。起きて俺に手伝わないか。
見るとそれは茶色なキノコシャップをかぶって、街灯にすぐシャツを着た男。
何かかぎ針でこさえたものをぶらぶら持っているのでした。
もうキキンは過ぎたの?手伝えって何を手伝うの?
ブドリが聞きました。
網かけさ。
ここへ網をかけるの?
かけるのさ。
網をかけて何にするの?
手ぐすを買うのさ。
見るとすぐブドリの前の栗の木に、二人の男がはしごをかけて登っていて、
一生懸命何か網を投げたり、それを操ったりしているようでしたが、網も糸も一向見えませんでした。
あれで手ぐすが買えるの?
買えるのさ。うるさい子供だな。
おい、縁起でもないぞ。
手ぐすも買えないところにどうして工場なんか建てるんだ。
買えるともさ。
現に、おれをはじめたくさんのものがそれで暮らしを立てているんだ。
ブドリはかすれた声でやっと、「そうですか。」と言いました。
それにこの森はすっかりおれが飼ってあるんだから、
ここで手伝うならいいが、そうでもなければどこか行ってもらいたいな。
もっとも、おまえはどこへ行ったって、食うものもなかろうぜ。
ブドリは泣きそうになりましたが、やっとこらえて言いました。
そんなら手伝うよ。けれどもどうして網をかけるの?
それはもちろん教えてやる。こいつをね。
男は手に持ったかぎ針のかごのようなものを両手で引き伸ばしました。
いいか、こういう具合にやるとはしごになるんだ。
男は大股に右手の栗の木に歩いて行って、下の枝にひっかけました。
さあ、今度はおまえがこの網を持って上へのぼって行くんだ。
さあ、のぼってごらん。
男は変なマリのようなものをブドリに渡しました。
ブドリは仕方なくそれを持ってはしごに取り付いてのぼって行きましたが、
はしごの段々がまるで細くて手や足に食い込んでちぎれてしまいそうでした。
もっとのぼるんだ。もっと、もっとさ。
そしたらさっきのマリを投げてごらん。栗の木をこすようにさ。
そいつを空へ投げるんだよ。
なんだい、ふるえてるのかい。育児なしだなあ。
投げるんだよ、投げるんだよ。空、投げるんだよ。
ブドリは仕方なく力いっぱいにそれを青空に投げたと思いましたら、
にわかにお日さまがまっ黒に見えて、
さかさまに下に落ちて行きました。
そしていつかその男に受けとめられていたのでした。
男はブドリを地面におろしながらぶりぶり怒り出しました。
お前も育児のないやつだ。なんというふにゃふにゃだ。
俺が受けとめてやらなかったら、お前は今頃頭がはじけていただろう。
俺はお前の命の恩人だぞ。これからは失礼なことを言ってはならん。
ところでさあ、今度はあっちの木へのぼれ。
もう少し経ったらご飯も食べさせてやるよ。
男はまたブドリへ新しいマリを渡しました。
ブドリははしごを持って次の木へ行ってマリを投げました。
男はポケットからマリを十ばかり出してブドリに渡すと、
スタスタ向こうへ行ってしまいました。
ブドリはまだ三つばかりそれを投げましたが、
どうしても息がはぁはぁして体がだるくて止まらなくなりました。
もう家へ帰ろうと思ってそっちへ行ってみますと、
驚いたことに家にはいつか赤い土管の煙突がついて、
戸口にはイーハトーブテグス工場という看板がかかっているのでした。
そして中からタバコを吹かしながらさっきの男が出てきました。
さあ子供、食べ物を持ってきてやったぞ。
これを食べて暗くならないうちにもう少し稼ぐんだ。
僕はもう嫌だよ。家へ帰るよ。
家ってのあそこか?
あそこはお前の家じゃない。俺のテグス工場だよ。
あの家もこの辺の森もみんな俺が買ってあるんだからな。
ブドリはもうやけになって黙ってその男のよこした蒸しパンをむしゃむしゃ食べて、
またマリを銃ばかり投げました。
その晩ブドリは昔の自分の家、今はテグス工場になっている建物の隅に小さくなって眠りました。
網かけの仕事
さっきの男は3、4人の知らない人たちと遅くまでロバタで火を焚いて、
何か飲んだり喋ったりしていました。
次の朝早くからブドリは森に出て昨日のように働きました。
それから一月ばかり経って森中の栗の木に網がかかってしまいますと、
テグス界の男は今度は泡のようなものがいっぱいついた糸切れをどの木にも5、6枚ずつ吊るさせました。
そのうちに木は芽を出して森は真っ青になりました。
すると木に吊るした糸切れからたくさんの小さな青白い虫が糸を伝って列になって右へ這い上がっていきました。
ブドリたちは今度は毎日たき木取りをさせられました。
そのたき木が家の周りに小山のように積み重なり、
栗の木が青白いひものの形の花を枝一面につけるところになりますと、
あの板から這い上がっていった虫もちょうど栗の花のような色と形になりました。
そして森中の栗の葉はまるで形もなくその虫に食い荒らされてしまいました。
それから間もなく虫は大きな黄色な眉を網の目ごとにかけ始めました。
するとテグス界の男は狂気のようになってブドリたちを叱り飛ばしてその眉を籠に集めさせました。
それを今度は片っ端から鍋に入れてぐらぐら煮て、手で車を回しながら糸を取りました。
夜も昼もガラガラガラガラ三つの糸車を回して糸を取りました。
こうしてこしらえた黄色な糸が小屋に半分ばかりたまった頃、
外に置いた眉から大きな蛾がポロポロポロポロ飛び出し始めました。
テグス界の男はまるで鬼みたいな顔つきになって自分も一生懸命糸を取りましたし、野原の方からも四人の人を連れてきて働かせました。
けれども蛾の方は日増しに多く出るようになって、島居には森中まるで雪でも飛んでいるようになりました。
するとある日、六七台の二も馬車が来て、今までにできた糸をみんなつけて町の方へ帰り始めました。
みんなも一人ずつ二も馬車について行きました。
夢と災害
一番島居の二も馬車が立った時、テグス界の男がぶどりに、
「おい、お前の来週まで食うくらいのものは家の中に置いてやるからな。それまでここで森戸工場の番をしているんだぞ。」と言って、
変にニヤニヤしながら二も馬車についてさっさと行ってしまいました。
ぶどりはぼんやり後へ残りました。
家の中はまるで汚くて嵐の跡のようでしたし、森は荒れ果てて山火事にでもあったようでした。
ぶどりが次の日、家の中や周りを片付け始めましたら、
テグス界の男がいつも座っていたところから古いボール紙の箱を見つけました。
中には十冊ばかりの本がぎっしり入っておりました。
開いてみると、テグスの絵や機械の図がたくさんあるまるで読めない本もありましたし、
いろいろな木や草の図と名前の書いてあるものもありました。
ぶどりは一生懸命その本の真似をして、字を書いたり図を写したりしてその冬を暮らしました。
春になりますと、またあの男が六、七人の新しい手下を連れて大変立派ななりをしてやってきました。
そして次の日からすっかり去年のような仕事が始まりました。
そして網はみんなかかり、黄色な板も吊るされ、
虫は枝に這い上がり、ぶどりたちはまた滝木作りにかかることになりました。
ある朝、ぶどりたちが薪を作っていましたら、にわかにくらくらっと地震が始まりました。
それからずーっと遠くでドーンという音がしました。
しばらく経つと日が変に暗くなり、細かな灰がバサバサバサバサ降ってきて森は一面に真っ白になりました。
ぶどりたちが呆れて木の下にしゃがんでいましたら、手ぐすかいの男が大変慌ててやってきました。
「おい、みんなもうだめだぞ。噴火だ。噴火が始まったんだ。手ぐすはみんな灰をかぶって死んでしまった。みんな早く引き上げてくれ。
おい、ぶどり、お前ここにいたかったらいてもいいが、今度は食べ物は置いてやらないぞ。
それにここにいても危ないからな。お前も野原へ出て何か稼ぐ方がいいぜ。」
そう言ったかと思うと、もうどんどん走って行ってしまいました。
ぶどりが工場へ行ってみたときはもう誰もおりませんでした。
そこでぶどりはしょんぼりとみんなの足跡のついた白い灰を踏んで野原の方へ出て行きました。
12:00

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