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2025-07-15 08:43

朗読・グスコーブドリの伝記・森・宮沢賢治(まき)

朝のスパイス配信メンバーで火曜日枠を使って朗読配信をはじめました。

<今日の作品>
「グスコーブドリの伝記」・宮沢賢治


<今日の配信者>

ー まき
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サマリー

グスコーブドリさんと妹のネリさんは、森で遊びながら穏やかな日々を過ごしていますが、異常気象のため作物が育たず、家族は困難な冬を迎えています。最終的に、ネリさんが目の鋭い男に連れ去られる展開が待ち受けています。

森での平穏な生活
グスコーブドリは伊波東部の大きな森の中に生まれました。お父さんはグスコーナドリという名高い木こりで、どんな大きな木でもまるで赤ん坊で貸し付けるようにわけなく切ってしまう人でした。
ブドリには、ネリという妹があって、二人は毎日森で遊びました。ゴシ、ゴシとお父さんの木を弾く音が、やっと聞こえるくらいな遠くへも行きました。
二人は、そこで木いちごの実を取って湧水につけたり、空を向いて、かわるがわる山端の鳴くまねをしたりしました。すると、あちらでもこちらでも、ポー、ポーと鳥が眠そうに鳴き出すのでした。
お母さんが家の前の小さな畑に麦を撒いているときは、二人は道にむしろを敷いて座って、ブリキ缶で蘭の花を煮たりしました。すると今度は、もういろいろの鳥が二人のパサパサした頭の上をまるで挨拶するように鳴きながら、ザー、ザー、ザー、ザー、通り過ぎるのでした。
ブドリが学校へ行くようになりますと、森は昼の間大変寂しくなりました。 その代わり、昼過ぎにはブドリはネリと一緒に森中の木の幹に赤い粘土や消し炭で、木の名を書いて歩いたり、高く歌ったりしました。
ホップの鶴が両方から伸びて、門のようになっている白樺の木には、「カッコオドリ、トウルベカラズ。」と書いたりもしました。
そしてブドリは十になり、ネリは七つになりました。 ところがどういうわけですか。その年はお日様が春から変に白くて、
いつもなら雪が解けると間もなく、真っ白な花をつけるこぶしの木もまるで咲かず、 5月になってもたびたびみぞれがぐしゃぐしゃ降り、
7月の末になっても一向に暑さが来ないために、 去年蒔いた麦も粒の入らない白い干しかできず、
大抵の果物も花が咲いただけで落ちてしまったのでした。 そしてとうとう秋になりましたが、やっぱり栗の木は青い殻の胃がばかりでしたし、
みんなで普段食べる一番大切なオリザという穀物も一粒もできませんでした。 野原ではもうひどい騒ぎになってしまいました。
ブドリのお父さんもお母さんも、たびたび滝木を野原の方へ持って行ったり、 冬になってからは何遍も大きな木を町へそりへ運んだりしたのですが、
いつもがっかりしたようにして、わずかの麦の粉などを持って帰ってくるのでした。 それでもどうにかその冬は過ぎて次の春になり、
畑には大切にしまっておいた種もまかれましたが、 その年もまたすっかり前の年の通りでした。
そして秋になると、とうとう本当の黄金になってしまいました。 もうその頃は学校へ来る子どももまるでありませんでした。
ブドリのお父さんもお母さんもすっかり仕事を辞めてしまいました。 そしてたびたび心配そうに相談しては、変わる変わる町へ出て行って、
やっと少しばかりのキビの粒などを持って帰ってくることもあれば、 何にも持たずに顔色を悪くして帰ってくることもありました。
そしてみんなは小ならの実やクズやわらびの根や、 木の柔らかな皮やいろんなものを食べてその冬を過ごしました。
けれども春が来た頃はお父さんもお母さんも何かひどい病気のようでした。
ある日お父さんはじっと頭を抱えていつまでもいつまでも考えていましたが、 にわかに起き上がって
俺は森へ遊んでくるぞと言いながらよろよろ家を出て行きましたが、 真っ暗になっても帰ってきませんでした。
二人がお母さんにお父さんはどうしたろうと聞いても、 お母さんは黙って二人の顔を見ているばかりでした。
次の日の晩方になって森がもう黒く見える頃、 お母さんはにわかに立って壇に穂田をたくさんくべて家中すっかり明るくしました。
それから、私はお父さんを探しに行くからお前たちは家にいて、 あの戸棚にある粉を二人で少しずつ食べなさいと言って、やっぱりよろよろ家を出て行きました。
二人が泣いて後から追って行きますとお母さんは振り向いて、 なんたら言うことを聞かない子供らだと叱るように言いました。
そしてまるで足早につまずきながら森へ入って行ってしまいました。 二人は何遍も行ったり来たりしてそこらを泣いて回りました。
とうとうこらえきれなくなって真っ暗な森の中へ入って、 いつかのホップの門のあたりや湧水のあるあたりを、
あちこちうろうる歩きながらお母さんを一晩呼びました。 森の木の間からは星がちらちら何かいうように光り、
鳥はたびたび驚いたように波の中を飛びましたけれども、 どこからも人の声はしませんでした。
とうとう二人はぼんやり家へ帰って中へ入りますと、まるで死んだように眠ってしまいました。
ぶどりが目を覚ましたのはその日の昼すきでした。 お母さんの言った粉のことを思い出して戸玉を開けてみますと、
中には袋に入れた蕎麦粉や小ならの実がまだたくさん入っていました。 ぶどりは練りをぎゅり起して二人でその粉をなめ、
お父さんたちがいた時のように炉に火を焚きました。 それから二十日ばかりぼんやり過ぎましたら、ある人口で
今日は誰かいるかねというものがありました。 お父さんが帰ってきたのかと思ってぶどりが跳ね出してみますと、それはカゴを背負った目の鋭い男でした。
その男はカゴの中から丸い餅を取り出して、ポンと投げながら言いました。 私はこの地方の貴賓を助けに来たものだ。
さあ何でも食べなさい。 二人はしばらく呆れていましたら、さあ食べるんだ食べるんだとまた言いました。
二人がコワゴワ食べ始めますと男はじっと見ていましたが、 お前たちはいい子供だ。けれどもいい子供だというだけでは何にもならん。
わしと一緒についておいで。もっとも男の子は強いし、わしも二人は連れて行けない。 おい女の子、お前はここにいてももう食べるものがないんだ。
おじさんと一緒に町へ行こう。毎日パンを食べさせてやるよ。 そしてぷいっとネリを抱き上げて背中のカゴへ入れて、そのまま
おーほいほい、おーほいほいとどなりながら、風のように家を出て行きました。 ネリは表で初めてワッと泣き出し、ブドリは
泥棒、泥棒と泣きながら叫んで追いかけましたが、 男はもう森の横を通ってずーっと向こうの草原を走っていて、そこからネリの泣き声がかすかに震えて聞こえるだけでした。
試練と別れ
ブドリは泣いてどなって森の外れまで追いかけて行きましたが、とうとう疲れてばったり疲れてしまいました。
08:43

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