ブコウスキーの作品紹介
tantotの時々読書日記第24回です。
今日は、チャールズ・ブコウスキーのパルプについてお話ししたいと思います。
これは、ちくま文庫で柴田本幸さん役が出ています。2016年に文庫版が出ています。
単行本は、1995年に学研から出ていて、2000年に新聴文庫で復刊されて、さらにちくま文庫で再刊された。
結構、根強く何度も復刊されているみたいな感じで。
ブコウスキーって、僕も今回初めて読んだんですけど、結構カルト的な人気用の作家、アウトローな感じの作家だそうです。アメリカの作家ですね。
有名なことで言うと、よく見るのは、ありきたりの狂気の物語とか、街で一番の美女とか、その辺は新聴文庫で短編集が出ているので、
その辺は、なんとなく文庫のたまとか見ると、よく時々目にする感じかなと思ったんですけど、
名前は聞いたことあり、読む機会はなかったんですけど、たまたまこの本はですね、古本屋をふらっと巡ってた時に、ちょっと安くなっていたのと、
あと、結構表紙が、絵が可愛くて、その絵に惹かれて。
あと帯ですね、宇宙人死神セリーヌ、こんな探偵小説があっていいのか、伝説的カルト作家の回避作復刊と書いていて、ちょっと惹かれた感じで読んでみました。
この本何かっていうと、帯にも今あったように、探偵小説風のもので、出てくる主人公がヴィレーンっていう、何ヴィレーンだっけな。忘れちゃった。
ニック・ヴィレーンっていう探偵事務所をやって探偵なんですけど、ちょっとハードボイルド風、いわゆる探偵もので言うと、一番の王道で言うとあれですよね。
名前がすぐ出てこなくなるんですけど、フィリップ・マーロー、フィリップ・マーロー?あってる?
そうですね、そういうすごい、何というか、ハードボイルド、かっこいい、ダンディな感じの探偵、ちょっとブライな感じで、ただ仕事はめちゃくちゃできる。
常にアンニュイな雰囲気を出しつつ、なぜか女にはモテて、うつまいが事件を解決するみたいな。
そんな感じの探偵小説の、パロディなのかなっていう感じで、何かヴィレーンが本当にしょうもない、ハードボイルド風を装うとしてるんですけど、
実際には、いろいろ事件というか、依頼が舞い込むんですけど、その依頼に対して真面目に取り組んでいるようにあんま思えず、
すぐに昼間から飲んでるし、競馬に行ってるし、バー巡りをしたりとかって、真面目に事件に向き合っているイメージがないんですね。
その事件の流れで、腕腰の強そうな、悪そうな奴らが事務所に来たり、突然乗り込んできたりとか、
いろいろたどっていったら、やばそうな現場を目撃したりとか、そこでやっぱり強そうな奴と対峙したりみたいになるんですけど、
基本的にそこでボコられるとか、ボコられないにしても自分では解決せずに、たまたま解決してしまうみたいな、
そんな感じで、一切ハードボイルド感は本当はないみたいな、ただハードボイルド風の雰囲気だけ醸し出しているみたいな、そんな小説でした。
話も、死の貴婦人という人から、セリーヌを見つけてほしいっていう。
安っぽさと文芸的衝撃
セリーヌって、もう1800年代のフランスの詩人ですかね、作家、詩人なんですけど、
なぜかセリーヌがまだ生きてるから見つけてほしいみたいなのを死の貴婦人が言われて、
死の貴婦人って要は死神なんですよね。っていう依頼が来たりとか、あとは色々動いているうちに宇宙人類に出会ったりとか、
そんな感じで、話自体もちょっとおかしな感じの、しっちゃかめっちゃかな感じのお話みたいな感じです。
なので、読んでいて、徹頭徹尾、得るものは一切ないという感じで、ただただ、ちょっと変な話を読ませているというような、そんな感じのお話でした。
パルプっていうタイトル、最後の解説のところにもあったんですけど、
パルプっていうのは、アメリカで昔大量に出版された三流雑誌、三文雑誌のことを指して、
これはパルプマガジンとか呼ばれたり、単にパルプって呼ばれたりして、
なので、そこからパルプっていうのは安っぽさ、安っぽいものみたいな、そういうイメージを持つ言葉みたいですね。
なので、この三文雑誌に載っているようなしょうもない三文小説のパロディというか、
それをあえて書いているみたいな、そんな感じなのかなと。
クエンティン・タランティーノのパルプフィクションっていう映画がありましたよね。
パルプフィクションのパルプと同じ意味なんですけど、
パルプフィクションはすごくかっこいい感じに仕立てるものに対して、
このパルプはパルプそのもの、そのものっていう感じで、
そういう時代の安っぽい三文小説をあえてもう一度書きたかったっていう感じなのかなというふうに思います。
ただ、だからといって面白くないかというと、面白いんですよね。
このヘタレ具合というか、最近ちょっとヘタレ小説の話ばかりしているような気もしますが、
このニック、ニック・ヴィレンのヘタレ具合とか、
いろんな事件に巻き込まれてオロオロしていたりとか、周りに振り回されているのに、
でも自分ではそれをあえて認めずに、認めないでちゃんとやっているような言い方をするっていう、
その器の小ささも含めてリアリティがすごい、リアルだなっていうような、
宇宙人の出てる話でリアルだなもくそもないんですけど、そんな話です。
個人的に思ったのは、読んで面白かったですし、
ブコウスキーがカルト的に人気を誇るみたいなのも、やっぱり意味はわかるなと思って、
こういう小説、きっとたぶん同時代に出た時には、一定衝撃だったんだろうなと思うんですよね。
こんな小説はこうあるべしみたいなのが、規範があったとした時に、
こんなの書いてくるの?みたいな、そういう解策を出すみたいなところの、
同時代の人たちに対する衝撃みたいなのが、きっとあったんだろうなっていうのはすごく感じるものです。
ただやっぱり一方で、寂しさもあるんですけど、その同時代的な熱狂みたいなものは、
やっぱり同じ時代にいなかった、遅れてきた青年としての自分は、そこまで感じる。
なんとなくそうだったんだろうって感じるんだけど、やっぱりその熱狂を自分ごととしてはできないっていう、
そういう一末の寂しさみたいなものはあるかなと。
やっぱりこういうのは同時代性というか、やっぱりその時代時代のヒーローみたいな、
そういう人たちがいて、どの時代にもその時代のヒーローはいるのかなというふうに。
きっとこのブコウスキーは、ある時代におけるヒーローとしてすごく人気だったんだろうなって思うし、
その時代の空気感をちょっとだけでも感じられるってこと自体は、すごくこういう本として残っていて、
それを読むことの楽しみの一つではあるなというふうに思いました。
なので、くだらない探偵小説を読みたい人だったりとか、
そういう時代が、パルプの出たのが、80年代くらいかな、70年代、80年代くらいですかね。
80年くらいのその時代の空気感を感じてみたいみたいな人は、読んでみるとそれそれで面白いんじゃないかなというふうには思いました。
少なくとも、やっぱりこういう、読んでみて、こういう世界に触れられて、
また一つ自分の感覚が広がったなというところは感じた時代であります。
はい、そんな感じですかね。
ちょっとだけ読んだ方がいいかな。
最初の冒頭ですかね、冒頭こんな感じから始まりますというところを少し読んでみようかな。
俺はオフィスにいた。
オフィスの契約期限はもう切れていて、マッケルビーは置いたての手続きを始めていた。
バカみたいに熱い日で、エアコンが壊れてきた。
ハエが一匹、机の上を這っていく。
俺は手のひらを広げて突き出し、そいつをあの部屋へ送り込んだ。
ズブンの右足で手を拭いていると、電話が鳴った。
俺は電話を取った。
はい、もしもし。
あんたセリーナ読む?
女の声が聞きた。
えらくセクシーな声だった。
俺はしばらく前から女っ気がなかった。
もう何十年も。
セリーヌね、俺は言った。
ふむ。
セリーヌを捕まえて欲しいのよ。
女は言った。
セリーヌが欲しいのよ。
すごくセクシーな声だ。
こりゃたまらない。
あ、もう少しだ。
セリーヌ、俺は言った。
少し事情をお聞かせ願いますかね。
話してください。
話を続けて。
ジッパーを閉めなさい。
女は言った。
俺は舌を見下ろした。
どうしてわかったの?
俺は言った。
どうだってよえよ。
セリーヌを捕まえて。
セリーヌは死にました。
死んじゃいないよ。
見つけて欲しいのよ。
セリーヌを捕まえて。
うんぬんみたいな。
ま、ちょっと最初から
ハードボイルド風だけど
オフィスの契約期限切れてるし
なんかハエ潰したって
その手を右足で拭いたりするし
ズボンとチャックは
ジッパーは開いてるし
まあなんかこの
わかりますかね
この文体と書
あの実体のギャップみたいな
この面白さがずっと続く
でした。
はい。
ちょっと今日長くなっちゃいましたが
この辺で終われればと思います。
今日はチャールズ・ブコウスキーの
パルプ・塩渡誠役役
ちくわ君から出ています
こちらのお話をさせていただきました。
ありがとうございます。