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2025-05-06 15:09

#38 ミシェル・ウエルベック『服従』〜私たちはみんな心の奥ではバックラッシュを望んでいる

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ミシェル・ウエルベック『服従』を読みました。

2015年の作品ですが、今のアメリカの状況と重ね合わせながら読まれるべき一冊。

 

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サマリー

ミシェル・ウエルベックの『服従』は、2022年のフランスでイスラム政権が誕生するという衝撃的な設定を背景に、民主主義の限界について深く掘り下げている作品です。主人公の大学教授を通じて、フランス社会の変化や価値観の揺らぎが描かれ、現代の問題への警鐘を鳴らしています。

小説の背景と設定
tantotの時々読書日記、38回ですかね。
時々というには、あまりに長い間空いてしまいましたが、久しぶりに再開できればと思います。
今日はですね、ミシェル・ウエルベックの服従という本を最近読みましたので、取り上げてみようと思います。
たまたま読んだ経緯は、古本屋さん巡りが好きなんですけど、古本屋さんってなんかすごい破格で売っていて、ウエルベックの小説はすごい前からなんか読みたいなというふうに思っていて、ソリューシーとか有名な作品だと。
あと、ランサ・ローテ等とか、なんかちょっと色々気になってはいたんですけど、ちょっとあまかあまか読む機会がなかった。
結構タイムなものが多いので、読むぞというところに行かなかったんですけど、ちょうどお安く手に入れたのをきっかけに読んでみました。
安かったのもそうなんですけど、これまさに今このタイミングで読むべき小説でもあるかなというふうに思っていて、
テーマとしては、これオビネに書いてるんですけど、2022年フランスにイスラム政権誕生、シャルリー・エブのテロ当日に発売され、世界を揺るがす衝撃のベストセラー、日本上陸ということで、
話としては2015年に出された小説なんですけど、2022年に、当時から少し先の話ですけど、フランスになんとイスラム政権が誕生すると。
それも別に革命が起きたとかそういう話ではなくて、合法的な選挙の結果、イスラム政権が誕生し、
フランス社会がイスラム化するというような話です。なのでちょっとSFではないけど、架空の話ではあるんですけど、
ものすごい現実の延長線上の中でこういうことが起きてもおかしくないなというふうに思わされるような話です。
ある意味これって民主主義の、いわゆる西洋的民主主義社会の限界と、結局それを覆すというか、それを乗り越えるために、
この小説の中ではイスラムがある意味選ばれたみたいな、そんな話で、まさに昨今の民主主義の限界というか、
民主主義の結果として生まれてきた非常に非民主主義的、権威主義的、あるいは19世紀帝国主義的な世界みたいな、
そういった世界を前にして、まさに直接それの予言という話ではないんですけど、
そういう民主主義の限界というところをある意味しっかり描いた作品でもあるのかなと。
民主主義の限界というか、民主主義に限界を感じてしまった人たちが、こういう別の形を選ぶみたいな、
その一つの可能性を描いたものなのかなと思います。
話としては、主人公はフランスのパリに住む40代の大学教授で、文学が専攻で、
ユイスマンスという19世紀の中の作家を専門にしている男性です。
中年男性なんですけど、学生と結構恋人になったりとかして、
意外とイケメンなんですけど、楽しんでいるような感じの人です。
この彼が主人公なんですけど、その彼の目線からフランス社会が選挙とかそういったものを通じて、
イスラームがなぜかフランス社会に広がっていく、その様子を彼の目から描いているというような感じです。
話としては、大学教授という、ある意味少し特権的な地位、しかも文学の教授なので、
政治とは少し距離を置いている立場から少し眺めている。
ある意味客観的な視点みたいなところであり、悪く言うとノンポリ的な、
政治には興味ない、私は文学の教授なのでみたいな、そういう風に見ているうちに、
いずれも毎回世の中が変わってしまっているみたいな、そんな感じのところで、
結構彼自身の当たり前だと思っていた価値観自体も、今回の選挙によって、
世の中、あるいは人々がイスラームを選ぶという、そういうところを見て、
自分の価値観自体も揺るがされるというか、これまで信じていたものが変わってきてしまっている、
みたいな、そういう揺らぎというところを感じながら、今の世界の変化を眺めているというような感じの、
形をしていたところかな。
イスラムの魅力と現代社会の課題
結構ハクビなのが、一番最後の方なんですけど、
大学がイスラーム政権になって、大学もイスラーム教育を基本とすべしみたいな感じで、
イスラームに改修していない大学教授はクビになってしまう。
大学教授を続けたければ、イスラームに改修する必要があるというような、そんな形で。
主人公はそれを拒否して、大学を辞める道を選ぶんですけど、
イスラームに改修して成功しているというか、安定体の地位にいる元知り合いの教授が、
イスラームの素晴らしさについて語る話が、多分この小説のハクビの部分、クライマックスというか、
一番中心の部分になるのかなというふうに思っています。
なぜ私はイスラームを選ぶのか。
西洋のいわゆる民主主義とは少し、民主主義あるいは平等みたいな観念とは少し距離のある。
例えばそれこそ一夫多妻制が認められているとか、女性の社会的権利みたいなものが制限されていたりとか、
そういったものをなぜ選ぶのかみたいな話を語っているんですけど、
それがある意味結構説得力があるんですよね。
これが説得力を持つということ自体が、結局今の西洋的民主主義を突き詰めた先にある平等であるとか、
DI的な世界のある意味の暮らしにくさみたいな、息苦しさみたいなものを表しているのではないかなというふうに。
政治的な正しさ、ポリティカリーコレクトであることを突き詰めることの難しさだったりとか、
そういう強い個人である、啓蒙された個人として生きることの難しさ。
イスラームの素晴らしさ、これ解説で佐藤正さんも言っているんですけど、
ここで描かれているイスラームの素晴らしさみたいなのは、やっぱりある意味超越的な絶対心がいて、
その絶対心、アラーのいうことにとにかく従うのだと、それに従ってつつましく生きるというとあれかもしれないですけど、
難しい理念とかそういったことを掲げるのではなく、
絶対的なアラーという強大な存在に、ある意味それこそ服従して生きることの安寧というか。
女性の地位とか権利が制限されたりしているのも、この話で語られているところで言うと、
女性が男性に従うのは、男性がアラーに従うのとほぼ同じなのである。
要は、形としては女性が男性に従わなきゃいけない形なんですけども、
その男性も結局アラーに従っていて、
何か大きなものに従って服従して生きることこそが安寧の道であるみたいな、
そういうところなのかなと。
結局この話の中では、フランス社会は結構みんなイスラーム化に非常に恐れを受け入れているような感じで、
そういう大きなものに付き従う生き方というところをみんなが結局選んでいるというような、
そういうことなのかなと。
意外と誇りゆる、ある意味自由とか民主主義とか啓蒙の本当に大きな反動。
そういうとしての、フランスでいうとイスラーム政権の誕生だし、
もしかしたら最近のアメリカも啓蒙主義的な世界観に対する大きなバックラッシュが起きているというような、
そういうことなのかもしれないなというふうに読んで感じました。
これは結構難しい問題ですよね。
やっぱり我々もそうですけど、結構民主主義の考え方に、ある意味その環境の中で育ってきているので、
民主主義は素晴らしい、平等は素晴らしい、自由は素晴らしい。
そしてやはり昨今の流れでいうと、差別はいけないとか、
男女にしてもエスニシティにしても、あらゆる人が平等であるべきである。
平等、公正、公平であるべきであるみたいな。
地球環境を守らなきゃいけないとか、戦争は良くないとか、
言ってしまえばすごく優等生的な考え方のやっぱり素晴らしい、
それを守らなければならないと思っているんですけど、
ただ一方でその息苦しさみたいなものは実際あるんだろうなと。
それに対するバックラッシュがどういう形で起きるかというのは、
その時その時なのかもしれないですけど、
この服中に描かれているようなバックラッシュ、
バックラッシュって言うとイスラームが、
そういう遅れたとか古い考えだみたいな風になってしまうから、
そういうわけではなく、ある意味の反動的な動きっていうのが、
ある意味この正直で言うとフランスのイスラーム政権の誕生だし、
これはいろんな形で起こり得るっていう、
そういうようなことをすごく象徴的に描いた本なんじゃないかなという風に思っています。
なのでまさに2015年に出た本ですけど、
特に今こそ改めて読むべき本としても言えるんじゃないかなという風に思います。
全然語らなかったんですけど、
この今の話が大きな筋書きではあるんですけど、
この主人公の教授はユイスマンスの研究者なので、
この今の状況と彼が研究しているユイスマンスの文学的な変遷とか、
思想的な変遷みたいなものを少し重ね合わせながら描かれているというところも、
ユイスマンスのことは全然読んだこともないですし知らなかったんですけど、
そういう描き方も非常に巧みでグッと引き込まれるところがあるなという風に思ったので、
そういう単なる政治創設っていうものって感じではなく、
文学的な深みが非常にある話だなという風に思いました。
そんな感じかな。
ちなみにあと結構実在の政治家の名前がポンポンポンポン出てきて、
これなんかフランスっぽいな、フランス人結構こういうの気にせず書くんだなみたいな、
それこそマリーヌルペンが出てきたりとかね、
そんなようなところもフランス的に皮肉っぽさがあって、
それはそれ、それもそれで面白いなという風に思いました。
はい、ちょっと長くなっちゃいましたが、
今日はミシェル・ウェルベックの復讐、大塚孟さん役、解説・佐藤雅夫さんが書いています。
この本についてどういう感じかお話しさせていただきました。
ぜひいいと思った方はフォローなどしていただけると嬉しいなと思います。
それではありがとうございました。
15:09

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