2025-12-15 28:04

Month 12 France 24 The Debates 国外の活動家の絶望と国内の支援者の希望

Youtube France 24 Channel のThe Debatesからご紹介します。

”A new Syria? One year after the fall of Bashar al-Assad • FRANCE 24 English”

2025/12/8

サマリー

シリアの状況は、バシャール・アルアサド政権崩壊から1年が経過し、希望と絶望が同時に存在しています。国外の活動家は絶望的な見解を持ち、国内の支援者は再建への希望を抱いているという複雑な現実が浮かび上がっています。シリアの現状における絶望と希望が交錯する中、国外の活動家と国内の支援者たちの見解が対比されています。特に、人々の精神的なケアが国の再建に不可欠であることが強調され、シリア国民の力による未来への希望が語られています。シリアの活動家の絶望と国内の支援者の希望についての議論を通じて、シリアにおける民主主義の進展の難しさと、希望を持つことの重要性が考察されています。

シリアの現状と希望
スピーカー 2
シリアの希望- 2024年12月8日からの記録。
こんにちは、AKIKOです。この番組は、シリアの現在の状況、特に2024年12月以降の変化とその影響について、私自身の情報収集をまとめながら感想を語っているポッドキャストです。
平和なシリアの未来への願いを込めて、シリアの希望というタイトルでお送りしています。
今回は録音日が2025年12月14日。
フランス24というフランスの英語版の報道チャンネル、私はBBCやアルジャジーラと並んでよく頼っている国際ニュースメディアの一つです。
最近、YouTubeのフランス24のチャンネルで、THE DEBATEというシリーズでシリアについて取り上げた番組を見つけました。
複雑なトピックを多面的に理解するために役立つと感じました。
2025年12月8日掲載のTHE DEBATE A New Syria One Year After the Fall of Bashar al-Assad
新しいシリア、バシャールアルアサド政権崩壊から一周年というタイトルです。
4人の女性の専門家をパネリストとして、約40分のシリアの現状に関するディスカッションの収録です。
こちらをまず、ノートブックLMのディープダイブ形式、16分半と少し長いのですが、そちらから掲載したいと思います。
スピーカー 3
こんにちは。今日は2025年12月13日。シリアのバシャールアルアサド政権が崩壊してからちょうど1年という歴史的な日ですね。
今回取り上げる資料、フランス24の討論番組の記録を基に、この激動の1年を振り返っていきます。
スピーカー 3
表面的には、ダマスカスのウマイヤ広場が祝賀ムードに包まれている映像が世界に配信されていますけど、
その感性の裏には、ども全く別の物語が隠されているようで、
だからこそ、今回はこの希望と絶望が入り込まれるシリアの今を深く掘り下げていきたいんですよね。
スピーカー 1
その希望と絶望という言葉が、まさにこの1年を象徴していますね。
シリア国民にとっては、2つの物語が同時に同じ場所で進行しているような、そんな状態なんです。
スピーカー 3
2つの物語ですか?
スピーカー 1
はい。1つは、50年以上にわたる独裁から解放されたという、これはもう紛れもない希望の物語。
そしてもう1つは、新たな不安と終わらない苦しみに対する深い失望の物語です。
この資料が非常に興味深いのは、人権活動家、ジャーナリスト、研究者、
そして現地で活動する国連関係者といった全く異なる視点を持つ人々の声が、1つの場所に集められている点なんです。
スピーカー 3
なるほど。
スピーカー 1
彼らの証言を頼りに、この国の複雑な現実を多層的に解き明かしていきましょう。
スピーカー 3
では早速ですが、現地の空気感から見ていきましょうか。
資料にあるように、ダマスカスやアレッポの路上では、数万人の市民が国旗を振って歓喜に吹いている。
と、シリアを再び愛せるようになったなんて声も紹介されています。
これだけ見ると、純粋に新しい時代の幕開けという印象を受けますけどね。
スピーカー 1
その解放感は間違いなく本物でしょうね。何十年も抑えられてきた人々が、ようやく声を上げられるようになったわけですから。
ただ資料は、そのすぐ隣にある全く正反対の感情も鮮明に捉えているんです。
特に象徴的なのが、人権活動家のファラ・ユーセフ氏の証言です。
スピーカー 3
と言いますと?
スピーカー 1
彼女は一年目、亡命先のパリで、朝戸失脚の法を聞いて歓喜の余り、夜明けまで踊り続けたそうなんですね。
スピーカー 2
へー、夜明けまで?
スピーカー 1
ええ。その場にいた警察官までが、彼女の喜びに加わったほどだったと。
スピーカー 3
それほどの喜び、それが一年前、それが今はどうなんでしょう?
スピーカー 1
今の彼女は、祝う気分ではないと、きっぱりと言い切っています。
活動家と支援者の視点
スピーカー 3
それはまた、ずいぶん劇的な変化ですね。あれほどの喜びが、なぜたった一年でそこまで冷めてしまったんでしょう?
スピーカー 1
彼女が指摘するのは、その未だに何十万ものシリア人が、朝戸政権下で誘拐されたり、行方不明になったりした家族の安否を知らせられたということです。
そういう苦しい現実なんです。
確かに一部の刑務所の扉は開かれましたけど、すべての真実が明らかになったわけじゃない。
彼女の友人たちの多くは、祝うどころか、今も愛する人々を痛んで。
スピーカー 3
まだ悲しみの宇宙にいると。
スピーカー 1
そうなんです。わずかな情報を待ち続けている。
結局のところ、多くの人にとっては、支配者が朝戸から別の人物に変わっただけで、自分たちの苦しみは何も解決していないと感じているんですよね。
スピーカー 3
なるほど。政権崩壊という、そのマクロな政治的変化が、個人のミクロな悲しみとか問いに、まだ全く答えられていない状態ということですか。
スピーカー 1
まさに。一方で資料には、ダマスカスにいるUNHCR、国連難民高等弁務官事務所の代表の声も記録されています。
彼は、もちろん困難は山積みだと認めつつも、現地の人々の中に、強い希望とか、自分たちの手で国を再建するんだという決意をすごく感じると語っているんです。
スピーカー 3
希望ですか。
スピーカー 1
この国外の活動家が見る絶望と、国内の支援者が見る希望、この2つの視点の、そのどちらもが真実だという点こそが、今のシリアの複雑さを物語っていると言えますね。
スピーカー 3
その複雑な状況を引いているのが、暫定大統領のアフマト・アツシャーラ氏ですよね。
元ジハーディストとも言われながら、国連で演説したりとか、非常に複雑な経歴の持ち主です。
彼に対する評価は、資料の中でどう描かれているんでしょう。
新政権と社会の緊張
スピーカー 1
ここで、この1年のシリアが抱える最大の矛盾が浮かび上がってくるんです。
アツシャーラ氏は、政権総枠後、意向規正義の実現を国際社会に約束しました。
スピーカー 3
意向規正義ですね。少し補足すると、これは紛争とか独裁が終わった社会が、過去の大規模な人権侵害にどう向き合うかっていう考え方ですよね。
刑事裁判だったり、真実救命委員会だったり。
スピーカー 1
その通りです。まさに、過去の犯罪を裁き、被害者の権利を守ることで、未来への土台を築くという約束です。
しかし、資料によれば、この1年間で、浅戸政権時代の犯罪を裁くための国内での刑事裁判は、ただ1つも行われていないんです。
スピーカー 3
1つもですか。それは驚きです。あれだけ大規模な人権侵害があったのに、なぜ裁判が1つも開かれないんでしょう。
何か政治的な障壁が、それとも司法制度を再建する能力がまだないとか。
スピーカー 1
資料から読み取れるのは、能力の問題というよりは、意思の問題に近いのかもしれません。
スピーカー 3
意思の問題。
スピーカー 1
ええ。さらに深刻なのが、権力の集中です。
先ほどのファラユーセフ氏が告発していますが、厚地荒らしは現在、治安、経済、法務、国際問題など、実に13もの主要な役職を1人で兼任しているそうです。
スピーカー 3
13も1人で、それはもう異興期の暫定政府というより、新しい独裁の始まりだと見られても仕方ないかもしれませんね。
スピーカー 1
ええ。彼が口にする自由という言葉とは、全く逆の方向に向かっているように聞こえます。
うーん。
まさに。そして、それは単なる権力集中にとどまりません。市民社会への具体的な弾圧も始まっています。
スピーカー 3
弾圧ですか。
スピーカー 1
ユーセフ氏自身の友人が浸透局に拘束された際に、ユーセフだシリアに足を踏み入れたら、我々はどう対処すべきか分かっていると、あからさまな脅迫を受けたそうです。
スピーカー 3
それは、もう混乱とかそういうレベルの話じゃないですね。
スピーカー 1
ええ。明らかに意図的な弾圧の兆候です。彼女は、こうした状況をシリア国民に対するガスライティングだとまで強く批判しています。
スピーカー 3
ガスライティング、つまり、君たちが感じている苦しみは間違いだとか、状況は良くなっているんだから前向きになるべきだみたいに巧みに思い込ませる心理的虐待ということですね。
スピーカー 1
そうなんです。解放されたんだから祝うべきだと押し付けられることで、未解決の悲しみを抱える自分たちの方がおかしいんじゃないかと感じさせられている。自分たちの苦しみが賄賞化され無視されているっていうそういう感覚です。これは非常に深刻な指摘だと思いますね。
スピーカー 3
新しい指導者が国民に対してガスライティングを行っていると、もしそうだとしたら、朝戸政権時代から続くあの根深い社会の分断を癒すどころか、むしろ悪化させてしまいそうですけど、その点はいかがでしょう?
スピーカー 1
残念ながら、資料が示す現実はその懸念を裏付けていますね。政権崩壊後、深刻な宗派間の暴力事件が多発しているんです。
スピーカー 3
はい、そうですか。
スピーカー 1
例えば、朝の元大統領の支持基盤だったアラウィ派の住人が1400人以上殺害された事件。あるいは、イスラエルが支援しているとされるドゥルーズ派の民兵とスンニ派のベドウィンとの衝突。さらに、ダマスカスのキリスト教会での爆破テロなど、少数派をターゲットとした報復的な暴力が後を絶ちません。
スピーカー 3
新政権はそうした暴力の連鎖を止められていないということですか?それとも止めようとしていない?
スピーカー 1
ここが非常に不気味な点なんですけど、ファーラ・ユーセフ氏は、新政権が意図的に分断を煽っている可能性すら指摘しています。
スピーカー 3
意図的に?
スピーカー 1
ええ、彼女の証言によると、政府が主催した公式の祝賀行事の最中に、群衆の中から少数派を殺せといった極めて煽動的な宗派的シュプレヒコールが上がったそうなんです。
スピーカー 3
政府主催の公式行事ですか?
スピーカー 1
ええ、彼女はこれは偶然や一部の暴走なんかじゃなくて、新政権が意図的に社会の亀裂を深めて、恐怖によって支配を固めようとしている証拠ではないかと強く主張しています。
スピーカー 3
なるほど。国内の宗派対立だけでも非常に深刻ですが、資料では他の治安上の脅威もいくつか挙げられてますよね?
スピーカー 1
はい、まさに内容外観という状況です。まず、国内の刑務所に集団されている9000人以上の元アイシス戦闘員。
スピーカー 3
9000人以上?
スピーカー 1
ええ、彼らがスリーパーセルとして再び活動を開始するリスクは常に存在しています。これは、いつ爆発してもおかしくない時間爆弾のようなものです。
うわー。
次に、国の北東部を実行支配しているクルド人勢力SDFとの緊張関係。彼らとの力関係も国の安定を左右する大きな要因です。
スピーカー 3
そして、外部からの干渉も複雑に絡み合っている。
スピーカー 1
その通りです。特にイスラエルは、先ほど名前が出たドゥルーズ・ハミンペイを支援することで、シリア南部に影響力を行使しようとしていますし、もちろんイーランも様々な形で関与を続けている。
シリアの不安定な状況
スピーカー 1
シリアは今、国内の分断と外部勢力の思惑が交錯する極めて不安定で危険な状態にあると言わざるを得ません。
スピーカー 3
これだけの混乱と暴力の中で、国の再建について話すこと自体が困難に思えます。資料にある世界銀行の資産を見て、本当に愕然としたんですが。
スピーカー 1
ああ、あの数字ですね。
スピーカー 3
戦争の被害額を元に戻すのに、最低でも2160億ドル、最大で3450億ドルが必要だと。
スピーカー 1
戦前のシリアのGDPがおよそ60億ドルでしたからね。国の年間総生産の、もう何倍もの資金が必要になる計算です。
スピーカー 3
天文学的な数字というのは、決して大げさな表現じゃないですよね。
スピーカー 1
ええ。ただ、その経済問題以上に資料が繰り返し指摘しているのが、人的な課題、特に人々の心の傷ですね。
はい。
そうなんです。既に700万人以上の国内難民のうち150万人が帰還したとされています。
彼らが故郷で直面しているのは、仕事がないとか、インフラが破壊されているといった物理的な問題だけじゃないんです。
スピーカー 3
と、いうと?
スピーカー 1
より深刻なのが、資料で戦争の見えない傷と表現されている精神的なトラウマです。
スピーカー 3
その点に関して、ジャーナイストのタラ・カンガルー氏が紹介していた、ザバダニーという町の教師の話が非常に心に残りました。
スピーカー 1
ええ。あのエピソードは強烈ですよね。
スピーカー 3
はい。
スピーカー 1
アサド政権下で兄弟を殺され、自身も投獄されたという、まあ壮絶な経験を持つ人物です。
政権が崩壊し、ようやく自由を手に入れた彼が、こう語ったそうです。
ええ。
私たちは自由と喜びを手に入れた。しかし、それをどう扱っていいのかわからないんだと。
スピーカー 3
どう扱っていいかわからない。長年求め続け、命がけで戦って手に入れたものを前にして、戸惑っていると。
スピーカー 1
まるで、暗闇にずっといた人が、突然強い光を浴びて目が見えなくなってしまったような状態なんです。
この言葉は、多くのシリア人が抱える希望と、それと同じくらいの、あるいはそれ以上の戸惑いを象徴しているように思います。
うーん。
彼らは、自分たちの手で国を再建したいと強く願っている。
資料の中でも、シリアの人々は非常に教育水準が高く、才能ある人材の宝庫だと指摘されています。
カンガルー氏は、「シリア最大の資産は石油ではない。シリア国民そのものだ。」とまで言っていますから。
スピーカー 3
その資産を生かすために、何が必要なんでしょうか。
スピーカー 1
彼女が強調するのは、道路や建物を再建するだけでなく、人々の心をケアする支援が不可欠だということです。
スピーカー 3
心のケア。
スピーカー 1
トラウマを抱えたままでは、国を再建するためのエネルギーも、未来を構想する力も湧いてこない。
まず、人々の心の傷を癒すことから始めなければ、本当の復興はありえないと。
スピーカー 3
ここまでいろいろな意見を見てきましたが、結局、シリアの未来をどう捉えればいいのか、本当にわからなくなってきますね。
希望と戸惑いの兆し
スピーカー 3
UNHCRの代表のように、判断するには早すぎる、と、ある種楽観的に構えるべきなのか、
それとも、ファラ・ユーセフ氏のように、これは新たな独裁の始まりだ、と、悲観的に見るべきなのか。
スピーカー 1
まさにその、両極端な見方の間で、揺れごいているのが現状ですね。
ここで、もう一人、研究者であるリーム・アルファフ氏の、より現実的で冷静な視点が参考になります。
スピーカー 3
はい。
スピーカー 1
彼女は、そもそも54年も続いた独裁体制の後で、一夜にして完璧な民主主義が実現すると期待すること自体が、非現実的だと指摘しています。
スピーカー 3
ああ、なるほど。
スピーカー 1
アッツシャーラ氏が、民主主義という言葉を使わないのも、ある意味では正直なのかもしれない、とまで。
スピーカー 3
つまり、彼女は、アッツシャーラ氏を擁護しているわけじゃなくて、期待値を現実的なレベルに設定し直すべきだ、と言っているわけですね。
スピーカー 1
ええ。そして、彼女がわずかながらも希望を見出している点が非常に興味深いんです。
それは、地域大国、特にサウジアラビアやトルコの存在です。
これらの国々は、自国の安全保障のためにも、シリアが再びテロの温床になったり、大混乱に陥ったりすることを望んでいません。
ええ。
そのため、彼らがアッツシャーラ新政権の暴走を抑制する重しとして機能する可能性がある、という見方です。
女性たちの未来
スピーカー 3
つまり、新政権の内部に民主的な力が育っていなくても、周辺国とのパワーバランスによって最悪の事態は避けられるかもしれないと、内部からの変革だけでなく、外部からの力学も考慮に入れる必要があるわけですね。
スピーカー 1
そういうことです。だからこそ、請求な結論は禁物なんです。
先ほどファライ・ユーセフ氏が使った、「有害なポジティブさ」という言葉がありましたが、根拠のない楽観論は、現場で苦しむ人々の声をかき消してしまいかねない。
でも、ただ絶望するだけでも何も生まれない。
重要なのは、権力者の言葉を鵜呑みにするんじゃなく、市民社会の声に粘り強く耳を傾け、彼らが自らの手で国を再建できるよう地道に支え続けること。
それこそが、唯一の現実的な希望への道筋なのかもしれません。
スピーカー 3
今日は、浅戸政権崩壊から1年が経ったシリアの、光と影が複雑に織りなず現実を一緒に見てきました。
そこには、祝賀の裏にある深い絶望、新指導者への期待と福井堅い疑念、そして、それでもなお国を再建するようとする人々の力強い意志がありましたね。
スピーカー 1
ええ。資料を読み解けば読み解くほど、シリアが今本当に重大な軌路に立たされていることが痛いほど伝わってきます。
スピーカー 3
最後に、一つ考えてみてほしい問いを投げかけたいと思います。
はい。
資料の最後の方で、ファラ・ユーセフ氏は、シリアの女性たちに敬意を表していました。
彼女はイタリアの哲学者アガンベンの言葉を借りて、独裁と戦争の中で女性たちの存在は最小限の生物的形態、つまりただ生きているだけの存在にまで貶められ、あらゆる政治的法的な権利を剥奪されてきたと語っています。
スピーカー 1
うーん。
スピーカー 3
これまでの私たちの議論の中心は、国を壊した古い男性の指導者と、国を新たに率いる男性の指導者でした。
でも、もし視点をがらりと変えて、国を破壊した男性たちではなく、その破片を必死に繋ぎ合わせようとしている名もなき多くの女性たちに焦点を当てたとしたら、一体何が見えてくるでしょうか。
彼女たちのために誰かが作る未来ではなくて、彼女たち自身が築く未来とはどのようなものになるのか。
この問いこそが、シリアのこれからを考える上で、一つの光になるのかもしれません。
スピーカー 2
このパネリストの中で、今回私が特に注目したのが、スタジオで参加したファラッハユーセフさん。
彼女はシリア人の人権活動家で、現在アラブリフォームイニシアティブというパリ日本部を置くシンクタンクのリサーチフェローということです。
このパネルディスカッションの中で、彼女は一貫して、シリアの現政権への懸念を強く表明しています。
その懸念の一つは、移行期正義、トランジショナルジャスティスという視点で何の進捗も見られていないこと。
移行期正義とは、紛争や独裁が終わった社会が過去の大規模な人権侵害に、刑事裁判や真実救命のための取り組みを含めどう向き合っていくか、とこの要約の中でも解説されています。
そして、もう一つは、あまりにも多くの権力がシャラー大統領自身に集中していること。
さらには、彼女個人の経験として、亡命先のパリからシリアに一時帰国をする計画を立てる中で、その許可が得られなかったというだけではなく、知人のジャーナリストを通して、間接的にとはいえ、帰国したらどのような目に遭うか、という脅迫を受けたという経験についても語られています。
4人のパネリストのうちの1人は、UNHCRシリアの副代表の女性です。
この女性は、1年前の政権交代だけではなくて、その前の14年間にも及ぶ紛争を考えれば、政府機関自体が混乱していて、そこからトランジショナルジャスティス、移行規制の具体的な進捗も含め、行政が機能していくようになるには、どれだけ困難なチャレンジがあるかを考慮する必要がある。
移行規制に向けた法律もすでにドラフトはされている。この1年間で進捗してきたこともある、という発言をしています。
このように、極めて対照的な意見が提示されている点について、国外の活動家が見る絶望と国内の支援者が見る希望という表現で、このノートブックLMによるまとめでも対比されていました。
これについては、私自身の体験と重ねても強く感じるところがあります。より詳しくは、クロージングの中で私の感想として触れたいと思います。
他には、この番組の中では、シリア最大の資産はシリア国民そのもの。シリアの人々が自分たちの手で国を再建したいと強く願っている。
シリアの現状に関するポジティブな見解はあってもいいが、その見解を他者に強要することは危険である、というような発言が強く心に残った部分です。
クロージングです。
実は私は、今年の10月に27年ぶりにダマスカスに入りました。日々目にする状況に色々と複雑な思いも抱いたものの、基本的にはダマスカスの人々が以前の記憶と変わらずに、とても親切で明るくて前向きな人々だということに感激をしました。
これだけの優秀な人々が国外に逃れることもせずに、政治の混乱を乗り越えて、今から国を建て直そうと、将来に向けて歩いていこうとする前向きな様子に触れて、日々感激をしました。
また、ダマスカスに入る前に、ヨルダンのアンマンを経由しました。そこで、2017年頃に知り合いになった、ヨルダンの首都アンマンに、シリア難民として暮らしている家族に再会しました。
その時も、来年ぐらいになったらシリアに帰りたいと思っているという話と、将来に向けて希望を感じている様子に触れて、前向きな気持ちになっていたところでした。
ところが、その紅葉感を持ちながら、ダマスカスで写真を撮って、今どこにいるかわかると、そのダマスカスで撮った写真をヨーロッパに住んでいるシリア人のエンジニアの友人に送ったときに、そのときの会話の温度感が噛み合わないという経験をしました。
彼は、シリアの現状にかなり懸念を感じていて、引き続きシリアに関することをネットに載せて話すということ自体も警戒しているようでした。
シリアにおける希望と絶望
スピーカー 2
家族を守ることが自分にとっては何よりも大切だと繰り返して話し、シリアに一時帰国をすることもほとんど考えていない、シリアと関わることがリスクになると感じているかのようでした。
彼は以前は政府機関でエンジニアとして働いていたはずです。
仕事を経てヨーロッパに移住したはずでしたが、彼のような知識層の場合は亡命という側面があったのかもしれないと改めて意識しました。
その彼に対して、ダマスカスに入っている外国人である私が急に連絡を取って、シリアについての会話をするということ、それは彼が苦労して築き上げてきた平和な日々を乱してしまう要素かもしれないということに気づいて反省をしました。
盗聴されるといったタイプのリスクはもうなかったとしても、少なくとも彼を心理的にザワザワさせてしまう要因にはなってしまっていることを感じたからです。
その経験と、今回のフランス24のパネリスト、パリに亡命をしたシリア人人権活動家、原葉ユーセフさんの話には重なる部分を感じています。
特に、ヨーロッパに渡り、民主主義が浸透した社会の中で、知識人や専門家といったしっかりとした地位を既に築いているような立場のシリア人にとっては、
アサド政権が倒れたからといって、シリアの独裁政治が終わって民主的な社会が訪れるとは、希望を持つことはまだまだとてもできないと、独裁者が去って別の独裁者が現れただけではないかと懸念を持たざるを得ない状況だと、
移行規制についても、各民族や宗派を超えて真に民主的な社会をつくっていくことについても、その懸念を払拭できるような進捗は、いまだ何一つないと言いたくなる気持ちがわかったような気がしました。
今回のノートブックLMの要約の中で、国外の活動家が見る絶望と国内の支援者が見る希望というように対比されていましたが、私自身が国内の支援者という側で、希望の方にばかり目が行きがちであるということを自覚し、はっとさせられました。
とはいえ、私自身、このポッドキャストをシリアの希望と名付けた思い、シリアの中に希望を感じている人々、希望を感じさせる人々にたくさん出会ったという自分の経験を大切にしていきたいとも思っています。
バラハユーセフさんが語った、「ポジティブになることは自由であるが、それを他人に強要することは危険である。」という点についてその通りだと思います。
特に、例えば、家族や身近な人々が殺害された経験があったり、失踪したままだったとしたら、その真実の救命の取り組みがなされないままに、新政権が外交活動や復興に向けた投資の話だけを進めているとしたら、どのように感じるのか。
いろいろな立場の人の懸念やネガティブな思いにも焦点を当てられるように、そのためには不自然なポジティブや希望を強調しすぎる在り方を取らないように、このポッドキャストを進めていく上で十分に気をつけたいと感じた出来事でした。
今回は以上です。
聞いていただいてどうもありがとうございました。
28:04

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