報道・メディア情報
BBC: Syria rebel leader dismisses controversy over photo with woman
(2024/12/20)
https://www.bbc.com/news/articles/c4gpkzxy663o
BBC日本語版: シリア暫定政権の指導者、写真求めた女性に髪を覆うよう指示 保守派もリベラル派も批判
https://www.bbc.com/japanese/articles/c3rqvg90jgro
Reuter: Syria's de facto leader says holding elections could take up to four years
(2024/12/29)
Reuter日本語版:シリア指導者、総選挙に初言及 実施まで「最長4年の可能性」
https://jp.reuters.com/world/us/GV7DEEPZNNMATKMSOHADEIHHSQ-2024-12-29/
Ashraq Al Awasat - English: SDF Commander to Asharq Al-Awsat: Syria Must Remain United
(2024/12/28)
SDF司令官がAsharq Al-Awsat紙に述べた「シリアは統一し続けるべき」
https://english.aawsat.com/arab-world/5095870-sdf-commander-asharq-al-awsat-syria-must-remain-united
NHKWeb (2024/12/23)
トルコ外相 シリア暫定政権指導者と会談 影響力強めるねらいか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241223/k10014675751000.html
サマリー
このエピソードでは、シリアの現状やシリア暫定政権のリーダーであるアフメド・アルシャラー氏に関する報道が振り返られます。特に、彼が写真撮影時に女性に指示を出したことが議論を引き起こし、シリア社会の宗教的・政治的多様性やその影響についても論じられます。シリア北東部におけるクルド民族主義の現状や、トルコを含む外部勢力との関係も考察されています。また、SDF司令官とシリア暫定政権リーダーの対話を通じて、今後の展望や情報発信の重要性が強調されます。
シリアの現状分析
2024年12月8日からの記録。こんばんは、AKIKOです。
この番組では、2018年からイラクのドホークにて、NGOによるシリア難民支援や、クロスボーダーでの北東シリア支援に携わっているという私の立場で、
2024年12月8日以降にシリアで起こっていることに関する情報収集をまとめ、所感を語ります。
あくまで人道支援ワーカーとしての視点からの情報収集です。
現在はヨーロッパに本部を置くNGOに所属し、シリア人の同僚たちは、
北東シリア在住のクルド系のスタッフが多いという立場で、情報収集をします。
人道支援ワーカーとして基本となる中立性を心がけますが、どうしても自分自身の焦点またはリーチできる情報範囲が偏る可能性が高いと自覚しています。
この番組を聞いていただける場合、その点はご了承ご注意をいただければと思います。
また、この番組により実施中の人道支援や現地の同僚に何か良くない影響が出る可能性が出た場合には、人道支援を優先し番組を中断や消去することにしたいと思います。
少し間が空いてしまいました。
しかし、カレンダーを見れば本日12月31日なので、12月8日から23日間が経過。
Week 3の記録として決して遅すぎるということはないと気づきました。
12月8日からまだ3週間少ししか経っていないなんて信じられない気がします。
確かに国際メディアのトップページには、もうシリアのニュースが取り上げられることが少なくなってきています。
さて、本日ご紹介したい報道の一つ目は、BBC2024年12月20日の報道です。
Syria rebel leader dismisses controversy over photo with woman
シリア暫定政権の指導者、写真を求めた女性に髪を覆うよう指示。保守派もリベラル派も批判。
11日前の報道。報道から少し時間が空いてしまっていますが、
シリアを理解するために有意義な記事であると思いますので紹介したいと思います。
概要欄にはBBC英語版日本語版のリンクを両方貼りました。ぜひ全文を読んでみてください。
音声では以下要約をお届けします。読みます。
シリアの反政府勢力リーダーアフメド・アル・シャルア氏が、写真を撮る際に若い女性に髪を覆うよう仕草で促したことがインターネットなどで議論を呼んだ。
リベラル派はこれをシリアにイスラム主義体制を導入しようとする兆候とみなす一方、
強硬な保守派は女性との写真撮影をしたこと自体を批判している。
アル・シャルア氏はBBCとのインタビューで、強制はしていないとし、個人的な自由として自分が望む方法で写真に写る権利があると説明した。
一緒に写真撮影をしてほしいと依頼した女性は、髪を覆うように頼まれたことは気にしていないと述べ、
アル・シャルア氏のリーダーとしての表現方法に理解を示した。
この出来事は、宗教的に多様なシリア社会で、アル・シャルア氏が指導者として今後直面していく困難を象徴している。
シリアの人口はスンニ派モスリムが多数を占め、他にもアラウィ派、ドルーズ派、イスマイル派、キリスト教徒などがおり、様々な政治的・宗教的立場が存在する。
HTSは以前、シリア北西部のイドリブを支配していた際に、厳格な行動規範と服装規定を導入していたが、最近ではそれを撤廃した。
アル・シャルア氏の今回の行動に対し、リベラル派は今後シリアが保守的なイスラム主義体制へと進むことへの懸念を示した。
他方、保守派・強硬派の中では、アル・シャルア氏が女性と一緒に写真を撮ること自体に批判的な声がある。
強硬派は、血縁関係のない男女が親しく接することは宗教的に許されないと主張し、アル・シャルア氏が虚栄心から世間の注目を集めようとしていると非難している。
強硬派の意見は主にシリア国内の保守的なコミュニティで共有されており、HTSの支持者や関係者にも影響を与える可能性がある。
このようなアル・シャルア氏の行動をめぐる議論は、シリアの今後の指導者が直面する多くの課題を浮き彫りにしている。
シリア社会の宗教的・政治的多様性の中で、どのようにして国民の支持を得るか、そして国を統一するかが重要な関心事となっている。
HTSと選挙の展望
以上、要約でした。
以下、私の所感と解説です。
まず、シリアの都市部での女性たちの服装様子の創造がつかないと、この記事を理解することが少し難しいのではないかと思います。
私が約30年前にシリアの首都ダマスカスに滞在していた経験、
また、現在イラクで地方都市とはいえ、人口数十万人以上の都会にて生活している経験からお話しします。
まず、メソポタミア文明の起源となっている中東のシリア・イラクの辺りは、古くから多民族・多宗教の人々が混在して一緒に暮らしているという背景があります。
現在は、イスラム教徒が多数派ではありますが、キリスト教・ヤジディ教徒など、またはイスラム教の中にもスンナ派・シーア派という大きな分類以外でもアラウィ・ドルーズというような人々もいます。
そして、クルド人・アッシリア人・トルクメンといった民族的なカテゴリーもあります。
シリアもイラクも、アサド政権やフセン政権という独裁政権下にあったときも、宗教的な意味での戒律や性別によって制限をするようなタイプの国家からの抑圧はあまりありませんでした。
存落部においては、それぞれの部族の規律や近所の目というようなコミュニティ内での保守的な雰囲気が、外出時の女性の服装に制限を与えるというようなケースは多く存在しています。
しかし、ダマスカスなどの首都、都会においては女性の社会進出が進んでいましたし、若い女性はTシャツにジーンズ、髪も覆わないといった服装が宗教問わず非常に一般的です。
旅行などで訪問してくる人がいる場合には、ノースリーブ、ミニスカート、へそ出しなど極端な露出さえ控えれば普段通りの格好で大丈夫というアドバイスをしています。
こういった社会の背景がある中、他方、暫定政権の中核となっているHTS。
HTSはイスラム教スンニ派のイスラム原理主義、種族的な価値観を認めない厳しいイスラム主義のバックグラウンドを持っているということが、この記事の背景になっています。
今までシリアでは独裁政権ではあっても、または紛争家ではあっても、女性の教育や社会進出の機会、服装などについて国家が口出しをするというようなことはあまりなかった。
そういう背景の中、新政権がよりイスラム原理主義的な価値観や制約を与えてくるのではないかということが、国際社会や市民から心配をもって見守られているということです。
では2つ目。
2つ目は、最新の状況を取り上げたいと思い、以下の記事を選びました。
ロイターから、2024年12月30日の記事です。
実施まで最長4年の可能性。
こちらロイターも英語版日本語版両方記事がありましたので、概要欄には両方を貼ります。
音声では以下要約をお届けします。
読みます。
シリア暫定政府を主導するシャーム開放機構HTSの指導者アフマド・シャルア氏が、総選挙まで最長4年かかる可能性があるとの見解を、サウジアラビアのメディア、アルアラビーアのインタビューで述べた。
12月8日にアサド政権を倒したHTSを率いるシャルア氏の発言は、ダマスカスの新政府がイスラム過激派としての過去と決別したということを近隣諸国に対して強調しようとしているものと捉えられる。
HTSの電撃的な進軍により13年にわたる内戦が終結したが、他民族国家、そしてトルコやロシアを含む諸外国が時に競合する利害関係を持つ中、その将来には大きな疑問が残されている。
HTSはアルカイダ系武装勢力を前進としているため、イスラム教の厳格な解釈に基づく統治を行うのか、あるいは柔軟に民主主義意向の姿勢を打ち出すのか、まだ不透明な部分が残されており、西側諸国などが懸念を示している。
シャルア氏は、そうした懸念の払拭に向けて、これまで対外的に穏健姿勢を発信。
HTSを解散し、国防省の傘下に入る見通しを既に表明している。
今回のインタビューでこの点を聞かれると、「当然だ。武装勢力や民兵が国家を運営することはできない。」と言い切った。
また、シャルア氏は、米国と連携しているクルド人勢力主体の民兵組織、シリア民主軍、SDFなどすべての旧反体制派勢力と交渉を行っていると述べた。
シャルア氏は、シリアがクルド労働者党PKKによるトルコ攻撃の拠点となることは拒否するとし、武器は国家のコントロール下に置くべきだとした上で、新国防省は有能な勢力の加入を歓迎すると述べた。
国際社会の関心
以上、記事の要約でした。以下、所感です。北東シリアの支援に携わる立場としては、シリア民主軍(SDF)との交渉について、気になるところです。平時において、またはすでに統一がとして合意されている国家においては、すべての武器は国家のコントロール下に置くべき、というのは当然の主張のように思えます。
しかし、現段階でも、複数の武装勢力が地域ごとに分割した統治を行っている、内戦が収束したと言いかねる現在のシリアの状態で、たとえ暫定政権の主導者であっても、他の武装勢力は武器を手放すべきだという主張は、
はたして妥当性がある主張なのか、権力で権力を抑え込むような話ではないのか、どのようにその道筋を導いていくのか、と、とてつもなく大きな課題のように感じました。
3つ目の記事は、3つ目の記事は、これに関連し、ロンドンに本部を置くアラビア語での国際報道
Ashraq Al Awasat、SDFの司令官のインタビューが掲載されていました。前出のロイターの記事より、2日ほど前、2024年12月28日の記事です。英語版から要約・翻訳します。読みます。
SDF Commander to Asharq Al-Awsat: Syria Must Remain UnitedSDF司令官がAsharq Al-Awsat紙に述べた「シリアは統一し続けるべき」
シリア民主軍(SDF)の司令官であるマズルーム・アブディ氏は、旧政権を妥当した軍事作戦の二日目から、HTSと軍事作戦上の調整が行われてきたことを明かしつつ、12月8日に旧政権が倒れてから、HTSと今後に関する直接交渉はまだ開始されていないと述べた。アブディ氏は、SDFが新たなシリア軍と統合する準備があるものの、「適切な枠組み」に関する交渉合意が達成された後であると強調した。さらに、「シリアは統一国家であり続けるべきだ」との考えを示し、
その新しい政治体制の形は国民と憲法の議論によって決定されるべきだと述べた。
シリアは国の多様性が憲法によって保護され、
クルド人を含むすべての社会集団の権利が確保される、
非中央集権的な民主国家であるべきだ。
統一国家の建設において
我々の役割を果たす準備ができていると述べた。
次の記事をお伺いします。
次の記事をお伺いします。
次の記事をお伺いします。
次の記事をお伺いします。
我々はシリアの分裂を求めておらず、
統一国家の建設において我々の役割を果たす準備ができていると述べた。
次の記事をお伺いします。
次の記事をお伺いします。
次の記事をお伺いします。
次の記事をお伺いします。
以上、記事の要約でした。
以下、わたしの補足、所感です。
シリアのクルド民族主義と外部勢力
SDFの司令官が よりクルド民族主義 独立を主張するのかもしれないと 個人としては想像していました
私の想像を覆して 穏健な立場であることに驚きました
現実的という言い方が 適しているのかもしれません
現在SDFが統治してきたシリア北東部は
トルコとトルコのバックアップを受けた SNAという武装勢力からの侵攻、攻撃を受けており
アレッポ県ティシュリンダム近辺で 戦闘が継続しています
12月22日には トルコの外務大臣がダマスカスを訪問し
暫定政権指導者シャルア氏と面談を持った という報道も見ていました
NHKウェブ12月23日の記事によれば
トルコ外相は「 長年敵対してきた北東部を拠点とする クルド勢力については
シリアにクルド人武装組織の居場所はないと述べ
暫定政権に対して クルド人勢力には厳しい姿勢で臨むようくぎを刺しました。」とあります。
この報道を見た12月23日頃には
シリアの暫定政権がトルコとの関係を優先すれば
北東シリアに対して強硬な態度に出て
紛争が拡大してしまわないだろうかという 心配な気持ちが高まっていました
しかし 12月28日のSDF司令官マズルーム・アブディ氏と
12月30日のシリア暫定政権リーダーシャルア氏の インタビュー記事からは
これ以上の紛争は望まず
多様な民族・宗教の権利を保障した民主主義国家として
統一を模索していく姿勢を両者から感じ取っています
少しほっとしているところです
情報収集と発信の重要性
最後に まとめの所感を話します
前回の録音から少し間が空いている間
この番組をどのように続けていくのか 少し迷っていました
まずエイトを始めてしまってから
どうやっていくのかを考えるというのは 私のいつものやり方ではあります
しかしシリアの未来が作られていく過程というのは
あまりに大きな課題なので
どのように情報収集をし
取捨選択をして発信をするのかということは 大きなチャレンジであると感じます
自分のための記録として始めたものではあるとはいえ
他の人も聞ける場にこれを置く以上は
情報操作 誘導などはしたくないという思いがあります
特に私は今 北東シリアに クルド人の同僚がたくさんいるという立場です
また 内戦に乗じてシリアを侵攻し占領している
イスラエルとトルコに対して 大きないきどおりを感じています
情報収集にあたって
敵の悪事を暴こう 味方の被害を訴えよう
という視点を排除することが正直言うと難しい
そして 敵の悪事 味方の被害の具体的な情報の話は
自分にとっても痛みを感じるつらいものでもあります
宮崎駿さんの 風の谷のナウシカの原作本に
「世界を敵と味方だけに分けたら 全てを焼き尽くすことになっちゃうの」
というナウシカのセリフがあります
ナウシカを敬愛し この考え方を信じている私にとって
情報収集・発信の中に 敵・味方という視点が入り込んでしまうぐらいなら
もうやめたほうが良いのかもしれないとも 感じ始めていました
そんな中 今日ぐらいになって
少し前に本を読んで学んでいた アドラー心理学の考え方からヒントをもらい
また一歩 続けていけるという気持ちになったところです
それは アドラー心理学のカウンセリングで
三角柱 三角の柱の形をしたものを用いるといいます
一面には 悪いあの人と書いてあります
もう一面には 可哀そうな私と書いてあります
私たちは大抵 そのどちらかの話ばかりをする
私にとっては 北東シリアのクルド地域が トルコから侵攻を受けたという情報を
トルコを悪いあの人と捉える
または クルド系住民を可哀そうな私
つまり 私の味方の側である可哀そうな人たちとして捉えるか
つい そういうどちらかの視点で 情報を受け取ってしまいます
しかし そこでアドラーは 三角柱のもう一つの面に焦点を当てようといいます
そこには これからどうするかと書いてあると
私が12月8日以降のシリアについて 情報収集と発信をしようと決めたきっかけは
シリアのこれからどうするかに興味を持って 応援したい気持ちだからだということを思い出しました
人道支援ワーカーという立場からは 確かに悪いあの人と可哀そうな私の情報も把握しなければならない
でも 私がこの番組を通して紹介していくのは
これからどうするかを中心において そこに目的を置いていきたい
シリアの人々のこれからどうするかを応援していきたいということを
改めて思い出して続けていく勇気を得ることができました
このストーリーは アドラー心理学を紹介した「幸せになる勇気」
岸見一郎さんと古賀史健さんの著書に掲載されているので
改めて読み直したいと思います
はい では今回は以上とします
聞いていただいてどうもありがとうございました
また今度
27:17
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