人道支援系の情報 Relief Web
IFRC (国際赤十字・赤新月)緊急支援アピール2024年12月20日
UN OCHA(国連人道問題調整事務所)緊急速報No.7 2024年12月18日
Syrian Arab Republic: Flash Update No. 7 on the Recent Developments in Syria (as of 18 December 2024) [EN/AR]
UNHCR 地域緊急速報 No.5 2024年12月19日
UNHCR Regional Flash Update #5 - Syria Situation Crisis (19 December 2024)
NES(北東シリア)NGOフォーラムアップデート No.7 2024年12月19日
NES NGO Forum Update #7: Humanitarian impact of recent developments in Syria on Northeast Syria (19 December 2024)
報道・メディア情報
BBC:Syria in maps: Who controls the country now Assad has gone?(2024年12月13日アップデート)
https://www.bbc.com/news/articles/c2ex7ek9pyeo
Web魚拓
https://megalodon.jp/2024-1216-0009-59/https://www.bbc.com:443/news/articles/c2ex7ek9pyeo
地図(2024年12月12日時点)

サマリー
2024年12月8日以降、シリアにおける人道的状況が深刻になっています。避難民が急増しており、戦闘とインフラの破壊が続いています。そのため、国際機関による支援の重要性が高まっています。シリアの地勢学的状況は複雑で、人道支援のニーズが増加する中、特に北東地区での人々の移動が困難になっています。また、内戦の収束に関する状況は依然として不透明で、民主化の実現についての議論が続いています。
シリアの人道的危機
2024年12月8日からの記録
こんばんは。この番組では、2018年よりイラクのドホークにて、NGOによるシリア難民支援や、クロスボーダーでの北東シリア支援に携わっているAKIKOが、
2024年12月8日以降にシリアで起こっていることに関する情報収集をまとめ、所感を語ります。
あくまで、人道支援ワーカーとしての視点からの情報収集です。
現在は、ヨーロッパに本部を置くNGOに所属し、シリア人の同僚たちは、北東シリア在住のクルド系のスタッフが多いという立場で、
情報収集をするため、人道支援ワーカーとして基本となる中立性を心がけますが、
どうしても自分自身の焦点、またはリーチできる情報範囲が偏る可能性が高いと自覚しています。
この番組を聞いていただける場合、その点はご了承、ご注意をいただければと思います。
また、この番組により、実施中の人道支援や現地の同僚に何か良くない影響が出る可能性が出た場合には、
人道支援を優先して番組を中断や消去することにしたいと思います。
前回第1回目の収録から1週間が経ちました。
人道支援系の情報が多数出てきています。
Relief WebにIFRC国際赤十字、赤新月が1024年12月20日に発表した、昨日発表の緊急支援アピールが出てきていましたので、
そこから始めたいと思います。
ここでは、まずIFRCのDREFという災害救援緊急資金というプールファンドというか、
常に何か災害などが起こったとき、緊急事態のために資金をプールしておいて、
そこから緊急に支出を行うというファンディングから100万スイスフラン、約1億7000円
をシリアの現状で起こっている緊急支援のために支出することを決めたこと、
また今後1年間で1億スイスフラン、日本円で約170億円を予算アピールしているという書類です。
私の方で翻訳していますが、このように始まっています。
2024年11月28日以降、戦闘の激化と急速な情勢の変化により、
過去13年間にわたるシリアの長期的な危機と脆弱な人道状況は現在著しく悪化している。
この激化により大量の避難民が発生し、重要なインフラが破壊され、大きな人道的ニーズが発生している。
110万人以上が避難し、このまま混乱が続けばさらに150万人が避難する可能性がある。
多くの家族が過密で十分なサービスが行き届いていない地域に避難所を求めており、
民間人の死傷者や食糧不足が報告されている。
継続している戦闘行為と治安の悪化により、
医療・保護・生活・基本的サービスへのアクセスは著しく制限されている。
この危機には、シリア国内での大規模の移動、
国内避難民の帰還、シリア国内への避難、
国外からの難民の帰還が増加する可能性など、複数の人口移動が重なっている。
家族たちは、より安全と考えられる地域に戻ろうとしているが、
その場所の多くはインフラが破壊され、サービスが限られ経済が破綻し、
不発弾や一般犯罪を含む治安の悪さに直面している。
緊急支援と移動
ICRCのアピールはこのようにして始まっています。
もう一つ、UN OCHA
国連人道問題調整事務所が、フラッシュアップデートをNo.7まで出しています。
これ、先週の時に気づいていなかったんですけれども、No.1が11月末の日付で出ていました。
フラッシュアップデートというのは、災害や紛争などが起こった場合に、
まず速報としてUN国連団体などが最新の状況、紛争や災害の状況についてアップデートしていくものです。
緊急速報といった感じでしょうか。
12月18日時点でのアップデート・ハイライトとして、以下のように書かれています。
シリアの一部では依然として治安状況が厳しく、タルトゥース県とアレッポ県で戦闘行為が継続している。
アレッポ県のManbij地区に人道支援NGOも1週間以上アクセスできていない。
シリア北東部の263の緊急避難所に避難している約44,000人の避難民は、依然として過酷な状況にある。
避難所の大半では適切な水と衛生設備が不足している。
国連とそのパートナーは、11月27日以降、シリア全土で130万人以上に食糧支援を行っている。
UNHCRからもフラッシュアップデートが出ています。
2024年12月19日時点での報告です。
旧政権崩壊後、シリアの多くの地域では比較的落ち着いた状態が続いているが、人道的ニーズは依然として深刻である。
避難所には何万人もの人々が避難しており、人々は水・食糧・医療などの基本的必需品へのアクセスを失っている。
多くの国内避難民は、帰還地域にある自分たちの家が被害を受けたり破壊されたりしていると報告している。
避難民にとって自分の自宅に帰るかどうかを検討する上で、安全と治安は依然として重要な関心事である。
国内避難民タスクフォースによれば、約22万5千人の国内避難民が主にハマ県とアレッポ県の出身地に帰還した。
国際機関の活動
12月15日現在、国内避難民は110万人から88万2千人に減少している。
UNHCRは、近隣諸国の何千人もの難民と、ヘルプライン・調査・フォーカス・グループ・ディスカッションなどのコミュニケーションチャンネルを通じて、
日常的に接触を続け、彼らの心配に耳を傾け、最新の情報を提供し、基幹に関する難民たちの認識や意向を把握するよう努めている。
多くの難民が、帰還・帰国について慎重でありつつも楽観的な見方を示している一方、大半はシリアで次に何が起こるかを見守っているという状況である。
帰還民たちの不安は、安全やセキュリティ、IDなどの公文書、子どもの就学、交通機関、故郷の住居の状態など現実的な検討事項まで多岐にわたる。
私自身が支援に関わっている北東シリアについては、NESNGOフォーラムというNGO間の調整機能があって、そこからも12月19日付けのフラッシュアップデート緊急速報が出されています。
読みます。
Manbij地区とAin Al-Arab地区では、引き続き戦闘行為が報告されている。
Kobaniにおける軍事作戦の脅威は、Kobani地域のさらなる不安定化と軍事作戦が進行した場合の潜在的な避難民発生を懸念させている。
この1週間、本格的な軍事作戦には未だ至っていないが、同時に停戦行為は不安定で何度も破られている状況である。
12月17日、現在、シリア北東部の全地域で、自治体の建物、学校、モスク、スタジアム、住宅などの合計263箇所が避難した人々を収容するための緊急避難所として利用されている。
これらの場所に現在、44,395人が避難している。
現地にいるNGOは、これらの場所をアセスメントし、そこの人数を確認した上で、利用可能なリソースや資金に基づいた支援を提供している。
北東シリアのニーズは依然として危機的であり、避難所外でもさらに約5万人が支援を必要としている可能性がある。
シリアの人道支援ニーズ
地勢学的な状況が絶えず変化しているため、状況は複雑であり、今後数日間は夜間の気温が強転下まで下がると予想されているため、北東シリアへのまたは北東シリア内での人々のさらなる移動を予測することは困難である。
また、人道支援NGOは、ここ数週間の紛争の激化を受けて、Manbij地区にアクセスできないままである。
マーケット、電力、医療施設、そのほか重要なインフラは修復が必要とされている。
以上のような人道支援ニーズに関する国連や赤十字などからの情報は、皆さんにとっては今週おそらく日本でも報道されている首都ダマスカスなどの人々の様子とは異なると感じられるのではないかと思います。
旧独裁政権が倒れたことを祝う市民の様子などが報道では今週だいぶ報じられていたという印象があります。
しかし、地方、特に国境付近や各勢力間の境界線においては未だに戦闘が継続しており、人々が避難を強いられる状況が継続しています。
報道系のメディアの情報については、先週も取り上げたBBC、"Syria in Maps: who controls the country now Assad has gone"地図で見るシリア、アサド後の国を誰が統括するのかというページが12月12日時点でのシリア地図とともに再度更新されていました。
再び地図の画像とリンクを貼りたいと思います。
しかしおそらくこれは報道ですので、このページはこれ以上は更新されないのではないかなと予想しています。
シリア国内の地図、各勢力の影響範囲図については、私はINSO、International NGO Safety Organizationという団体が登録NGOを対象に共有している地図を見ています。
12月17日付けの地図が手元にあります。
こちらは部外者への共有が禁止なので地図をアップできないのですが、シリア国内の各勢力ごとのコントロールテリトリーが7色に塗られています。
7つの勢力が国内をそれぞれ地域ごとにコントロールしているということです。
また、その7色以外にも戦闘継続中という印がついていたり、またはISの残存部隊が潜伏している地域として示されている地域も複数あります。
先週は特にアルホルキャンプやデリゾールなどの砂漠地帯を中心にISの残存部隊の活動が活発化し、治安部隊による空爆が実施されたというセキュリティ情報も複数目にしています。
砂漠地帯などのバキュームになりやすいエリアにおけるこういった活動がNGOや市民にとっても一つの大きな懸念材料になっています。
内戦と民主化の現状
ここからは所感のような話になりますが、シリア内戦は終わったと考えていいのですかという質問をSNSで目にしました。
このように今国内の地図が7色に塗られていて、うち2つの色はゴラン高原・クネイトラを占拠したイスラエル、そしてトルコ国境に接する一部をトルコが占拠している地域の色もあります。
このように国内が隣国からも占領されているという状況、そして国内の武装勢力間でも未だ合意に至っていないという現状です。
この現状を人道支援者としては私は内戦が収束したということはできません。
またダマスカスの現在の暫定政権となったHTSが掌握した主要な都市部に限った話だとしても、まだ内戦状態から出したと言っていいかはまだ疑問があります。
2011年のアラブの春に始まったシリア内戦ですが、独裁政権を倒し民主化を実現するという目標がありました。
この目標を思い出せば、アサド政権が倒れたことでその半分は実現したと言っても良いでしょう。
しかし、民主化が本当に実現したと言えるのかどうか、シリアの人たちが民主化が実現したと言えるのかどうかは、まだこれからを見守っていく必要があると思っています。
そういった視点について、BBCで興味深い記事を目にしていて、ぜひ紹介したいと思ったのですが、今回は少し長くなりましたので、また次回にしたいと思います。
それでは今回は以上です。聞いていただいてどうもありがとうございました。
18:21
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