前回の配信の続きで、派遣業の同一労働同一賃金制度対策において企業が取り組むべき実務や考えられる課題・問題点、それらを乗り越えてより社会に必要とされる派遣会社となるためには何が必要か、社労士目線から語る目指すべき派遣業に関して熱く語りました。
【ハイライト】
・労使協定方式でのポイント
・派遣業の同一同一対策での課題
・派遣業での障害者雇用との両立について
・社労士が考える派遣業が生き残る道
・派遣会社は『人材専門家』業たるべき
・(番外編)社労士は専門分野を作るべきかどうか
本エピソードの前編のリンクはこちらです。
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/id1507714225?i=1000518844175
■「労使協定方式」が主流、その裏にある現場の苦労とは?
現在、派遣業界の9割が採用している「労使協定方式」。これは厚労省が出している職種別の統計賃金に基づき、一定以上の給与水準を守るという制度です。一見わかりやすく見えるこの制度ですが、派遣元にとっては「派遣料金の値上げ交渉が必須」というハードルがつきまといます。派遣先からは「なんで急に高くなるの?」という疑念を持たれ、契約更新が見送られるケースも。さらに、賃金を上げるためには派遣先の理解だけでなく、就業規則や評価制度まで整える必要があり、実務の負担も大きくなっています。
■派遣先は“責任なし”?制度上のギャップに見る課題
制度上、労使協定の整備や賃金水準の見直し義務は「派遣元」にしか課せられていません。派遣先企業が非協力的であっても、法律上の罰則はほぼ皆無。結果として、派遣元だけが法令遵守と価格交渉の板挟みに陥る状況が多発しています。また、障害者雇用率のような「法定雇用義務」も、雇用主である派遣元のみが責任を負い、実際の就労先である派遣先には影響が及ばないという構造にも、大きな矛盾があると指摘されました。
■“腰掛け”から“専門職派遣”へ。今こそ派遣業モデルの変革を
この状況を打破するには、派遣業を“人材マッチング業”から“人材育成業”へと進化させる視点が必要です。対談では「研修機能を強化し、業種別の専門性を持つ人材を育てる派遣会社」や「キャリア支援とマッチングを一体で担う新たなモデル」の必要性が語られました。特に、研修+派遣+紹介を包括した“人材の専門家”としての進化が、派遣業界が生き残る鍵になるという提言が印象的です。
■“派遣は人を育てる場”へ。面談とフィードバックの重要性
派遣会社が取り組むべきもう一つの課題が、派遣社員への「定期的なキャリア面談」。面談の目的は単なる確認ではなく、派遣社員のスキル向上を可視化し、派遣先に報告・交渉材料として提示することにあります。しかし現実には、カフェやマクドナルドのような場所で面談が行われることもあり、本音が引き出しにくいなど課題は山積み。オンライン面談の活用や、専用ブースの設置など、環境整備も急務とされています。
■2025年に向けて、制度変更・情報収集のアンテナを高く
派遣に関わる法律や指針は年々細かくなり、2025年以降も「統計に基づいた最低賃金」の更新や「不利益変更の制限」など、運用の注意点は増える一方です。厚労省のパンフレットも毎年改訂されており、「統計が下がっても給与は下げられない」など、実務に直結する要点が見逃せません。オオタワさんは「社労士こそ、変化の早い法改正情報にアンテナを張り、顧客へ都度伝える役割が求められている」と語りました。
■派遣業の未来は「専門性×信頼性」で切り拓け
派遣制度における同一労働同一賃金は、派遣元の負担を増やす一方で、派遣先には明確な義務が課されないという非対称性を抱えています。この構造に対抗するには、派遣元が「専門性ある人材の提供者」としての地位を確立すること。研修、キャリア面談、フィードバック、紹介機能――これらを統合した「人材戦略企業」へと脱皮することが、未来の生き残りにつながるはずです。変化の激しい今こそ、“人材ビジネスの再定義”が問われています。
~お知らせ~
サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
人生に前向きでポジティブな方をゲストとしてお呼びし、経営者や従業員として働くリスナーの皆様が明日から明るく過ごせて、心や気持ちがパッと晴れるそんな『働き方を考える』ラジオをお送りします。
話すテーマは社労士業、働き方改革、キャリア、海外駐在、外国人雇用、海外放浪等です。
パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
カバーアート制作:小野寺玲奈
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