前回の話の続きで、政府が進める働き方改革の内容として挙げられる新卒採用の廃止、職務給評価、派遣社員との同一労働同一賃金について社労士×社労士で語りました。
単線型キャリアからの脱却へ:変わる働き方の価値観
これまでの日本では、「一社に新卒で入り、定年まで勤め上げる」という“単線型”のキャリアが一般的でした。しかし現在、その価値観は大きく揺らぎつつあります。会社にしがみつくのではなく、個人が自らのキャリアとスキルを武器に選択肢を広げる──そんな「会社にキャリアがある」のではなく「人にキャリアがある」社会への転換期を迎えています。
対談では、個人が自ら選び取り、自ら育てるキャリア観の重要性が語られました。今後は企業が社員を守るのではなく、社員が自分を守る時代。スキルや能力の更新を怠れば、組織にいても安泰ではいられません。まさに「自分自身が商品」になる時代です。
“ジョブ型雇用”の実態と、若者が直面する新たな壁
こうした流れの中で注目されているのが、「ジョブ型雇用」です。日本でも導入が進みつつあるこの制度は、フランスなどヨーロッパ諸国で主流となっており、職務内容に応じて給与が決定される仕組みです。役職や年齢ではなく「できる仕事」で評価される一方で、経験の浅い新卒や若年層には厳しい現実もあります。
フランスの若年層失業率(16~24歳)は実に23.2%と、日本の3倍以上。大学を出ただけでは仕事はなく、在学中から職業訓練やインターンでスキルを積まなければスタートラインにすら立てないのが現実です。
こうした背景から、日本でも学校教育の中にキャリア教育を組み込む必要性が指摘されました。中学・高校・大学を通じて「自分は何をしたいのか」「そのために何を学ぶべきか」を早くから考えることが求められています。
“新卒一括採用”と終身雇用モデルの限界
ジョブ型雇用が浸透することで、最も大きな影響を受けるのは、日本特有の「新卒一括採用」と「終身雇用」のモデルです。企業が一括採用で学生を囲い込み、長期的に育てていくスタイルは、コスト面でもリスク面でも成り立ちにくくなっています。
企業が求めるのは「今できる人」。中途採用で即戦力を獲得する方が合理的であり、育成にかける時間やコストが敬遠されがちです。この変化は、新卒者や若手にとってチャンスをつかむハードルを上げる一方で、学び続ける意識があれば、年齢や学歴を問わずチャンスが開かれる可能性も秘めています。
派遣・契約社員を“戦力”として捉える発想転換を
さらに話題は、派遣社員や契約社員に対する企業側の意識に及びました。これまで非正規雇用が選ばれてきた背景には、「人件費の削減」というコスト意識が強くありました。しかし、実際には派遣社員が正社員と同じ仕事をしているケースも多く、その待遇差が問題視されています。
同一労働同一賃金の法改正が進む中、これからの企業には「コストカットのための非正規」ではなく、「戦力としての非正規」をいかに活かすかが問われています。むしろ、すでに業務に慣れた派遣スタッフを積極的に自社雇用していく方が、採用コストや教育コストの観点からも効率的だという認識が重要です。
“キャリアは企業に属さない”時代の備えとは
対談の締めくくりでは、派遣や非正規といった雇用形態の多様化が進む中で、働く一人ひとりが“自らのキャリアをどう築くか”を主語にした考え方が欠かせないという話が出ました。
会社に評価される人材になる以前に、自分で自分を評価し、自分の価値を社会に提示できるような準備をしておく──。つまり、これからは「自分のキャリアに責任を持つ時代」なのです。
学校教育・企業・政策、そして私たち一人ひとりが、それぞれの立場で働き方の未来を考える必要があります。働き方改革はもう始まっている。レールの上を歩くだけではなく、自ら道を切り拓いていく覚悟が求められているのかもしれません。
~お知らせ~
サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
人生に前向きでポジティブな方をゲストとしてお呼びし、経営者や従業員として働くリスナーの皆様が明日から明るく過ごせて、心や気持ちがパッと晴れるそんな『働き方を考える』ラジオをお送りします。
話すテーマは社労士業、働き方改革、キャリア、海外駐在、外国人雇用、海外放浪等です。
パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
カバーアート制作:小野寺玲奈
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