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[音楽]
いちです、こんばんは。
このポッドキャストは、僕が毎週お送りしているニュースレター「STEAM NEWS」の音声版です。
STEAM NEWSでは科学、技術、工学、アート、数学の話題をお届けしています。
アートといっても、芸術という意味のファインアートのほかに、教養という意味でのリベラルアーツなんかも含めてお話をさせていただいているんですね。
今週は、ジャンケンの話題をお届けしようと思います。
グー、チョキ、パーのジャンケンですね。
ジャンケン、関西ではインジャンといいますけれども、これは学術的には「三すくみ剣」と呼ばれる遊びの一種です。
三すくみとは、石はハサミに勝つ、グーはチョキに勝つですね。
それからハサミは紙に勝つ、チョキはパーに勝つ。
そして紙は石に勝つ、パーはグーに勝つというふうに絶対的な勝者がいない状態を表します。
三すくみになる組み合わせであれば、三すくみ剣は成り立つので、必ずしもグー、チョキ、パーである必要はありません。
ジャンケンは漢字で「石剣」と書くのですが、これは石、ハサミ、紙を使うからですね。
この石、ハサミ、紙の組み合わせは明治時代に入ってから普及したようです。
三すくみ剣自体は平安時代から遊ばれていたようで、なんとですね、カエル、ナメクジ、ヘビの3つを使った虫剣が一般的だったようです。
カエルは親指、ナメクジは小指、ヘビは人差し指で、
カエルはナメクジに勝ち、ナメクジはヘビに勝ち、ヘビはカエルに勝ちます。
また16世紀頃には長崎に住む中国人の間からカズ剣という別種の遊びが日本人へ伝えられます。
密かに指を何本か立てておいて、二人で同時に見せ合うのはジャン剣と同じなのですが、見せ合うと同時に合計本数の予想を言い合います。
江戸時代ではこのカズ剣の方が主流になっており、長崎剣または規用剣とも呼ばれていました。
「規用」は長崎の中国風ネーミングで、京都を「洛陽」と呼ぶようなイメージです。
現代のジャン剣の形は、長崎剣で使われた0、2、5がそれぞれグー、チョキ、パーに典用されたものと見られています。
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なお、サンスクミ剣やカズ剣は東アジアの遊びで、ヨーロッパでは見られませんでした。
僕は子供の頃、アメリカにジャン剣がないことを知ってひどく興味を覚えたことがあります。
ジャン剣なしでどうやって無作為抽出をやるのかということですね。
ジャン剣のことを現代の英語圏ではロック・ペーパー・シザーズというふうに言います。
日本の石、紙、ハサミを直訳したんですね。
東アジアに比べたらまだまだ普及はしていないようなんですが、
2018年イギリスのイングランドの女子サッカーリーグであるFA女子スーパーリーグにおいて、
出身がコインを忘れたため、コイントスの代わりに両キャプテンによるジャン剣が用いられました。
なお、この出身は3週間の出場停止処分を喰らいました。
厳しいですね。
ジャン剣のグー・チョキ・パーは綺麗な3すくみになっていますから、
どの手を出しても勝ちやすさは同じです。
ジャン剣には引き分けがあるので、どの手を出しても勝率は1/3になります。
とはいえ、人間は身体性のある生き物、体を持つ生き物ですから、
緊張すると手をギュッと握ってしまう傾向があります。
そのため、ジャン剣をプレイする前にはある程度緊張をほぐし、
またジャン剣のタイミングを揃える必要があるんですね。
どうしても1点目にグーを出してしまう人が多いんじゃないかなと思います。
そこで考えられたのが、ジャン剣の前に行う「最初はグー」という儀式。
これは、どうしても最初はグーを出しがちになるところですね。
この傾向を緩めて、また本番のジャン剣のタイミングを揃えるためとも考えられます。
この最初はグーを考えたのはコメディアンの志村健さんだそうです。
いやー天才ですね。
2002年、世界各地のジャン剣系ゲームのルールを統一するために
「The World Rock Paper Scissors Society」(WRPS)が結成されました。
これ、カナダで結成されたそうなんですけどもね。
日本語訳すると「世界グーチョキパー協会」ですね。
2017年からはTwitterアカウントも運用しているようです。
WRPSによると、ジャン剣のタイミングを合わせるために
ヨーロッパでは3回、アメリカでは2回、まず手を縦に振ってから
本番の手を出すということなんですけど、これは冗談だと思います。
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ところで、ジャン剣といえばサザエさんジャン剣が有名ですよね。
1969年から続くテレビアニメ「サザエさん」なんですが
1991年からは次回予告にサザエさんによるジャン剣が入るようになりました。
もう30年続いてるんですね。すごいことですよね。
このサザエさんジャン剣なんですが、実は高い確率で勝つ方法があります。
そのために僕たちは統計学を学ぶ必要があるんです。
1903年、H.G.Wellsは将来、統計学的思考が読み書きと同じように
良き社会人として必須の能力になる日が来ると予言した。
これは書籍「統計学が最強の学問である」の冒頭に書かれている言葉です。
1903年、H.G.Wellsは将来、統計学的思考が読み書きと同じように
良き社会人として必須の能力になる日が来ると予言しました。
1903年ですから、今からおよそ120年前ということになります。
世界最初のコンピューターである「2Z3」が1941年の誕生ですから
コンピューターや電卓のなかった時代のことです。
H.G.Wellsはサイエンスフィクションの父とも呼ばれる作家、思想家で
タイムマシンや透明人間を題材にした作品を披露していますし
核兵器や今のウィキペディアを着想していたとも言われています。
別な具体例をご紹介しましょう。
人類は19世紀のロンドンで史上初めて統計学の力を使って
満単位の人命を奪う原因に戦いを望みました。
原因不明の疫病を防止するための学問を「疫学」と呼びますが
この世界で最初の疫学研究は19世紀のロンドンで
コレラという疫病に対して行われました。
この「疫学」の中で統計学は大きな役割を果たしました。
この当時コレラはイギリス全土で大流行し
合計数十万もの死亡者を出したと言われています。
特にロンドンの双方地区では下水道が発達しておらず
地域がお水にまみれていたため
ロンドン政府がお水をテムズ川に投棄したのですが
コレラがかえってコレラの大流行を招いてしまいました。
現在「疫学の父」と呼ばれているジョン・スノーという外科医は
コレラで亡くなった人の家を訪れ
話を聞いたり付近の様子をよく観察しました。
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そして同じような状況下でコレラにかかった人と
かかっていない人の違いを比べました。
このようにして仮説を組み立て、大規模にデータを集め
コレラの発症・非発症と関連していると考えられる違いについて
どの程度確からしいかを検証しました。
スノーは家屋1万軒あたりのコレラ死亡者数が
利用している水道会社によって大きく違うことを発見しました。
水道会社Aを利用している家では水道会社Bを利用している家よりも
8.5倍も死亡者数が多かったんですね。
スノーは水道会社Aの水を使うことをやめることを提案しました。
ドイツの細菌学者ロベルト・コッホがコレラ菌を発見する
30年ほど前のことです。
スノーの主張は当時科学的ではない
あるいは確実な証拠がないと学会からは退けられました。
一方でスノーの助言に従ってコレラに汚染された水の使用を止めた街では
コレラの感染が止まりました。
液学というデータと統計解析に基づき最善の判断を下そうという考え方は
スノーの発見から100年ほどかけて
医学の領域においては書くことのできないものになりました。
現代の医療で最も重要な考え方として
エビデンスベーストメディスン
日本語にすると科学的根拠に基づく医療というものがありますが
この科学的根拠のうち最も重視されるものの一つが
妥当な方法によって得られた統計データとその分析結果なんです。
これは原因と結果を結びつけようとする古典的な科学とは異なる態度です。
エビデンスは因果関係の議論をすっとばして最善の答えを提示します。
従ってエビデンスに反論しようとすれば
理屈やもちろん経験ではなく
統計学的にデータや手法の限界を指摘するか
自説を裏付けるような新たなエビデンスが必要になります。
液学における議論は正しい正しくないという評価ではなく
重い軽いあるいは強い弱いという議論になります。
エビデンスに基づく政策には他にアメリカにおける教育改革が知られています。
その最たるものは「Works Clearing House Project」
略してWWCプロジェクトです。
WWCプロジェクトではどのような教育方法が
科学的に推奨されるのかを明らかにし公開しました。
それによると例えば生徒の成績に基づいて
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教師を競争させてボーナスの査定に反映させるというアイデアは
むしろ悪影響であることが分かりました。
また映画「マネーボール」をご覧になった方は
統計学をうまく使えば貧乏球団でも
大リーグにおいてプレイオフで優勝争いに絡めるということを聞いたことがあるかと思います。
「マネーボール」で有名になった野球における統計解析をまとめた教科書としては
メジャーリーグの数理科学が有名で
その理論はセイバー・メトリクスとして知られています。
セイバー・メトリクスは従来の野球の伝統的価値観をしばしば覆すものだったため
メジャーリーグに受け入れられるには時間がかかりました。
例えばチーム最強打者はメジャーリーグでは3番
日本のプロ野球では4番に置くことが多いのですが
近年は2番打者にチーム最強打者を置くチームが増えてきました。
これはセイバー・メトリクスの併興です。
もう一つの事例は経済学に見ることができます。
1929年にニューヨーク証券取引所で株価の大暴落が起こりました。
世界強行の始まりです。
アメリカでは失業率が25%に迫りました。
当時の政府はニューディール政策と呼ばれる一連の政策を計画しました。
ニューディール政策のゴールは不協打することであり失業率を低下させることでした。
そこでまず正確な失業者数を把握することが必要になりました。
当時は失業者数は300万人から1500万人という雑な推計しかなかったんですね。
当時のアメリカの人口は1億2000万から1億3000万人程度だったと考えられるのですが、
今からおよそ100年前にその全数を調査することは到底不可能でした。
このような課題に対して当時唱えられたアプローチは
失業者全員に登録カードの郵送を義務付けるというものと
全人口から無作為に0.5%程度選んだサンプリング調査を行う新しい考え方の2つでした。
実際には両方の方法がとられ、このサンプリング調査の方が正確だったことがわかっています。
サンプリング調査には会議的な人がいまだにいます。
そこで理想的なサンプリング調査が理想的な全数調査よりもどの程度不正確なのかを議論しておきましょう。
全人口1億2000万人の0.5%、すなわち60万人が失業している状況を考えてみます。
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全人口の0.5%、すなわち60万人をサンプリング調査すると
全員が失業者であったという可能性はほとんどありません。
どのぐらいあり得ないかというと、一応64兆で10万回以上割った程度の確率です。
言い換えると200回に1回しか当たりの出ないくじで60万回連続して当たり続けるのと同じ確率です。
これは極端な例でしたが、10万人程度のサンプリング調査で真の値から1%もずれないことが保証できます。
これはよくスープの味を見るのにスープ全部を飲まなくてもよいと例えられています。
現在はほとんど全ての学問において統計学を使わざるを得ない時代です。
ではなぜ今統計学が花開いたんでしょうか。
先ほどお話ししたように統計学の芽生えは100年も前のことです。
主要な統計解析手法は1960年代にほぼ出そろったものです。
これだけ統計学がパワフルなものであるならば、なぜもっと前から使われなかったんでしょうか。
それはコンピューターとデジタルネットワーク技術が21世紀になってようやく低コストで大量に手に入るようになったからです。
20世紀までの統計学は紙とペン、それに一部の人にしか使えなかった大型コンピューターによるものでした。
しかし現在ではデータ量の多さや計算の複雑さは問題にならなくなりました。
これが統計学が21世紀になってから花開いた理由です。
なおせっかく花開いたの中から新しい名前をつけようという動きもあり、統計解析は時々ビッグデータ解析と呼ばれたりもします。
さて最後にサザエさんじゃんけんに戻りましょう。
なぜ統計学を駆使するとサザエさんじゃんけんに勝つことができるのか、そろそろ想像がついたでしょうか。
実はサザエさんじゃんけんには統計的な偏りがあります。
宝くじや大学入試のマークシートは統計的な偏りが生じないように設計されているのですが、サザエさんじゃんけんには偏りがあるんですね。
またサイバーセキュリティの基礎となる暗号技術でも統計的な偏りのない乱数を作ることが鍵になっています。
世の中にはサザエさんじゃんけんを研究しているウェブサイトがあるんですね。
サザエさんじゃんけん研究所公式ウェブサイトなんですけれども、こちらが公開されているサザエさんじゃんけん白書2020年2月版によると
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サザエさんじゃんけんの手はアニメ制作会社の担当者が思いつきで決めているそうです。
そのため3回連続した同じ手はほぼ出ないといった人間臭さが現れています。
例えば2008年10月から2009年12月の間ではある週にグーが出て次の週にチョキが出た場合3週目にはパーが出る可能性
こちらが67%に達していました。
つまりサザエさんがグー、チョキと出した週の翌週ならばこちらチョキを出すと67%の確率で勝てたということですね。
このような法則を駆使してサザエさんじゃんけん研究所は1996年のサザエさんじゃんけん開始から2,3,54%の勝率を誇っています。
もしサザエさんが完全にランダムな手を出していれば勝率は1/3すなわち33%になりますから勝率54%というのはかなりの高勝率ということになります。
というわけで今週はじゃんけんの話題をお届けしました。
今週も聞いてくださってありがとうございました。
ニュースレターの方では19世紀ロンドンのこれらの様子なんかを雑誌に描かれたイラストでご紹介もしています。
よろしかったらぜひ無料でご読みいただけますのでメールアドレスをご登録して読んでいただければと思います。
では今夜はこの辺で1でした。
さようなら
me
me
goo
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me
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me
me
♪~