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この世界が消えた後の文明の作り方と,長崎ちゃんぽんの作り方をご紹介します.(ニュースレター本文

毎週金曜日朝7時にアート,リベラルアーツと科学技術に関するニュースレター『STEAM NEWS』を発行しています.詳しくは STEAM.fm をご覧下さい.

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いちです。こんばんは。
このポッドキャストは、僕が毎週お送りしているニュースレター、スティームニュースの音声版です。
スティームニュースでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
今週は、このスティームニュースのバックナンバーから第17号の内容を音声でお届けしたいと思います。
第17号のタイトルは「ゼロから文明を作り出せ!この世界が消えた後の長崎ちゃんぽんの作り方」です。
昨年ですね、オンライン受験相談に来た高校生から「なぜ長崎ちゃんぽんはうまいんですか?」というふうに聞かれたんですね。
ちゃんぽん、うまいですよね。この長崎ちゃんぽんはなぜおいしいのかというのはとても深い質問なんです。
今週は長崎ちゃんぽんに使われているちゃんぽん麺の秘密を通して、日本に国があるという奇跡、そしてこの世界が消えた後、文明を取り戻す方法について共有していきたいと思います。
日本は世界的に見ると極めて得意な国土を持っています。日本の得意性をいくつか並べてみましょう。
世界の大地震の1割から2割が日本で起こっています。これは世界トップです。
毎年平均して10個以上の台風が日本に近接ないし上陸しています。こちらも世界トップです。
毎年平均して1ヶ月半の雨季があります。これは世界有数です。
世界一危険と言われている火山もある火山大国です。
マンチェスタ大学の世界の危険な火山ランキング2015年版では、1位にイオジマ、4位にアソサンが入っています。
日本の一部は世界有数の豪雪地帯です。特に人の居住地としては世界最大です。
森林国で工業に不利です。日本は世界トップクラスの森林国です。
ここまでで結構泣きそうになるのですが、これでまだ資源があれば救いです。
ところが、日本では岩塩が散出せず、年間降水量が多いところに砂丘海岸が少ないため、塩田も作りづらい。
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つまり、食塩が取れないということです。鉄鉱石も取れません。金鉱石もほとんどありません。
石油もウラン鉱石も取れません。と、踏んだり蹴ったりなんですね。
では、農業に適した国土かといえば、氷土の窒素成分が残っていません。
利用可能なまみずが少なく、また、国土の半分は寒冷で、平地も少ないため、米の育成にも適していません。
と、まあ、なかなかの無理ゲーぶりです。
氷土の窒素成分というのは、農地の養分のことで、エジプト以外の国は似たりよったりなのですが、
最後の米の育成に適さないというのは、意外に思われるかもしれません。
日本は、降水量こそ世界平均の2倍ほどあるのですが、水をため込む地形に乏しく、利用可能なまみずは少ないんですね。
また、米は本来南国の作物なので、必ずしも日本の気候に適していたわけではありません。
もうここまで来ると、狩猟や落農でしか生き残る道は残っていなさそうなのですが、歴史上の日本人たちはその道を選ばず、一つ一つ困難を克服していきました。
特に、水田によって米を育て、たたら製鉄によって砂鉄から鉄器を作り、少量の金でも薄く伸ばす技術を磨いて、美術品を金ぴかにすることさえ可能にしました。
日本の職人は和紙を使って金を1万分の1mmまで薄く伸ばすことができたようです。
そんな日本人が手に入れられなかったものがあります。
石鹸は紀元前3000年頃に発明されたと言われていますが、日本で最初に石鹸が作られたのは1824年、江戸時代後期ですね。
普及したのは、なんと20世紀からです。
世界的には18世紀末から石鹸が普及しているので、1世紀ほど出遅れたことになります。
ガラスの製法は、紀元前2000年頃にエジプトで見つかったと考えられています。
紀元前1世紀後半には、アレクサンドリアで吹きガラスも発明されています。
日本では弥生時代から天然ガラスを使った宝飾品が作られていたのですが、平安時代に一旦廃れているんですね。
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その後、ガラスが生活の場に入ってくることはなく、日本人がガラス製の器を手にしたのは1549年のフランシスコ・ザビエル来日まで待たねばなりませんでした。
日本でのガラス製造は、その後の江戸時代を通じて花開いてはいくのですが、透明度の低いガラスしか作れませんでした。
現在手にしているような透明度の高いガラス、これソーダ石灰ガラスと呼ぶのですが、これが日本でも生産可能になったのは大正時代以降です。
ところで、日本のラーメンの原型は、江戸時代末期に外国から持ち込まれたものだと言われています。
日本式ラーメンとも言われる現代の形のラーメンとなると、1910年、明治43年の横浜中華街の来来券が売り出していこうと言いますから、ようやく100年経ったところとなるんでしょうね。
新横浜ラーメン博物館のブログによると、室町時代にラーメンが提供された記録があるようなんですが、定着はしなかったということになりますね。
中国では日式ラーメンと呼ばれている現代の日本式ラーメンは、中国のオリジナルとは似ても似つかないようですから、オリジナルの方を中華麺と仮に呼ぶことにしておきましょう。
さて、石鹸、ガラス、中華麺、この3つの共通点は何でしょうか。
石鹸、ガラス、中華麺を作る上で必要なもの、それはナトリウムという元素です。
「え、ナトリウム、海にたくさんあるのでは?」と思われた方は相当わかってらっしゃる方です。
そうなんです。ナトリウムはですね、塩化ナトリウムとして海に大量に溶け込んでいます。
塩化ナトリウムは食塩の主成分で、日本古来の高級塩であるカコイシオというお塩ですね。これはほぼ塩化ナトリウムだけでできています。
塩化ナトリウムは塩素とナトリウムが固く結びついたものです。
そして石鹸、ガラス、中華麺に必要だったもの、それは炭酸ナトリウムという別の種類のナトリウム化合物でした。
こちらは炭素と酸素がナトリウムにくっついたものです。
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塩化ナトリウムを通称「食塩」と呼ぶように、炭酸ナトリウムにも通称があります。
それはソーダハイと言います。後で出てくるソーダ石灰とは別物です。
名前だけ見るとソーダハイなので、チューハイみたいに見えちゃうんですけれども、これは化学物質の名前です。
この炭酸ナトリウムは地域によっては天然に散出します。
アジアではモンゴルが有名で、北米でも散出します。
イギリスや北欧では炭酸ナトリウムの原料となる海藻、ヒバマタという海藻が採取できます。
しかし日本では天然の炭酸ナトリウムが手に入りません。
また炭酸ナトリウムを塩化ナトリウム、つまりは海水から作り出すことはソルベイ法という方法の実用化まで不可能でした。
ソルベイ法は1861年にベルギー人科学者エルネスト・ソルベイによって発明され、1867年に実用化されました。
日本では炭酸ナトリウムが手に入らず、結果として石鹸やガラスが代々的に作られることはありませんでした。
また中華麺は米のご飯が美味しすぎたという理由もあったのかもしれないのですが、文化としては途絶えてしまったわけですね。
今や日本の国民食と言われているラーメンですが、ラーメンに使われている麺は小麦粉にかん水を混ぜて作ります。
このかん水はもともとモンゴルの湖の水で炭酸ナトリウムを多く含むものでした。
日本では唐から来た「あく」ということで「唐握」と呼んでいました。
握は本来草や木を燃やした灰を水に浸してその上澄みを作ったものです。
使用目的や科学的性質が似ていたから輸入したかん水も「握」と呼んだということだと思います。
しかし、今日の日本のラーメン、中国で日式ラーメンと呼ばれているものですね。
こちらに使われているかん水は唐握ではありません。
日本のラーメンは炭酸ナトリウムよりも入手しやすい炭酸カリウムを使っています。
炭酸カリウムは本来の意味の「握」の主成分です。
ここで冒頭の質問に戻ります。
なぜ長崎ちゃんぽんは美味しいのか。
もちろん普通のラーメンも美味しいんですけどね。
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ご想像の通り、長崎ちゃんぽんは「唐握」こと炭酸ナトリウムを主成分とするかん水を使っています。
実は食品グレードの唐握を作るには特殊な免許が必要で、日本では長崎でしか生産されていないんだそうです。
これが長崎ちゃんぽんの秘密でした。
ところでなんですが、最近アニメ「ドクターストーン」を見始めたんです。
ちょっと出遅れたんですけれどもね。
「ドクターストーン」ではある日人類が一斉に石になってしまいます。
それからおよそ3700年が経過して、高校生の主人公2人が石化から解かれます。
本作は一人は頭脳、一人は体力を駆使して再び文明を築いていこうとする物語です。
この漫画原作のアニメにはさらに下敷きになった書籍があります。
それが「この世界が消えた後の科学文明の作り方」という本です。
この本ではある日突然、自分と少数の仲間以外の人類が突如世界から姿を消したら、どうやって再び科学文明を再建するかというテーマが語られています。
とても面白い本で内容も多岐にわたっているんですが、本当のエッセンスだけをご紹介したいと思います。
これはドクターストーンのキーアイテムでもあり、日本人が何千年もの間手に入れられなかったもの。
中華麺じゃなくて、石鹸です。石鹸はもちろん身の回りを清潔に保つために使うものです。
この清潔さというのは人類が何千年もかけて見つけたキラーアイテムで、これによって生存の確率が一挙に高まったんですね。
農耕の歴史は1万年を超え、2万年を超えるという説さえあるんですが、
人類が「あれ?清潔さって生きる上で大事なんじゃね?」って気づいたのはおよそ100年前です。
日本の江戸時代は同時代にしては先進的だったため、日本にいると気づきにくいんですが、石灰史を見ると本当にひどいものなんですね。
例えば19世紀ギリスではホメオパシーという陰チキ医療が大流行するんですが、
当時は病院が不潔で、病院に行くぐらいなら自宅で陰チキ医療を受けた方がマシだったというのが実情のようです。
というわけで、この世界が消えたら真っ先に石鹸を確保しましょう。
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もし石鹸が手に入らなかったら、あるいは石鹸を生産しなければならなくなったら、そんな皆さんのためにこの世界が消えた後の石鹸の作り方をご紹介します。
石鹸は動物から取れる脂肪または植物油と強アルカリを反応させれば作ることができます。
問題は天然の物質から強アルカリを作る方法で、この世界が消えた後では3通りの方法が紹介されています。
それらを便宜上「山コース」「海コース」「町コース」と呼んでおくことにします。
海コース、町コースでは最終的に植園水が必要になるので、こちらは海水を汲んでおいてから話を進めてください。
まず山コースです。石灰岩または卵の殻などを焼きます。
いずれも炭酸カルシウムを豊富に含んでいて、日本でも大量に手に入ります。
これらを焼くことで純粋な炭酸カルシウムを入手します。
続いて炭酸カルシウムを825度以上の温度で焼きます。
これで酸化カルシウムが手に入ります。
酸化カルシウムは「生石灰」と呼ぶのですが、名前が後で出てくる「小石灰」と紛らわしいので「奇石灰」とも呼びます。
漢字で書くと「生の石灰」と書くのですが、これ「生石灰」あるいは「奇石灰」と呼びます。
燃焼温度を825度まで上げるためには、木材を一旦蒸し焼きにした木炭を使う必要があります。
木材のままだと水分が多すぎて燃焼温度が上がらず、通常は450度ぐらいになります。
これはですね、書籍「この世界が消えた後」には書かれていなかった内容です。
次に酸化カルシウム、奇石灰ですね。これに水を加えます。
激しく発熱するので注意してください。
これで出来上がるのが水酸化カルシウム、通称「小石灰」です。
小石灰は一旦置いておいて、今度は木を燃やした灰を水に溶かして、その上澄みを取り出します。
この上澄み液、つまり「アク」には炭酸カリウムが含まれています。
水酸化カルシウム、つまり「小石灰」と炭酸カリウム、つまり「アク」を混ぜます。
生成物は水酸化カリウム、または化成カリとも言われる「強アルカリ」です。
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水酸化カリウムと脂肪ですね、あるいは植物油を混ぜ合わせると石鹸が出来上がります。
こうして出来る石鹸はカリウム石鹸と言って、これからご紹介する他のコースで作るナトリウム石鹸、
つまり僕たちが普段使っている石鹸とは少し異なるのですが、ないよりはよほど良いので我慢しておくことにします。
カリウム石鹸は液体石鹸で、通常は強い洗浄力を示すのですが、
人間に使うにはちょっと危険なので、できれば次の海コースまたは町コースを検討してみてください。
では海コースです。貝殻を焼いてください。貝殻も炭酸カリウムを豊富に含んでいて、
焼くことで純粋な炭酸カリウムが手に入ります。
次に炭酸カリウムを825度以上の温度で焼きます。これで酸化カリウム、奇石灰が手に入ります。
酸化カリウム、奇石灰に水を加えます。この時激しく発熱するので注意してください。生成物は水酸化カリウム、小石灰です。
海藻、ひばまた類という海藻を焼いて炭酸ナトリウムを手に入れます。炭酸ナトリウムはソーダ灰とも言います。
ひばまた類は北海道沿岸、東北地方沿岸、日本海沿岸の一部で見つかるようです。
ニュースレターの方には写真も載せていますので、こんな形の海藻という風に覚えていただければと思います。
水酸化カルシウム、つまり小石灰の水溶液と炭酸ナトリウム、ソーダ灰の水溶液を混合します。
生成物は強アルカリの水酸化ナトリウム、あるいは化成ソーダになります。こちら強アルカリなので注意してください。
この水酸化ナトリウムと脂肪または植物油を混ぜ合わせて、食塩水につけ込むと石鹸が出来上がります。
最後にマチコースのご紹介です。石灰岩、貝殻、卵の殻などを焼いて炭酸カルシウムを手に入れます。
炭酸カルシウムを825度以上で焼いて酸化カルシウム、気石灰を手に入れます。
この時二酸化炭素が発生するのでこちらも回収しておきます。
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酸化カルシウム、気石灰に水を加えて水酸化カルシウム、小石灰を手に入れます。
ここちょっと恥ずかしいんですが我慢しておしっこを集めて発酵させます。
これでアンモニアが手に入ります。これ強烈な匂いがするので気をつけてください。
海水を煮詰めて飽和食塩水を作り、そこにアンモニアを溶かして、さらに回収した二酸化炭素も溶かします。
そうすると炭酸水素ナトリウムが沈殿します。炭酸水素ナトリウムは重曹とも言います。
炭酸水素ナトリウムあるいは重曹を焼きます。その結果炭酸ナトリウム、ソーダ配が手に入ります。
水酸化カルシウム、小石灰水溶液と炭酸ナトリウム、ソーダ配水溶液を混合し水酸化ナトリウム、化成ソーダを得ます。
こちら先ほどの繰り返しになりますが、強アルカリなので気をつけてください。
この水酸化ナトリウムと脂肪または植物油を混ぜ合わせて食塩水につけ込むと石鹸が出来上がります。
このような方法で僕たちは石鹸を手に入れることができます。
最後のマーチコースは1861年に発明されたソルベイ法そのものです。
そしてもうお気づきの通り海コースとマーチコースで石鹸を作る過程で炭酸ナトリウム、ソーダ配が生まれているのですが、これがあればチャンポンを作れます。
また水酸化カルシウムを中心に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが混ざったものをソーダ石灰と呼びます。
これは現在のガラスに使われる原料です。
そんなことを言っても世界は終わるの?という疑問、もっともだと思います。
本当に世界が終わって人類だけが生き残るシナリオというのは考えられるのでしょうか。
実は可能性はなくはないんですね。
一つは太陽フレアという天文現象による広範囲な電力網の破壊が考えられます。
また太陽フレアに匹敵するあるいはそれを超える人為的な攻撃手段がすでに存在します。
その攻撃手段を持っている国、これが日本のお隣にいます。
もう一つ日本ならではと言える危険があります。
九州の南の海にキカイカルデラというカルデラ、これは火山活動による地形なんですが、これがあります。
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約7300年前に超巨大噴火を起こしており、過去1万年の間、つまりは人類文明の歴史上最大の噴火と推測されているんですね。
この巨大噴火、超巨大噴火は九州南部の縄文文化を絶滅させたと言われています。
その後、1000年近く九州南部に人類が戻ってくることはありませんでした。
キカイカルデラは少なくとも9万5000年前と14万年前にも噴火を起こしています。
つまりは繰り返し噴火をするということで、次回がないとは言い切れないんですね。
直撃を逃れられたとしても、次回も日本全体が破壊的な被害を受けることになります。
今からドクターストーンを見て勉強しておかないとということですね。
このニュースレターも生き残るために必要なことをこれからもお伝えしていこうと思っています。
この世界の終わりに備えるためにも、ぜひサブスクリプションをよろしくお願いします。
今日も最後まで聞いてくださってありがとうございました。また次回お目にかかりたいと思います。
ニュースレターの無料公読の方もどうぞよろしくお願いします。
ではまたお目にかかりましょう。
一でした。
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(♪ I can't keep my eyes open)
26:24

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