古民家再生の概念
ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。今回は、古民家再生というかなり身近な感じのテーマです。
古民家再生って、今も流行ってるのかはよく知らないけど、10年から15年ほど前くらいにすごいブームになってました。
で、古民家再生というのは、工作法基地の活用なんかも含めた、要は有給資産の活用の一つです。
一見すると有給資産の活用は経済合理性によるものに見えます。 ほとんど無料で土地家屋を手に入れて自分で修繕することで、
住宅ローンや高額な家賃から解放される、あるいはほとんど無料で工作法基地を手に入れて自分で工作をできる状態にすることで、
田畑から食べ物を収穫できるようにする、つまり生産手段や生産設備をほとんど無料で手に入れようとする経済合理性がムーブメントの正体であったと考えるのが自然ではあります。
とはいえ、10年前のブームを思い起こすと、例えば外こととかグリーンズのような雑誌が広く支持されたこと、
またネット上でも広く支持されていたこともあって、単なる金の話だけではなく、ライフスタイルの話でもあったという感覚があります。
この辺をちょっと掘り下げてみます。
結論から言うと、この手のブームって新しいものではなく、割と昔から定期的にある伝統的なムーブメントです。
文学の観点から言えば、最も有名なのは、ヘンリー・デイビッド・ソローかと思います。
ソローは1817年生まれのアメリカ人で、森の生活という本を書いています。
本のタイトルの通り、資本主義社会から離れて、森のほとりに自分で小屋を建てて、自給自足の生活をする。
超絶主義って言うんだけど、今の社会は何かがおかしい。
社会がおかしいのであれば、答えとか真理とかはきっと自分の中と自然の中にあるっていう考え方ですね。
これの現代版が古民家再生であったのだろうという話です。
ソローと、あとエマーソンって人が実践した超絶主義は、自分の中と自然の中に答えがあるって考えだから、
教会や大学などが教える論理的な考えよりも、自分の直感を信じるということでもあったし、
自分の直感と同時に真理を授けてくれる自然も超越的で、ある意味神秘的なものとみなすわけですよ。
そうすると、自然の神秘性、それからロジックではなく直感を信じる。
これはもう非常に神話性が高いということで、後にカルト宗教、心理学、自己啓発所に大きな影響を与えたと言われています。
僕は興味があったからよく見てたんだけど、古民家再生みたいな有給資産の活用は、
有機農法や自然農法、果てはヨガやホメオパシー、神秘主義的なスピリチュアリズムと結びつきがちでした。
もちろん全部じゃないけどね。
で、これも1800年代の超絶主義によく似ています。
社会から離れて暮らすって考えは、ユートピア主義とかファランジュにも似ているから結構好きなんだけど、
そういう良い考えがスピリチュアルに巻き取られてしまうというところまで含めて、超絶主義に似てるなぁという話でした。
また、そもそものところで言うと、社会から距離を取るというのは、シンプルに隠居、隠遁生活というやつだよね。
社会から離れて暮らす人のことを隠者と言いますが、昔から隠者文学というのもありました。
それこそカモノチョウ名の包状記とかね。
だからその他の例として、トルストイ運動とか武者の工事サネアツの新しき村なんかもあるんだけど、
そういうのをもう引き合いに出すまでもなく、無情感を抱えていて、このクソみたいな世の中から引っ込んで隠居してって考える遠征的な人っていうのは、昔からすごくいっぱいいるわけですね。
いわば、自然との調和の取れた生活を送り、社会と距離を取るということは、自分だけの生意気、サンクチュアリーを構築したいという欲望であり、
もっと突き詰めれば、宗教が死後の世界をパラダイスとして描いていることとか、
あとは、この間話したインセストタブーの話にも接続できることだと思います。
というわけで、現代社会においても何かしらのムーブメントがあれば、その背景には思想があるよ、という話でした。
今回はここまでです。次回もよろしくお願いします。