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2020-05-08 11:31

#76 早口朗読チャレンジ!『羅生門』(芥川龍之介) from Radiotalk

#小説 #朗読 #落ち着きある
意味もなく挑戦してしまった…。
もしよかったらチャレンジしてみてはいかが?

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00:00
ある日の暮れ方のことである一人の芸人が、羅生門の下で甘やみを待っていた。広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々にぬりの剥げた大きな丸柱にキリギリスが一匹と待っている。
羅生門が須作王子にある以上は、この男のほかにも甘やみをする一目傘やもみえ星がもう二三人はありそうなものである。それが、この男のほかには誰もいない。
なぜかというと、この二三年、京都には地震とか辻風とか火事とか飢饉とかいう災いが続いて起こった。
そこで、落柱の錆びれ方は一通りではない。急起によると仏像や仏具を打ち砕いて、その荷がついたり金銀の箔がついたりした木を道端に積み重ねて滝木の城に売っていたということである。
落柱がその始末であるから、羅生門の修理などは元より誰も捨てて帰り見るものがなかった。すると、その荒れ果てたのを良いことにせこりが済む、盗人が済む。とうとう終いには、引き取り手のない詩人をこの門へ持ってきて、捨ててゆくという習慣さえできた。
そこで火の芽が見えなくなると、誰でも君を悪がって、この門の近所へは足踏みをしないことになってしまったのである。
その代わり、またカラスがどこからかたくさん集まってきた。昼間見ると、そのカラスがなんばと鳴く、輪を描いて高いしびの周りを鳴きながら飛び回っている。
ことに、門の上の空が夕焼けで赤くなるときには、それがゴマを撒いたようにはっきり見えた。カラスはもちろん門の上にある詩人の肉をついばみに来るのである。
もっとも今日は黒原が遅いせいか一晩も見えない。ただ所々と崩れかかった。そうして、その崩れ目に長い草の生えた石段の上にカラスの糞がてんてんと白くこびりついているのが見える。
下人は七段ある石段の一番上の段に洗いざらした紺の青の尻を据えて、右の方にできた大きなニキビを気にしながらぼんやり雨の降るのを眺めていた。
作者は、さっき下人が雨闇を待っていたと書いた。しかし下人は雨が止んでも格別どうしようというあてはない。普段ならもちろん主人の家へ帰るべきはずである。
ところがその主人からは四五日前に暇を出された。前にも書いたように当時京都の街は一通りならず水日していた。
今この下人が長年使われていた主人から暇を出されたのも実はこの水日の小さな夜半に他ならない。
だから下人が雨闇を待っていたというよりも雨に降り込まれた下人が行きどころがなくて途方に暮れていたという方が適当である。
その上、今日の空模様も少なからずこの変秋の下人のセンチメンタリズムに影響した。
猿の告え下がりから降り出した雨は今なに上がる景色がない。
そこで下人は何を置いても差し当たり明日の暮らしをどうにかしようとして、いわばどうにもならないことをどうにかしようとして取り留めもない考えをたどりながら、
さっきからせざく王子に降る雨の音を聞くともなく聞いていたのである。
雨は羅生門を包んで遠くからざっという音を集めてくる。
夕闇は次第に空を低くして見上げると門の屋根が斜めに突き出したいらかの先に重たく薄暗い雲を支えている。
どうにもならないことをどうにかするためには手段を選んでいる意図もない。
選んでいれば辻の下が道端の土の上で飢え辞乳するばかりである。
そうしてこの門の上へ持ってきて犬のように捨てられてしまうばかりである。
選ばないとすれば下人の考えは何度も同じ道を展開したあげくにやっとこの局所へ放着した。
しかしこのすればはいつまで経っても結局すればであった。
下人は手段を選ばないということを肯定しながらもこのすればの肩をつけるために当然その後に来るべき盗人になるより他に仕方がないということを積極的に肯定するだけの勇気が出ずにいたのである。
下人は大きな臭めをしてそれから第二層に立ち上がって夕日へのする京都はもう日よけが欲しいほどの寒さである。
03:03
風は門と柱と柱との間を夕闇とともに遠慮なく吹き抜ける二塗りの柱に止まっていたキリギリスももうどこかへ行ってしまった。
下人は首を縮めながら山吹きの風見に重ねた紺の青の肩を高くして門の周りを見回した。
雨風の憂いのない人目にかかる恐れのない一晩楽に寝られそうなところがあればそこでともかくも夜を明かそうと思ったからである。
すると幸い門の上の廊へ上がる幅の広いコレモニーを塗った梯子が目についた。
上なら人がいたにしてもどうせ死人ばかりである。
下人はそこで腰に下げた肘立家の立ちがさやば知らないように気をつけながら藁通りを履いた足をその梯子の一番下の段へ踏みかけた。
それから何分かの後である。
羅生門の廊の上へ出る幅の広い梯子の中段に一人の男が猫のように身を縮めて息を殺しながら上の様子を伺っていた。
廊の上から射す火の光がかすかにその男の右の方を濡らしている。
短い髭の中に赤く海を持ったニキビのある方である。
下人は初めからこの上にいる者は死人ばかりだと鷹をくぐっていた。
それが下った梯子を二三段上ってみると上では誰か火を灯してしかもその火をそこここと動かしているらしい。
これはその濁った黄色い光が隅々に雲の巣をかけた天井裏に揺れながら映ったのですぐにそれと知れたのである。
この雨のようにこの羅生門の上で火を灯しているからはどうせただの者ではない。
下人は山梨のように足音を盗んでやっと急な梯子を一番上の段まで這うようにして登りつめた。
そうして体をできるだけ平らにしながら顎をできるだけ前へ出して恐る恐る廊の内を覗いてみた。
見ると廊の内には噂に聞いた通りいくつかの死骸が無造作に捨ててあるが火の光の及ぶ範囲が思ったより狭いので数はいくつともわからない。
ただ朧げながらも知れるのはその中に裸の死骸と着物を着た死骸とがあるということである。
もちろん中には女も男も混じっているらしい。
その死骸は皆それがかつて生きていた人間だという事実さえ疑われるほど土をこねて作った人間のように口をあいたり手を伸ばしたりしてゴロゴロ床の上に転がっていた。
しかも胸とか肩とか胸とか高くなっている部分にぼんやり火の光を受けて低くなっている部分の影を一層暗くしながら永久に推しのごとく黙っていた。
下人はそれらの死骸の不乱した周期に思わざ花を追った。
しかしその手は次の瞬間にはもう花を追うことを忘れていた。
ある強い感情がほとんどごとことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまったからだ。
下人の目はその時初めてその死骸の中にうずくまっている人間を見た。
ひわら色の着物を着た背の低い痩せた白髪頭のチャルのような老婆である。
その老婆は右の手に火を灯した松の木切れを持ってその死骸の一つの顔を覗き込むようにして眺めていた。
髪の毛の長いところを見ると多分女の死骸であろう。
下人は六分の恐怖と四分の好奇心とに動かされて残時は息をするのさえ忘れていた。
旧機の汽車の語りを借りれば刀身の毛も太るように感じたのである。
すると老婆は松の木切れを床板の間に刺して、
それから今まで眺めていた死骸の首に両手をかけると、
ちょうど猿の親が猿の子の白目を取るようにその長い髪の毛を一本ずつ抜き始めた。
髪は手にしたがって抜けるらしい。
06:01
その髪の毛が一本ずつ抜けるのにしたがって下人の心からは恐怖が少しずつ消えていった。
そうしてそれと同時にこの老婆に対する激しい憎悪が少しずつ動いてきた。
いやこの老婆に対するといった語弊があるかもしれない。
むしろあらゆる悪に対する反感が一分ごとに強さを増してきたのである。
この時誰かがこの下人にさっき門の下でこの男が考えていた
飢え死人をするか盗人になるかという問題を改めて持ち出したら、
おそらく下人は何の未練もなく飢え死人を選んだことであろう。
それほどこの男の悪を憎む心は老婆の床に刺した松の木切れのように勢いよく燃え上がり出していたのである。
下人にはもちろんなぜ老婆が死人の髪の毛を抜くかわからなかった。
したがって合理的にはそれを善悪のいずれに片付けてよいか知らなかった。
しかし下人にとってはこの雨のようにこの羅生門の上で死人の髪の毛を抜くということが
それだけですでに許すべからざる悪であった。
もちろん下人はさっきまで自分が盗人になる気でいたことなどはとうに忘れていたのである。
そこで下人は両足に力を入れていきなり端から上に飛び上がった。
そうしてしじり塚の立に手をかけながら大までに老婆の前へ歩み寄った。
老婆が驚いたのは言うまでもない。
老婆は一目下人を見るとまるで一瞬目に手も弾かれたように飛び上がった。
己どこへ行く。
下人は老婆が死骸につまずきながら慌てふためいて逃げようとする勇気と呼ぶ不細で香のの知った。
老婆はそれでも下人を突き抜けて行こうとする。
下人はまたそれをゆかす前として押し戻す。
二人は死骸の中でしばらく無言のままつかみ合った。
しかし勝敗は始めからわかっている。
下人はとうとう老婆の腕をつかんで無理にそこへねじ倒した。
ちょうど鶏の足のような骨と皮ばかりの腕である。
何をしていた。
いえ、言わぬとこれだそよ。
下人は老婆を突き放すといきなり太刀の鞘を払って白い鋼の色をその目の前へ突きつけた。
けれども老婆は黙っている。
両手をわなわな振るわせて肩で息を切りながら目を目玉型まぐたの外へ出そうになるほど見開いて推しのように執拗黙っている。
これを見ると下人は初めて明白にこの老婆の生死が全然自分の意思に支配されているということを意識した。
そうしてこの意識は今まで険しく燃えていた憎悪の心をいつの間にか覚ましてしまった。
後に残ったのはただある仕事をしてそれが円満に成就した時の安らかな得意と満足度があるばかりである。
そこで下人は老婆を見下しながら少し声を和らげてこう言った。
俺はケビン氏の長の役人などではない。
今しがとこの門の下を通りかかった旅の者だ。
だからお前に縄をかけてどうしようと言うようなことはない。
ただ今自分この門の上で何をしていたのだかそれを俺に話さえすればいいのだ。
すると老婆は見開いていた目を一層大きくしてじっとその下人の顔を見守った。
まぶたの赤くなった肉食腸のような鋭い目で見ているのである。
それからしわでほとんど鼻とひとちになった唇を何か物でも噛んでいるように動かした。
細い喉で尖った喉ぼとけが動いているのが見えるその時、
その喉からカラスの鳴くような声があいぎあいぎ下人の耳へ伝わってきた。
この髪を抜いてなこの髪を抜いてなかずらにしようと思ったのじゃ。
下人は老婆の答えが存外平凡なのに失望した。
そうして失望すると同時にまた前の像が冷ややかな分別と一緒に心の内へ入ってきた。
するとその景色が先方へも通じたのであろう。
老婆は片手にまだ死骸の頭から奪った長い抜け毛を持ったなり、
ひきのえつぶよくような声で口こもりながらこんなことを言った。
09:03
なるほどな。
死人の髪の毛を抜くということは何も悪いことかもしれぬじゃが、
ここにいる死人どもは皆そのくらいのことをされてもいい人間ばかりだぞよ。
現在わしが今髪を抜いた女なのはな。
蛇を沈むばかりずつに切ってほしたのを保持用だと言うて縦脇の陣営売りにいんだわ。
えやみにかかって死ななんだら今でも売りにいんでいたことであろう。
それもよこの女の売る保守は味がよいと言うて縦脇どもが欠かさず裁量に買っていったそうな。
わしはこの女のしたことが悪いとは思うていぬ。
せねは上陣をするのじゃて。
仕方なくしたことであろう。
されば今またわしのしていたことも悪いこととは思わぬぞよ。
これとてもやはりせねは上陣をするじゃて仕方なくすることじゃわいの。
じゃてその仕方がないことをよく知っていたこの女はおおかたわしのすることも多めに見てくれるであろう。
老婆はおおかたこんな意味のことを言った。
下人は太刀を鞘に納めてその太刀の束を左の手で押さえながら冷静としてこの話を聞いていた。
もちろん右の手では赤く頬に海を持った大きなニキビを気にしながら聞いているのである。
しかしこれを聞いているうちに下人の心にはある勇気が生まれてきた。
それはさっき門の下でこの男には欠けていた勇気である。
そうしてまたさっきこの門の上へあがってこの老婆を捕らえた時の勇気とは全然反対の方向に動こうとする勇気である。
下人は上陣をするか盗人になるかに迷わなかったばかりではない。
その時のこの男の心持ちから言えば上陣になどということはほとんど考えることさえできないほど意識の外へ追い出されていた。
きっとそうか。
老婆の話が終わると下人はあざけるような声で念をした。
そうして一足前へ出ると不意に右の手をニキビから離して老婆の襟髪を掴みながら噛みつくようにこう言った。
では俺が日剥ぎをしようと恨むまいな。
俺もそうしなければ上陣をするからだなのだ。
下人は素早く老婆の着物を剥ぎ取った。
それから足にしがみつこうとする老婆を手荒く死骸の上へ蹴倒した。
はしごのくじまではわずかに五歩を数えるばかりである。
下人は剥ぎ取ったひわらい色の着物を脇に抱えて瞬く間に急なはしごを夜の底へ駆け降りた。
しばらく死んだように倒れていた老婆が死骸の中からその裸の体を起こしたのはそれから間もなくのことである。
老婆は呟くような呻くような声を立てながら窓燃えている火の光を頼りにはしごの口まで這って行った。
そうしてそこから短い白髪を逆さんにして門の下を覗き込んだ。
外にはただ黒灯と蛍る夜があるばかりである。
下人の行方は誰も知らない。
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