1. ながら聴きラジオ『キコアベ』
  2. #38 ぶたさん文庫「羅生門」ス..
2022-01-26 29:22

#38 ぶたさん文庫「羅生門」スペシャル!

本日のキコアベは…

【前半】~【後半】
・Bさんのぶたさん文庫「羅生門」


楽曲提供:騒音のない世界、MusMus、OtoLogic、NCS、ニコニ・コモンズ、音筏
画像リソース:photo AC

#キコアベ #ながら聴き #毎週水曜 #朗読 #ぶたさん文庫 #羅生門 #ラジオ図書館に憧れて #スペシャル回 #ゆっくり時間に #レター募集 #芥川龍之介
00:01
皆さま、おはこんばんちは。アーベイのAです。
本日はBさんの朗読コーナー【豚さん文庫 羅生門スペシャル】
27分の作品となりますので、
今日はオープニングの後、すぐに始めたいと思います。
お時間のある方、夜のリラックスタイムのお供に
ぜひ聴いていただければと思います。
我々は社会人演劇カンパニー、アーベイと申します。
それでは今日も参りましょう。
コアベ、バートです。
ラジオンのTシャツの中に、
一匹のアイリスが一匹とまっている。
羅生門がスザク王子にある以上は、
この男のほかにも、
アメアミをする一面傘やモミエ星が
もう2、3人はありそうなものである。
それが、この男のほかには誰もいない。
なぜかというと、
この2、3年、京都には
辻風とか火事とか黄巾とかいう
災いが続いて起こった。
そこで、楽中のさびれ方は一通りではない。
旧記によると、仏像や仏具を打ち砕いて、
その荷がついたり、金銀の箔がついたりした木を
ロバタに積み重ねて、
焚木の城に売っていたということである。
楽中がその始末であるから、
羅生門の修理などは、
もとより誰も捨てて帰りみるものがなかった。
すると、その荒れ果てたのを良いことにして、
懲りが済む。
盗人が済む。
とうとう終いには、
引き取り手のない死人をこの門へ持ってきて、
03:00
捨てていくという習慣さえできた。
そこで、日の目が見えなくなると、
誰でも君を悪がって、
この門の近所へは足踏みをしないことになってしまったのである。
その代わり、またカラスがどこからか、
たくさん集まってきた。
昼間見ると、
そのカラスが何話となく輪を描いて、
高い支部の周りを泣きながら飛び回っている。
ことに、門の上の空が夕焼けで赤くなるときには、
それがゴマを撒いたようにはっきり見えた。
カラスはもちろん、
門の上にある死人の肉をついばみに来るのである。
もっとも今日は黒幻が遅いせいか、
一羽も見えない。
ただ、ところどころ崩れかかった。
そうして、その割れ目に長い草の生えた石段の上に、
カラスの糞が、
てんてんと白くこびりついているのが見える。
下人は、七段ある石段の一番上の段に
洗いざらした金の青の尻を据えて、
右の方にできた大きなニキビを気にしながら、
ぼんやり雨の降るのを眺めていた。
私はさっき、下人が雨やみを待っていたと言った。
しかし、下人は、
雨が止んでも確別どうしようという当てはない。
普段なら、もちろん主人の家へ帰るべきはずである。
ところが、その主人からは四五日前に暇を出された。
前にも言ったように、
当時京都の町は一通りならず水日していた。
いまこの下人が長年使われていた主人から暇を出されたのも、
実はこの水日の小さな四五日にほかならない。
だから、下人が雨やみを待っていたというよりも、
雨に降り込められた下人が、
行きどころがなくて途方に暮れていたという方が適当である。
その上、今日の空模様も少なからず、
この平安町の下人のセンチメンタリズムに影響した。
猿のコクサガリから降り出した雨は、いまだに上がる景色がない。
06:02
そこで下人は、何を言っても差し当たり、
明日の暮らしをどうにかしようとして、
いわば、どうにもならないことをどうにかしようとして、
とりとめもない考えをたどりながら、
さっきからスザク王子に降る雨の音を聞くともなく聞いていたのである。
雨は羅生門を包んで、遠くからザーッという音を集めてくる。
夕闇は次第に空を低くして、
見上げると門の屋根が斜めに突き出したイラカの先に、
重たく薄暗い雲を支えている。
どうにもならないことをどうにかするためには、
手段を選んでいるいともはない。
選んでいれば、
錐地の下が道端の土の上で植え陣をするばかりである。
そして、この門の上へ持ってきて犬のように捨てられてしまうばかりである。
選ばないとすれば、
下人の考えは何度も同じ道を展開した挙句にやっとこの局所へ到着した。
しかしこのすればはいつまで経っても結局すればであった。
下人は手段を選ばないということを肯定しながらも、
このすればの肩をつけるために、
当然その後に来るべき、
盗人になるより他に仕方がないということを積極的に肯定するだけの勇気が出ずにいたのである。
下人は大きなくさめをして、
それから大義相に立ち上がった。
夕日へのする京都はもう日よけが欲しいほどの寒さである。
風は門の柱と柱との間を夕闇とともに遠慮なく吹き抜ける。
二塁の柱に止まっていたキリギリスももうどこかへ行ってしまった。
下人は首を縮めながら山吹きの風見に重ねた紺の青の肩を高くして門のまわりを見まわした。
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雨風の憂えのない、人目にかかる恐れのない、
一晩楽に寝られそうなところがあればそこでともかくも夜を明かそうと思ったからである。
すると幸い門の上の廊へ上がる幅の広い、これも荷を乗った梯子が目についた。
上なら人がいたにしてもどうせ死人ばかりである。
下人はそこで腰に下げたひじり塚の立ちがさやば知らないように気をつけながら、
わらぞおりをはいた足をその梯子の一番下の段へ踏みかけた。
それから何分かの後である。
羅生門の廊の上へ出る幅の広い梯子の中段に、
一人の男が猫のように身を縮めて、息を殺しながら上の様子をうかがっていた。
廊の上から射す火の光がかすかにその男の右の頬をぬらしている。
短い瓶の中に赤く海をもったにきびのある頬である。
下人は始めからこの上にいるものは死人ばかりだと鷹をくくっていた。
それが、梯子を二三段のぼってみると、
上では誰か火をとぼして、しかもその火をそこここと動かしているらしい。
これはその濁った黄色い光が隅々に雲の巣をかけた天井裏に揺れながら映ったので、すぐにそれと知れたのである。
この雨の夜に、この羅正門の上で火をともしているからは、どうせただのものではない。
下人はやもりのように足音をぬすんで、やっと急な梯子を一番上の段まで這うようにしてのぼりつめた。
そうして、体をできるだけ平にしながら、顎をできるだけ前へ出して、おそるおそる牢の内をのぞいてみた。
見ると、牢の内には噂に聞いた通り、いくつかの死骸が無造作に捨ててあるが、
12:01
火の光の及ぶ範囲が思ったより狭いので、数はいくつともわからない。
ただ、おぼろげながら知れるのは、その中に裸の死骸と着物を着た死骸とがあるということである。
もちろん、中には女も男も混じっているらしい。
そうして、その死骸は皆、それがかつて生きていた人間だという事実さえ疑われるほど、
土をこねて作った人形のように、口をあいたり手をのばしたりして、ごろごろ床の上に転がっていた。
しかも肩とか胸とかの高くなっている部分にぼんやりした火の光を受けて、
低くなっている部分の陰をいっそう暗くしながら、永久に推しのごとく黙っていた。
下人は、それらの死骸の不乱した周期に思わず鼻を覆った。
しかし、その手は次の瞬間には、もう鼻を覆うことを忘れていた。
ある強い感情が、ほとんどことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまった。
下人の目は、その時初めてその死骸の中にうずくまっている人間を見た。
日和田色の着物を着た、背の低い、痩せた、白髪頭の猿のような老婆である。
その老婆は、右の手に火を灯した松の木切れを持って、
その死骸の一つの顔を覗き込むように眺めていた。
髪の毛の長いところを見ると、たぶん女の死骸であろう。
下人は、六分の恐怖と四分の好奇心とに動かされて、
残時は息をするのさえ忘れていた。
旧貴の貴者の業を借りれば、等身の毛も太るように感じたのである。
すると老婆は、松の木切れを床板の間に刺して、
それから今まで眺めていた死骸の首に両手をかけると、
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丁度猿の親が猿のこの白身を取るように、
その長い髪の毛を一本ずつ抜き始めた。
髪は手に従って抜けるらしい。
その髪の毛が一本ずつ抜けるのに従って、
下人の心からは恐怖が少しずつ消えていった。
そうして、それと同時に、
この老婆に対する激しい憎悪が少しずつ動いてきた。
いや、この老婆に対するといっては語弊があるかもしれない。
むしろあらゆる悪に対する反感が、
一分ごとに強さを増してきたのである。
この時、誰かがこの下人に、
さっき門の下でこの男が考えていた、
餓死をするか盗人になるかという問題を改めて持ち出したら、
おそらく下人は何の未練もなく餓死を選んだことであろう。
それほどこの男の悪を憎む心は、
老婆の床に刺した甘酢の木切れのように、
勢いよく燃え上がり出していたのである。
下人にはもちろんなぜ老婆が死人の髪の毛を抜くかわからなかった。
したがって合理的には、
それを善悪のいずれに片付けてよいか知らなかった。
しかし下人にとっては、
この雨の夜に、この羅生門の上で死人の髪の毛を抜くということが、
それだけですでに許すべからざる悪であった。
もちろん下人はさっきまで自分が盗人になる気でいたことなぞは、
とうに忘れていたのである。
そこで下人は両足に力を入れて、いきなりはしごから上へ飛び上がった。
そうして、七律家の太刀に手をかけながら、
大またに老婆の前へ歩み寄った。
老婆が驚いたのは、
老婆は一目下人を見ると、まるで石弓にでも弾かれたように飛び上がった。
下人は老婆が死骸につまずきながら、
あわてふためいて逃げようとする行く手をふさいで、こう罵った。
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老婆はそれでも下人を突き抜けて行こうとする。
下人はまたそれを生かすまいとして押し戻す。
二人は死骸の中でしばらく無言のままつかみあった。
しかし勝敗ははじめからわかっている。
下人はとうとう老婆の腕をつかんで、むりにそこへねじたおした。
ちょうど鶏の足のような骨と皮ばかりの腕である。
何をしていた?
いえ、言わぬとこれだぜよ。
下人は老婆を突き放すと、いきなり太刀の鞘をはらって、
白い鋼の色をその目の前へ突きつけた。
けれども老婆は黙っている。
両手をわなわな震わせて肩で息を切りながら、
目を、目玉がまぶたの外へ出そうになるほど見開いて、
推しのようにしゅうねく黙っている。
これを見ると、下人は初めて、
明白にこの老婆の生死が、
全然自分の意思に支配されているということを意識した。
そうしてこの意識は、
今まで険しく燃えていた憎悪の心を、いつのまにかさましてしまった。
あとに残ったのは、
ただある仕事をして、
それが円満に成就したときの安らかな得意と満足とがあるばかりである。
そこで下人は老婆を見下ろしながら、
少し声を和らげてこう言った。
俺はケビー氏の長の役人などではない。
今しがたこの門の下を通りかかった旅のものだ。
だからお前に名をかけてどうしようということはない。
ただ、今自分この門の上で何をしていたのだか、
それを俺には話さえすればいいのだ。
すると老婆は見開いていた目を一層大きくして、
じっとその下人の顔を見守った。
まぶたの赤くなった肉食鳥のような鋭い目で見たのである。
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それからしわでほとんど鼻と一つになった唇を、
何かものでも噛んでいるように動かした。
細い喉で尖った喉ぼとけの動いているのが見える。
その時、その喉からカラスの鳴くような声が、
あえぎあえぎ下人の耳へ伝わってきた。
この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、
カズラにしようと思ったのじゃ。
下人は老婆の答えが存外平凡なのに失望した。
そうして失望すると同時に、
また前の象が冷ややかな分別と一緒に心の中へ入ってきた。
するとその景色が先方へも通じたのであろう。
老婆は片手にまだ死骸の頭から奪った長いぬけ毛を持ったなり、
ひきのつぶやくような声で口ごもりながらこんなことを言った。
なるほどな。
死人の髪の毛を抜くということは何ぼ悪いことかもしれぬ。
じゃが、ここにいる死人どもは、
みなそのくらいのことをされてもいい人間ばかりだぞよ。
現在、わしが今髪を抜いた女などはな、
蛇を四寸分かりずつに切って干したのを、
干し魚だと言って縦脇の陣へ売りに行んだわ。
えやみにかかって死ななんだら、今でも売りに行んでいたことであろう。
それもよ、この女の売る干し魚は味がよいと言って
縦脇どもが欠かさず最良に買っていたそうな。
わしはこの女のしたことが悪いとは思っていぬ。
せれば干しをするのじゃって仕方がなくしたことであろう。
されば、今またわしのしていたことも悪いこととは思わぬぞよ。
これとてもやはりせれば干しをするじゃって仕方がなくすることじゃないの。
じゃって、その仕方がないことをよく知っていたこの女は、
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おおかたわしのすることも多めに見てくれるであろう。
老婆はだいたいこんな意味のことを言った。
下人は太刀をさえにおさめて、その太刀の柄を左の手でおさえながら、
冷然としてこの話を聞いていた。
もちろん、右の手では赤く頬にうみをもった大きなにきびを気にしながら聞いているのである。
しかし、これを聞いている中に、下人の心にはある勇気が生まれてきた。
それは、さっき門の下でこの男にはかけていた勇気である。
そうして、またさっきこの門の上へあがってこの老婆をつかまえたときの勇気とは、
ぜんぜん反対な方向に動こうとする勇気である。
下人は、干しをするか盗人になるかに迷わなかったばかりではない。
そのときのこの男の心持ちからいえば、
干しなどということはほとんど考えることさえできないほど意識の外に追い出されていた。
きっと、そうか。
老婆の話が終わると、下人はあざけるような声で念を押した。
そうして、ひと足前へ出ると、ふいに右の手をにきびから離して、
老婆の襟髪をつかみながら噛みつくようにこう言った。
では、俺が引き剥ぎをしようと恨むまいな。
俺もそうしなければ、干しをするていなのだ。
下人は素早く老婆の着物をはぎ取った。
それから、足にしがみつこうとする老婆を手荒く死骸の上へ蹴倒した。
はしごの口まではわずかに五歩を数えるばかりである。
下人は、はぎ取ったひわだ色の着物を脇にかかえて、
瞬く間に急なはしごを夜の底へ駆け下りた。
しばらく死んだように倒れていた老婆が、
27:04
死骸の中からその裸の体を起こしたのは、それから間もなくのことである。
老婆はつぶやくような、うめくような声を立てながら、
まだ燃えている火の光を頼りに、はしごの口まで這っていった。
そうして、そこから短い品髪を逆さまにして、門の下を覗き込んだ。
外には、ただ濃くとうとうたる夜があるばかりである。
下人の行方は誰も知らない。
自分を告白することは何人にもできることではない。
同時にまた、自己を告白せずにはいかなる表現もできるものではない。
よく演じた後に感じる自分の素性や本性がバレてしまったかのような感覚。
どうにも抜が悪く気恥かしさがこみ上げてきます。
役者は自分の価値観の本質を持って舞台上で泣き笑うものだと思っていますが、
自分を晒すという行為が時々ものすごく怖くもあり、
だからこそ楽しいのだと私も思います。
サンキュー! 龍之介 芥川
明日はきこかけ、JのじじネタJJです。
きこあべはまた来週水曜日にお会いいたしましょう。
ごきげんよう。バイチャ!
29:22

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