日本語のハ行の音の歴史
日本語のハ行の音、ハヒフヘホーは、昔は F みたいなファフィフフェフォーという唇を使う音だったと考えられています。
さらに時代を遡れば、パピプペポーという P のような音だったと考えられているんですね。
まあ、いずれにせよ唇を使う音だったと、そのように考えられています。
なぜそのようなことがわかるかというと、一つは外国人の残した資料というのがあるからです。
有名なのはキリシタン資料と言われて、当時日本にやってきた宣教師が、アルファベットで日本語を記録してるんですよね。
それを見ると、ハ行の音は F で記録されています。
このことから、昔の日本語のハ行の音は F みたいな音だったんだなというのがね、ある程度客観的にわかります。
また別の証拠で、謎々というのもあります。 これについては過去にエピソードを撮ったこともあるんですが、
どんな謎々かというと、お母さんには2回会うけど、お父さんには1回も会わないものなんだっていうね、
ちょっと言い回しアレですけど、こういう謎々があります。 答えが唇なんですね。
要は母と父という単語で、母という発音の時には唇を2回使っていたという証拠です。
なので、ファファないしパパみたいな発音だったということが、この謎々からわかります。
また別の証拠として、比較方法による証拠というのもあります。 比較方法というのは文字通りですね。
言語を比較することによって祖語、祖先の言語の形っていうのを突き詰めていく方法ですが、
琉球諸号の中には日本語の波行の音が規則的に F のような唇を使う摩擦音で現れるものがあります。
ですので花っていうのはファナになるわけですけど、この場合は琉球諸号が日本語のより古い形を保持しているということになります。
いわゆる本土の日本語では F が H に変わっちゃったということが言えるんですね。
しかし、こういう昔の資料とか謎々とか、あるいは親戚の言語との比較、
そういったものなしでも、日本語の波行は唇を使う音だったということがわかるんですね。
それを専門的に内的再検という言い方をします。 BGM です。
内的再建のアプローチ
始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。チャールズシャプリンです。
この内的再検というのは、他の言語と比べることなしに祖語を再検するというやり方で、
比較方法の対というわけではないですけど、比較方法というのは言語感を見比べてということなので、
それとは異なる祖語へのアプローチということになります。場合によっては方言感を比べるとかね、そういうこともあるんですが、
日本語の波行が唇を使う音だったというのがなぜわかるかというと、
それは連濁というものによって確かめられます。連濁というのは、ある単語の頭の音がね、単語の途中の要素になると濁音になるという現象です。
タコ。これは複合語の後ろの要素になると、ゆでダコみたいにダコという濁音になりますよね。
あるいはカメというのも、ミドリガメとかウミガメというとガメというふうに濁音になっています。
で、これは波行の場合も同じように濁音になりますよね。 例えば箱というのが靴箱とか筆箱というふうにバコというふうに濁音になります。
以上のように、多行と過行と波行で濁音というのは同じようなシステムというかね、
仕組みだと感じられると思うんですが、実際文字で書いてみたら濁点がね、点々がついて、
ダコ、ガメ、バコとなっているので規則的じゃんと思うと思うんですが、
実は波行の連濁だけイレギュラーなんですよね。ちょっと不規則です。
さっき言ったように確かに文字で書くと連濁の場合は濁点がつくので、
綺麗に対応しているなという感じがするんですが、発音を考えてみると、
多行とダコ、カメとガメ、それぞれ調音位置、つまり発音する位置は一緒です。
専門的ですけど、ターの音は四形音と言われて歯茎を使う音、
カーとガーっていうのは南高外という上あごの奥の方を使う音です。
それに比べて、波行とバコっていうのは調音位置が違いますよね。
歯っていうのは、どこで音を出しているかわかりづらいかもしれませんが、
これは正門という喉の一番奥の方で摩擦を起こしています。歯です。
一方、バコになると両唇を使ってますよね。
そういった意味で波行の連濁、つまり波行がバ行になるっていうのはイレギュラーと言えます。
さらに発音する位置だけではなくて、発音する方法も変わってるんですよね。
ター、ダー、カー、ガー、これらはそれぞれ破裂音と言われる音で、歯茎なり南高外で閉鎖を作ってそれを解放するような
そんな発音ですが、歯行と歯行は、さっきもちょっと言いましたけど、歯の方は摩擦音で、歯の方は破裂音なんですよね。
ですので発音の仕方、調音方法も歯行の連濁は変わってます。
連濁っていうのは、歯行と歯行の場合は優勢音科といって声帯の震えを伴うっていう変化だけが起こってるんですが、
歯行の連濁、歯行がバコになるのは、その優勢音科だけではなくて、
調音位置、正門科、両唇科、調音方法、摩擦音科、破裂音科も違うし、
で、この歯行の連濁を他の各業や他業の連濁と整合性をとるためには、
昔歯行の音は、Pの音、パピプペポーという両唇を使う破裂音だったと考えるのが、
一番都合がいいというか、しっくりくるんですよね。
もし歯行というのがパコという発音だったとしたら、パコがフデバコになる。
これは、カメがガメになったりとかタコがダコになるのと同じプロセスで、
パっていうのもバっていうのも両唇を使う破裂音で、声帯の震えを伴うという優勢音という点で異なっているだけです。
ただ内的再検っていうのはそれだけではちょっと不十分なところがあるので、
比較方法とか、あるいは文献に頼ったりとか、そういったことから、より内的再検で確かめられた説というのを補強していく必要があるんですね。
古紀アイルランド語との比較
この内的再検というのが適用できるのは、もちろん日本語だけではありません。
古紀アイルランド語にもこの内的再検というのが適用できます。
アイルランド語というのはインドヨーロッパ語俗の中のケルト語派に属す言語で、難しいんですよね結構ね。
で、その中でも古紀アイルランド語の初頭心交代っていうのをちょっとお話ししようと思います。
初頭心交代。 これは語頭の心音の音が変わるっていうような現象なんですけど、
そういった意味ではちょっと連濁と似ていますね。 タコが湯でダコで、トゥーという心音がドゥーに変わっているので、それとちょっと似ています。
連濁っていうのはその複合語で見られる現象でしたけど、
アイルランド語の初頭心交代っていうのは、 例えば、所有句で見られるんですよね。
マイブックみたいな、そういう句の中で、 語頭の心が交代します。
古紀アイルランド語で、彼の贈り物っていうのはアザーンというふうに言います。
アザーンのザっていうのは英語の定関詞のザと同じ発音でアザーン。 要は摩擦音ですね。
彼女の贈り物だったらアダーンっていうふうに破裂音。 さらに彼らの贈り物っていうのはアナーンっていうふうに
尾音のナーというのが出てきます。 彼の彼女の彼らのっていうのは全部アーという単語なんですね。
で、贈り物の方の語頭の音がザーとダーとナーで交代しています。 これが初頭心交代と言われる現象です。
ここでも内的再検というのが適用できて、彼の彼女の彼らのっていうのが同じアーという単語っていうのはどうもおかしいですよね。
で、彼らの贈り物っていうのがさっき言ったようにアナーンとなるわけですけど、 このナっていうのが出てくるっていうことはおそらく
彼らのっていうその代名詞の方、所有代名詞の方が微音で終わっていて、 それが影響してアナーンになっちゃった。
そういうふうに推定できます。 あるいは彼の贈り物っていうふうにアザーンっていうふうに摩擦音が出てくるってことは
破裂音が母音の間に挟まれて 摩擦音になったんじゃないかとか、そういったことが推測できるんですね。
実際それは正しいわけですが、アイルランド語の初頭心交代はかなり面白いんですが、 また機会があればお話ししてみようと思います。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。 番組フォローもお忘れなくよろしくお願いします。
お相手はシガ15でした。