両国寄席の開催
はい、シェアする落語の四家です。8月10日日曜日、お江戸両国亭にて両国寄席、五代目圓楽一門会の寄席ですね、10日目行ってまいりました。
8月の今年の五代目圓楽一門会の両国寄席は、明日8月11日が三遊亭圓朝師匠のご命日、ということで圓朝特集。ということでトリは三遊亭朝橘師匠で、
牡丹灯籠から『関口屋ゆすり』というネタ出しがあるという会になってあります。そんなこともありましてお客さんもとってもいい入りでございました。開口一番、前座は三遊亭愛二郎さん。
この日のクイツキが愛楽師匠なわけですが、愛楽師匠のお弟子さんにして実の息子さんだそうでございますが『道灌』。非常に丁寧でですね良かったですね。こういう丁寧な『道灌』を前座で聴くと、なんかとっても気分がいい。
続いて二ツ目でございます三遊亭萬次郎さん。まさかの新作でございます。いやー萬次郎さん若いしね。もうやりたいことはどんどんやっちゃった方がいいと思うんで、とってもいいと思います。
でこの新作がですね。なんて言うんだろうな。地噺になるのかよくわかんないですけども。『閻魔の悩み』というですね。閻魔様の地獄でのお裁きの話なんですけど。なんかね初代林家三平みたいなムードがあるんですよね。
小ボケをポンポンと連続させていくようなところがあって。しかも今の風俗、SNSとかを織り込んでいくというところで。そうか萬次郎さん、こっちもやりたいんだなと。とってもいいと思います。もう、いろんなことをやった方がいいと思います。
彼はもう根底に六代目圓生があるのはもう間違いないんで。その根底は根底としてどうせ大事にするわけですから。もうほんと、どんどんいろんなことをやってほしいなというふうに思いますね。続いてもう一人二つ目。三遊亭好好さんの『孝行糖』。好好さんの『孝行糖』。
よかったですね。セリフのニュアンス、粒立ち、目線の使い方みたいなところが結構見事で。一言で言うと稽古しないとできない落語をやってましたね。ちょっと地語りで雑になっちゃうところは惜しいところですが。
好好さん、思ったより全然いいなっていう感じがあって、ちょっと今後に期待が持てるかなと思いますね。二ツ目の間にどんどん話を増やしちゃえばネタを増やしちゃっていいんじゃないかなっていうのと、特に人情噺とか人情かかった話がいいんじゃないかなって、今日の綺麗なセリフ回しを見て思いました。
以前に比べて全然僕は好好さんに期待できるかなっていうふうに思います。で、ここからですよ。まずね三遊亭楽大師匠。いやー面白かったな『蛇含草』。
いやー何ですかね。僕の定義、自分の中の定義の中で自分の肉体、肉体の中には声帯も含まれるんで、声も含まれるわけですけども、自分の持っている肉体をいかにうまく使うか。
その使えるネタをチョイスできるかっていうところっていうのが落語家としての技術の優劣を決めるところだっていうふうに僕は個人的に思ってるんですけど、まあこの『蛇含草』はもう三遊亭楽大という落語家のために作られたような気がするぐらいね。
よくできてる。とにかくね、基本餅食う話なんですけど、餅がねうまそう。本当に、でもあんな風に餅を食う人はいないんですよ多分。それを餅を食ってるとこはうまそうというふうに想像させるっていうのが落語・落語家の力であって、もうその力をね、もう楽大師匠がもう存分に発揮したっていう感じでめちゃめちゃ受けてましたね。
続いて三遊亭神楽師匠。まくらからですね、いきなり甲子園の最新ネタをぶっこんできて、そこから『強情灸』。結構な『強情灸』でした。やっぱりね、今すっげー暑いんで、暑さを我慢する話っていうのはツボ入りますよね。
まあその辺の噺のセレクトもとっても適切だなと思いました。で、さらにですね、三遊亭全楽師匠でございます。全楽師匠がですね、『狸賽』なんですけど、まあ見事でしたね。
もう面白いのは楽大師匠で、達者なのは全楽師匠という。キャリアが違うんだよね。そんな並べちゃいけませんけど。でもなんかね、五代目圓楽一門会すごいぞっていうこの流れですよね。楽大神楽全楽というこの流れがすごく良かったですね。
いやー狸の話でね、ここまでね、笑わせてくれるだけじゃなくて楽を聴いてるっていうその快楽ね。落語を聴いてて楽しい!っていうような気持ちにさせてくれるその歯切れの良さ、リズム感、歌っぽさというのがね、もう何とも言えず素晴らしいなというふうに思いました。
で、中入れ挟んで食いつきをなんと三遊亭愛楽師匠ですよ。豪華ですね。もうね、愛楽師匠に裏切られることはないです。
古典をベースに入れてツボに入れ入るギャグをし、ポンポン連発してくるんですよね。素晴らしいなというふうに思います。ネタは『反対俥』でしたけども、この『反対俥』っていうネタを選ぶのもとても適切ですよね。
もうトリが重苦しい噺をやるのは決まってるんで、もう軽快に楽しい話をドンッと入るっていうところがですね、軽快に楽しいだけじゃなくて、この『反対俥』ってベタついた感じがしないんですよね。
男女間の話ではないので、ただあのマッドな人と普通の人の2人が絡んでいくだけの話なので、非常に楽しいですね。さすがでございます。ここら辺はもうベテランのテクニックですね。
ヒザが色物、マジック、荒木巴先生。僕、初めて発見しましたけども、お姫様キャラなんでしょうね。
寄席に出てくる女性のマジシャンは大体お姫様キャラから入るなっていう、そんな気もしますけども、やっぱり話術がとっても上手い。またその漫才ほど前に出てこないし、寄席の流れを邪魔しない。
だけど、節々にちゃんとギャグを挟んでパッパパッパ沸かせていく。最後に自分の実力をちゃんと見せつけてサッと去っていくってあたりが非常に寄席向きというか。お姫様キャラもう20年やってるっていう、それだけで笑っちゃいますけどね。素敵でございました。
関口屋ゆすりの魅力
そしてお待ちかねさん言うて、朝橘師匠です。牡丹灯籠の中でも『関口屋ゆすり』はね、やっぱり僕は大好きなんですよ。悪と悪がぶつかって、より強い悪が勝つという、そういう話なので。
ただそこ、『関口屋ゆすり』自体が結構後半なので、そこに至るまでのあらすじだけで10分使っちゃったというですね。
まあこの辺はしょうがないですよね。舞台は栗橋宿で、伴造がですね、お峰ですか、自分の一緒に逃げてきた古女房を斬っちゃって、お国ですね、最初に出てくる飯島平左衛門の後添えですかね。
愛人なのかな。が、宮邊源次郎という飯島平左衛門の屋敷の隣に住んでる侍といい仲になっちゃって、飯島平左衛門を殺して二人で逃げてくるという、そういうとこですよね。
だから伴蔵夫婦も、お国・宮邊も、どっちも殺して逃げてきてるんですよね。殺して逃げてきてる人同士の間に山本志丈という、これがまたいい加減な医者なんだかどうだかよくわからない幇間みたいなやつが間に入ってきて、というのが『関口屋ゆすり』というところなんです。
要はお国の美人局で伴蔵を脅かして失敗するって噺なんです。何が楽しいって、さっきも言いましたけど、どっちも悪なんですよ。
どっちも悪で、ただ伴蔵の方が悪が強いんで逆襲に出るっていう、そこの辺の話は痛快っちゃ痛快だし、やっぱり地語りもね、別に怪談的に怖くする必要はあまりないので、
淡々とトントンと語っていく朝橘師匠の確かなテクニックに、その上に人物造形したですね、その悪とより強い悪、横で見ているいい加減なやつっていうね、この3人のバランスがまた絶妙ですね。
しかもおそらくもっと年月をかけていくとなおさら面白くなるだろうというですね、今聴いても全然面白いです。どうしても『牡丹灯籠』っていうとカランコロン、怪談らしい怪談というところでですね『お札はがし』の方行ってしまうんですけど、
僕はね、この『関口屋ゆすり』の悪対悪、そして横にいい加減な男っていうね、この構図が大好きですね。この構図をきっちりやりきる朝橘師匠の力というものがね、本当感じられて、気が付いてですよ、これだけ満足して、長さも適切なわけですよ。
6時から始まって8時半くらいに終わるっていう長さも適切な中で、なんと木戸銭1,800円、ちょっとマジックすると1,500円みたいなですね、とてつもなくコストパフォーマンスが良すぎる。
そのうち、公正取引委員会からですね、何らかの手入れを受けるかというふうに思いますが、そんなことになる前にですね、ぜひ皆さん、五代目圓楽一門会の両国寄席行っていただきたいなと思うのと、多分10月かな、10月にですね、朝橘師匠がまた『牡丹灯籠』の続きをやります。
それは自分の会でね、アートスペース兜座のほうで多分やると思います。こちらのほうもご注目いただきたい。何しろ圓朝ものがやりたくて落語家になった人ですから、もういよいよという感じで取り組んでいるところを、ぜひ聴いていただきたいなというふうに思います。シェアする落語の四家でした。ではまた。