ATPと寿命の関係
今回は、生物のエネルギー通貨ともいわれるATPを増やして、
生物の寿命を伸ばせるのかという研究を、ちょっと紹介してみたいと思います。
サイエンスポットは、最新の科学技術にスポットライトを当てるポッドキャストです。
ホストは、サイエントークのレンです。ということで、今回結構、新しい
ATPを増やすっていう、ちょっと研究を紹介したいと思うんですけども、
僕たちの体って、何をするにもエネルギーって必要ですよね。
腕を動かすのもそうだし、脳を働かせるのもそうだし、絶対にエネルギー必要なんですけど、
そのエネルギーって、
かなり大部分は、細胞の中にある小さい細胞小器官、ミトコンドリアが作り出しています。
ミトコンドリアって、例えるなら、小さい発電所みたいなもので、
そこでATPっていうエネルギーの通貨が大量に作られて、
それが体の中で使われて、エネルギーとして色んな運動とかに変えられたりするんですけど、
このミトコンドリアって、老化に伴って機能が低下していくと、
当然、発電所の役割をするものが老朽化していくと、
どんどん供給できる電力が減っていくように、
体の中でもATPがどんどん酸性量が減って、
細胞とか臓器が機能不全に陥っちゃうということがあります。
ProAXの特性
これが老化とか、あとは色んな過励性疾患の根本的な原因の一つって考えられてるんですけども、
じゃあ、このATPのレベルを回復させる薬があれば、
原理的にはこのエネルギー不足みたいなのを補えたりするわけですよね。
ただ、これが今まで結構難しくて、なぜかというと、
ATPそのものを薬みたいに体の中に投与しても、
血液中の安定性が低かったりとか、
細胞膜を投下できなくて、細胞の中になかなか入らなくて、
効率的に届けるというのが難しかったと。
今回、そんな中、紹介する研究では、
細胞内のATPの量を効率的に増やす、
拡散プロドラッグっていうものを開発しています。
これ、ProAXっていう名前が一応ついてるんですけども、
これどういうことかというと、プロドラッグっていう言葉は、
薬学とかだと結構よくあるんですけども、
プロドラッグ、だからドラッグになるプロ前みたいな意味で、
要は、それ自体はまだ薬じゃないみたいな意味ですね。
で、そのプロドラッグっていうものが体の中に入った後に、
酵素で反応したりとか、
体の中で反応して初めて、
効果がある薬の成分に変化するように設計されている化合物のことですね。
なので、よく薬って、
狙った酵素に、
酵素っていう鍵穴があったとして、そこにピタッとはまる鍵を作るっていうふうに、
例えられるんですけど、
そのままでは鍵穴に入らないんだけども、その鍵に途中で変化していくようなものが、
プロドラッグっていうイメージですね。
で、このProAXっていうやつは、
構造としては、
アデノシンイチリン酸っていう、ATPじゃなくてAMPっていう、
リン酸が1個だけついているもので、ATPのTはトリでリン酸が3個ついてるんですけど、
その1個だけリン酸を持っているやつに、
保護器っていう保護する、カブハみたいなものがついているイメージですかね、
がついていて、それだと細胞の中にスムーズに侵入できると。
で、入った後に実際AMPからADP、ATPっていうリン酸がついたりして、
変換されていきますよっていう設計がされている。そういう加工物ですね。
で、このProAXっていうのが細胞の中に入りますと、そうすると一時的に、
このAMPっていうリン酸1個のやつがまず濃度が上がって、
それがエネルギーのセンサー、AMPKっていうAMP活性化プロテインケナーゼっていうのがあるんですけど、
それを活性化すると。
で、そうするとこれがトリガーになって発電所の稼働を促して、
いわばATP不足を解消しようっていう方向に働いていくっていうことですね。
で、これ人の皮膚の細胞を使った実験をやってみると、これ投与すると、
細胞の中のATP濃度が最大で約3倍にまで増加するっていうことが、まず分かりましたと。
で、これはだから細胞内のエネルギー代謝が効率が良い、酸化的リン酸化っていうものなんですけど、それにシフトしていると。
研究の成果と今後の展望
そして細胞の中のエネルギーバランスがそれによって崩れたりすることもなく、
AMPKっていうプロテインケナーゼが活性化して、エネルギーがどんどんどんどん生み出されると。
しかもこれが老化とか病気の原因になる活性酸素っていうものがあって、それを測れるんですけど、
それに対する耐性も向上しているっていうことが分かりましたと。
で、じゃあ実際にこれ生き物に使うとどうなのっていうところは、
これよくモデル生物として使われているセンチューっていう、すごいちっちりミミズみたいなやつですね。
このセンチューを使って、個体レベルで実際にこれを投与したらどうかなっていうのをやってみますと。
このセンチュー、なんで使われるかっていうと、意外と人の遺伝子と共通点が多いとか、
あとは平均寿命がだいたい2、3週間なので、
これ投与して寿命が伸びるのかな、縮まるのかなっていうのによく使われる生き物なんですよね。
で、これセンチューにさっきのプロアックスってやつを投与してみると、
実際ATPが増えるっていうことが確認されて、活性酸素の発生も抑制されて、
平均寿命がこれ投与してないに比べて、24%延長されたと。
24%結構すごいですよね。
だから、2週間でこれを投与して、
24%延長されたと。
24%結構すごいですよね。
だから、人間にしたら
80歳ぐらいまで生きるとしたら、
20年近く長く生きる可能性が出てきてるっていう、そういう
びっくりするような数字ですね。
あとは、
これで言われてるのは既存の、こういう似たような効果の活性化剤とか、
直接ATPとかAMPを無理矢理入れるみたいなことをやっても、寿命延長効果見られなかったっていうことで、
これおそらくプロアックスの、プロドラッグとしての有効性、
有意性があるんじゃないかっていう発表ですね。
で、実際これ老化に伴うエネルギー代謝が下がってくるのに使えるんじゃないかっていうので、
なんか結構、
何て言うんですかね、
寿命を伸ばす薬って言っちゃうと、ちょっと大げさかもしれないですけど、
センチューに関してはそんな感じの結果出てるかなっていう。
ただ結構、僕の印象だとセンチューの寿命を伸ばすやつって結構いろんな研究があるかなっていう気はしてます。
これだけで、もう夢の薬だみたいなのはないかなっていう、これ僕の感想ですね。
で、ただとはいえ、こう寿命延長とか、あとは他の
病気の予防、過励性疾患を予防するっていう方向には使えるかもしれないなっていう、結構画期的な
発見ではあるかなと思います。
で、この研究している人たちは、今プロワックスの効果をマウスなどの哺乳類とか、
もう少し大きい動物で有効性のデータを収集したいっていうことで、
全然まだ実用化にはいろんなハードルがあるんですけど、
この老化抑制とか過励性疾患予防の製品開発を目指しているということみたいですね。
で、これは
サイエントークっていうポッドキャストの方でも、
去年、今年の頭かな、去年かぐらいに老化の研究の話は少しだけ取り上げたことが
ありまして、で、実際もうすごい高額の賞金かけて、これぐらい寿命を伸ばしたら
何千億円みたいな、なんかそういう
小レースみたいな感じになってたりして、すごい老化の
研究ってホットなんですよね。で、いろんなベンチャー企業とかもできてますし、
それぐらい今結構
老化に対する薬っていうのは、冗談じゃなく結構
進んでるところはあるかなって思いますね。再生医療とかもそういう感じですよね。
なので、こういう健康とか長寿とか
こういう新しい選択肢も出てくるのかなっていうふうには思いましたね。
まあ、実際人間に応用するのはそんな簡単にいかんだろうっていうのは個人的に思いますけど、
まあ、なんか
どうしてもやっぱATPが作れなくなっちゃって、っていう病気になった人とかにはもしかしたら
こういうの使えそうだなとか思うんですけどね。
まあ、でもなんかこういうもの結構老化っていろんな
ものの複合的な要因もあると思うし、
そういうのに一個一個
研究が進んでいくと、もしかしたらもうちょっといい
方法なり、健康寿命を伸びますとかそういうのが出てくるかもしれないなっていうふうには思いました。
はい。
ということで、
今回雑談なんですけど、
今までリスナーの方からの
要望とかもちょこちょこいただいてたりするので、
次の回とかはリスナーさんの要望があった話をしていこうかなとは思っています。
ありがたいことにLINEのオープンチャットの方も結構盛り上がりを見せていますので、
まだ参加してないよという方がいましたら、ぜひぜひ
概要欄のリンクからLINEのオープンチャットを参加してみてください。これ全然タダです。
タダだし、別に何かを要求するわけでもないので、覗くだけでも全然大丈夫
っていう感じのものなので気軽に参加してください。
はい。
えっと、
じゃあまあ今日こんなとこですかね。
この番組サイエンスポットは平日毎日朝に日本語と英語で発信をしております。
もし
感想ですとか
ありましたらハッシュタグサイエンスポットで投稿してもらえると嬉しいです。
こういう話題を取り上げてほしいっていうのもぜひぜひ
お待ちしておりますのでよろしくお願いします。それではまた。
