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2023-11-13 07:55

チユーリツプ/新美南吉

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作品名:チユーリツプ
著者:新美南吉

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00:05
チューリップ、新美南吉 学校の帰りに、きみこさんはお友達ののりこさんに、うちのチューリップの自慢をしました。
うちで咲いたチューリップは、お花屋さんが売りに来るのより5倍もきれいなのよ。
あら、いいわね。 と、お友達ののりこさんは、うらやましそうに聞いて、首をかしげました。
クレヨンの赤とどっちが赤いか、比べてみたのよ。
そしたら、クレヨンの赤のほうが、ずっと薄くって汚いの。
あら、そう。 うちの母さんが言ってたわ。
この花から口紅がとれやしないだろうかって。
そう、のりこちゃんがあの花、しゃせいなさったら、さえ言うとよ、きっと。
あら、そんなことはありませんわ。
きのう、きゅうこんをうめたんだけど、まだふたつかみっつのこってたから、
母さんに聞いて、のりこちゃんにあげてもらおう。
いただいてもいいわ。
いただいてもよくって?
きっと母さん、いいって言うわよ。
ちょうどそのとき、のりこさんのお家の前に来ました。
それじゃあ、あしたの朝、もってきてあげるわね。
と言って、きみこさんはのりこさんとわかれました。
家にかえって、お母さんに聞くと、
かけなさい、とおっしゃいました。
そこで、つぎの朝、のりこさんをさそいに行くとき、
ふたつのきゅうこんを、ほしぶどうのからばこにいれて、もっていきました。
のーりこちゃん。
03:01
と、きみこさんは、かきねごしによびました。
すると、のりこさんのかわりに、
のりこさんのおねえさんが、
はーい。
と、へんじなさいました。
あら。
と思っていると、おねえさんがげんかんからでていらして、
のりちゃんはおねつがあるので、がっこうへいけませんのよ。
と、おっしゃいました。
あまりおどろいたので、
きみこさんは、
チューリップのきゅうこんのこともわすれてしまって、
そう、といったきり、
なにもいわないで、
がっこうへきてしまいました。
おうちにかえってから、
きみこさんは、
チューリップのきゅうこんを、
にわのゆすらうめのかげにうめました。
そして、
はるになって、はながさいたら、
のりこさんにあげようときめました。
のりこさんは、ごびょうきがなおらないらしく、
いっしゅうかんたっても、
にしゅうかんたっても、
がっこうへいきませんでした。
そのうちに、さむいふゆがきて、
くりすますがきて、
おしょうがつがきて、
それからとうとう、
はるがやってきました。
こずえがみえないほどたかいけやきに、
ほそいめがちょくちょくかおをだしてきました。
あるひ、がっこうのかえりに、
きみこさんが、
のりこさんのいえのまえをとおりかかると、
いけがきのなかでこえがしていましたので、
すきまからのぞいてみました。
にわには、びじゃまをきたのりこさんが、
おねえさんにてをひかれて、
そろりそろりあるいていました。
えんがわには、おかあさんがたって、
みていらっしゃいました。
ねえさん、もういっぺん、かきねのとこまでいきましょう。
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と、のりこさんがいいました。
そんなにあるいてもいいの?と、
ねえさんはあやぶまれました。
でも、のりこさんがこんなにあるかれるようになったことが、
うれしくてたまらないらしく、
あかんぼうみたいにりょうてをとって、
のりこさんをかきねのほうへあゆませてこられました。
あら、ねえさん、
とってもきれいなゆうやけね。
と、
のりこさんがたちどまりました。
ねえさんもそらをあおいで、
ほんとう、
とおっしゃいました。
ねえさんのうつくしいめが、
なみだでひかっていることが、
かきねのかげでのぞいているきみこさんに、
すぐわかりました。
きみこさんもなんだかなきたいようなきもちになりました。
もうとうかもたったら、
のりさんがっこうへいかれるかもしれない、
と思いながらいえへかえってみると、
のりこさんにあげるはずのちゅうりっぷのつぼみが、
ゆすらうめのかげでほころびかけていました。
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