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おかあさんたち、にいみなんきち。
おかあさんになったことりが、きのうえのすのなかで たまごをあたためておりました。
するとまた、きょうもめうしが そのしたへやってきました。
「ことりさん、こんにちは。」
と、めうしがいいました。
「まだたまごはかえりませんか?」
「まだかえりません。」
と、ことりはこたえていいました。
「あなたのあかちゃんはまだですか?」
「だんだんおなかのなかでおおきくなってまいります。
もうとうかもしたらうまれましょう。」
と、めうしはいいました。
それから、ことりとめうしはいつものように、
まだうまれていないじぶんたちの あかんぼうのことでじまんをしあいました。
「めうしさん、きいてください。
わたしのかわいいぼうやたちはね、
きっとうつくしいるりいろをしていて、
ばらのはなみたいによいにおいがしますよ。
そして、すずをふるようなよいこえで、
ちるちるとうたいますよ。」
「わたしのぼうやはね、
ひずめがふたつにわれていて、
けいろはぶちでしっぽもちゃんとついていて、
わたしをよぶときは、
もうもうってかわいいこえでよびますよ。」
「あらおかしい。」
と、ことりはわらいをおさえていいました。
「もうもうがかわいいこえですって。
それにしっぽなんかよけいなものよ。」
「なにをおっしゃるのですか。」
とめうしもまけずにいいました。
「しっぽがよけいなものなら、
くちばしなんかもよけいなものよ。」
こんなふうにはなしをしていたら、
おしまいにはけんかになってしまいましょう。
ところがけんかにならないまえに、
いっぴきのかえるがみずのなかから
ぴょんととびだしてきました。
「なにをそんなにいっしょうけんめいに
はなしていらっしゃるのですか。」
とみどりいろのかえるはききました。
そしてめうしとことりからそのわけをきくと、
かえるはめをまんまるくして、
「それはたいへんよ。」
といいました。
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なにがたいへんなのかめうしとことりが
しんぱいそうにきくと、かえるはいいました。
「あなたがたはあかちゃんがもうじくうまれるというのに、
こもりうたをならいもしないで
そんなのんきなことをいっていらっしゃる。」
めうしとことりはどうしてこんなにうっかりしていたのでしょう。
「さっそくこもりうたをならわなければなりません。
ところで、だれにならったものでしょう。」
「じゃあ、わたしがおしえてあげます。」
とかえるがいいました。
めうしとことりはたいへんよろこんで、
かえるにこもりうたをおしえてもらいました。
けれども、こんなにむずかしいこもりうたはありません。
とてもむずかしくて、めうしとことりはちっともおぼえられませんでした。
それはこういうこもりうたでした。
めうしとことりはいっしょうけんめいにならいましたが、
それでもおぼえられないので、
おしまいにはいやになってしまいました。
けれど、かえるが
「こもりうたをしらないで、どうしてあかんぼうがそだてられましょう。」
といいますので、またげんきをだして、
とならうのでした。
そして、それはゆうがた、かぜがすずしくなるころまでつづきました。