1. 寝落ちの本ポッドキャスト
  2. 205芥川龍之介「好色」(朗読)
2026-02-12 39:54

205芥川龍之介「好色」(朗読)

205芥川龍之介「好色」(朗読)

糞と書いて「まり」

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00:06
寝落ちの本ポッドキャスト。こんばんは、Naotaroです。 このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、 それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
作品はすべて青空文庫から選んでおります。 ご意見ご感想ご依頼は公式xまでどうぞ。
寝落ちの本で検索してください。 また別途投稿フォームもご用意しております。リクエストなどをお寄せください。
それから、まだしてないよという方、ぜひ番組のフォローをお願いいたします。 そして最後におひねりを投げてもいいよという方、
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さて今日は、 芥川龍之介さんの「好色」です。
色を好むと書いて好色ですね。
異性を好きになるは普通だな、なんて言ったらいいかな。 一般以上に
異性との関係を好むってことでしょうね。
小学校の頃、あれは何年生だろうか。 4年生か5年生か。
クラスメイトの大田くんが、少しほっぺがふっくらしたイデさんを指して、
僕はああいう子が好きなんだよね、ほっぺがふっくらした子って言ってて、 自分の好みがはっきりわかるんだなぁ、そうなんだ。
別に僕はそこに魅力を感じませんでしたけど、そっか自分の好みがはっきりわかってるんだなぁと感じた記憶が今
よみがえっています。
大田くんは今頃何をしているでしょうか。
ほっぺがふっくらした奥さんをもらっているのでしょうか。 わかりませんが温真不通なので。
今日読む芥川隆之介さんの好色は文字数が
11900文字。 そうですね。
30分ちょろちょろといったところでしょうか。
ではやっていきましょうか。 どうかお付き合いください。
それでは参ります。 公職。
兵中という色好みにて宮塚恵人はさらなり、人の娘など忍びて見ぬはなかりけり。
宇治周囲物語。 いかれかこの人にあわれは、やまんと思い迷けるほどに、兵中、やみつきにいけり。
しかしうて、悩みいけるほど、死ににいけり。 婚弱物語。
色を好むというは、可用の振る舞いなり。 実訓章。
03:04
1 絵姿。
太平の時代にふさわしい、雄美なきらみき絵星の下には、霜ぶくれの顔がこちらを見ている。
そのふっくりと太った頬に、鮮やかな赤みがさしているのは、何も縁事をぼかしたのではない。
男には珍しい持肌が、自然と血の色を透かせたのである。 髭はひんのいい鼻の下に。
というよりも、薄い唇の左右に、ちょうど薄墨をはいたように、わずかばかりしか残っていない。
しかし、つややかな瓶の上には、かすみもたたない空の色さえ、ほんのりと青みをうつしている。
耳はその瓶のはずれに、ちょいと上がった耳たぶだけ見える。
それが、ハマグリの貝のような、温かい色をしているのは、かすかな光の加減らしい。
目は人よりも細いうちに、絶えず微笑が漂っている。
ほとんど、その瞳の底には、いつでも咲きによった桜の枝が浮かんでいるのかと思うくらい、晴れ晴れした微笑が漂っている。
が、多少注意をすれば、そこには必ずしも幸福の実がすまっていないことがわかるかもしれない。
これは遠い何者かに、象形を持った微笑である。
同時に、また手近い一切に軽蔑を抱いた微笑である。
首は顔に比べると、むしろ華奢すぎると表してもいい。
その首には、白い風見の衿が、かすかに光を抱きしめた名の花色のスイカンの衿と、細い一線を描いている。
顔の後ろにほのめいているのは、鶴を織り出した貴鳥であろうか。
それとも、のどかな山の裾に、芽松を描いた障子であろうか。
とにかく、曇った銀のような、薄白い明るみが広がっている。
これが古い物語の中から、私の前に浮かんできた、雨が舌の色好み。
平の定踏の似顔である。
平の吉風に子が三人ある。
ちょうどその次男に生まれたから、平昭とはあだ名を呼ばれたという、私のドンファンの似顔である。
2.桜
平昭は柱に寄りかかりながら、満々と桜を眺めている。
近々と軒に迫った桜は、もう盛りが過ぎたらしい。
そのやや赤みの褪せた花には、長い昼過ぎの日の光が、差し交わした枝のむきむきに複雑な影を投げ合っている。
が、平昭の目は桜にあっても、平昭の心は桜にない。
彼はさっきから満々と地獣のことを考えている。
初めて地獣を見かけたのは、平昭はこう思い続けた。
初めて地獣を見かけたのは、あれはいつのことだったかな。
そうそう、何でも稲荷茂田に出かけると言っていたんだから、初馬の朝だったのに違いない。
06:00
あの女が車へ乗ろうとする。
俺がそこへ通りかかる。
というのがそもそもの起こりだった。
顔は扇をかざした陰にしらりと見えただけだったが、
紅梅や萌木を重ねた上、紫の内着をひっかけている。
その様子が何とも言えなかった。
おまけに箱へ入るところだから、片手に袴をつかんだまま、心持ち腰をかがめ加減にした、そのまた格好もたまらなかったっけ。
本院の弟の御院館にはずいぶん女房もたくさんいるが、まずあのくらいなのは一人もないな。
あれなら兵駐が惚れたと言っても。
兵駐はちょいと真顔になった。
だが本当に惚れているかしら。
惚れていると言えば惚れているようでもあるし、惚れていないと言えば惚れて…。
一体こんなことは考えているとだんだんわからなくなるもんだが、まあ一通りは惚れているな。
もっとも俺のことだから、いくら自重に惚れたと言っても、目先までくらんでしまいはしない。
いつかあのノリザネの奴と自重の噂をしていたら、
裏村君は髪が薄すぎると聞いたふうなことを言ったっけ。
あんなことは一目見たときにもうちゃんと気がついていたんだ。
ノリザネなどという男は、筆力こそちっとは吹けるだろうが、公職の話となった日には、
まああいつはあいつとしてよけ。
最初めき俺が考えたいのは自重一人のことなんだから。
ところでもう少しよく言えば、顔もあれじゃ寂しすぎるな。
それも寂しすぎると言うだけなら、どこか古い絵負けじみた上品なところがあるはずだが、
寂しいくせに白情らしい妙に落ち着いたところがあるのはどう考えても頼もしくない。
女でもああいう顔をしたのは、存外人を喰っているもんだ。
その上、色も白いほうじゃない。朝黒いとまではいかなくっても琥珀色ぐらいなところはあるな。
しかしいつ見てもあの女は、なんだかこう水際だった古いつきたいような風をしている。
あれは確かにどの女も真似はできない芸当だろう。
兵中は袴の膝を立てながらうっとりと軒の空を見上げた。
空は群がった花の間に薄青い色をなごませている。
それにしてもこの間からいくら踏みを持たせてやっても返事一つ起こさないのは強情にも程があるじゃないか。
まあ俺が踏みをつけた女は大抵三度目になびいてしまう。
たまに堅い女があっても五度と踏みをやったことはない。
あのエゲンという物種の娘なぞは一種の歌だけに落ちたもんだ。
それも俺の作った歌じゃない。誰かが…。
あ、そうそう。吉助が作った歌だっけ。
吉助はその歌を書いてやってもトントセンポーの青女房には相手にされなかったとかいう話だが、同じ歌でも俺が書けば。
もっとも自重は俺が書いてもやっぱり返事はくれなかったからあんまり自慢はできないかもしれない。
しかしとにかく俺の踏みには必ず女の返事がくる。返事がくれば会うことになる。会うことになれば大騒ぎをされる。
09:03
大騒ぎをされれば…。じきにまたそれが花についてしまう。
こうまあ相場が決まっていたもんだ。
ところが自重はひと月ばかりにざっと二十通の踏みを書いたが、なんとも頼りがないんだからな。
俺の演奏の文体にしてもそう無再現にはあるわけじゃなし、そろそろもう後が続かなくなった。
だが今日やった踏みの中には、せめてはただ三つとばかりの二文字打に見せたまえと書いてやったから何とか今度こそ返事があるだろう。
ないかな。もし今日もまたないとすれば…。
ああ、ああ、俺もついこの間まではこんなことに意気込つ居るほど卑怯のない人間じゃなかったんだがな。
なんでもブラックウィンの古狐は女に化けるということだが、きっとあの狐に化かされたのはこんな気がするのに違いない。
同じ狐でも奈良坂の狐は三鷹屋もあろうという杉の木に化ける。
坂の狐は義者に化ける。
高谷川の狐は目のわらわに化ける。
桃殿の狐は大池に化け…。
あ、キス猫の謎はどうでもいい。えっと、何を考えていたんだっけ。
平昭は空を見上げたままそっとあくびを噛み殺した。
鼻に渦巻った軒先からは傾きかけた日の光の中に時々白いものがひるがえってくる。
どこかに鳩も鳴いているらしい。
とにかくあの女にはこんな気がする。
たとい会うとは言わないまでも俺と一度話さえすればきっと手に入れてみせるんだがな。
まして一晩会いでもすれば…。
あの節でも古中条でもまだ俺を知らないうちは男嫌いで通していたもんだ。
それが俺の手にかかるとあの通り好き者になるじゃないか。
自重にしたところが金ぼとけじゃなし、右丁手にならないはずはあるまい。
しかしあの女はいざとなっても古中条のようには恥ずかしがるまいな。
といってまた節のように妙に取りすます柄でもあるまい。
きっと袖を口にやると目だけににっこり笑いながら…。
どうせ夜のことだから霧灯台か何かが灯っている。
その日の光があの女の髪へ…。
平中はやや慌てたようにエボシの頭を後ろへ向けた。
後ろにはいつかわらべが一人、じっと伏し目になりながら一通の踏みを差し出している。
なんでもこれは一心に笑うのをこらえていたもののらしい。
「消息か?」
「はい。自重様から。」
わらべはこう言い終わると早々主人の前を下がった。
「自重様から?」
「本当かしら。」
平中はほとんど恐る恐る浅い薄洋の踏みを開いた。
「ノリザネやヨシスケのいたずらじゃないか。
あいつらはみんなこんなことが何よりも好きな暇人だから。」
「おや、これは自重の踏みだ。自重の踏みには違いないが、この踏みは、これは何という踏みだい?」
12:02
平中は踏みを放り出した。
踏みには、ただ密とばかりの二文字だに見せたまえと書いてあったその密という二文字だけが、
しかも平中の送った踏みからこの二文字だけ切り抜いたのが薄洋に貼り付けてあったのである。
「ああ、雨が下の色好みとか言われる俺も、このくらい馬鹿にされれば世話はないな。
それにしても自重という奴は梢の憎い女じゃないか。今にどうするか覚えていろよ。」
平中は膝を抱えたまま呆然と桜の梢を見上げた。
青い薄葉のひるがえった上には、もう風に吹かれた落花がてんてんと幾平もこぼれている。
3. 雨よ。
それから二月ほど経ったあとである。
ある長雨の続いた夜、平中は一人本位の自重の壺根へしのんで行った。
雨は夜空が溶け落ちるように凄まじい響きを立てている。
道は出ねえというよりも大水が出たのと変わりはない。
この場にわざわざ出かけて行けば、いくらつれない自重でも哀れに思うのは当然である。
こう考えた平中は壺根の口へうかがいをよると、銀をはった扇をならしながら案内をこうようにせきばらいをした。
すると十五六の目のわらわがすぐにそこへ姿を見せた。
うませた顔におしろいをつけたさすがにねむそうな目のわらわである。
平中は顔を近づけながら小声に自重へとりすぎをたのんだ。
一度ひきこんだ目のわらわは壺根の口へ帰ってくるとやはり小声にこんな返事をした。
どうかこちらにおまちくださいまし、いまにみなさまがおやすみになればおあいになるそうでございますから。
平中は思わず微笑した。
そして目のわらわの案内どおり、自重のいまの隣らしい槍戸のそばに腰をおろした。
やっぱり俺は知恵ものだな。
目のわらわがどこかへしりぞいたのち平中はひとりにやにやしていた。
さすがの自重もこんどというこんどはとうとうこころがおれたとみえる。
とかこ女というやつはもののあおれを感じやすいからな。
そこへしんせつげをみせさえすればすぐにころりとおちてしまう。
こういうかんどころを知らないからよしすけやのりザネはなんといっても。
あ、まてよ。だが今夜あえるというのはなんだか話がうますぎるようだぞ。
平中はそろそろ不安になった。
しかしあいもしないものがあおうというわけもなさそうなもんだ。
すると、おれのひがみかな。
なにしろざっと60通ばかりのべずにふみをもたせてやってもへんじひとつもらえなかったんだからひがみのおこるのももっともなはしだ。
がひがみではないとしたら。
またつくづくかんがえるとひがみではないきもしないことはない。
いくらしんせつにほどされてもいままではみむきもしなかった自重が。
といってもあいてはおれだからな。
15:01
このくらい平中におもわれたとなればきゅうにこころもとけるかもしれない。
平中はえもんをなおしながらおぞおぞあたりをすかしてみた。
が、かれのいまわりにはくらやみのほかになにもみえない。
そのなかにただあめのおとがひはだぶきのやねをどよませている。
ひがみだと思えばひがみのようだし、ひがみでないと。
いや、ひがみだと思っていればひがみでもなんでもなくなるし、ひがみでないと思っていればあんがいひがみですみそうなきがする。
いったいうんなぞというやつはひにくにできているもんだからな。
してみればなんでもいっしんにひがみでないと思うことだ。
そうするといまにもあのおんなが
おや、もうみんなねはじめたらしいぞ。
平中はみみをそばだてた。
なるほど、ふときがついてみればあいかわらずやみないうせえといっしょに
ごぜんえつめているようぼうたちがつぼねつぼねにかえるだし、ひとざわめきがきこえてくる。
ここがしんぼうのしどころだな。
もうはんときもたちさえすれば、おれはなんのぞうさもなくひごろのおもいがはらされるんだ。
が、まだなんだかはらのそこにはあんしんのできないきもちもあるぞ。
そうそう、これがいいのだっけ。
あわれないものだと思っていればふしぎにあうことができるんだ。
しくし、ひにくなうんなやつはそういうおれのむなざんようもみつかしてしまうかもしれないな。
じゃあ、あわれるとかんがえようか。
それにしてもかんじょうずくだからやっぱりこちらのおもうようには
ああ、むねがいたんできた。
いっそうなにかじじゅうなぞとはえんのないことをかんがえよう。
だいぶどのつぼんでもひっそりしたな。
きこえるのはあめのおとばかりだ。
じゃあ、さっそくめをつぶってあめのことでもかんがえるとしよう。
はるさめ、さみだれ、ゆうだち、あきさめ。
あくさめということばがあるかしら。
あきのあめ、ふえのあめ、あまだり、あまもり、
あまがさ、あまごい、あまりょう、
あまがえる、あまがわ、あまやどり。
こんなことをおもっているうちに
おもいがけないもののおとがへいちゅうのみみをおどろかせた。
いや、おどろかせたばかりではない。
このおとをきいたへいちゅうのかおは
とつぜんみんなのらいごをはいしたしんじゅんぶかいほうしよりも
もっとかんきにあふれている。
なぜといえばやりどのむこうに
だれかかけがねをはずしたおとがはっきりみみにひびいたのである。
へいちゅうはやりどをひいてみた。
とはかれのおもったとおりするりとしきいのうえをすべった。
そのむこうにはふしぎなほどそらだきのにおいがたちこめた。
いちめんのやみがひろわっている。
へいちゅうはしずかにとうをしめると
そろそろひざではいりながらてさくりにおくへすすみよった。
が、このなまめいたやみのなかには
てんじょうのあめのおとのほかになにひとつもののけはいもしない。
たまたまてがさわったと思えば
いこうやきょうだいばかりである。
へいちゅうはだんだんむねのどうきがたかまるようなきがしだした。
いないのかな。
18:00
いればなんとかいいそうなもんだ。
こうかれがおもったとき
へいちゅうのてはぐうぜんにもやわらかなおんなのてにさわった。
それからずっとさくりまわすと
きぬらしいうちぎぬのそでにさわる。
そのきぬのしたのちぶさにさわる。
まるまるとしたほほやあごにさわる。
こおりよりもつめたいかみにさわる。
へいちゅうはとうとうくらやみのなかに
じっとひとりよこになったこいしいじじゅうをさぐりあてた。
これはゆめでもまぼろしでもない。
じじゅうはへいちゅうのはなのさきに
うちぎぬひとつかけたまま
しどけないすがたをよこたえている。
かれはそこにいすくんだなり
われしらずわなわなふるえだした。
がじじゅうはあいかわらず
みうごきをするけしきさえみえない。
こんなことはたしか
なにかのぞうしにかいてあったような
こころもちがする。
それともあれはなんねんかいぜん
おおどのあぶらのほっかげにみた
なにかのえまきにあったのかもしれない。
かたじけない、かたじけない。
いままではあつれないとおもっていたが
もうこうごはみほときゅうよりも
おまえにしんめいをささけるつもりだ。
へいちゅうはじじゅうをひきよせながら
こうそのみみにささやこうとした。
がいくらきわせいても
したはうわあごにひっついたまま
こえらしいものはくちへでない。
そのうちにじじゅうのかみのにおいや
みょうにあたたかいはだのにおいは
むえんりょうにかれをつつんでくる。
とおもうとかれのかおへは
かすかなじじゅうのいきがかかった。
いちしゅんかん。
そのいちしゅんかんがすぎてしまえば
かれらはかならずあいよくのあらしに
あめのおともそらだきのにおいも
ほういんのおとどもめのわらわも
ぼうけくしてしまったにそういない。
しかしこのきわどいせつなに
じじゅうはなかばみをおこすと
へいちゅうのかおにかおをよせながら
はずかしそうなこえをだした。
おまちなさいまし。
まだあちらのしょうじにはかけがねが
おろしてございませんから
あれをかけてまいります。
へいちゅうはただうなずいた。
じじゅうはふたりのしとねのうえに
においのいいぬくみをのこしたまま
そっとそこをたっていった。
はるさめ。
じじゅう。
みなにょらい。
あまやどり。
あまだれ。
じじゅう。
じじゅう。
へいちゅうはちゃんとめをあいたなり
かれじしんにもはんぜんしない
いろいろなことをかんがえている。
するとむこうのくらやみに
かちりとかけがねをおろすおとがした。
あまりょう。
こうろ。
あまよのしなさだめ。
ぬばたまのやみのうつつ
わさだかなるゆめに
いくらもまさらざりけり
ゆめにらに。
どうしたんだろう。
かけがねはもうおりたとおもったが。
へいちゅうはあたまをもたげてみた。
があたりにはさっきのとおり
そらだきのにおいがただよった
ゆかしいやみがあるばかりである。
21:00
じじゅうはどこへいったものか
きんずれのおともきこえてこない。
まさか。
いや、ことによると。
へいちゅうはしとねをはいだすと
またもとのようにてさぐりをしながら
むこうのしょうじへたどりついた。
するとしょうじにはへやのそとから
げんじゅうにかけがねがおろしてある。
そのうえみみをすませてみても
あしおとひとつさせるものはない。
つぼねつぼねがおおあめのなかに
いずれもひっそりとねしずまっている。
へいちゅう、へいちゅう。
おまえはもう
てんがしたのいろごのみでもなんでもない。
へいちゅうはしょうじによりかかったまま
しっしんしたようにつぶやいた。
おまえのようしょくもおとろえた。
おまえのさいももとのようじゃない。
おまえはのりざねやよしすけよりも
みさげはてたいくじなしだ。
4.こうしょくもんどう
これはへいちゅうのふたりのともだち
よしすけとのりざねとのあいだに
こうかんされたあるむだばなしの
いっせつである。
よしすけ
あのじじゅうというおんなには
さすがのへいちゅうもかなわないそうだね。
のりざね
そういうわさだね。
あいつにはいいみせしめだよ。
あいつはにょごこういでなければ
どんなおんなにでもてをだすおとこだ。
ちっとはこらしてやるほうがいい。
はあ、きみもこうしゅのおでしか?
ふん、こうしゅのおしえなざはしらないかね。
どのくらいおんなが
へいちゅうのために
なかされたかくらいはしっているんだ。
もうひとことついでにつけ加えれば
どのくらいくるしんだおっとこあるか
どのくらいはらをたてたおやがあるか
どのくらいうらんだけらいがあるか
それもまんざらしらないじゃない。
そういうめやこをかけるおとこは
とうぜんこうならしてせんむべきだ。
きみはそうかんがいないかね。
うーん、そうばかりもいかないからね。
なるほど、へいちゅうひとりのために
せけんはめいわくしているかもしれない。
しかし、そのつみは
へいちゅうひとりがおうべきものでも
なかろうじゃないか。
じゃあ、またほかにだれがおうのだね。
それはおんなにおわせるのさ。
おんなにおわせるのはかわいそうだよ。
へいちゅうにおわせるのもかわいそうじゃないか。
しかし、へいちゅうがくだいたんだからな。
おとこはせんじょうにたちうちをするが、
おんなはねくびしかかかないんだ。
ひとごろしのつみはかわるものか。
みょうにへいちゅうのかたをもつな。
どうか、これだけはたしかだろう。
われわれはせけんをくるしませないが、
へいちゅうはせけんをくるしませている。
うーん、それもどうだかわかんないね。
いったいわれわれにんげんは
いかなるいんがかしらないが、
たかいにきずつけあわないではいっこくも
いきてはいられないもんだよ。
ただ、へいちゅうはわれわれよりも
よけいにせけんをくらしませている。
このてんは、ああいうてんさいには
やもうえないうんめいだね。
じょうだんじゃないぜ。
へいちゅうがてんさいといっしょになるなら、
このいけのどじょうもりゅうになるだろう。
うーん、へいちゅうはたしかにてんさいだよ。
24:01
あのおとこのかおにきおつけたまえ。
あのおとこのこえをききたまえ。
あのおとこのふみをよんでみたまえ。
もしきみがおんなだったら
あのおとことひとばんあってみたまえ。
あのおとこはクーカイショウニンだとか、
オノミチカセだとか、
同じように母の体内を離れた時から非凡の能力を授かってきたんだ あれが天才でないといえば天下に天才は一人もいない
その点で我々二人どこときも到底平中の敵じゃないよ しかしだねしかし天才は君の言うように罪ばかり作っていないじゃないか
例えば道風の章を見れば微妙な筆力に動かされるとか 空海上人の図教を聞けば
僕は何も天才は罪ばかり作ると言いはしない 罪も作ると言っているんだ
じゃあ平中とは違うじゃないか あいつの作るのは罪ばかりだぜ
それは我々には分からないはずだ 金もろくに欠けないものには道風の章もつまらないじゃないか
新人気のちっともないものには空海上人の図教よりも苦物の歌の方が面白いかもしれない 天才の苦力が分かるためにはこちらにも相当の資格がいるのさ
それは君の言う通りだかね 平中尊者の苦毒謎は
平中の場合も同じじゃないかああいう高職の天才の苦毒は女だけが知っているはずだ 君はさっきどのくらい女が平中のために泣かされたかと言ったが僕は反対に
こう言いたいねどのくらい女が平中のために無情の緩急を味わったか どのくらい女が平中のためにしみじみ生きがいを感じたか
どのくらい女が平中のために犠牲の尊さを教えられたか どのくらい女が平中のために
いやもうそのくらいでたくさんだよ君のように理屈をつければ カカシも鎧武者になってしまう
君のように嫉妬深いと鎧武者もカカシと思ってしまうぜ 嫉妬深い
これは意外だね 君は平中を責めるほどインポンの女を責めないじゃないか
たとえ口では責めていても腹の底では責めていまい それはお互いに男だからいつか嫉妬が加わるんだ
我々みんな多少にしろもし平中になれるもんなら平中になってみたいという人知れ ない野心を持っている
そのために平中は無本人よりも一層我々に憎まれるんだ 考えてみればかわいそうだよ
じゃあ君も平中になりたいかね 僕か僕はあまりなりたくないだから僕が平中を見るのは君が見るのよりも公平
なんだ 平中は女が一人できるとたちまちその女に飽きてしまう
そして誰か他の女におかしいほど矛盾になってしまう あれは平中の心の中にはいつも不残の侵入のような人類を絶した美人の姿が
彷彿と浮かんでいるからだよ 平中はいつも世間の女にそういう美しさを見ようとしている
実際惚れているときは見ることができたと思っているんだ がもちろん2,3度会えばそういう心機能は壊れてしまう
そのためにあいつは女から女へてんてんと浮き身をやつしに行くんだ しかも末法の世の中にそんな美人のいるはずはないから
結局平中の一生は不幸に終わるより仕方がない その点で君や僕の方が遥かに幸せだというものさ
しかし平中の不幸なのは言わば天才になればこそだね あれは平中一人じゃない空海上人や尾道風もきっとあいつと似ていたろう
27:04
とにかく幸せになるためには五道用凡人が一番だよ 5
マリも美しと嘆く男 平中は一人寂しそうに本院の自由の壺根に近い人気のない廊下に佇んでいる
その廊下の欄に刺した油のような日の色を見てもまた今日は暑さが加わるらしい が日差しの外の空には早々と緑を抜いた松が静かに涼しさを守っている
自重は俺を相手にしない俺ももう自重は思い切った 平中は青白い顔をしたままぼんやりこんなことを思っている
しかしいくら思い切っても自重の姿は幻のように必ず完全に浮かんでくれ 俺はいつかの雨よ以来ただこの姿を忘れたいばかりにどのくらい四方の神仏へ祈願を凝らしたか
わからないがカモの宮城へ行けば三日神の中にありありと自重の顔が映って見える 清水の御寺の内陣に入れば完全を持たずのお姿さえそのまま自重に変わってしまう
もしこの姿がいつまでも俺の心を立ち去らなければ俺はきっと小枯れ死に死んでしまうのに そういない
平中は長い息をついた だがその姿を忘れるにはたった一つしか手段はないそれは何でもあの女の浅ましいところを
見つけることだ 自重もまさか天人ではないし不条もいろいろ増しているだろう
そこを一つ見つけさえすればちょうど女房に化けた狐が尾のあることを知られたように 自重の幻も崩れてしまう俺の命はその刹那にやっと俺のものになるんだ
どこが浅ましいかどこが不条を増しているかそれは誰も教えてくれない 大事大秘の完全お坊さんどうかそこをお示しください
自重は変わらぬ女小敷と実は少しも変わらない証拠 平中はこう考えながらふと物多い視線を上げた
おや あそこへ行きかかったのは自重のツボネの目のわらわではないか
あの利行僧の目のわらわは撫子重ねの薄者の赤目に色の濃い袴を引きながらちょうど こちらへ歩いてくる
それが赤髪のえおうぎの影に何か箱を隠しているのはきっと自重の下 マリを捨てに行くところに沿いない
その姿を一目見ると突然平中の心の内にはある大胆な決心が稲妻のようにひらめき渡った
平中は目の色を変えたなり目のわらわの行く手に立ちふさがった そしてその箱を引ったくるやいなや廊下の向こうに一つ見える人のいない部屋へ飛んでいった
不意を打たれた目のわらわはもちろん泣き声を出しながらバタバタ彼を追いかけてくる がその部屋へ踊り込むと平中は槍戸を立て切るが早いか手早くかけ金を下ろしてしまった
そうだこの中を見れば間違いない 100年の恋も一瞬の間に煙よりも儚く消えてしまう
30:06
平中はわなわな震える手にふわりと箱の上へかけた鉱座部の薄物をあげてみた 箱は意外にも成功を極めたまだ真新しい巻き絵である
この中に自重のマリがある同時に俺の命もある 平中はそこに佇んだままじっと美しい箱を眺めた
壺根の外には忍び忍びに目のわらわの泣き声が続いている がそれはいつの間にか重苦しい沈黙に飲まれてしまうと思うと槍戸や障子もだんだん霧の
ように消え始める いやもう今では昼か夜かそれさえ平中には半然しないただ彼の目の前には
ホトトギスを書いた箱が一つはっきり空中に浮き出している 俺の命の助かるのも自重と一生の別れをするのも皆この箱にかかっている
この箱の蓋を取りさえすれば いやそれは考えもんだぞ自重を忘れてしまうのがいいか
甲斐のない命を流らえるのがいいか俺にはどちらとも返答できない たとい小枯れ死にをするにもせよこの箱の蓋だけは取らずにようこうか
平中はやつれた頬の上に涙の跡を光らせながら今更のように思いまどった しかししばらく賃金した後急に目を輝かせると今度はこう心の中に一生懸命の叫び
声を上げた 平中平中
お前はなんという育児なしだあの甘いを忘れたのか 自重は今もお前の声を嘲笑っているのかもしれないんだぞ
生きろ立派に生きてみせろ自重の周りを見さえすれば必ずお前は勝ち誇れるんだ 平中はほとんどキチガエのようにとうとう箱の蓋を取った
箱には薄い鉱石の水がたっぷり半分ほどに入った中にこれは濃い鉱石のものが2つ 3つ底へ沈んでいると思うと夢のように長寿の匂いが花を打った
これが自重のマリであろうか いや希少天量にしてもこんな周りはするはずがない
平中は前を潜めながら一番上に浮いていた2寸ほどのものをつまみ上げた そしてひげにも触れるくらい何度も匂いを嗅ぎ直してみた
匂いは確かに紛れもないとびきりの陣の匂いである これはどうだこの水もやはり匂うようだが
平中は箱を傾けながらそっと水をすすってみた 水も頂上に返した上積みの汁に沿いない
するとこいつも鉱木かな 平中は今つまみ上げた2寸ほどのものを噛みしめてみた
すると歯にも通るくらい苦味の混じった甘さがある その上彼の口の中にはたちまち橘の花よりも涼しい
微妙な匂いがいっぱいになった 自重はどこから推理をしたか平中の巧みを破るために香り細工のマリを作ったのである
33:05
自重お前は平中を殺したぞ 平中はこう埋めきながらバタリと薪絵の箱を落とした
そしてそこの床の上仏倒しに倒れてしまった その藩主の瞳の中には島根の煙光に取り巻かれたまま
点々と彼に微笑みかけた自重の姿を浮かべながら 大正10年9月
1968年発行 筑波書房 現代日本文学体系43
芥川龍之介集より独りを読み終わりです
なんだこの話
なんじゃいこの話 一番後半マリと出てきたと思いますがこの周りはですね漢字で
クソと書いてクソにマリというルビーが振ってあるんですよ だから
すごい老男が 全く振り向いてくれない女に
恋焦がれて あーでもあの女の子の
うんちを見れば 100年の恋も覚めるだろう
そうだそうだっていう話でしたね なんじゃこれ
はいこんな話でした
はぁ 難しかった
もう普通の普通の漢字も普通の読み方しないから難しかった 目の笑わとかね言いづらいしね
持たげてとか漢字難しいよねー はいはいはい
なんかすごい難しかったこれこれ読みとこれこんなに短いのに4日ぐらいかかったな まあストックがあるからっていうのもあるんですけど
もう配信の予約してあるから時間の予約あるからゆっくり読んでもいいようで 少しに質をかけたのもあるんですけど
大変でしたこれ 話は変わって
最近近所の 居酒屋で起こったことなんですけどまあよく一緒に飲んでくれるご夫婦がいらっしゃるんですが
今絶賛夫婦喧嘩中で
はい 落語家さんの枕みたいに言えば
夫婦喧嘩犬を食わねーなんてこと言いますがみたいな感じですけど 僕も
なるべく関わりたくないなと思ってるんですけどもう旦那が参っちゃってるんでね まあ悪いことしたの旦那の方なんですけど
もう何しても怒られるだろうけど何もしねーのが一番愚かだからあんたの手紙でも書いて 手書きの手紙で謝りなさいつってね
ヴィンセントペンと封筒買ってきてはいこれ今から書いてっつって 書かせて
なおかありがとうなよなおかありがとうつって帰ってきましたけどどうなったでしょうか それでも許してもらえないと思いますけどね
36:08
信頼を失うのは一瞬で取り返すにはね 長い蓄積長い時間をかけて信頼を取り戻していく必要があるでしょうし
一度裏切った事実は消えないですからね その同じ人と一緒にやっていく以上は
もうずっとそのカルマを背負っていくしかないですよね
50代も中盤で何やってるんだって感じですけどねあの夫婦 夫婦ってか旦那の方が悪いんだよね
ママの方は一切罪がないからな ママと話し合う時もママはずっともう離婚のことをずっと考えてますからね
どうやったら離婚がうまくいくかとか 財産分野の話とか
あー結構結構クールだな 冷酷に離婚について考えているっていう感じでしたけど
そのこれはもっともっと前に聞かされた話ですけどね
要は10年離婚前夜みたいなところに僕今立ち会ってるんですけど どうなっていくんでしょうか
皆様のところはご夫婦うまくやってらっしゃいますか
僕のリスナー層は 結構年上の方が多いので
あの 人口分布のパイとしては
60歳以上のね 人口が一番多いんですよ
どこで見るんだっけオーディエンスそうですね60歳以上の方が 僕のリスナーと45.8%を占めてますからもう半分近くは60歳以上の方々が聞いて
らっしゃいます その中で
女性が 6割男性が4割
どうですか女性の皆さん旦那さんとうまくいってますか ご不満抱えてないですか
それから45歳から59歳までが全体のうち3割 ここも6割4割の
女性男性比率ですね女性が多いですよ僕のチャンネルはね 旦那さんへのご不満あるでしょうね僕よく聞いてるんですよ酒場で
えっ
だから女性の気持ちがそのなんていうかわかるようになってきました そのいろいろ話を聞かせてもらっているから
そっかそういうふうに心の動きが働くんだなっていう 多少変わっている人がねこういるにしてもなるほどなるほどっていう
すべて女性がそうではないにしてもこういう心の作用があるんだなぁみたいなのが少し 分かってきた気がしています
お話を聞かせてもらってたのは 何て言うですかえっと
39:04
恋とか青春とかまぁそんなものはもう若い時に1回置いておいてその 遠熟した状態での女性の
心の作用っていうんですかね そっかそっか
何を話しているのやよくわかりませんが昨日そのおじさんに買ってあげたビンセント ペンを
持って帰ってきたので 誰かに手紙でも書こうかな
そんな予定もないけどはいよし 終わりにするか
無事寝落ちできた方も最後までお付き合い頂けた方も大変にお疲れ様でした といったところで今日のところはこの辺でまた次回お会いしましょう
おやすみなさい
39:54

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