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一年生たちとひよめ、新美南吉。
学校へ行く途中に、大きな池がありました。
一年生たちが、朝そこを通りかかりました。
池の中には、ひよめが五、六羽、黒く浮かんでおりました。
それを見ると、一年生たちは、いつものように声をそろえて、
ひよめ、ひよめ、だんごやるにくぐれ、と歌いました。
すると、ひよめは、頭からぷくりと水の中に潜りました。
だんごがもらえるのを喜んでいるように見えました。
けれど、一年生たちは、ひよめにだんごをやりませんでした。
学校へ行くのに、だんごなど持っている子はありません。
一年生たちは、それから学校に来ました。
学校では、先生が教えました。
みなさん、嘘をついてはなりません。
嘘をつくのは、大変悪いことです。
昔の人は、嘘をつくと、死んでから赤鬼に、下ベロを釘抜きで引っこ抜かれるといったものです。
嘘をついてはなりません。
さあ、わかった人は手をあげて、みんなが手をあげました。
みんな、よくわかったからであります。
さて、学校が終わると、一年生たちはまた、池のふちを通りかかったのでありました。
ひよめは、やはりおりました。
一年生たちの帰りを待っていたかのように、水の上から、こちらを見ていました。
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ひよめ、ひよめ。
と、一年生たちは言いました。
ひよめ、ひよめ。
先生たちはいつもの癖で歌い始めました。
は、語彙にしたけりぬ男。
しかし、その後を続けて歌うものは、ありませんでした。
だんごやるに、くぐれと歌ったら、それは嘘をいったことになります。
嘘をいってはならない、と、きょう学校で教わったばかりではありませんか?
さて、どうしたものでしょうか。
どうしたものでしょう
このまま行ってしまうのも残念です
そしたらひよめの方でも
寂しいと思うに違いありません
そこでみんなはこう歌いました
ひよめひよめ
団子やらないけれど
くぐれ
するとひよめは
やはり威勢よく
くるりと水をくぐったのであります
これでわかりました
ひよめは今まで
団子が欲しいから
くぐったのではありません
一年生たちに呼びかけられるのが
うれしいから
くぐったのであります
