00:04
こんじゃく物語 大江匡衡が歌をよむ話
和田万吉 昔、式部の太夫大江匡衡という人がありました。
まだ大学の学生であった時のことであります。
この人は優れた才子でありましたが、なりかっこうが少し変で、
背は高く、肩が突き出て、見苦しかったので、人々が笑っていました。
ある時、宮中の女官たちが、この正平を長老しようとたくんで、
和言 を差し出して、
あなたは何でも知っておいでなされる。
という事であるから、これをお引きになるでしょう。
一つ引いて聞かせてください。
と言いました。
正平はそれには返事をしないで、
大阪の関のあなたもまだ見ねば、
東のことも知られざりけり。
という歌を読みました。
女官たちは、その変化ができなかったので、
笑って嫌がらせることもならず、
黙って一人立ち、二人立ちして、
皆、奥へ逃げてしまいました。
この正平は漢文や詩の方は至極の名人であったが、
その上に、歌もこの通り、
上手く読んだと語り伝えたそうです。