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2024-07-29 04:25

私の祖父/土田耕平

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作品名:私の祖父
著者:土田耕平

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#青空文庫 #朗読 #児童文学
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私の祖父、土田耕平。
私は幼い頃のお父さん、お母さん、おばあさんの思い出は、はっきりしております中に、
おじいさんという人を少しも知りません。
おじいさんとは言っても、まだ四十二で亡くなったのですから、私の生まれるずっと先のことです。
このおじいさんは体操偉い人だったと、私の子供の自分、誰彼に言い聞かされました。
なぜ偉いのかと聞きますと、体操学問ができたから、という返事をしてくれました。
学問ができたから偉い、というのでは私は満足することができませんでした。
少し大きくなってから、私はこんなことを聞かされました。
おじいさんはどんな時にも、手から本を話したことがなかった。
外へ出る時にも、きっと本を懐へ入れていた。
本を読まない時には、何かじっと考え込んでいた。
考え考え道を歩いているうちに、一里も歩いてしまって、気がついてみたら、とんでもないところへ来ていた。
こんな話を聞かされた時は、おじいさんって変な人だなと思いました。
そういうのが偉いのかな、などとも考えました。
もう少し大きくなってから、私はまたある人からこんな話を聞かされました。
おじいさんはある時、文字の話をした時、
わしは嘘字なら知らぬ。本当の字で知らぬ字は一字もない。
と言ったそうです。
この話は私を感心させませんでした。
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生意気なおじいさんだなぁ、と思いました。
けれど、おじいさんはまだ若くて死んだのだから、たまには自慢も言ってみたのだろう、
と後、大人になってからは考えるようになりました。
私が幼かった頃、2階の間には散りづいた岩石が山のように積んであったことを覚えています。
それがおじいさんの読んだ本の十分の一にも足らない、というのには驚きました。
おじいさんが亡くなってから間もなく、私の家は落ちぶれてしまいました。
おじいさんが心を込めて読んだ本も、
大方、市町や壁などに貼られてしまったのだそうです。
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