そうですね、アメリカでは2月にスーパーボールが行われて、例年通り試合の合間のテレビコマーシャルにも大きく注目されました。
このスーパーボールというのは、最後に残された企業の、特にマーケティングだったりとか広告の最後の取り出みたいな立ち位置になりつつあるんですね。
というのも、昔はいろんなタイミングで年間祝日だったりとか理由を作って、民間の人たちに何らかのメッセージを打ち出して、
そしてその企業をアピールするとか、サービスを紹介するとか、商品を織り込むっていうのが、例えばクリスマスだったりとか新年だったりとか、母の日、父の日、バレンタインズデーみたいな感じで、そういうタイミングがたくさんあったんですね。
それもそれで今も残ってはいるんですけども、そういう話題とかって、どんどんどんどんオンラインに移ってしまって、いわゆるマスメディア、
ちょっと変形のないように言うと古いメディアにはなりつつはあるんですけども、その何万人何百万人というマスの人たちが見るような機会っていうのが、もうすごく減ってしまったんですね。
そうですよね。
アメリカだけではなくて、例えばサッカーのワールドカップ来年にやりますけど、そういうものだったりとか、去年フランスであったオリンピックっていうのも、毎回だんだん話題が減ってきてしまって、
オリンピックはテレビで見る人も日本だとは多いとは思うんですけども、なかなかそれをこうまとめて同じタイミングで見るっていうのもだいぶしなくなって、それを唯一同じタイミングで何百万人もの人が見るっていう唯一の機会がアメリカのこの1月2月にあるスーパーボールだと思うんですね。
なるほど。
今日は僕が注目したスーパーボールのコマーシャルを紹介しながら、発泡美人にならないブランドメッセージの重要性についてお届けします。
では早速いきましょう。
So, let's get started.
例年スーパーボールのCMはもう本当に豪華で時代を象徴している作品が多いというふうに言われていますが、今年レイさんが一番気になったのはどのコマーシャルですか?
今年ですね、僕が一番気に入った作品、結構これダントツでいいなと思ったものなんですけども、ナイキのSoWinというコマーシャルなんですね。
これは日本語に直訳すると勝てばいいじゃんっていう言葉なんですけども、ナイキはですね、実はスーパーボールにコマーシャルを出すっていうのはまず滅多にやってこなかった企業なんですよ。
あ、そうなんだ。なんかすごい意外ですね。
なんかね、ナイキといえばブランディングとかナイキといえばコマーシャルみたいなイメージを持たれている方も少なくないと思うんですが、実はですね、スーパーボールでコマーシャルをナイキが打ったのは前回は27年ぐらい前だったらしいんですね。
えーそうなんだ。
そうなんですよ、1997年か98年ぐらい。
だから全くこの晴れ舞台でナイキだったら出すみたいなイメージがあるかもしれないんですけど、今までほとんどやってこなかったんですよ。
へー、なんかスポーツの祭典だからナイキは絶対出してそうっていうふうに思っちゃいますけどね。
まさしくそういうイメージがあるんですけど、これは最近のエピソードでも取り上げたナイキがここ1、2年調子が良くないというのも背景にあると思うんですけども、やっぱりちょっとナイキのイメージを取り戻さないといけないという危機感がナイキの中にはあるんですね。
で、スーパーボールでコマーシャルを打てばそれが良くなるのかっていうわけでもないんですが、でもやっぱりこれ冒頭にもお伝えしたみたいに唯一1年間の中で同じタイミングで同時に何百万人、アメリカの場合だと1億5000万人ぐらいの人が一気にこの数時間テレビの前で見るっていうタイミング、唯一これしかない。
で、そこに半分かけではないですけども、コマーシャルを打つ。で、あれも作るのも安くないし、作ってからもちゃんとメディアフィーっていうのを払わなきゃいけないんですけども、あれはですね、8ミリオンなので12億円ぐらいですかね。
あ、放送券を買うだけで。
そう、そのメディアフィーというのが1本8ミリオン、12億円なんですよ。
おお、すごい金額ですね。
だから相当やっぱりその企業としての財力がないとなかなか打てない規模ではあるんですけども、ナイキのような大企業でもそれは安くないお金なので、それを使おうという覚悟を決めた背景にはやっぱり最近ちょっと危機感を感じて何とかしてイメージを取り戻さなきゃいけないっていうのがまず大きな理由としてあります。
でですね、今回これ僕がすごく良かったなと思った理由いくつかあるんですけども、このエピソードのタイトルの発泡美人にはならないブランドメッセージの重要性っていうところに直結するんですが、メッセージがすごくはっきりしてるんですね。
まとめて言うと女性のエンパワーメントなんですけども、もうちょっと詳しく話すと、このタイトル勝てばいいじゃん、So Whenということなんですが、そこに出てくる人たちは全て女性のスーパーアスリートの人なんですね。
陸上選手だったりとかバスケットボール選手だったりとかサッカー選手、テニス選手、それから体操選手といろんなスポーツで世界的に活躍している女性の選手の人たちがたくさんフィーチャーされてるんですけども、その人たちはこんだけ素晴らしいパフォーマンスを見せているのに何らかの形で常に文句があったりとか批判が出てくると。
だから何をやってもなかなか勝てる状況には世の中がなってないっていうのがナイキが社会に対して表しているメッセージなんですね。
なんだけども、そんな文句を気にせずに、そしてそんな文句を言われずに、もう勝てばそれが説得になるんだから勝てばいいじゃん。
You can't win, so win っていう、勝てないんだから、何やっても勝てないんだから、ただ勝てばいいっていう、そういうすごくシンプルでなおかつ本質的なメッセージを世の中に映し出しているという。
僕は個人的に男性の目線からなんですけども、すごくいいなと思ったんですね。
周りの女性の人たちに聞いてもすごく良かったっていう人が大半ではあるんですが、結構興味深いなと思ったのが、もちろんはっきりとした目線、そしてはっきりとした意見、視点で物事を語っているので、それに対して全ての人が賛同するかっていうと、そうでもないわけじゃないですか。
でですね、ここ最近のこのことをオンラインで見てたりとか、あとオンラインで僕もちょっと投稿してみて反応が来てみて、それを見てみると、もちろんこれがすごく良かったっていう女性の人もすごく多くいるんですけども、その中には、いや、こんなエンパワーメントのメッセージってもうNikeからもたくさん聞いてるし、いろんな企業がいっぱいいってるからもう疲れたと。
で、こんなそのエンパワーメントのメッセージを我々女性に対して振りかけるのじゃなくて、もっと本質的に女性のためになることをやってほしいみたいな意見の人たちもパラパラとですけども出てきて、あ、確かにそういう目線もあるなっていうのはすごく感じて、その今の社会を反映したりとか、その社会に対しての自分の視点っていうのをちゃんとしっかり持っていることの大切さ、重要性。
ただそうなると、それに全ての人は賛同はしてこないんですけども、でも少なくともその企業、そしてブランドとしてのスタンスははっきりするわけじゃないですか。
それは重要なんだなっていうことを改めて気づかされましたし、あとテレビコマーシャルという30秒だったりとか60秒という、もうこうある意味枠にはまったここ何十年、3、40年ずっと使われてきた方程式をまたナイキがそれを使ってるわけなんですけども、ある意味その古い、いい意味でのナイキのやり方に立ち戻って、
ちゃんとしたメッセージを込めた表現で、プラスその企業のブランディングアピールにもなるっていうことがすごくうまくまとまっていた。僕はこれ素晴らしいなと思いました。
やっぱり女性は社会の中で頑張っても頑張っても足を引っ張られて、なんか頑張っても頑張っても文句言われて、もうじゃあ勝てばいいじゃんっていうのってスポーツだけじゃなくて社会の中でもいっぱいあると思うので、このナイキのCMの表現って本当によくできているなっていうふうに思いました。
ちょっとこれ裏側の話をすると、実はこれを監督している人も女性で、2年前に大ヒットした、特にアメリカで大ヒットしたバービーの映画の監督なんですね。
だからそれこそ20年前とか25年前のナイキのコマーシャルの作り方って正直男性目線で男性が作ったものがほとんどだったんですけども、そういうところもちゃんと見えないところでもエンパワーしてるっていうのは大切だなと思います。