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2024-01-30 23:57

#063 鬼才デザイナーが語る「芸術活動としてのデザインとは?」

第63回は、オーストリア出身で、ニューヨークを拠点に活動するグラフィックデザイナーのStefan Sagmeisterさんがゲストで登場。Stefanさんはルー・リードやローリング・ストーンズなどのアルバムジャケットのデザインで有名で、グラミー賞を2回受賞したほか、グラフィックデザインで国際的な賞を数多く受賞し、近年では、世界各地で個展を開催しています。今回は、そんな多彩な才能を発揮するStefanさんに、デザインにおける美の重要性、アートとデザインの違いなど、幅広くお話を伺いました。


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ナレーター:佐藤一司

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サマリー

今回の話では、オーストリア出身でニューヨークを拠点に活動しているグラフィックデザイナーのステファン・サグマイスターさんがゲストとして登場します。彼の個展「Now is Better」では、長期的な視点を反映したデザイン作品が展示され、美とデザインの関係についても話されています。議論の内容としては、政治や民主主義について話し合われ、またデザインとアートの違いについての考えも語られています。

ステファン・サグマイスターの活動と個展
This is Reina Moro's Podcast. 世界のクリエイティブ思考
Hi, everyone. This is Reina Moro. 皆さん、こんにちは。ニューヨークと東京を拠点にするグローバルイノベーションファーム、I&CO、共同創業パートナーのReina Moroです。
この番組では、世界で活躍するトップランナーのクリエイティブ思考に迫り、21世紀を生き抜くヒントを探ります。
今回のゲストは、オーストリア出身でニューヨークを拠点に活動するグラフィックデザイナーのステファン・サグマイスターさんです。
ステファンさんは、ルーリードやローリングストーンズなどのアルバムジャケットのデザインでグラミー賞を2回受賞したほか、グラフィックデザインで国際的な賞を数多く受賞しています。
ステファンさんはですね、僕がニューヨークに来た20年以上前の時、まだ20代前半だったんですが、もうすごく活躍をしているデザイナーだったんですね。
彼がデザインをしたポスターがすごく尖っていて印象に残っていたりとか、そんな憧れの存在でした。
僕が30代になってようやく会うことができて、それからも何回かやり取りをしてお付き合いをしていただいているんですが、
もうインスタグラムでも50万人以上のフォロワーがいる世界的スーパースターのグラフィックデザイナー。
あのTEDでもスピーチを何回もやっていて、何百万人という方が見ていて、もう多分デザイン業界だったら名前を知らない人がいないというそんな感じのスーパースターです。
つい最近日本でも銀座グラフィックギャラリーというところで個展を開かれていて、僕もちょうどその時にたまたま東京に出張があって触れることができたんですが、
今活動はですね、どちらかというとそのデザインというよりかはアートの活動をされていて、今回の話は哲学的ではあるんですが、とても分かりやすい内容になっているかなと思います。
今回はそんなステファンさんに、芸術活動としてのデザインとは、についてお話を伺いました。
超長期的な視点のデザイン作品
ステファンさんが去年20年ぶりに東京で開催した個展、Now is Betterについて教えてください。
今回のNow is Betterは、超長期的な視点がテーマです。
毎日ニュースを見ていると、戦争や気候変動など、次から次へと問題が起きているように見えるかもしれません。
ただ視点を変えて、人類の歩みを50年、100年、200年といった超長期的なスパンで振り返ってみると、私たちの生活は明らかに良くなっています。
飢餓で亡くなる人や、戦争や自然災害で命を落とす人の数は減っていますし、平均寿命は確実に伸びています。
他にも世界を見渡してみると、民主主義の国は100年前にはたった18カ国だったのに、今や80カ国以上に増えています。
そして、死期自立だって200年前とは比べ物にならないほど上がっているんです。
インターネットやSNSの出現によって、ニュースのサイクルはどんどん短くなりました。
そのため、私たちは短期間に起きていることだけを見て悲観的な気持ちになりがちですが、果たしてその見方が正しいのでしょうか。
私はデータの裏付けをもとに、200年前と比べて私たちの生活が良くなっていることを伝えるのは、とても意義のあることだと感じています。
Now is Betterでは、200年前に描かれた油絵の上にデータを図形で表現しました。
そしてニューヨークで個展を開いたら、絵が完売するほど好評だったので、日本、韓国、中国、南米でも個展をすることになったんです。
東京で開かれた個展には、僕も伺ったんですが、絵画の他にも洋服、眼鏡、時計など様々な作品が展示されていました。
超長期的な視点はすべての作品に反映されているんですか?
そうです。すべての作品に超長期的な視点を反映しています。作品というのは長く残っていくものですから、最終的には同じ方向に向かっていると考えています。
ステファンさんが東京の銀座グラフィックギャラリーでされていた個展なんですけど、このNow is Betterという今が一番というタイトルの個展で、5年10年とか20年ぐらいのスパンで人塾を見ると、最近どんどん悪くなっちゃってるよねっていう感じはするんですが、
100年200年という目で見ると、統計的に見ると、実は世の中、そして人類の状況っていうのは良くなってるっていうのが、この個展の裏側にあるメッセージなんですね。
彼が会話の中で言ってた絵っていうのもあるんですが、それ以外には、彼はサグマイスター123というファッションラインを数年前から始めていて、それも同じようなメッセージが裏側にあって、主にシャツなんですが、それが10個20個ぐらい飾れていて、そういうものだったりとか、
あとオブジェではあるんですけども、実際に使えるコップとかグラスとか、そういうものも飾られていたんですね。
彼の目的の一つに、ただクライアントワークとしてすると、クライアントのビジネスに対して売り上げに貢献しなきゃいけないとか、そういう目的が出てきてしまうんですが、個人に提供するもの、アートだったりとかファッションは個人が買って個人が着る、
そのメッセージに共感してもらって、買ってもらって、それを着ることによって、またそれが感性的なメッセージになるっていうことだったりとか、あとそのコップとかグラスもキッチンに置いていること、そして毎日使うことによって、
このグラスはこういうメッセージがあったんだな、みたいなことを、少しどっか頭の後ろ側でチャッと思うぐらいでもいいと思うんですけども、そういうふうにずっと意識してもらいたいっていうところが、今回の話の中で伝わってきて、なるほどねっていうふうに感傷期でよくわかりました。
美とデザインの関係について
ステファンさんは長年、ポスターやアルバムのデザインなど、デザイナーとして大活躍されてきましたが、アートとデザインの違いについてどのように考えていますか?
Now is Betterでは絵画を販売しているので、アートのように見えるかもしれませんが、歴史における人類の発展というとても大きなテーマを掲げたデザインの展覧会です。
私がやっているのはあくまでコミュニケーションデザインで、それを商業的ではない領域に広げていっているだけなんです。それにデザイナーという職業も気に入っているので、いきなりアーティストだと名乗る理由もありません。
私はオーストリア出身ですが、歴史を振り返ってみますと、クリムトにしてもエゴンシーレにしても、絵画を描くと同時にその展覧会のポスターも自分たちでデザインしていたんです。有名な画家たちはアート、デザインを分けて考えていなかったなと思います。
私は商業的なデザインの仕事はもう十分やってきたので、今は基本的にはそういう依頼は受けていません。ただ、クライアントから長期的な視野を取り入れた仕事を頼まれたときは引き受けます。
これまでにNow Is Betterの視点で、自転車用の道路や病院の廊下などをデザインしました。
ステファンさんはローファンクショニングデザイン、つまり機能性の低いデザイン、低機能デザインに専念したいと以前からお話されています。この低機能デザインというのは何を意味しているんですか?
人類はどういうわけか、機能性が高いデザインよりもローファンクショニングデザイン、低機能なデザインのものを高く評価する傾向があります。
例えば建築の例で言うと、工場は教会に比べて様々な設備があって機能性がとても高い反面、デザインという意味ではあまり評価されません。同じように納税用の書類と音楽雑誌を比べると、納税用の書類の方が機能的にははるかに重要ですが、そのデザインを音楽雑誌ほどかっこいいと思う人はいないと思います。
人間は忙しすぎるせいで目的がないことをすることに幸せを感じたり、低機能なデザインのものを見て喜ぶのかもしれません。だから私も低機能なデザインに専念したいと思っているんです。
ステファンさんは以前、自分がデザイナーになったばかりの頃はアイディアが重要だと思っていたけれど、今は美しさが重要だと考えが変わった。このようにお話をされていました。なぜ美という概念をより重要視するようになったんですか?
私の世代の若手デザイナーの間では、アイデアがすべてで、最終的な作品の形はそのアイデアをサポートする程度のものだ、このように考えられていました。
特にモダニズムでは機能美のような機能性に寄り添ったデザインが良いとされていて、装飾を優先したあまり機能性のないものはダメだとされていたんです。ただ、モダニズムの中でも20世紀初期のシカゴの建築家、ルイス・サリバンは建物にたくさんの装飾を施しています。彼は機能性と同じくらい装飾による美しさが重要だと気づいていたんです。
私も経験を重ねるにつれ、機能美という概念に違和感を持つようになって、作品の形や美しさが重要だと考えるようになりました。機能にだけ集中するのはとても簡単ですが、それはデザイナーを怠惰にします。美しさに配慮せず、問題さえ解決すればいいなんて簡単すぎます。
それに引き換え、21世紀に美しくて理にかなった形の椅子を作りたいと思ったら、これは信じられないくらい大変です。4000年の間に椅子をデザインしてきた人全員に勝負を挑むようなものだからです。ただ、たとえそれがどれだけ難しくても、作品の形や美しさを追求することは、デザインにおいてとても重要だと思います。
ここまでお送りしてきました、レイナモトの世界のクリエイティブ思考。今回は、グラフィックデザイナーのステファン・サグマリサさんに、芸術活動としてのデザインとはいついてお話を伺いました。
彼はある意味、デザイナーとしてすごく哲学的な物事の見方をしていて、デザインの悟りを開いたお坊さんのような存在になっているんだなということを話を通じて感じました。
質問に対してすごく丁寧に答えてくれて、それも使う言葉も全然難しくない言葉を使って、それこそ小学生でもわかるぐらいのレベルの英語で、すごく丁寧に話してくれるんですね。
だから、全然その高見者というか、上から目線ということが全くなくて、世界的な有名な人なんですが、同じ目線で話してくれて、すごく学びが深かったですね。
ということで、今回の会話の中の3つのキーデーカウェイ。
1つ目は、英語なんですが、Now is better。
日本語でもこれは、彼の古典でNow is betterという風にカタカナで訳されていたんですが、今が1番。
2番目は、Design has to work. Art doesn't. デザインは働かなければならない。アートは自由。
そして、3つ目は、英語で言うとThere is no such thing as no functionality. 機能がないものなどはない。
まず1つ目のこの今が1番、Now is betterということなんですが、100年、200年というスパンで人類を見ていると、確実に世の中が良くなってきていると。
民主主義の進歩
今回の彼との会話の中で、彼は政治の話をしていて、民主主義のことを見ていても、100年前はほんの10とか20か国ぐらい以下の国が民主主義だったのは、今では80、90か国ぐらいが民主主義になっていて、
いわゆる独裁者みたいなのが、戦争が部分的には起きてはいて、苦しいところもあるんですが、全体的に見ると、そういうことも含めて良い方向に向かっているので、
今、この時代が人類歴史上1番良い時なんだ。
そして長いスパンで物事を見ていくと、世界は良い方向に向かっていくんだよっていう、ポジティブな目線で世界を見ていくのが大事なんだなっていうのを、今回の話で気づかされました。
それが1つ目。
2つ目はDesign has to work or it doesn't. デザインは働かなければならない。
アートは自由だ。
これは彼の言葉ではなくて、アメリカの現代美術家のドナルド・ジャットという人が、20世紀の彫刻家なんですが、ミニマルアートを作っていた人で、
ただの木でできた箱とか鉄でできた、本当にシンプルな形のオブジェみたいなアートを作っていたアーティストなんですけども、
その彼の言葉を引用して、このデザインとアートの定義の違いについて彼が共有してくれたんですが、
デザインは何か目的、役割があってそれを果たさなきゃいけない。
アートっていうのは別に目的があることが意味じゃなくて、目的がないこと、本当にピュアにそこにあるだけっていうのが意義があるんだみたいな、
ただそれは彼がそう信じているかっていうことでもなくて、
そういう定義がある、そのアートとデザインの違いの定義があるっていうことを共有してくれました。
それに基づいて、ここが3つ目のテイカウェイ、キーテーカウェイNo.3になるんですが、
これも別の人の言葉を引用されていて、ドイツのある哲学者のエッセイからこの言葉を言ってらっしゃったんですが、
機能がないものなどはないっていうこともおっしゃっていたんですね。
ステファン・サグマイスターさんが書かれたご自分の文章でも、
自分のこれからの人生の仕事を機能性が低いデザインを作ることにフォーカスしたいっていうふうにおっしゃっていたんですね。
これってどういう意味なんですかっていうふうに対談の中で聞いたときに、
この言葉、機能がないものなどはないっていうふうにおっしゃってくれました。
これどういうことかというと、ちょっとこれもすごく哲学的な話にはなるんですが、
例えば、我々が使うものっていうことを考えると、機能性がすごく高いものもあれば、機能性がすごく低いものもある。
そしてそれは物理的なものだけじゃなくて、例えば我々が行う行動とかに関しても、機能性が高い行動と機能性が低い行動があります。
例えで言うと、通勤。これは毎日自分の家から仕事場に行くというはっきりとした機能があるから機能性が高い行動。
逆に週末、公園を散歩する。別にポイントAからポイントBどこかに行きたいとかっていうことではなくて、
散歩をするという目的で、別にその機能性が特にあるわけでもないことだから機能性が低い。
そういう定義のされ方を知ったんですね。
でも全く機能性がないっていうわけでもないですし、機能性が確かに低いんだが、
でも別に意義がないってことでもないわけですよね。
それって逆にとても意義があることで、役割として機能としては低いかもしれないんだけども、
自分の人生の中で精神的にも満たされるような行動をする、とても意味のあることっていうふうにも捉えることができるので、
彼の中ではそのアートは機能がない、目的がない、そしてデザインが目的があるっていう、
そういうはっきりした分け方はしてなかったっていうのはすごく印象的でした。
今までの仕事、僕20年とか25年ぐらい彼のことを見ているんですが、
25年ぐらい前まではポスターとかアルバムジャケットとか本の装飾とか結構機能があることをやっていて、
クライアントがいて、そのクライアントからもらったお題を解決してきた。
今ここ10年近くの作品を見ていると、本当作品でアートのようなものを、古典を開いたりとかそういうことをやっていらっしゃいます。
なので質問で、ステファンさんは今ご自分のことをアーティストというふうに捉えてるんですか?っていうふうに聞いたら、
いや、僕はデザイナーですっていうふうに即答できたんですね。
それは僕はすごく意外で、本当に自分の好きなことだけ、そして自分の作りたいものだけを作っているので、
ご自分のことをアーティストだと見られているのかなというちょっと戦慄感があったんですが、
彼のそのロジックを聞いてみると、人類がこう良くなっていってるっていうのも、
ただの持論ではなくて、統計的に数字を見て長い目で見ると確実に良くなっているっていうすごく客観的で、
データを見て、それから考え方を固めて、じゃあそれをどう表現するかっていう、
すごくデザイナーがやるようなプロセスを彼はしてるんですね。
そして今作っているものもアートという、いわゆるその機能性が低いものを作っていらっしゃるように見えるんですが、
彼の中で目的はすごくはっきりしていて、
例えばそのアートっていうものもあえてデジタル上で作るのではなくて、
物理的にそれもこう長く残っていくようなものを、絵を一つとっても油絵、
もう本当古いテクニックで描かれた油絵をとって、そこにご自分の手を加えて、
そしてそれを買ってもらって、この彼のメッセージの一つであるnow is better、
長い目で見ると人類は良くなっていくんだよっていうことを買った人に分かってもらって、
それをその人の、買ってもらった人のリビングに飾ってもらい、毎日のメッセージにしてもらうっていう、
そういうすごく機能的なロンリー的な考え方を持たれて、
今本当デザイナーらしい考え方でそういう形を作っているんだなっていうのがすごく必死必死と伝わってきました。
なのでこの今日のこの3つのテイカーウェイ、
今が一番、デザインは働ければいけない、
アートは自由、そして機能がないものなどはないっていうのはすごくはっきりとした論に基づいていて、
彼も今アートというものをメインにやられてはいるんですが、
ちゃんとやる意義を自分ですごく本質的なところを持っていて、目的も明確にされて活動されているっていうのがすごく印象的で、
それこそこの冒頭に言った悟りを開いたデザイン業界のお坊さんから学んだことは、
僕にとってもすごく深くためになったエピソードです。
ここまでお送りしてきました、レイナモトの世界のクリエイティブ思考。
今回はステファン・サグマイタさんに、
芸術活動としてのデザインとはについてお話を伺いました。
もしこの番組を気に入っていただけましたら、
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次回も引き続き、ステファン・サグマイタさんとモチベーションの保ち方についてお届けします。
次回もどうぞお楽しみに。
世界のクリエイティブ思考、お相手はレイナモトでした。
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