2025/11/18
サマリー
初雪が予想される中、クマは冬眠に入れず行動を続けています。その背景には、餌の不足や地域社会の変化が影響していると言われています。
初雪とクマの行動
おはようございます。 花火鑑賞士、気象予報士の鶴岡慶子です。
この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。 今日は上空1500メートル付近にマイナス6度からマイナス9度の強い寒気が流れ込むということで、どうやら雪になりそうなんです。
山沿いだけじゃなくて、平地でも一時的に雪になる見通しで、これ雪というか、水漏れが観測されれば、もう初雪ということになるんですが、予想によりますと、平野部でも多いところで7センチの雪と言っていたので、初雪と同時に積雪となる可能性があります。
こういう情報を目にすると、いや、そろそろクマも冬眠してほしいなって思うんですが、去年もそうでしたけどね、実際はなかなか冬眠に入れないクマが各地で増えているようです。
実際にまだまだ目撃情報は多いですし、昨日のニュースで言い訳だったと思うんですけど、柿の木の上にクマ2頭が登っていて、座っていて、それがミンカがいっぱいあるので、緊急領受ができないと。
さらにその木の持ち主に連絡がつかないので、木も切れないと。そういうニュースだったんです。おそらく空き家なんでしょうね。
自治体が、実なる木は収穫してクマを寄せ付けないようにと呼びかけたとしても、空き家であれば対応のしようがないという、こういうケースが多いんだと思うんです。
その柿が毎年クマにとって最後の餌場になってしまっているということですね。
クマは秋の間にどんぐりとかブナの実を食べて、脂肪をためて、気温がぐっと下がった時期に巣穴へこもって冬眠に入るんです。
本来であれば。でも今年のように山の実が少ない上に、里に食べ物がこうやって残っていますと、
クマはまだ冬眠に入れない。もう少し食べたいということで、里での行動範囲をもっともっと広げてしまうんです。
冬眠のメカニズムを少し深掘りしていきますと、冬眠というのは、冬の間、体のスイッチを思いっきり省エネモードに切り替える生き方です。
体温をぐっと下げて、心臓の鼓動も呼吸もゆっくりにして、ほとんど動かない状態になります。
例えば、リスやヤマネやコウモリなどの小さな哺乳類は、体温を5度から10度ぐらいまで下げるそうです。
そうやって本格的な冬眠をします。ほぼ気絶に近いお昼寝のような状態で、たまに目を覚ます程度だそうです。
一方でクマはどうでしょうか。クマの冬眠は、リスやヤマネのような深い冬眠とは少し違っていて、完全な冬眠ではないようです。
冬ゴモリや浅い冬眠とも呼ばれている状態で、体温は人間と同じくらいを保ったままです。
冬眠で変わるのは心拍数や呼吸数です。この回数を減らして、飲まず食わずで 巣穴の中で過ごします。
そういう状態でも生きられるように、体の代謝が特別な省エネモードに切り替わるんです。
ですがその代わり、冬ゴモリに入る前の秋には、たんまり食べたいわけですよね。とにかく脂肪を溜めなきゃいけない。
これが冬眠のスタートラインになるわけです。ところが今年は、どんぐりとかブナの実が大凶作だったということで、
山にクマの大好物がほとんど実りませんでした。太りきれないまま冬を迎えてしまっているので、本来は寒気が入ってきて山が静かになってくると、
クマは山奥の巣穴に行って、冬ゴモリに入るはずなんですけど、山に餌がない上に、ちょっと里に目を向けてみると、柿の実がそこにあるわけですから、
それはもうそこに命がけで行くしかないっていうことになりますよね。そうやって里に姿を見せてしまうという状況のようです。
地域とクマの関係
冬眠っていうのは、寒さだけで決まるものじゃなくて、十分な餌が食べられたかどうかが実は大きく関わっていて、
冬を越す準備が整っていれば、クマは自然と巣穴へと向かうわけなんですが、今その準備がなかなか整わない状態が続いているわけですね。
なので雪がちらついても気温が下がっても、なかなか冬眠に入れないというわけです。
クマの問題が連日ニュースになっていますが、その背景には、空き家に残された柿の木だったり、
高齢化によって手入れが難しくなった果樹とか、人口が減ったことで山と里の境目が曖昧になってきたことなど、
地域全体の環境の変化もあります。さらに気候とか生態系とかの影響も重なって、
単なるクマ出没という一つの出来事を超えた、もう少し大きなテーマにつながっているようにも感じてきます。
クマ対策という枠を超えて、誰がどこをどう支えていくのかという、地域のこれからを考えていくためのもっと広いテーマでもあるように思いました。
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それではまた明日。
05:45
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